- 作成日 : 2025年5月7日
未払利息の仕訳とは?勘定科目や計上時期をわかりやすく解説
借入金や社債があると、月末や決算日までに発生している利息が、まだ支払われていないというケースがあります。このとき使われるのが「未払利息」という勘定科目です。実際にはまだ支払いをしていなくても、発生している利息は費用として計上し、同時に負債として記帳しておく必要があります。
この記事では、未払利息と支払利息の違いから、発生タイミング、勘定科目の使い分け、よくある仕訳パターンまでをわかりやすく解説していきます。
目次
未払利息とは?
未払利息とは、会計期間中に発生したが、まだ支払われていない利息を、決算などで計上するときに使う負債のことです。
たとえば、3月決算の会社で、3月中に借入利息が発生しているが、実際の支払は4月になる場合、この3月分の利息を「未払利息」として記帳します。
未払利息と支払利息の違い
両者は混同されやすいですが、意味合いと仕訳タイミングが異なります。
項目 | 未払利息 | 支払利息 |
---|---|---|
勘定区分 | 負債(未払金の一種) | 費用(営業外費用) |
タイミング | 利息が発生したが未払いの状態 | 利息が発生したときに計上 |
決算での扱い | 決算整理仕訳で記帳 | 支払時もしくは未払利息計上時に記帳 |
つまり、未払利息は発生主義に基づく費用処理と考えると理解しやすくなります。
未払利息と未払費用の違い
「未払費用」という言葉もありますが、未払利息はその中でも利息に限定されたものです。
なお、「未払費用」の費用科目として通信費や水道光熱費、保険料などが「販売費及び一般管理費」に計上されますが、利息は性質上「営業外費用」として計上されます。
未払利息の仕訳の考え方
未払利息は、利息を実際に支払う前に費用と負債を同時に計上する仕訳です。
特に期末決算などで、当期の利息負担を正確に反映させるために記帳されます。
ここでは、未払利息の仕訳処理に必要な考え方を3つに分けてご紹介します。
未払利息は負債として計上する
未払利息は、まだ支払っていないお金ですから、会社の負債として「未払利息」という勘定科目を使って記録します。
同時に、発生した分の利息費用は「支払利息」という勘定科目で処理します。
例:3月末時点で、当月分の利息5,000円が未払いの場合
借方(費用) | 金額 | 貸方(負債) | 金額 |
---|---|---|---|
支払利息 | 5,000円 | 未払利息 | 5,000円 |
この仕訳は、実際に支払われるまで残ります。翌期に支払ったときには、「未払利息」を消し込む仕訳が必要です。
未払利息の発生タイミング
未払利息を計上するのは、次のようなタイミングです。
- 銀行借入利息や社債利息が定期的に発生しているが、決算日や月末時点でまだ支払っていないとき
たとえば、年に1回しか利息を支払わない契約でも、決算日がその途中であれば、その時点までに発生している分を未払利息として記帳します。
未払利息の勘定科目
未払利息の会計処理で主に使われる勘定科目は次の2つです。
- 支払利息(営業外費用):発生した利息を費用として処理
- 未払利息(負債):支払っていない利息を一時的に負債として処理
これらは、貸借対照表と損益計算書の両方に影響する仕訳になります。特に決算時には、漏れがないよう利息計算を行い、正確に記帳することが求められます。
未払利息の税務処理のポイント
未払利息は会計上だけでなく、法人税や消費税の申告にも影響を与える項目です。
ここでは、税務処理の視点から押さえておきたい2つのポイントをご紹介します。
法人税における未払利息の取扱い
法人税では、決算日時点で支払いが完了していない未払利息も損金算入することができます。
ただし、以下の要件を満たす必要があります。
- 債務の確定:決算日までにその費用に係る債務が成立していること
- 原因事実の発生:決算日までに発生している費用であること
- 金額の合理性:金額を正確に算出することができること
申告書では「別表四」や「別表五(一)」で、未払費用の損金算入の調整をすることがありますので、顧問税理士や会計事務所との確認が大切です。
消費税の扱い(未払利息は非課税)
消費税の申告において、支払利息はそもそも課税取引の対象外(非課税取引)です。
そのため、未払利息を計上しても消費税の申告には影響しません。
また、支払利息は消費税の仕入税額控除に影響しないため、仮払消費税・仮受消費税の金額にも影響しません。
未払利息の仕訳の流れ
未払利息は、発生したタイミングで費用計上することが求められます。
特に決算時には、「発生しているのに支払っていない利息」を正しく記帳することで、損益や負債が正確に反映されます。
ここでは、借入契約(毎月15日払い)を想定して、仕訳の流れを時系列で説明します。
