- 更新日 : 2024年8月8日
PCR検査費用を経費計上するなら?勘定科目や仕訳の具体例を紹介
企業の経理担当者の中には、PCR検査にかかった費用を経費計上する際の勘定科目を知りたいと考えている方もいるでしょう。
本記事では、PCR検査の勘定科目や仕訳例について解説していきます。計上先を福利厚生費と給与(役員報酬)に区分する基準についても解説しているため、ぜひ参考にしてください。
目次
PCR検査費用を経費計上する際に使える主な勘定科目
PCR検査費用を経費計上する場合は、以下のような勘定科目を使用して仕訳を行います。
- 福利厚生費
- 給与
- 役員報酬
業務上必要と認められるPCR検査費用は「福利厚生費」として経費計上が認められています。会社の方針で全従業員を対象とする場合だけでなく、営業部門や管理職などに対象を限定した場合でも、合理的な基準で業務上必要であると判断できるなら、福利厚生費に含める対象とされます。
なお、従業員や役員が会社からの指示がなく、自己の判断でPCR検査を受けた際の費用を返還する必要がない場合は、従業員に対する給与または役員に対する報酬として所得税の課税対象とされます。
PCR検査費用の仕訳例
ここからはPCR検査費用の仕訳例を解説していきます。勘定科目ごとに仕訳例を解説しているため、該当する箇所を参考にしてください。
福利厚生費
業務上必要であると合理的に判断される場合のPCR検査費用は、福利厚生費として経費に計上することができます。
仕訳例は以下のとおりです。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
福利厚生費 | 20,000 | 現預金 | 20,000 |
福利厚生費の勘定科目については、別の記事で詳しく解説しています。
給与
社員が行ったPCR検査が業務上必要でないと判断される場合の検査費用は、福利厚生費ではなく給与として経費計上することになります。
仕訳例は以下のとおりです。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
給与 | 20,000 | 現預金 | 20,000 |
役員報酬
役員が行ったPCR検査費用が業務上必要でないと判断される場合の検査費用も、福利厚生費ではなく役員報酬として経費計上することになります。
仕訳例は以下のとおりです。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
役員報酬 | 20,000 | 現預金 | 20,000 |
役員報酬の勘定科目については、別の記事で詳しく解説しています。
PCR検査費用を経費計上する際の注意点
PCR検査の費用を経費計上する際は、以下の点に注意が必要です。
- 検査が業務上必要か
- 公平性が保たれているか
- 検査費用が相場とかけ離れていないか
検査が業務上必要か
PCR検査にかかった支出を費用計上するためには、検査が業務上必要であったことが要件とされます。そもそも経費とは、業務を行うために要した費用であることを証明する必要があるからです。
- 従業員の健康状態を確認しなければ出社させることができない
- 取引先の関係者に新型コロナウイルスをうつしてしまうかもしれない
- お客さまを安心させる必要がある
このような理由がある場合は、検査の必要性が認められるでしょう。
公平性が保たれているか
PCR検査費用を「福利厚生費」として計上するためには、業務上PCR検査が必要である上で、従業員に対し公平性が保たれている必要があります。公平性は必ずしも全従業員が対象となるわけではなく、会社が定めた合理的なルールに基づくことが求められます。
外出先で顧客と直接会う必要がある営業部門の従業員と役員のみ検査の必要があり、事務部門は必要なしと判断する企業があるとしましょう。このようなケースにおいては、営業部門全員が対象となる公平性を保ちつつ、事務部門を対象外とする合理的な理由があるため、検査費用を福利厚生費に計上しても問題ないと考えられます。
しかし、特定の営業部門の中でも特定の人のみが対象とされる場合には、公平性の観点から給与とされ、所得税の課税対象とされるおそれが考えられるでしょう。
検査費用が相場とかけ離れていないか
相場からかけ離れたPCR検査の費用は、たとえ業務上必要であっても経費として認められない場合があります。支出を経費として計上するためには、社会通念上妥当な金額であることが要件とされているからです。
しかし、急きょ大量の検査キットが必要となる場合や検査結果を急ぐ場合は、通常より高い検査費用が請求されるかもしれません。その場合は業務上高額な検査費用を支払わざるを得ない事情があったことを証明すれば、経費として認められる可能性もあります。
なお、現在のPCR検査費用の相場は2〜3万円とされています。
PCR検査の費用は福利厚生費として計上できる
企業が負担するPCR検査費用は、業務上必要かつ従業員に対し公平性が保たれていれば、福利厚生費として計上することが認められています。給与や役員報酬に含めてしまうと、所得税だけでなく社会保険料や住民税にも影響が出ますので、従業員や役員の負担にならないような検査の基準を設けるとよいでしょう。
どの企業でも感染症対策を継続していますが、いつ感染者が出てもおかしくない状況が続いています。新型コロナウイルス感染症の終息はまだ見えないため、検査費用や感染症対策にかかる費用について、情報収集を進めておくのがよいでしょう。
よくある質問
PCR検査費用を経費計上する際の勘定科目は何ですか?
「福利厚生費」または「給与」などの勘定科目を使用して、経費計上を行います。業務上PCR検査の必要がある場合は福利厚生費、合理的な理由なく一部の従業員のみを対象とした場合は給与を用いるといいでしょう。詳しくはこちらをご覧ください。
PCR検査費用を経費計上する際の注意点はありますか?
業務上必要であることが要件とされるほか、検査対象となる従業員・役員の選定に合理的かつ公平な基準があることが必要です。また検査費用が相場より高い場合は、特別な事情がなければ経費として認められない場合があるため注意が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
損益計算書で使われる勘定科目まとめ
損益計算書は会社における年間の収益や費用を明確にし、損益を可視化するための財務諸表です。損益計算書では勘定科目ごとに計上されているため、お金の流れを客観的に把握できます。そこで本記事では、損益計算書のおさらいや使われる勘定科目を一覧にして紹…
詳しくみる出張費とは?相場や旅費交通費との違いを詳しく解説
経理担当者にとって出張費の精算業務は、負担の大きい業務の1つといえるでしょう。申請内容にミスがあり、確認するべき経費が多いと、時間や手間を取られるためです。 また、出張手当と旅費交通費のそれぞれを会計処理する必要があり、出張内容によっては非…
詳しくみる受取手数料とはどんな勘定科目?仕訳まで解説
受取手数料は、事業者が本来の業務外で取引相手などから受け取った手数料を示す勘定科目です。手数料による収入が主な事業の場合は、受取手数料の勘定科目を使用しない点に注意が必要です。この記事では、受取手数料の性質と仕訳例を解説します。 受取手数料…
詳しくみる為替換算調整勘定とは?例から解説
為替換算調整勘定は為替差損益と似ているようで、実は違う勘定科目です。 この記事では、連結会計や外貨建会計基準の基本的な部分を中心に、為替換算調整勘定の基本的な内容や具体例、税効果について説明してきます。 為替換算調整勘定とは 為替換算調整勘…
詳しくみる自賠責保険の勘定科目は?自動車保険の仕訳方法を解説
自動車を所有する場合、自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)に加入しなければなりません。また、もしもの事故に備えて多くの方は任意保険にも加入しています。事業に車を使用している場合、これらの保険料は経費として計上することが可能です。 今回は自動…
詳しくみる勘定科目『未着品』とは?仕訳から解説
未着品とは手許に届いてない商品を処理するための勘定科目です。手許にある商品と区別するために使用され、主に未着品販売において貨物代表証券を取得した際の商品の所有権が発生したときに未着品として認められます。 商品が現在は手許にない段階であっても…
詳しくみる