消費税還付の仕組みと還付される条件まとめ

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事業者は、商品やサービスを提供し消費者から消費税を受け取りますが、一方で事業者も仕入れをしたり備品を購入したりするので他の事業者に消費税を支払います。

消費税は、基本的に受け取った消費税から支払った消費税を差し引いた額について、事業者が納税します。この時、受け取った消費税より支払った消費税が多い場合には、払いすぎているので還付を受けることができます。

特に、設備投資などをして支払った消費税が多い場合には、多額の還付金が発生することもあるので、しっかりと手続をしたいものです。そこで、今回は、実際にどのようなケースで還付を受けることができるのかを見ながら、消費税還付の仕組みとその注意点について解説していきたいと思います。

原則課税と簡易課税

消費税納税額の計算方法には、「原則課税」と「簡易課税」の2つがあります。原則課税とは、「預かった消費税」から「支払った消費税」を差し引いて計算する方法です。簡易課税とは、「支払った消費税」を集計することなく、預かった消費税の額に事業区分ごとに定められた「みなし仕入率」を乗じた額を「預かった消費税」から控除することによって計算する方法です。具体的な例で違いを見てみましょう。

例:小売業の事業者で、預かった消費税が100万円で支払った消費前が50万円の場合

【原則課税】
預かった消費税 − 支払った消費税 = 納税額
100万円 − 50万円 = 50万円

【簡易課税】
預かった消費税 − (預かった消費税 × みなし仕入率)= 納税額
100万円 −(100 × 80%)= 20万円
(小売り事業のみなし仕入率は80%)

※注意:便宜上、消費税と地方消費税をまとめて計算しています。

比較して分かるように、このケースでは、簡易課税を使うことで30万円も節税することができます。

ただ、還付という観点から注意しなければならないのは、還付を受けるためには、原則課税を選択していなければならないということです。

例:小売業の事業者で、預かった消費税が100万円で支払った消費前が150万円の場合

【原則課税】
100万円 − 150万円 = △50万円(還付)

【簡易課税】
100万円 −(100 × 80%)= 20万円

上記設例からもわかるように、簡易課税を選択した場合には消費税の還付は生じません。

ケース1 赤字の場合、仕入れや経費がかさんだ場合

赤字の場合、収入よりも経費が多い状態なので、通常、「預かった消費税」より「支払った消費税」が多くなります。また、一時的に仕入れや経費がかさんだ場合も収益は遅れて発生するので、「預かった消費税」よりも「支払った消費税」が多くなります。そのため、これらの場合には還付を受けることができます。

ただし、給与や租税公課など経費については、消費税がかかるわけではないので、赤字であっても、必ずしも還付を受けられるとは限りません。必ず、「受け取った消費税」と「支払った消費税額」を集計して確認してみなければなりません。

ケース2 不動産の購入や設備投資など高額の資産を購入した場合

不動産(建物)の購入や設備投資など高額の資産を購入した場合、支払う消費税が多くなるので、還付される可能性が高まります。

しかし、売上の中で非課税売上の割合が高い場合には、100%の還付は受けられないので注意が必要です。非課税売上になるものとしては、住居用入居者からの家賃があります。

当期の課税売上割合が95%以上、かつ当期の課税売上高が5億円以下であれば、支払った消費税額の全額を控除することが可能ですが、それ以外の場合には、(1)個別対応方式か、(2)一括比例配分方式によって控除することになります。個別方式は、課税売上に応じて区分した課税仕入に一定の計算をした消費税を控除するというものです。一括比例配分方式は、支払った消費税に課税売上割合を乗じた額を控除するというものです。

ケース3 輸出業を営み、売上がほとんど免税取引の場合

事業者が国内で商品などを販売する場合、原則として消費税が発生しますが、輸出取引は、消費税が免除されるので、輸出業の場合、売上に対し消費税は発生しません。しかし、仕入れを国内で行う場合、消費税を支払うことになるので、支払った消費税のほとんどは還付されることになります。

