- 更新日 : 2021年9月3日
事業主貸と事業主借を正しく使い分けるには?事例と仕訳でわかりやすく解説!
個人事業者が青色申告特別控除を受けるためには、複式簿記により記帳しなければなりませんが、「事業主勘定」は資産・負債勘定に該当します。
個人事業主のみが使う特殊な勘定科目であり、実務では「事業主貸勘定」と「事業主借勘定」の2つに分類されます。
今回は理解が難しいとされているこの2つについて、事例を挙げながら解説します。
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目次
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事業主勘定とは
法人であれば「経営者=個人」「事業=法人」というように経営者と事業が別人格ですから、事業とプライベートを明確に区分できます。
しかし個人事業の場合「経営者=個人」「事業=個人」です。つまり経営者も事業も同一の個人ですから、収益や費用が事業なのかプライベートなのかを区別するのが困難なケースが出てきます。
例えば、個人名義の車両1台を事業とプライベート両方で使用するような場合、事業ではないプライベート使用分があります。
また、個人事業では「報酬・給料」といった概念がありません。
したがって個人事業主は生活費が必要な場合、事業用の預貯金からお金を引き出すことになります。
逆に事業資金が足りなくなったら自己資金から事業用にお金を移したりもします。
このように、事業とは関係ない費用の発生や預貯金等の引き出し、預け入れが発生した場合に使われるのが「事業主勘定」です。
「事業主貸勘定」と「事業主借勘定」は名前を混同しやすく、仕訳の貸方借方との違いに戸惑うなど、理解に時間がかかるといわれています。
以下で具体例を学び、事業主勘定について確認しましょう。
事業主貸とは
先にも述べたとおり個人事業主の場合は、事業用のお金と家計のお金を完全に区別することは難しいでしょう。
また「個人事業主本人に給与を払う」という概念がありませんので、個人事業主にはサラリーマンでいうところの「給料」がありません。
事業によって得た利益が所得となり、その所得から個人の生活費を賄っていくことになります。
個人事業主が家計の経費を事業用の預貯金で支払うような場合又は事業で得た利益を家計として事業用の預貯金から引き出した場合には「事業主貸(じぎょうぬしかし)勘定」を使用します。
例:プライベートの外食費10,000円を現金で支払った
例:生活費として事業用の預金から20万円を引き出した
事業主貸勘定は経費にならない
ここでポイントとなるのが、「事業主貸勘定」は必要経費にはならないという点です。
通常であれば、事業で収益を得るための支出は個人事業の必要経費として認められます。しかし、前段の例のように「プライベートの外食代」は事業の収益とは全く無関係ですし「個人事業主の生活費」は必要経費とはなりません。
必要経費とならないものを事業の預貯金等から持ち出すわけですから、事業側からみればこの支出は「個人事業主に(お金を)貸した」と考えます。
したがって勘定科目は「事業主(に)貸(した)勘定」となるわけです。
事業主貸勘定の仕訳例
では「事業主貸勘定」を使った仕訳処理をみてみましょう。
「3月1日 自身が使う生活費として80,000円を事業用現金から引き出した」
生活費などの家計費は「事業主貸勘定」を通して事業用のお金からプライベートのお金に移します。
「3月3日 国民健康保険料として10,000円を事業用口座から支払った」
国民健康保険料、国民年金保険料は個人が負担すべきものですから事業外です。したがって事業用預貯金から支出した場合には「事業主貸勘定」となります。
ただし、これらの社会保険料は確定申告の際には、所得金額から「社会保険料控除」として控除(所得控除)できます。
帳簿上は「事業主貸勘定」に含まれていますので、控除し忘れないよう注意しましょう。
「3月15日 所得税45,000円を事業用現金で支払った」
所得税は事業所得に対する税金ですので一見必要経費のように見えますがプライベートな支出とされています。
したがって支出した際には「事業主貸勘定」となりますので注意が必要です。
「3月20日 事業用と自宅を兼ねている家屋(按分は事業:自宅=4:6)の家賃10万円が事業用口座から引き落とされた」
事業主貸勘定 | 40,000円 |
「事業主貸勘定」を使用する際の注意点として、支出のなかに一部必要経費にできるものがないかを必ず確認しましょう。
必要経費として抜き出すことで節税に役立ちます。
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事業主借勘定とは
事業を営んでいくなかで、事業用資金が一時的に足りなくなるケースや、事業の必要経費をプライベートのお金で立替払いするケースなどがあります。
「事業主借(じぎょうぬしかり)勘定」はこのように「プライベート用のお金を事業用に移動させた場合」や「事業の必要経費をプライベートのお金で支払った場合」などに使用します。
具体的には以下の例が挙げられます。
