- 更新日 : 2024年8月8日
消費税は輸入と輸出では扱いが違う?
グローバル社会の進展により、国際取引が頻繁に行われるようになりましたが、輸入や輸出をした場合、消費税はどうなるのか悩まれる方もいるかと思います。そこで、今回は、輸入や輸出をする際の消費税の処理に関する解説をします。
消費税の課税対象
消費税の課税対象となるものは、「事業者が対価を受け取って行う国内での事業資産の譲渡等」「外国貨物の輸入」です。と国税庁が定めているとおり、個人事業主および法人が商品などの資産を相当額にあたる対価を得ることで譲渡などをする取引です。この定義からもわかるとおり、輸入は課税の対象になりますが、輸出は課税の対象にはなっていません。
輸入取引
輸入品には、原則として消費税がかかります。原則として引取り時までに品名、数量、金額、消費税額などが書かれたた輸入申告書をその地域を管轄する税関長に提出し、消費税を納付することになっています。ただし、納期限の延長に関する申請書を税関長に提出する際、担保を提供することで、担保の額の範囲内で、最長3カ月間の納期限の延長が認められます。
消費税の計算方法は、税額の基礎となる消費税課税標準額に税率をかけて算出します。輸入取引の消費税課税標準額は、CIF価格に関税と酒税などの個別消費税を合算した金額です。個別消費税には酒税以外に、たばこ税、揮発油税などがあります。
消費税課税標準額=CIF価格+関税+酒税などの個別消費税
輸入消費税 = 消費税課税標準額 × 消費税率は国内取引と同率の8%になります。
輸出取引
販売が輸出の取引の場合は、消費税が免除となります。これは、外国で消費されるものに関しては、日本の消費税の対象としないという考えに基づくものです。
輸出取引の範囲
・国内からの輸出による資産の譲渡や貸付け
・外国貨物の譲渡や貸付け
・外国貨物の荷役や運送、保管など役務提供または、国内と海外との通信、郵便など
・非居住者に対して行う鉱業権、工業所有権、著作権等の無体財産権の譲渡・貸付け
・非居住者に対する役務の提供
なお、輸出時の消費税免税を受けるためには、資産の譲渡等が輸出取引となることを証明する必要があります。輸出取引の分類に応じた輸出許可証、税関長の証明、輸出をしたという事実を記した帳簿や書類などが必要です。さらに、これら書類の保存期間は、7年間です。
国内で商品を仕入れて、国外で売る場合、国内で仕入れたものに関して消費税が発生しますが、国外で売ったものに関しては免税取引となり、消費税は発生しません。したがって、発生した仮払消費税に対して、払い過ぎた税額は還付されます。
個人の場合
外国からの貨物を輸入する場合は、事業者に限らず、個人の輸入にも消費税を納めることになります。したがって、事業者と同様、原則として所管税関長に申告し納付する必要があります。しかし、海外旅行の際に購入した物すべてに消費税がかかるのでは、手続きも大変なので、一定の免税が認められています。「お酒は3本まで免税」と聞いたことがある人もいると思いますが、免税の範囲が定められています。
主な免税の範囲
海外旅行者の携帯品あるいは別送品で、個人的に使用するものにかぎり、免税が認められます。一人当たりの主な免税の範囲は次のとおりです。
(1)酒類は3本(1本760ml)まで
(2)たばこは、紙巻たばこが200本もしくは葉巻たばこが50本、その他の場合、たばこが250gまで
(3)香水は、2オンス(約56ml)まで
(4)その他の物は、海外市価の合計額が20万円まで
なお、1品の額が1万円以下のものは免税で合計額に含めなくてよいことになっています。
免税にならないもの
(1)未成年者の場合は「酒類」と「たばこ」は免税になりません。
(2)6才未満の子供に関しては、子供が使用すると考えられるおもちゃなど以外は原則免税になりません。
まとめ
海外取引における消費税の取扱いについてみてきました。輸入の場合には消費税が課税され、輸出の場合には消費税は課税されません。これは消費される場所が国内か国外であるかによって生じる違いです。輸入と輸出で消費税の扱いが全く異なるので注意しましょう。
関連記事
・消費税の課税事業者の条件と提出書類まとめ
・免税事業者は消費税を請求していいのか?
・消費税還付の仕組みと還付される条件まとめ
よくある質問
輸入品には、消費税はかかりますか?
かかります。引取り時までに詳細が書かれた輸入申告書をその地域の税関長に提出し、消費税を納付します。詳しくはこちらをご覧ください。
輸出品には、消費税はかかりますか?
免除になります。これは、外国で消費されるものに関しては、日本の消費税の対象としないという考えに基づくものです。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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