- 更新日 : 2025年2月19日
現金取引を仕訳例からわかりやすく解説
法人や個人事業主が作成する帳簿書類の中には、「現金出納帳」または「現預金出納帳」と呼ばれる帳簿があります。現金出納帳は、すべての現金取引を記録した帳簿です。事業を行うにあたって、現金の管理はその科目に特化した帳簿を作成しなければならないほど重要な取引といえます。また、現金取引は事業活動の中でやり取りが多い取引です。今回は、会計の基礎である現金取引の概要から、具体的な仕訳例まで見ていきましょう。
現金取引とは
現金取引とは、現金が関わる取引を指します。現金の入金や出金、交換は、いずれも現金取引です。
現金取引でイメージしやすいのは国内通貨(日本円)によるものでしょう。もちろん、国内通貨による取引は現金取引に含まれますが、会計上の現金の概念は一般的な現金の概念よりもさらに広いです。
会計上の現金には通貨のほか、金融機関などですぐに換金できる流動性の高いものも含まれます。例えば他人振出小切手(他社から受け取った他社発行の小切手)や、郵便局で購入できる定額小為替も現金の一種です。いずれも、会計上は「現金」として処理します。
現金取引の仕訳例
現金取引とは、どのような取引なのでしょうか。具体的な仕訳例を交えて、現金取引の主なパターンを解説します。
普通預金の入出金
金融機関の預貯金口座を利用している企業や個人事業主は多いでしょう。ここに現金がからんでくるのは、預貯金口座に現金を預け入れた時、または預貯金口座から現金を引き出した時です。現金は資産科目なので、預け入れた時は手元資産の減少として貸方へ、引き出した時は手元資産の増加として借方に記入します。
(仕訳例1)普通預金に現金10万円を預け入れた
(仕訳例2)普通預金から現金10万円を引き出した
小切手の受け取り
小切手は当座預金から支払うために振り出す、現金の代わりになるものです。他社が振り出した小切手を受け取った場合は、会計上は当座預金の増加ではなく、現金の増加です。よって、借方に現金を記入します。
(仕訳例3)内金として他社振出小切手50万円を受け取った
手形の回収
手形は金融機関を通して発行される、支払期日に支払うことを約束するものです。支払期日に当座預金から支払われる点は小切手と同じですが、振り出し時は小切手のように当座預金の残高には影響しません。
手形を振り出した時は支払手形、手形を受け取った時は受取手形として処理します。以下のケースは、受取手形の支払期日が到来し、指定の金融機関で現金で受け取った時の仕訳です。
(仕訳例4)手形20万円の期日が到来したので、指定の金融機関に持っていき、全額を現金で受け取った
(参考)上記の手形を受け取った時の仕訳
売掛金と買掛金
売掛金とは、商品を引き渡したものの入金がない(手形の振り出しなどもない)状態を指します。反対に、買掛金は商品を仕入れたもののまだ支払っていない(手形の振り出しなどもない)状態です。売掛金や買掛金は、商取引ではよく使われます。
売掛金で現金が関係するのは売掛金を現金で受け取った時、買掛金で現金が関係するのは買掛金を現金で支払った時です。
(仕訳例5)売掛金10万円を現金で受け取った
(参考)売掛金計上時の仕訳
(仕訳例6)買掛金10万円を現金で支払った
(参考)買掛金計上時の仕訳
従業員への仮払い
従業員が出張する時などに、仮払いをすることがあります。仮払いとは、出張にかかる交通費や宿泊費などの概算額を、事前に現金で支給することです。これによって、従業員は出張にかかる費用を立て替えずに済みます。
(仕訳例7)出張費用として従業員に5万円を現金で支給した
※決算書には「仮払金」を残すべきではないため、決算までに「交通費」など適切な科目に振り替える必要があります。
日常的に行われる支払い
現金はすぐに使えるため、少額の購入品の支払いで多用されます。ここでは、日常的な取引の中で現金が使われることが多いものをいくつか取り上げます。
(仕訳例8)パソコン30万円を現金で購入した
10万円未満の資産の購入費は少額資産として費用で処理しますが、1単位10万円以上のものは原則資産(この場合は備品)として処理します(ただし、10万円以上20万円未満の資産は一括償却、中小企業に関しては30未満の資産については全額損金算入の特例があります)。この例では現金で支払っているため、貸方の科目は現金です。
(仕訳例9)プリンター2万円を現金で購入した
上の仕訳例と異なり、10万円未満の少額資産は資産ではなく費用として処理します。上記のように消耗品費として処理するほか、会社によっては事務消耗品費などの勘定科目で処理することもあります。貸方の科目は同じく現金です。
(仕訳例10)切手500円分を現金で購入した
切手は価値のあるものとして、購入時は資産(貯蔵品)に計上するのが原則です。しかし、切手を使用するたびに貯蔵品から通信費に振り替えるのは手間がかかりますし、管理も煩雑になります。そのため実務上は、重要性の乏しいものは購入時点で費用(通信費)に計上することもあります。
(仕訳例11)収入印紙1万円を現金で購入した
収入印紙も切手代と考え方は同じです。購入時は資産的価値があるため、本来であれば資産(貯蔵品)として計上します。しかし事務処理が煩雑になることから、実務上は購入時に費用(租税公課)として計上することもあります。
現金取引は日常的によく使われている取引
現金で何かを購入する、商品を販売して現金を受け取るなど、現金取引は日常的に行われています。会計処理の基本的な取引なので、「現金」という科目の概念をはじめ、現金取引の例を仕訳の形で覚えておくとよいでしょう。
ただし、会社や個人の事業上の取引は、現金取引だけではありません。売上や仕入では、掛取引(売掛や買掛)が行われるのが一般的です。
掛取引については以下の記事で詳しく解説していますので、こちらもご覧ください。
よくある質問
現金取引とは?
現金の入金や出金、交換など、現金が関わる取引のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
現金取引の仕訳例は?
この記事では、具体的な仕訳例を交えて現金取引の主な仕訳パターンを解説しています。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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