- 更新日 : 2024年8月8日
支払利息とはどんな勘定科目?仕訳まで解説
支払利息とは、ローンや借入金の返済で利子を支払う際の勘定科目です。会計上は経費にカウントされるため、所得税や法人税の節税につながります。もとの借入金は負債に該当し、会計上は支払利息と別個に考えるのが重要なポイントです。
借入金の返済期限が1年以内か1年を超えるかによって、仕訳が異なることに注意しましょう。今回は支払利息の種類や具体的な勘定科目、仕訳例について解説します。
勘定科目「支払利息」とは
支払利息は他社や金融機関からの借入金に対する利息です。
借入金の利息以外には、融資を受ける際の信用保証料、税金を延納したときの利子、手形を更改したときの利息、ファクタリング(売掛債権の回収を第三者に委託して現金化する行為)の手数料が挙げられます。
支払利息は、損益計算書に記載する場合、営業外費用のカテゴリーに属します。営業外費用とは、本業以外で発生した費用を示す区分です。
借入金を分割で返済する場合には、支払利息は借入金の返済方式によって計算方法が異なります。元金均等返済方法では、毎回の元金の返済額が均等なため、利息の計算はシンプルに「借入金残高×金利」で算出できます。
元利均等返済方式は、毎回の返済額(元金+利息)を均等にする方式です。元金残高が多いほど利息の額も多くなりますが、毎回の返済額を均等にするために計算式は複雑になります。返済当初の返済額は元金均等返済方式よりも抑えられますが、返済総額は多くなるでしょう。
利子を記帳する勘定科目には、手形の割引料も対象となる「利子割引料」も存在します。支払利息は原則負担した利子のみが対象です。両者に大きな違いはなく、手形の割引を行っていなければ同視しても問題ないでしょう。
支払利息の仕訳例
支払利息の仕訳では元の借入金が1年以内に返済されるものか、1年を超えるものかで仕訳内容が異なることに注意が必要です。
1年以内の場合は勘定科目「短期借入金」を使用し、1年を超える場合は勘定科目「長期借入金」を用います。
仕訳例)銀行からの200万円のローンが返済期限を迎え、10%の利息とともに現金で一括納付した場合
借方 | 貸方 | 摘要 | |||
---|---|---|---|---|---|
短期借入金 支払利息 | 2,000,000円 200,000円 | 現金 | 2,220,000円 | 〇〇銀行借入金返済 |
仕訳例)借入期間3年で銀行から借り入れていた300万円のローンを利息30万円とともに返済した
借方 | 貸方 | 摘要 | |||
---|---|---|---|---|---|
長期借入金 支払利息 | 3,000,000円 300,000円 | 現金 | 3,300,000円 | 〇〇銀行借入金返済 |
短期借入金と長期借入金を別々に記帳している場合で、数年にわたって分割で返済する場合に、翌年に返済期限が到来した金額を長期借入金から短期借入金へと振り替える仕訳処理も必要です。
企業会計では、収益や費用の発生したタイミングで会計処理を行う発生主義が基本です。しかし来期以降の事業資金を借り入れ、支払利息を当期に支払う場合もゼロではありません。翌年度以降の分を前払いする場合、当期の決算時に「前払費用」や「前払利息」などの勘定科目で費用の繰延べを行う必要があります。
逆に借入金の支払が来期以降になる場合、当期分の利息を来期以降に支払うこともあり得ます。当期の決算時に「未払費用」や「未払利息」などの勘定科目で費用の見越しの会計処理が必要です。
支払利息と借入金の違い
他社や金融機関から融資を受ける場合の元本が借入金、利子が支払利息という関係があります。借入金は経費にできませんが、支払利息は経費に含められるというのが大きな違いです。
元本の借入金は売上を生み出していないため経費として扱えません。支払利息は借りたお金ではないため経費に算入できます。借入金は貸借対照表の負債の部に記載し、支払利息は損益計算書で費用として扱われます。
借入金を返済すると負債は減りますが、支払利息を支払っても負債の金額に影響はありません。その代わり利益を減らす効果があるため、利息を支払うと所得税や法人税の節税につながります。
支払利息と借入金は同様の原因から生じますが、会計処理上は別個で考えるため注意してください。
支払利息は借入金の返済時に使用する勘定科目
支払利息は金融機関や他社から融資を受けた借入金の利息の支払時に使用する勘定科目です。借入金の利息以外には、たとえば金融機関から融資を受ける際に保証協会に対して支払う信用保証料、支払期限が迫った手形を更改したときの手数料なども該当します。
借入金の返済期限が1年以内か1年を超えるかで仕訳内容が異なること、支払利息は経費に算入できる反面、借入金の返済額は経費にはできないことに注意が必要です。また翌年度以降の利息を前払いしたときや、利息の支払いを次期以降に延ばす場合、支払利息の振替処理を行わなければなりません。
よくある質問
支払利息とは?
融資やローンなどの借入金に対する利息を記帳する勘定科目です。詳しくはこちらをご覧ください。
支払利息の仕訳のポイントは?
元の借入金の返済時に仕訳が必要になることです。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
勘定科目「衛生費」とは?使い方や仕訳例
職場における健康増進や病気の予防などへの関心は高まりをみせる昨今ですが、ここでは「衛生費」に関する支出についてご紹介します。 これらの経費をどのように他の勘定科目と区別し、仕訳をするかを解説します。 衛生費とは? 衛生費とは健康増進、疾病予…
詳しくみる売上原価対立法とは?三分法や分記法との違いから仕訳例までわかりやすく解説!
商品売買時に仕訳する際の記帳処理方法には、「売上原価対立法」「三分法」「分記法」などがあります。売上原価対立法は、商品売買を「商品」「売上」「売上原価」の3つの勘定科目で仕訳する点が特徴です。 どの処理方法を用いるかによって、記帳のスピード…
詳しくみるスマホアプリを購入した際の勘定科目について解説
スマホアプリを購入したときは、消耗品費や通信費、ソフトウェア、一括償却資産などの勘定科目で仕訳を計上することが一般的です。それぞれの勘定科目をどのように使い分けるのか、また、具体的な会計処理方法と仕訳例を挙げて解説します。少額減価償却資産の…
詳しくみる年会費や入会費を払った時の勘定科目と仕訳の解説
年会費や入会費を払った時によく使う勘定科目として「諸会費」があります。しかし、諸会費と同じような意味合いのほかの勘定科目もあり、どの勘定科目を使えば良いか、迷うこともあります。そこで、ここでは諸会費とそれ以外の勘定科目や消費税の処理などを詳…
詳しくみる固定資産台帳とは?作成方法や記入例、見方を項目別に解説
固定資産を購入した場合に取得時の状況やその後の減価償却の状況を記録する固定資産台帳について、その役割や作り方、記入方法を解説します。 固定資産台帳とは 建物や車両などの固定資産を取得した際は、その取得のための費用をその年度の費用とするのでは…
詳しくみる雑収入とは?雑所得や事業所得との違い、仕訳例をわかりやすく解説
個人でも法人でも、よく使う勘定科目に「雑収入」があります。この雑収入とはどのようなときに使う勘定科目なのでしょうか。また、個人の場合は似たようなものに「雑所得」があり、混同されることもあります。 そこで、ここでは雑収入の概要や他の所得との違…
詳しくみる