• 作成日 : 2025年9月9日

資金繰りが苦しいときの資金調達方法は?避けるべきことや抜け出す方法も解説!

中小企業や個人事業主にとって資金繰りを安定させることは、重要な課題です。売上があっても入金までに時間差が生じるため、支払いが重なると資金ショートを起こし、黒字倒産に至るリスクもあります。

中小企業経営や個人経営をしている以上、資金繰りに悩んだことが一度はあるのではないでしょうか。

本記事では、資金繰りが苦しいときの資金調達方法を解説するとともに、避けるべきことや抜け出す方法についても解説します。資金繰りが苦しい人が知りたいことがわかるので、参考にしてください。

資金繰りとは?

資金繰りとは、企業が日常的に必要とする資金の流れを把握し、収入と支出のタイミングを調整して資金不足を防ぐ管理活動のことです。

売上が計上されていても、入金までには時間差があるため、その間に給与や仕入れ費用などの支払いが重なると、手元資金が不足するリスクがあります。そのため、資金繰りを適切に行うことは事業の安定運営に不可欠です。

とくに注意すべきは「黒字倒産」のリスクです。これは、帳簿上は利益が出ていても、売掛金の回収が遅れるなどで現金が不足し、支払いが滞って倒産してしまうケースを指します。したがって、資金繰りは単なる収益管理ではなく、現金の確保を最優先に考えた運営管理が重要になります。

資金繰りの管理方法としては、資金繰り表を用いて将来の収支を予測し、余裕資金を確保することが効果的です。日々の資金の動きを計画的に把握し、必要に応じて融資や在庫処分などの施策を取ることで、資金不足を未然に防げます。資金繰りは、まさに企業の存続を左右する基盤といえるでしょう。

資金繰りが苦しいときすぐにやるべきこと

企業経営において資金繰りの悪化は深刻な問題です。利益が出ていても返済や支払いが滞ると黒字倒産につながります。

状況が苦しくなった場合、まずは現金を確保し、金融機関に相談することが大切です。その際の代表的な手段が「融資の返済条件の変更(リスケジュール)」と「借り換え」です。

融資の返済条件を変更(リスケジュール)

融資の返済が困難になった場合、借入先の金融機関に返済条件の変更を相談することをリスケジュール(リスケ)といいます。具体的には「月々の返済額を減額する」「返済期間を延長する」といった方法があります。

金融機関に受け入れてもらうには、合理的な経営改善計画書や資金繰り表を準備して説明することが重要です。

リスケを実施することで、資金繰りに一時的な余裕を生み出し、経費削減や資産売却といった改善策を実行する時間を確保できます。

融資の借り換え

既存の融資の返済が厳しい場合は、借り換えによって条件を見直すことが可能です。

借り換えを行うことで、毎月の返済額を軽減し、資金繰りに余裕を持つことが可能です。ただし、売上や利益率が減少していること、金融機関との対話を通じて「経営行動計画書」を策定することなど、利用には条件があります。

これらの制度は利用期限が設けられているため、早めに金融機関へ相談し、適切な制度を選択することが大切です。

資金繰りが苦しいときの資金調達方法

資金繰りが厳しくなると、黒字経営でも倒産のリスクに直結します。とくに中小企業や個人事業主は売掛金の回収遅延や急な支払いによって、短期間で資金ショートする可能性があります。

ここでは、ファクタリングや金融機関融資をはじめとした代表的な資金調達方法を取り上げ、それぞれのメリットとデメリットをわかりやすく解説します。

ファクタリング

ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング会社に売却し、入金期日前に現金化する仕組みです。最短即日で資金調達できるスピード感が大きなメリットで、担保や保証人を必要とせず、業績が悪化していても利用可能なケースがあります。

一方で、手数料が2〜18%程度と高めであり、調達できる金額は保有する売掛金の範囲に限定されます。利用時には複数社から見積もりを取り、手数料や契約条件を比較することが重要です。