- 事業用の現金が少なくなったため、個人の預金(現金)から入金した
- 事業用の経費を個人の現金(預金)から支払った
- 事業用の預金に利息が発生した
「事業主借勘定」は「事業主貸勘定」とは反対に、プライベートのお金を事業用資金として投入する場合に使われます。
事業主借勘定の仕訳例
では「事業主借勘定」を使った仕訳処理をみてみましょう。
「4月1日 事業用口座の資金が足りなくなったので、個人事業主のプライベート口座から70,000円を移した」
「4月2日 事業に使うプリンターのインク代4,000円を個人事業主の財布から支払った」
「4月3日 事業所への通勤定期代65,000円をプライベート用のクレジットカードで支払った」
「4月10日 事業用口座に利息150円がついた」
事業用口座の利息は一見事業にかかる収益のように見えますが、所得税上の区分は「利子所得」です。
「事業所得」ではありませんので個人事業主自身のお金とみなされます。したがって勘定科目は「事業主借勘定」を使います。
なお、預金利息は「利子所得」に該当しますが、源泉分離課税方式にて源泉徴収が完結しているため、改めて確定申告する必要はありません。
「4月25日 サラリーマンと個人事業主を兼業しているため、給料(基本給20万円、手取り金額18万円、源泉徴収2万円)が事業用の口座に振り込まれた」
給料は「給与所得」ですので、事業所得ではありません。したがって事業用口座に入金された場合には「事業主借勘定」で処理します。
確定申告の時の処理の仕方
「事業主借勘定」は会計上「事業主からの借入金」であり、「事業主貸勘定」は、「事業主に対する貸付金」です。
同一個人(事業主)に対する貸付金と借入金を両建てで残しておく理由はありませんので、決算修正の時点で相殺します。
例:事業主貸勘定1,000,000円、事業主借勘定500,000円が残高として残っていたので相殺処理を行った
相殺の結果「事業主借勘定」「事業主貸勘定」いずれか一方が残高として残ることになりますが、この残高は青色申告決算書の貸借対照表に計上したままで問題ありません。
「事業主勘定」の残高自体は借入金・貸付金といった「資産・負債項目」であり損益計算とは関係がありません。したがって青色決算書上で残高が存在していても「所得金額」には影響しないからです。
期首における事業主勘定と元入金
「事業主借勘定」「事業主貸勘定」と「元入金」「(青色申告控除前)所得金額」はいずれも「事業主の運転資金」の同一グループとしてとらえます。
同一グループである「事業主借勘定」「事業主貸勘定」と「元入金」を両建てでいつまでも残しておくわけにはいきません。
決算が終了して翌期に繰越す際には、これら4つを「元入金」の1ヵ所にまとめてその他3つの残高を0円にリセットします。
具体的な会計処理は以下のとおりです。
- 事業主貸勘定が残った場合、元入金から減算します
- 事業主借勘定が残った場合、元入金に加算します
- 前年分の(青色申告控除前)所得金額を元入金に加算します
また、1~3を計算式で表すと以下のとおりになります。
新年度の元入金=前年の青色申告特別控除前の所得金額+前年における期末元入金+事業主借勘定-事業主貸勘定
事業主勘定の重要性を正しく理解しましょう
個人事業主のプライベート用と事業用のお金を分けるために重要な事業主勘定について解説しました。
事業と事業外を明確に区分しにくい部分もありますが、事業主貸と事業主借をしっかり整理することは正しい損益計算にもつながります。特に事業主貸勘定のなかには必要経費となるものや、所得控除に該当するものなどが隠れていますので集計する際には特に注意して見直すことをおすすめします。
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自動取得した取引明細データや、受領後にアップロードした請求書・領収書などの情報をAIが判別し、仕訳を自動で入力します。学習すればするほど精度が上がり、日々の伝票入力が効率化されます。
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マネーフォワード クラウド確定申告の導入事例
データ連携機能を使って、銀行やクレジットカードの明細データを自動で取り込むようになってからは、会計ソフトへの入力作業が減ったので、作業時間は1/10くらいになりましたね。
ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
もっと読むよくある質問
事業主勘定とは?
個人事業主が、必要な場合に事業用のお金を引き出したり、逆に自己資金から事業用にお金を移したりするときに用いるのが、事業主勘定です。詳しくはこちらをご覧ください。
事業主勘定はどのような種類がある?
事業主貸と事業主借があります。詳しくはこちらをご覧ください。
事業主貸とはどのような勘定科目?
事業のお金を個人事業主自身のために使用する際の勘定科目です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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