• 作成日 : 2025年9月3日

会計代行とは?経理の依頼先や料金相場、サービス内容を解説

会計の代行とは、企業の経理・会計業務を外部の専門家へ委託するサービスのことです。日々の記帳から決算業務のサポートまで、ノンコア業務を任せることで、人手不足の解消や業務効率化につながります。しかし、依頼先やサービス内容はさまざまで、税理士法に関する注意点もあります。この記事では、企業や個人事業主が会計を代行してもらう際の基本的な知識から、詳しいサービス内容、料金相場、そして自社に合った依頼先の選び方までをわかりやすく解説します。

会計代行とは?経理業務を外部に委託するサービス

会計の代行は、企業の日々の経理や会計に関わる業務を外部の専門の事業者に委託できるサービスです。専門的な知識が必要な業務をプロに任せることで、社内のリソースを主要な事業活動に集中させられます。

会計代行の主なサービス内容

会計を代行するサービスが対応する業務は多岐にわたります。自社がどの業務に課題を感じているかをはっきりさせ、必要なサービスを見極めましょう。

  • 記帳代行
    領収書請求書、通帳のコピーといった書類をもとに、会計ソフトへの入力を行ない、仕訳帳総勘定元帳などの会計帳簿を作成します。経理業務の基本となる作業です。
  • 給与計算・年末調整
    従業員の勤怠データから給与を計算し、給与明細を作成することも会計代行に含まれることが多いです。社会保険料や源泉所得税の計算といった専門知識が求められる業務や、年に一度の年末調整も任せられます。
  • 請求書の発行・管理
    取引先への請求書の発行、送付、入金管理を行ないます。売掛金の回収漏れを防ぎ、キャッシュフローの安定化を支援します。
  • 経費精算
    従業員が立て替えた経費の申請内容を確認し、精算処理を行ないます。申請ルールの徹底や不正防止にもつながるでしょう。
  • 振込・支払業務の代行
    買掛金や経費、社会保険料などの支払い手続きを代行します。支払い漏れや遅延を防ぎ、取引先との信頼関係を保ちます。
  • 月次試算表決算書の作成支援
    毎月の経営状況を把握するための月次試算表や、年に一度の決算で必要となる貸借対照表損益計算書といった決算書類の作成を支援します。

記帳代行との違い

会計の代行サービスと似た言葉に「記帳代行」があります。この二つのサービスの違いは、対応する業務範囲の広さにあります。

記帳代行は、その名のとおり「会計帳簿への記帳」に特化したサービスです。領収書などの資料をもとにデータを入力することが主な業務となります。

一方、会計の代行は記帳業務に加え、前述した給与計算や請求管理、支払い業務など、より広範囲の経理業務全般をカバーします。経理部門の業務をまとめて外部に委託したい場合は、会計業務全般の代行が適しているでしょう。

税理士が行なう税務代理との違い

外部に会計業務を委託する際、税理士が行なう「税務」とは明確な違いがあり、これは法律によって定められています。

税務署への税金の申告や、税務調査の際の対応、税金に関する相談といった業務は主として3つあり、「税務代理」「税務書類の作成」「税務相談」とよばれ、税理士資格を持つ者だけが行なえる法的に定められた独占業務です。

税理士ではない経理代行サービスは、これらの税理士業務を行なえません。もし税理士資格のない事業者が税務申告を代行した場合、税理士法違反となります。

会計データをもとに決算書を作成する「支援」はできますが、税務申告そのものを代理はできない、ということを覚えておきましょう。

会計代行の主な依頼先

会計の代行サービスは、さまざまな事業者が提供しています。それぞれに特徴や得意分野があるため、自社の目的や規模に合った依頼先を選ぶことが大切です。

税理士事務所・会計事務所

税務の専門家である税理士が運営する事務所です。最大の強みは、日々の会計処理から、専門的な判断が必要な決算、そして税務申告までをワンストップで任せられる安心感でしょう。

税理士法違反の心配がなく、会計数値をふまえた経営や節税に関するアドバイスを受けられることもあります。とくに、正確な税務申告や経営相談まで視野に入れている企業にとっては、心強いパートナーとなります。ただし、専門性が高い分、他の依頼先と比較して費用は高くなる傾向が見られます。