取引先に知られずに利用できる2者間方式と、取引先を交える3者間方式を、状況に応じて活用しましょう。

金融機関からの融資

銀行や信用金庫、日本政策金融公庫などから受ける融資は、低金利でまとまった資金を確保できる、最も一般的な資金調達方法です。

一方で、審査が厳しく時間もかかるため、急な資金需要には対応しづらい側面があります。提出書類も多く、担保や保証が必要な場合もありますが、長期的に安定した資金繰りを整える手段として有効です。

とくに運転資金や設備投資などの計画的な資金調達には適しており、資金ショートを防ぐためには早めの準備が欠かせません。

ビジネスローン

ビジネスローンは、銀行や信販会社、消費者金融などが提供する事業者向けローン商品です。担保や保証人が不要なケースも多く、審査が比較的柔軟で、消費者金融系では即日融資も可能です。

資金使途も幅広く、運転資金や設備資金などに活用できます。しかし、金利は金融機関の融資より高く、借入限度額も数百万円程度と小規模に留まる場合が多いです。

さらに消費者金融での借入はほかの金融機関からの評価に影響する可能性もあるため、返済可能な範囲で短期的な利用にとどめることをおすすめします。

セーフティネット貸付

セーフティネット貸付は、日本政策金融公庫が実施する公的融資制度で、経済環境の悪化や取引先の倒産などにより一時的に業績が悪化した中小企業を対象としています。

比較的低金利で据置期間や返済条件にも配慮されており、突発的な資金ショートへの対応策として有効です。審査では経営環境の悪化が確認される必要があり、条件を満たせば迅速に利用できる可能性もあります。

ただし、通常の融資と同様に申請書類や事業計画の提出が必要となるため、長期的な資金繰り改善策と併用して活用することをおすすめします。

制度融資

制度融資とは、地方自治体が金融機関や信用保証協会と連携して提供する公的融資制度です。信用保証付きで利用しやすく、自治体によっては利子補給や保証料の補助が受けられる場合もあります。

中小企業や個人事業主でも比較的利用しやすく、低金利かつ安定した条件で借入可能です。ただし、申請には自治体を通じた手続きや信用保証協会の審査が必要であり、融資実行までには一定の時間がかかります。

資金繰りに余裕を持たせたい場合や、長期的な資金計画の一環として活用しましょう。

資金繰りが苦しいときに避けるべきこと

資金繰りが苦しい状況では、焦りから誤った判断をしてしまうことがあります。

しかし、一時的な資金不足をしのぐために税金や社会保険料、買掛金、従業員への給料支払いを滞納してしまうと、事業の存続に深刻な悪影響を及ぼします。これらの支払いは会社の信用や法的リスクに直結するため、必ず優先的に対応しなければなりません。

税金や社会保険料の滞納

資金繰りが厳しいときでも、税金や社会保険料の滞納は絶対に避けるべきです。滞納を続けると延滞税が発生し、最悪の場合は財産の差押えに発展します。

とくに消費税や源泉所得税は「預り金」の性格があり、優先的な支払いが求められます。滞納すれば金融機関からの信用を失い、融資審査にも悪影響が出ます。支払いが困難な場合は、必ず税務署や年金事務所へ相談する姿勢が大切です。

買掛金の滞納

買掛金の支払いを滞納すると、取引先からの信用を失い、最悪の場合は取引停止や契約解除に至るおそれがあります。資金繰りが苦しいときほど、取引先との信頼関係を保つことが重要です。

支払いが難しい場合は、一方的に滞納せず、事情を説明したうえで支払い期日の延期や分割払いを相談することが望ましい対応です。誠実な交渉を行うことで、信頼を維持しながら資金繰りの改善を行えます。

従業員への給料未払い

資金繰りが厳しくても、従業員への給料未払いは法律違反となり、重大なリスクです。労働基準法に違反すると、30万円以下の罰金や6か月以下の懲役刑など法的措置を受ける可能性があります。

また、給与未払いは従業員の士気低下や退職につながり、企業の運営基盤そのものを揺るがします。従業員の信頼を失うことは企業にとって致命的なため、支払いが難しい場合でも誠意を持って説明し、外部の制度を活用して資金を確保することが必要です。