① 月末(利息が発生したが未払い):未払利息を計上
例:3月16日~31日分の利息3,000円が発生、支払いは4月15日予定
借方(費用) | 貸方(負債) | ||
---|---|---|---|
支払利息 | 3,000円 | 未払利息 | 3,000円 |
この仕訳は「決算整理仕訳」としても使われます。
翌月に実際に支払うまで、貸借対照表の負債として残り続けます。
② 翌月(実際の支払い時):未払利息を取り崩し、現金支出を記録
例:4月15日に3月16日~4月15日分の利息を支払った
借方(負債の減少) | 貸方(資産の減少) | ||
---|---|---|---|
未払利息 支払利息 | 3,000円 3,200円 | 普通預金 | 6,200円 |
前月に計上した未払利息を消し込みます。このとき既に前月に「支払利息」を計上しているため「支払利息」は使いません。費用の二重計上を避けるためです。
③ 支払と計上が同月の場合:未払利息を使わず「支払利息」のみで処理
例:3月中に3月分の利息5,000円を支払った場合
借方(費用) | 貸方(資産) | ||
---|---|---|---|
支払利息 | 5,000円 | 普通預金 | 5,000円 |
未払利息を使うのは、発生と支払のタイミングがズレる場合です。
月末払いなど同月中に完結している場合は、通常の費用計上だけで問題ありません。
このように、未払利息の仕訳はシンプルですが、記帳タイミングと勘定科目の使い分けがポイントになります。
未払利息の仕訳の具体例
未払利息は、借入元や契約内容、支払のタイミングによって少しずつ仕訳が異なります。
よくある5パターンを整理し、実務に使いやすい形で解説します。
借入金の利息を期末に未払いとして計上する場合
借入金の契約により毎月末に利息が発生するが、支払は翌月に行われる場合、決算の際には発生主義に基づいて利息を計上する必要があります。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
支払利息 | 10,000円 | 未払利息 | 10,000円 |
このように、利息が発生したタイミングで「支払利息」として費用を計上し、まだ支払っていないため「未払利息」という負債を計上します。未払利息は流動負債として貸借対照表に載ります。
翌期に未払利息を支払った場合の仕訳
先ほどの10,000円を翌月に実際に支払ったときの処理です。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
未払利息 | 10,000円 | 現金 | 10,000円 |
期末に負債として計上した「未払利息」を取り崩して、現金で支払ったとします。支払時には費用は再計上せず、あくまでも負債の決済として処理します。
決算期に発生した利息が複数月にまたがる場合
たとえば、3月決算で、1月1日から3月31日までの3ヶ月分の利息30,000円が、4月分の利息10,000円と合わせて4月末に支払われる契約になっているケースです。この場合、3月末に以下のような仕訳をします。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
支払利息 | 30,000円 | 未払利息 | 30,000円 |
契約による支払タイミングではなく、利息が発生した期間に合わせて会計処理を行います。発生した分だけ適切に計上することで、正しい損益を把握できます。
月末に支払うが銀行処理が翌月になる場合
3月分の利息10,000円を3月31日に引き落とされる予定だったが、3月末が休日であったため、銀行引き落としが4月1日となった場合、決算期には以下のように処理します。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
支払利息 | 10,000円 | 未払利息 | 10,000円 |
4月に銀行からの引き落としが確認されたら、次のような仕訳を行います。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
未払利息 | 10,000円 | 普通預金 | 10,000円 |
このように、支払のタイミングではなく、実際に費用が発生した日付を基準に会計処理を行うのが原則です。
未払利息が発生していても、契約上利息が免除された場合
たとえば、取引先との合意により利息の支払が免除された場合、決算時に未払利息を計上していた場合は取り崩しが必要です。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
未払利息 | 8,000円 | 営業外収益 | 8,000円 |
この仕訳により、未払利息が消え、実際に利息を支払わなかった分を収益として処理します。
社債の未払利息の仕訳
