- 更新日 : 2024年8月8日
給付金の仕訳に使う勘定科目まとめ
一定の要件を満たした場合に支給される給付金を事業に関して受け取った場合、収益に計上します。勘定科目は基本的に「雑収入」を使いますが、内容がわかるようにしたいときは「給付金収入」などの勘定科目で計上することも可能です。
本記事では給付金の仕訳と勘定科目について、課税される場合と非課税の場合に分けてご紹介します。
給付金とは
給付金とは、一定の要件を満たした場合に国や自治体、民間会社から支給されるお金のことです。法令に基づいて支給されるもので、それぞれにルールが設けられています。
給付金には、主に次のようなものが挙げられます。
- 住居確保給付金
- 特例給付金
- 入院給付金
- 先進医療給付金
給付金は原則として返済の必要がなく、基本的に使用用途は定められていません。
補助金、助成金との違い
国や地方公共団体、もしくは民間の団体から受け取れるお金は、給付金のほかに補助金・助成金があります。どれも受給するには申請が必要という点では同じです。
このうち補助金は企業の事業拡大や新規事業の創設など、さまざまな目標を支援するために支給されるものです。1ヶ月程度の公募期間を設けているのが一般的で、期間内に所定の書類を揃えて申請します。採択件数や金額が定められている場合が多く、申請が多い場合は審査で落ちる場合もあります。
助成金は、主に雇用環境の改善のために設けられた支援金です。所定の様式に従って申請を行うことが必要で、要件を満たしている場合は原則として給付されます。
ただし、これら補助金や助成金は、必ずしも明確に区別されていません。助成金という名称でも、補助金の性質が強いものがあります。それぞれの制度の内容を理解して利用することが大切です。
一方で給付金は補助金や助成金と異なり、使用目的が限定されていません。幅広い用途に使えるのが特徴です。申請が必要ですが審査はなく、要件を満たしていれば受け取れます。
給付金の仕訳と勘定科目(課税対象の場合)
給付金を受け取った場合の仕訳では、「雑収入」の勘定科目を使うのが一般的です。重要性が高く、あとですぐにわかるようにしたい場合は「給付金収入」などの勘定科目で計上します。
計上する日付は、給付金の受給が確定して金額が決定したときです。支給の決定通知書が送付されるため、そこに記載されている「決定があった日」に計上します。
国や自治体から受給した給付金は事業収入とみなされ、所得税や法人税の課税対象になります。事業として対価を得たものではないため、消費税は課税されません。
特例給付金として1万円が支給決定され、普通預金口座に入金された事例の仕訳をみてみましょう。
(決定通知書が届いたときの仕訳)
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 未収入金 | 10,000円 | 雑収入 | 10,000円 | 特例給付金の支給決定 |
(入金されたときの仕訳)
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 普通預金 | 10,000円 | 未収入金 | 10,000円 | 特例給付金の入金 |
給付金の仕訳と勘定科目(非課税の場合)
一般的に、給付金は課税対象です。法人であれば法人税が、個人事業主であれば所得税が課税されます。しかし政策的な理由などから課税が望ましくないものは、例外的に非課税として扱われる場合があり、法律で明記されています。
例えば、新型コロナウイルス感染症による施策として、国民1人あたり10万円を支給した特別定額給付金は、所得税が非課税とされました。
非課税の給付金を受け取った場合の処理は、法人と個人事業主とで異なります。
法人が受け取る給付金で非課税になるものは多くありませんが、非課税の給付金を受け取った場合は課税と同じく「雑収入」で処理します。
非課税の給付金10万円が支給されたときの仕訳例は、以下のとおりです。
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 普通預金 | 100,000円 | 雑収入 | 100,000円 | 給付金 |
その後決算で法人税の計算をする際、収益から減算する(益金不算入)処理を行います。
個人事業主の場合、事業主個人の口座に入金されたのであれば会計上の処理は必要ありません。
給付金が事業用の口座に入金された場合は、「事業主借」で処理します。
事業主の入院給付金10万円が事業専用の口座に入金された場合の仕訳例は、以下のとおりです。
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 普通預金 | 100,000円 | 事業主借 | 100,000円 | 入院給付金 |
給付金の仕訳は課税か非課税かで異なる
給付金は一定の要件を満たせば受け取れるお金で、返却の必要はありません。補助金や助成金のように用途が定められていないのが特徴です。
給付金を受け取ったら雑収入もしくは給付金収入の勘定科目で仕訳しますが、課税か非課税かで会計上の処理は異なります。
給付金を受け取ったときに正しく処理できるよう、仕訳例を確認しておきましょう。
よくある質問
給付金とは?
一定の要件を満たした場合、国や地方公共団体などから支給されるお金のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
給付金の仕訳のポイントは?
課税対象の場合、支給が決定した時点で未収金で仕訳し、振込みの時点で入金の処理をします。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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