還付を受けることができるのは原則課税している「課税事業者」

個人で前々年の課税売上高が1,000万円以下の場合、「免税事業者」になります。他方、前々年の課税売上高が1,000万円を超える場合や前年の1月1日から6月30までの期間の課税売上高が1,000万円を超える場合には「課税事業者」になります。
なお、特定期間の課税売上高に代えて、特定期間中に支払った給与等の金額により判定することもできます。したがって、1月から6月の課税売上高が1000万円を超えても、1月から6月の給与等の金額が1,000万円以下の場合には、翌年は、免税事業者となります。

新たに設立された法人は、基準となる前々事業年度の売上はありませんので、原則として免除事業者になります。しかし、資本金の額が1,000万円以上である場合や一定の要件を満たす新設法人は免除事業者とはなりません。

免税事業者は、預かった消費税と支払った消費税の差額がプラスであっても納税する必要がありません。その点でメリットがあります。しかし、預かった消費税と支払った消費税の差額がマイナスであっても還付を受けることができません。還付を受けることができるのは「課税事業者」に限られているからです。

なお、繰り返しになりますが、還付を受けるためには「原則課税」で計算しなくてはなりません。「簡易課税」を選択している場合には還付を受けられません。

還付例 小売業の場合 ※原則課税

2019年10月から消費税が10%に増税され、同時に軽減税率が導入されたため、税率が10%のものと8%のものを分けて計上しなければなりません。還付例は以下のようになります。

【預かった消費税】
売上(10%) 2,000万円(税抜)→ 消費税 200万円
売上(8%) 1,000万円(税抜)→ 消費税 80万円
消費税の合計280万円

【支払った消費税】
仕入(10%) 1,500万円(税抜)→ 消費税 150万円
仕入(8%) 500万円(税抜) → 消費税 40万円
設備投資(10%)2,000万円(税抜) → 消費税 200万円
消費税の合計390万円

預かった消費税(280万円)-支払った消費税(390万円)= −110万円

以上の計算により、110万円が還付されることになります。

還付金の受取方法と時期は?

還付金の受取方法には、(1)預貯金口座への振込み、(2)最寄りのゆうちょ銀行各店舗または郵便局に出向いて受け取る方法の2種類があります。確定申告書の「還付される税金の受取場所」欄に記入することで指定します。

還付金が支払われる時期は、確定申告書の提出から1か月から1か月半程度です。e-Tax(電子申告)を利用すると3週間程度で支払われるので、急いで支払って欲しい場合には、e-Taxを利用した方が良いでしょう。
なお、還付の際には、「消費税の還付申告に関する明細書」を消費税の申告書と一緒に提出します。

まとめ

以上のとおり、消費税の還付を受けるためには、原則課税を選択し、課税事業者であることが必要です。預かった消費税より支払った消費税が多いという場合には還付を受けることができるので、もし、免税事業者である場合には、あえて課税事業者になるという選択肢もあります。

その場合には、事業年度開始の前日までに「消費税課税事業者選択届出書」を税務署に提出する必要があります。ただ、注意が必要なのは、一度「消費税課税事業者選択届出書」を提出すると、「原則」2年間は強制的に課税事業者になるので、翌年は免税事業者に戻りたいと思っても戻ることはできません。

消費税の増税に伴い、預かり消費税も支払い消費税も金額が大きくなりますので、消費税の還付を受けられるかどうか本記事を参考に改めて考えてみてはいかがでしょうか。

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:並木 一真(税理士/1級FP技能士/相続診断士/事業承継・M&Aエキスパート)

並木一真税理士事務所所長
会計事務所勤務を経て2018年8月に税理士登録。現在、地元である群馬県伊勢崎市にて開業し、法人税・相続税・節税対策・事業承継・補助金支援・社会福祉法人会計等を中心に幅広く税理士業務に取り組んでいる。



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