会計・経理代行サービス専門会社

会計や経理といった業務に特化した会社です。記帳から給与計算、支払い管理まで、幅広い業務を効率的に処理するノウハウを持っています。

多くの場合、業務をシステム化・マニュアル化しているため、安定した品質でサービスを受けられ、費用も税理士事務所に依頼するより抑えられる傾向にあります。一方で、対応できるのはあくまで会計業務の範囲内です。税務申告が必要な場合は、提携している税理士を紹介されるか、自社で別途税理士を探す必要があります。税務申告以外でも、複雑な取引に係る税務処理などは税理士に委ねられることがあります。

フリーランス・個人事業主

フリーランスや個人事業主として会計業務の代行を請け負っている人もいます。特定のクラウド会計ソフトに習熟していたり、特定の業界知識が豊富だったりする場合があるでしょう。

組織に属さないため、柔軟な対応を期待でき、費用も比較的安価なことが多いです。小規模な事業者や、依頼したい業務が限定的な場合には、フィットするかもしれません。ただし、スキルや経験は個人に大きく頼ることになります。急な病気や廃業といったリスクも考慮し、セキュリティ対策や業務の継続性について、契約前にしっかりと確認する必要があるでしょう。

会計代行の料金や費用の相場

会計を代行してもらう料金は、依頼する業務範囲や企業の規模、取引量(仕訳数)によって変動します。料金体系を理解し、自社の状況に合ったプランを選ぶことが費用を適正に保つポイントです。

料金体系の種類

会計の代行を依頼する際の料金体系は、主に「従量課金制」と「固定報酬制」の2種類に分けられます。

  • 従量課金制:「1仕訳あたり〇円」「給与計算1名あたり〇円」といったように、処理した量に応じて料金が決まる仕組みです。事業を始めたばかりで取引量が少ない企業や、月によって業務量の変動が大きい企業にとっては、コストを最適化しやすいでしょう。
  • 固定報酬制:「月額〇円」のように、毎月定額の料金で、契約範囲内の業務を依頼できる仕組みです。毎月のコストが一定になるため、予算を管理しやすいのが利点です。多くの業務をまとめて依頼したい場合や、毎月の取引量が安定している企業に向いています。

業務内容別の料金相場

依頼する業務内容によって、料金相場は変わります。以下はあくまで一般的な目安であり、企業か個人事業主か、会社の売上規模や従業員数、資料の受け渡し方法(紙かデータか)などによっても変動します。

業務内容料金相場の目安(月額)
記帳代行のみ1万円~(仕訳数による)
記帳代行+給与計算(~5名)3万円~
経理業務全般(請求・支払含む)5万円~15万円程度
決算申告の支援(税理士依頼)顧問料とは別に年額10万円(法人の場合)~

個人事業主が会計代行を依頼する場合

個人事業主やフリーランスの場合、法人に比べて取引量が少ないため、より安価な料金で依頼できることがほとんどです。記帳の代行だけであれば月額数千円から提供しているサービスもあります。

年に一度の確定申告は、多くの個人事業主にとって負担の大きい作業ではないでしょうか。経理の代行サービスに日々の記帳を任せ、確定申告の時期だけ税理士にサポートを依頼するといった使い方も有効です。本業に集中する時間を確保するために、会計業務を外部に委託することを検討する価値は十分にあります。

会計代行を依頼するメリットと注意点

会計の代行を依頼することは、業務効率化やコスト削減など多くのメリットがある一方、情報漏えいのリスクなど、事前に理解しておくべき注意点も存在します。

会計代行の4つのメリット

コア業務に集中できる

経理・会計というノンコア業務を外部に任せることで、経営者や従業員は、売上向上に直結する商品開発や営業活動といったコア業務に時間とエネルギーを集中させられます。

コストの削減

経理担当者を一人雇用すると、給与だけでなく、社会保険料や賞与、福利厚生費、採用・教育費など、多くのコストがかかります。経理のアウトソーシングを活用することで、間接費や固定人件費を削減し、必要な業務だけを専門家に依頼できる可能性があります。

