• 作成日 : 2025年6月13日

経理業務の引き継ぎ期間が1ヶ月しかない?スムーズに行う方法を紹介

経理担当者の退職により、経理業務の引き継ぎ期間が1ヶ月しかないケースもあります。限られた期間のなかでは、優先度の高い業務の引き継ぎを重点的に行い、引き継ぎ後に重大な問題が発生しないようにすることがポイントです。1ヶ月の引き継ぎで優先される業務やマニュアル作成の注意点について解説します。

経理業務の引き継ぎが1ヶ月は普通?

経理業務の引き継ぎには、2ヶ月~3ヶ月程度必要といわれています。企業の規模によるものの、一般的に経理は、業務範囲が広いことなどが理由です。

しかし、実際には引き継ぎに十分な余裕を得られないこともあります。経理担当者の個人的な事情などにより、急に退職が決まることもあるためです。民法上は、退職の申し出を退職日の2週間前までに行えば、使用者の承諾がなくても退職が認められます。そのため、現実には引き継ぎが1ヶ月という状況も十分に考えられます。

1ヶ月で引き継ぐべき経理業務の内容

1ヶ月で引き継ぐ経理業務の内容を、日々発生する「日次業務」、毎月発生する「月次業務」、毎年発生する「年次業務」に分けて紹介します。

日次業務

以下は、主な日次業務を優先度の高い順に並べています。

  1. 伝票の起票(会計ソフトの入力)
  2. 現金や小口現金の管理
  3. 売掛金買掛金の管理
  4. 立替経費の精算
  5. 仮払金の管理
  6. 領収書の整理

日々の業務として発生する伝票の起票や現金の管理は優先度の高い項目です。引き継ぎが1ヶ月しかない場合は、他の業務への影響が少ない領収書の整理などは後回しにしてもよいでしょう。

月次業務

主な月次業務には以下のようなものがあります。

  1. 請求書の発行
  2. 公共料金などの各種支払い
  3. 給与計算
  4. 月次決算(月次決算を行っている企業)
  5. 請求額の入金確認
  6. 試算表の作成

請求業務や支払業務など、外部の取引先などとのやり取りに関わる業務は優先度の高い事項です。給与計算も毎月の従業員の給与振り込みに関わるため、重要な業務といえるでしょう。月次決算を取り入れている企業は、経営分析にも影響することから、月次決算の引き継ぎも必須です。

年次業務

以下は、主な年次業務です。

  1. 決算業務
  2. 各種税金の申告
  3. 各種税金の納税
  4. 保険料の納付
  5. 保険料率の改定
  6. 年末調整
  7. 賞与の計算
  8. 事業計画に関わる集計
  9. 予算案の作成

会社の利害関係者などへの報告に関わる決算業務、税金の申告や納付、社会保険料などの納付や改定は、外部にも影響することから優先度の高い事項です。年末調整も従業員の所得税に関わる事項のため、しっかり引き継ぎを行う必要があります。

上記の日次業務、月次業務、年次業務のほか、経理担当者が管理している情報の引き継ぎも必須です。例えば、金融機関や会計ソフトのログイン情報、セキュリティ管理などがあります。

引き継ぎマニュアルを作成する際の注意点

1ヶ月のような短期間で経理業務の引き継ぎをしようとすると、引き継ぎ事項に漏れが生じることがあります。結果として、業務がストップしたり、業務の質が低下したりするおそれがあります。短期間での引き継ぎに備えるためにも、マニュアルを作成しておくことが重要です。マニュアル作成のポイントと注意点を紹介します。

業務の全体像がわかるようにする

マニュアルを見ただけで業務の全体像がわからないと、後任者が経理業務を行き当たりばったりで行うことになります。計画的に進められないため、業務効率が低下してしまうおそれがあるでしょう。業務の漏れも生じる可能性があるため、業務の全体像がわかるように作成しましょう。

優先順位を明確にする

後任者が経理業務に慣れていないと、後回しにしてもよい業務から先に手を付け、重要な業務に遅れが生じる可能性があります。マニュアルを作成する際は、必要な業務を洗い出すだけでなく、優先順位や重要度を明確に記載しておくと親切です。

経理初心者でも理解できるように整理する

会社のリソース次第では、経理経験が十分にない人が後任者になるケースも想定されます。マニュアルは経理未経験者向けに、誰が見ても理解できるように、専用用語には補足を入れて作成するのが無難です。担当者独自のノウハウやコツがあれば、引き継ぎ後も業務が滞りなく行われるよう記載しておきましょう。

経理業務の後任者がいない場合の対処法

小規模企業の場合、経理担当者1人または2人で業務を回しており、退職が決まっていても後任者をすぐに用意できないことがあります。後任者がいないケースでは、経理業務を外部に委託する方法が考えられるでしょう。

委託先として、経理代行業者や記帳代行業者が考えられます。経理代行業者は記帳や給与計算などの経理業務全般をサービスとして提供している事業者です。記帳代行業者は、記帳業務を中心としたサービスを展開しています。従業員の退職にともない経理業務以外の人手が不足するときは、バックオフィス業務を全般的にカバーできるオンラインアシスタントを利用する方法もあります。

顧問先の税理士事務所(会計事務所)で記帳代行を行っているときは、顧問税理士に相談して業務の一部を委託することも可能です。

経理業務の引き継ぎが1ヶ月なら事前準備が重要

経理担当者の急な退職により引き継ぎの時間が十分に取れないこともあります。担当者が辞めるタイミングで適任の後任者が見つかるとは限らないため、マニュアル作成などで準備をしておくことが大切です。経理業務のマニュアルは、後任者が不在で、外部の事業者に委託するケースでも役立ちます。


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