- 作成日 : 2025年2月5日
10年落ちの中古車を減価償却するには?計算方法や耐用年数を解説
中古車を減価償却する場合には、新規登録をした時期から月数を確認して耐用年数を求めることが重要です。また、中古車の価格によっても対応が異なるため、注意が必要です。
本記事では、10年落ちの中古車を減価償却する方法や耐用年数を計算する方法、減価償却時の注意点について解説します。
目次
中古車の減価償却とは
減価償却とは、事業用資産(減価償却資産)の購入代金を複数年に分割して費用化していく会計上の処理のことです。そのため、法人・個人事業主などが事業で使う車を購入したときには、減価償却が必要になります。
車のような事業用資産は、複数年使用し、そこから収益を生んでいくものです。購入代金も実態に即して、複数年に分けて費用計上していきます。
全額を購入年度に経費とせずに、費用を使用可能年数に基づいて分割していくことで、毎年の税負担を平準化できるのが特徴です。
分割できる年数を耐用年数と呼び、耐用年数は長持ちするものほど長い傾向にあり、新車のほうが中古車より耐用年数が長くなっています。
10年落ちの中古車の減価償却費を計算する方法
10年落ちの中古車の減価償却費を計算する方法は、次の4つです。
- 定額法
- 定率法
- リース期間定額法
- 少額減価償却資産の特例
それぞれ詳しく見ていきましょう。
定額法
定額法は、毎年一定額を均等に減価償却していく方法です。定額法のメリットは、計算がしやすく、次項で解説する定率法に比べて初年度の利益を増やしやすい点などがあります。
<定額法の計算式>
定率法
定率法では、毎年一定率を減価償却していく方法です。購入から早い年度ほど減価償却費が大きく節税効果が大きいため、定額法よりも定率法のほうがよく用いられる傾向にあります。
<定率法の計算式>
リース期間定額法
リース期間定額法とは、リース料金を支払完了後に車両を自分の所有物にできないタイプのリースを利用した場合に適用される方法です。
ファイナンス・リースは、新車以外にも中古車でも広く行われています。リースは本来、他人の所有物を賃貸している状態のため、減価償却は問題になりません。しかし、ファイナンス・リースは実質的に分割払購入と同じであるため、所定の要件をみたすことで減価償却の処理が必要になります。
<リース期間定額法の計算式>
少額減価償却資産の特例
少額減価償却資産の特例とは青色申告をしている中小事業者を対象にしたもので、1台30万円未満の資産(年間合計300万円まで)であれば、全額費用化できる特例のことです。
そのため、1台30万円未満の中古車であれば、少額減価償却資産の特例を活用して一括で全額を費用化できます。この場合、耐用年数は関係しません。
ここでいう中小事業者とは、次の要件に該当する事業者です。
10年落ちの中古車の耐用年数を計算する方法
耐用年数の計算式は、次のとおりです。
<計算式>
新車の耐用年数(6年)と経過年数を比べて、どちらが大きな数字であるかで計算方法が異なります。
■ 新車の耐用年数のほうが長い
※1年未満の端数は切り捨て、計算結果が2年以内の場合は、耐用年数は2年になります
■ 新車の耐用年数のほうが短い
※1年未満の端数は切り捨て、計算結果が2年以内になる場合は、耐用年数は2年になります
経過年数 > 耐用年数となるため、計算式は次のようになります。
計算結果が2年以内に収まっている場合は、耐用年数は2年のため、10年落ちの中古車の耐用年数は2年になります。
10年落ちの中古車を減価償却するときの注意点
10年落ちの中古車を減価償却するときの注意点は、次の3つです。
- 取得時期によって減価償却費が異なる
- 車の改造や修理によって耐用年数が長くなる場合がある
- 個人事業主は経費計上で家事按分が必要となる
それぞれの注意点について、見ていきましょう。
取得時期によって減価償却費が異なる
取得時期によって減価償却費が異なるため、注意しましょう。減価償却の計算は月割りで行われます。これは、定額法でも定率法でも、いずれの場合でも変わりません。