社債を発行している会社では、利息を定期的に支払うことになります。ただし、決算のタイミングによっては、まだ利息を支払っていない場合があります。こうしたときには、社債の利息も「未払利息」として処理する必要があります。
社債の利息は、通常半年ごとや年1回など、あらかじめ決められたスケジュールで支払われます。しかし、利息が発生しているのにまだ支払っていない場合は、発生主義の考え方に基づき、発生した分を計上しなければなりません。
社債利息が未払いのまま決算を迎えた場合の仕訳
たとえば、3月決算の会社が、利払日を4月末に設定している社債を発行していたとします。この場合、3月末までに発生した利息分は、まだ支払っていなくても計上しなければいけません。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
社債利息 | 50,000円 | 未払利息 | 50,000円 |
ここで「社債利息」は費用として処理され、「未払利息」は貸借対照表の負債項目として記載されます。
この仕訳により、実際の支払前に費用を先に認識できます。これが「発生主義」の考え方です。
翌期に社債利息を支払ったときの仕訳
前期末に計上していた未払利息を、実際に支払ったときには次のように処理します。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
未払利息 | 50,000円 | 現金 | 50,000円 |
未払利息を減らす仕訳を行い、支払いを現金などで処理します。この支払時には「社債利息」の再計上は不要です。すでに前期に費用として処理済みだからです。
未払利息の会計処理や仕訳のポイント
未払利息の処理には、いくつかの大切な考え方があります。発生主義に基づく処理や、勘定科目の使い方、税務上の注意点など、正しく理解しておかないと決算でズレが生じることもあります。ここでは、未払利息を処理するうえで押さえておきたいポイントを紹介します。
発生主義で考える
経理処理では、「いつ費用を支払ったか」ではなく、「いつ費用が発生したか」で会計処理を行います。これが発生主義の考え方です。利息についても、まだ支払っていない場合でも、発生した期に費用として計上する必要があります。
たとえば、3月分の利息が4月に支払われる場合でも、3月末には「支払利息」と「未払利息」を仕訳で記録します。これにより、損益計算書や貸借対照表の内容がより正確になります。
勘定科目の使い分け
未払利息の処理では、主に以下のような勘定科目を使用します。
- 支払利息:利息が発生したときに費用として使う
- 未払利息:発生しているが未払いの利息を記録する負債科目
未払利息は、貸借対照表の負債の部に表示され、翌期に支払った時点で消えます。支払利息は、損益計算書の営業外費用に表示されます。
税務とのズレに注意
法人税の申告では注意が必要です。たとえば、利息を未払計上していても、債務確定主義などの要件を満たしていない場合は、損金(法人税の計算で認められる費用)として認められないことがあります。つまり、決算書上は支払利息として処理していても、申告書上では損金不算入として別表で調整が必要となるケースがあります。税理士と連携しながら、仕訳と税務上の処理がズレないようにしておきましょう。
消費税はかからない
利息には消費税はかかりません。そのため、「支払利息」「未払利息」いずれも消費税の課税・非課税の処理は必要ありません。
決算時は未払利息を漏れなく計上する
決算のときに未払利息の計上を忘れてしまうと、実際より利益が大きくなってしまいます。これにより、法人税の金額が増えてしまうこともあるため注意が必要です。借入が複数ある場合は、それぞれの契約ごとに利率や支払条件を確認し、利息を正しく計算しましょう。
未払利息の仕訳と処理をスムーズに進めよう
未払利息は、実際にお金を払っていなくても、利息が発生した時点で会計上の処理が必要になります。支払利息と未払利息の関係、仕訳のタイミング、税務上の扱いなど、ややこしく感じるかもしれませんが、パターンをつかめば落ち着いて対応できます。
借入や社債など、利息が関係する取引がある企業では、決算のときに漏れなく利息を計上することが大切です。複数の借入や利払スケジュールがある場合は、一覧にまとめて確認しておくと安心です。翌期に実際に利息を支払ったタイミングで未払利息を漏れなく消し込む際にも便利です。
未払利息をしっかり会計処理できれば、会社の利益や費用もきちんと把握でき、決算や税務対応もスムーズになります。毎年の処理を積み重ねて、迷わず仕訳ができるようになっていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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