• 更新日 : 2020年6月10日

債務確定主義とは

債務確定主義とは、取引において何らかの費用の発生が確定した時点で計上を行うという会計上の原理である。これは権利確定主義と対をなす概念であり、どちらも当該取引事象によって法律上の裏付けによる権利・債務が確定した時点をもって計上を行うという共通点がある。通常、所得税などの税務における収支計上には債務確定主義および権利確定主義が採用されている。

債務確定主義の考え方

債務確定主義は「債務が法律的裏付けによって確定した時点に計上を行う」という考え方である。たとえば特定の取引先と「必要に応じて随時仕入を行い、その代金は月末にまとめて支払う」という取引を行っている場合、現金の移動が発生するのは月末日であるが、実際の負債は仕入の都度発生している。こういう場合、実際の仕入品は仕入時に受け取っているため法的な債務が発生しており、帳簿上には「借方・仕入/貸方・買掛金」といった仕訳がその都度なされなくてはならない。会計上の債務とは後日に金銭の支払い義務を有する費用とみなされ、債務確定主義ではこのように仕入という取引事象によって債務が確定すると認識する。

発生主義と債務確定主義の違い

債務確定主義を説明するため、よく似た会計上の概念である発生主義と債務確定主義との対比を行う。
発生主義とは、現金の収支とは関係なく、収益・費用の発生を経済的事実に基づいて計上するという考え方であり、この時点では債務確定主義と共通点が多い。ただし発生主義は経済的事実に基づく計上を行うため、債務確定主義のように法律上の裏付けを必ずしも必要としない。よって、発生主義では引当金のような費用・支出の見積額の計上が可能となる。
ただし、発生主義における「経済的事実の発生」がいつの時点であるかは業法、業界やその会社の慣習によって左右されるため主観性が含まれ、収益の認識には不適切であるという指摘もある。
このため税務では発生主義よりも債務確定主義を重視するが、引当金における費用・支出のリスク評価や不動産などの資産評価額、減価償却費など支出額が事前に確定できないものに対しては見積による計上以外の方法がない。そのため、基本通達や特例によって発生主義の一部が税務実務に取り入れられている。

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