会計や税務の業務を正確に行なう

会計や税務のルールは頻繁に改正されます。専門家が業務を担当することで、法改正にも迅速に対応でき、ミスのない正確な経理処理が期待できます。これは、企業の信頼性を保つうえでも効果的です。

業務の属人化を防止

経理業務が一人の担当者に集中していると、その担当者が急に休職したり退職したりした際に、業務が完全に止まってしまうリスクがあります。外部サービスを利用することで、このような業務の属人化を防ぎ、安定した業務体制を維持できます。

会計代行の3つの注意点

情報漏えいのリスク

会計業務を委託するということは、売上や経費、従業員の給与といった会社の機密情報を外部の事業者と共有することになります。依頼先がどのようなセキュリティ対策を講じているか、契約前に必ず確認しましょう。

社内にノウハウが蓄積されにくい

経理業務をすべて外部に委託してしまうと、会計処理や経理業務に関する知識や経験が社内に蓄積されにくくなります。将来的に経理を内製化したいと考えている場合は、すべてを丸投げにするのではなく、一部の業務は社内に残すといった工夫も考えられます。

コミュニケーションコストの発生

外部の事業者とスムーズに業務を進めるためには、定期的な情報共有や確認作業が欠かせません。依頼内容を正確に伝えたり、質問に回答したりするためのコミュニケーションコストが発生することを念頭に置いておく必要があります。

失敗しない会計代行サービスの選び方5つのポイント

自社に合った会計の代行サービスを選ぶためには、料金だけでなく、サービス内容やセキュリティ、担当者との相性などを総合的に判断することが肝心です。

依頼したい業務範囲を明確にする

まず、自社がどの業務を、どこまで任せたいのかを整理しましょう。「日々の記帳だけをお願いしたいのか」「給与計算や振込手続きまで任せたいのか」あるいは「経営分析のための資料作成まで支援してほしいのか」といった要望をはっきりさせることが、適切なサービス選びの出発点です。

サービスの対応範囲と専門性を確認する

依頼したい業務範囲が決まったら、それがサービスの対応範囲に含まれているかを確認します。あわせて、自社の業界特有の会計処理に対応できるかどうかも確かめましょう。たとえば、建設業の会計や、収益認識基準など、専門知識が求められるケースがあります。導入事例などを確認し、自社と近い業種の経験が豊富かどうかも判断材料になります。

セキュリティ体制を確認する

会社の経理情報を外部に預ける以上、情報漏えい対策は必ず確認すべき項目です。具体的な対策として、プライバシーマーク(Pマーク)やISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)といった第三者認証を取得しているかは、一つの客観的な指標になります。

また、データの管理方法やオフィスの入退室管理など、詳しいセキュリティポリシーについて質問してみましょう。

コミュニケーションの取りやすさを確認する

業務を円滑に進めるためには、担当者との円滑なコミュニケーションが欠かせません。報告の頻度やタイミング、連絡手段(電話、メール、ビジネスチャットなど)が自社の希望と合っているかを確認します。無料相談などを活用して、担当者の人柄や説明のわかりやすさ、レスポンスの速さなどを体感してみるのもよい方法ではないでしょうか。

複数のサービスを比較検討する

最初から1社に決め打ちするのではなく、2~3社から見積もりを取り、サービス内容や料金、サポート体制を比較検討することをおすすめします。料金の安さだけで選ぶと、「対応範囲が狭かった」「レスポンスが遅い」といった後悔につながることもあります。費用対効果を総合的に見極め、納得できるパートナーを選びましょう。

会計代行の活用で経理業務の最適化を目指す

会計の代行サービスを導入することは、経理業務を外部に委託するという手続き以上の意味を持ちます。それは、ノンコア業務を専門家に任せることで、自社の貴重なリソースを事業成長に直結する活動へ再配分するという経営判断です。

依頼先の選定では、料金だけでなく、自社が求める業務範囲への対応力や、信頼できるセキュリティ体制、円滑なコミュニケーションが可能かといった点を総合的に見極める必要があります。とくに、税理士法に関する正しい知識を持つことは、無用なトラブルを避けるために欠かせません。

自社の現状と将来像に合った会計のアウトソーシングを賢く活用し、経理業務の最適化と、その先の事業の発展を目指してみてはいかがでしょうか。


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