たとえば、3月決算の法人の場合を考えてみましょう。中古車を期首の4月に購入して利用し始めた場合、1年分を減価償却費に計上可能です。しかし、3月に購入した場合は1ヶ月分しか計上できません。次年度に残った分を計上します。
このように、取得タイミングによって減価償却費が異なる点はあらかじめ理解しておきましょう。
車の改造や修理によって耐用年数が長くなる場合がある
中古車を改造・修理すると、耐用年数が長くなる場合があります。以下の両方を満たす場合は、新車と同様の扱いになって中古車の耐用年数を適用できません。その場合は、新車の法定耐用年数を適用することになります。
- 改造や改良が中古車の機能を高めて耐用年数を伸ばすものである
- 支出金額がその中古車と同じものを新車で購入する場合の金額の50%を超える
個人事業主は経費計上で家事按分が必要となる
個人事業主の方が中古車を購入して自家用と事業用を兼ねて使用している場合には、経費計上で家事按分が必要になります。事業用に使った割合を示せれば、それに応じた減価償却費等の経費を計上可能です。
その際、根拠となる資料を残しておくようにしましょう。たとえば、車の使用日や目的地、走行距離、同行者などの記録です。
10年落ちの中古車を買う際は減価償却について理解を深めておこう
10年落ちの中古車の減価償却費を計算する方法には、定額法や定率法など4種類があります。それぞれ計算方法が異なるため、しっかりと理解を深めておくことが重要です。また、1台30万円未満の場合は、少額減価償却資産の特例を活用すれば、一括で費用計上できます。
減価償却するときの注意点としては、取得時期によって減価償却費が異なることや、車を改造や修理した場合には新車と同じ耐用年数が適用される点などが挙げられます。
減価償却についての知識をつけて、正しく処理できるようになりましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
保険金の圧縮記帳の仕方とは?圧縮するメリット・デメリットや注意すべきポイントを解説
車両事故や機械の故障により保険金を受け取った際は、益金となるため税負担の増加に注意が必要です。税負担が増えると、資金繰りが悪化して経営に支障をおよぼす可能性があります。 保険金を受け取った年度に検討したいのが圧縮記帳です。圧縮記帳をすれば、…
詳しくみる新リース会計基準がレンタルやサブスクリプションに及ぼす影響と留意点
2027年4月から導入される「新リース会計基準」により、多くの取引がリースに含まれることが想定されます。 リース取引はオンバランス化が原則とされるため、各企業はより正確な会計処理が求められます。 ここでは、新基準におけるリースの識別方法や、…
詳しくみる社用車を減価償却するには?耐用年数や計算方法、中古車の場合も解説
社用車の取得価額はその事業年度で一括費用処理するのではなく、耐用年数にしたがって減価償却の処理を行わなければなりません。耐用年数は車の大きさや種類によって異なり、新車と中古車により異なりでも違います。 本記事では、社用車を購入したときの減価…
詳しくみるファイナンス・リースとオペレーティング・リースの違いをわかりやすく解説!
ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの違いがよくわからず、どちらを利用するべきなのか悩んでいる方も多いでしょう。 どちらもリース契約ではありますが、それぞれに特徴があります。本記事ではそれぞれのメリットやデメリット、会計基準での判…
詳しくみる機械設備や装置の減価償却を解説!器具や備品とは何が異なる?
機械設備や装置を減価償却するにあたって、器具や備品との違いがよく分からないという人もいるかもしれません。この記事では、機械装置と器具備品の違い、法定耐用年数の調べ方、総合償却の考え方など、機械装置の減価償却で必要な基礎知識をまとめました。機…
詳しくみる先行取得した場合でも圧縮記帳は可能?仕訳方法や具体例、注意点を解説
圧縮記帳の適用のひとつとして、譲渡資産の代わりに取得した資産に対して、その取得価額の一部を損金算入できる税務上の特例があります。 多くのケースでは「資産を売却した後に買換資産を取得する」流れを想定していますが、事前に買換資産を取得していた(…
詳しくみる