資金繰りが苦しい状態から抜け出す方法

企業が経営を続けていく上で、資金繰りは命綱とも言える重要な要素です。資金繰りが悪化すると、黒字であっても倒産リスクが高まるため、早急な対策が求められます。

ここでは、資金繰りが苦しい状態から抜け出すための具体的な方法を5つ紹介します。日々の経営改善に役立つ実践的な手法を確認していきましょう。

資金繰り表を作成する

資金繰りが苦しい状況を改善するには、まず「資金繰り表」の作成が欠かせません。資金繰り表とは、過去の収支や今後の支払い予定を時系列で把握できる表であり、現金の流れを可視化することで資金ショートの予兆を早期に察知できます。

Excelや会計ソフトを用いれば簡単に作成でき、金融機関との交渉資料としても活用可能です。支出が集中する時期を事前に把握することで、設備投資の見直しや融資のタイミングを調整しやすくなります。

企業の経営判断を迅速かつ正確に行うためにも、日頃から資金繰り表を作成し、3か月先までの見通しを立てる習慣をつけることが重要です。

無駄な支出を削減する

資金繰りを改善するためには、日常的な経費を見直し、無駄な支出を削減することが有効です。光熱費や通信費、不要な備品購入、交際費などを精査し、費用対効果の低いものから優先的に削減しましょう。

ペーパーレス化や業務のデジタル化もコスト削減につながります。無駄な支出を抑えることで資金流出を防げるだけでなく、利益率の向上や財務の健全化にも効果的です。

さらに、浮いた資金を投資や成長戦略に充てることで、企業の競争力を強化し、中長期的な経営の安定にもつながります。

過剰在庫を解消する

過剰在庫の解消も、資金繰りの改善に直結する重要な施策です。商品や原材料が過剰に保管されていると、それに伴う保管費用や廃棄リスクが増加し、資金が眠ったままの状態になります。

在庫回転率が低い場合は、値下げ販売や仕入れ量の調整によって、現金化を早めることが必要です。在庫管理を最適化することでキャッシュフローが改善し、支払いへの対応力も高まります。

また、在庫の見直しは業務の効率化にもつながり、経営判断のスピードアップや無駄な投資の抑制にもつながります。過剰在庫の解消は、資金繰りだけでなく経営全体の健全化に役立つ施策と言えるでしょう。

売掛金の回収サイトを短くする

売掛金の回収期間が長いと、帳簿上では黒字でも現金が不足し、資金繰りが悪化する原因となります。そこで、売掛金の回収サイトを短縮することで、現金化までの期間を短くし、資金の滞留を防ぐことが重要です。

取引先との交渉により、支払条件の見直しを図ることで、運転資金の早期確保が可能となり、仕入れや人件費などの支払いにも余裕が生まれます。資金繰りの安定には、売上の発生から入金までのサイクルを短縮することが不可欠です。

とくに、売掛金の回収遅延が常態化している場合は、督促の徹底やファクタリングの活用も視野に入れるべきです。

資金繰り改善に詳しい専門家に相談する

資金繰りに悩んだ際は、自社だけでの対応に限界を感じることもあるでしょう。そのような場合は、資金繰り改善に詳しい専門家へ相談することが有効です。

具体的には、税理士、公認会計士、中小企業診断士、金融機関の担当者、あるいは事業再生に強い弁護士などが、状況に応じたアドバイスや支援を提供してくれます。

資金繰り表の作成サポートや、融資の申請書類の作成、返済計画の見直しなど、専門的な知識と経験に基づいた支援が受けられるため、的確な改善策を早期に講じることが可能です。資金繰りの悪化を未然に防ぐためにも、早めの相談をおすすめします。

資金繰りが苦しいときの対処法を把握して実行しよう

資金繰りが苦しいときには、融資のリスケジュールや借り換え、ファクタリング、制度融資など多様な資金調達手段が活用できます。しかし一方で、税金や社会保険料、買掛金や給与の滞納は信用低下や法的リスクにつながるため厳禁です。

抜け出すためには資金繰り表を作成し、無駄な支出や過剰在庫を見直し、売掛金の回収を早めることが欠かせません。専門家の支援を受けることで解決策を早期に実行でき、経営の安定につながります。

本記事で紹介した対処法を把握し、資金繰りを解決しましょう。


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