- 更新日 : 2024年8月8日
初穂料の勘定科目は?玉串料や祈禱料との違いも解説
法人が神社仏閣等に初穂料を支払った場合、寄附金あるいは雑費の勘定科目で経費計上できます。しかし、個人事業主は経費に計上できないとする判例があり、個人事業主が初穂料を支払った場合は事業主貸で仕訳しなければなりません。
本記事では初穂料の勘定科目や仕訳について説明し、消費税の取り扱いについても紹介します。
目次
初穂料の勘定科目
初穂料は神社仏閣等にお参りし、祈祷への謝礼として支払うお金です。仕訳をするときの勘定科目は、法人と個人事業主で異なります。
ここでは、初穂料の勘定科目について、法人と個人事業主に分けて紹介します。
初穂料とは
初穂料とは、神社等の宗教法人が公益事業として行う祈祷に対する謝礼です。お祝いや厄払い、地鎮祭、棟上げ、葬儀などで祭祀祈祷のお祓いをしてもらったときに支払います。
初穂料という言葉の由来は、文字からもわかるように稲穂と関係があります。古い時代には、豊作を祈ってその年の最初に収穫したお米を神社に奉納する風習がありました。このお米が「初穂」です。
初穂はもともとその年の最初に収穫したお米という意味でしたが、現代では意味が変わり、「初穂料」としてお金を捧げるようになったのです。
法人の場合の勘定科目
法人が神社仏閣等に初穂料を支払った場合、「神社の祭礼などの寄贈金」として、「寄附金」の勘定科目で経費計上するのが一般的です。少額の場合は「雑費」に計上することもできます。
寄附金として計上する場合は注意しなければなりません。国や地方公共団体への寄附金は全額経費に計上できますが、その他の寄附金は金額に制限があるためです。神社など宗教法人への支払いもその他の寄附金となり、限度額は会社の資本金や所得により異なります。
経費計上の限度額を求める計算式は、以下の通りです。
例えば、資本金が1,000万円で所得が1,500万円の法人では、1年決算で経費に計上できる初穂料の限度額は10万円です。
個人事業主の場合の勘定科目
法人が初穂料を支払った場合は経費にできますが、個人事業主が初穂料を支払っても経費計上はできないとされています。
個人事業主が経費にできないことについて法律に定めはありませんが、個人事業主は初穂料を経費計上できないというのが複数の判例における見解です。
そのため、個人事業主が初穂料を支払った場合は事業に無関係な支出となり、仕訳は「事業主貸」の勘定科目を使うことになります。
初穂料と玉串料や祈禱料の違い
神社仏閣等に支払う謝礼には、初穂料のほかに玉串料や祈祷料があります。玉串料は祈祷の際に神様に捧げる謝礼であり、祈祷料は神様に対してではなく御祈願をしてくれた神職に対する謝礼です。そのため、祈祷料以外に、神様に対する何らかのお供え物をするのが一般的です。
初穂料と玉串料、祈祷料の違いについて見ていきましょう。
玉串料と初穂料の違い
初穂料も玉串料も祈祷に対する謝礼ですが、初穂料は基本的に婚礼やお宮参りなどの慶事に使うものです。弔事に支払う場合は「初穂料」という言葉を使いません。
玉串料の玉串とは榊の枝のことで、神道の神事で参拝者や神職が神前に捧げるものです。この玉串に代えてお金をお供えすることを「玉串料」とするようになったのです。
玉串料は慶事だけでなく、弔事にも使うことができます。
祈禱料と初穂料の違い
初穂料はお供えするべきお米の代わりであり、神様への謝礼となります。玉串料も神様に捧げる玉串の代わりで、初穂料と同じく神様に捧げる謝礼です。
一方、祈祷料は祈祷をしてくれた神職への謝礼であり、初穂料とは異なります。
初穂料の仕訳
初穂料の支出を仕訳する際は、法人と個人事業主で勘定科目が異なります。法人は初穂料を経費計上できるため、「寄附金」もしくは「雑費」の勘定科目を使います。一方、個人事業主は経費にできず、「事業主貸」で仕訳します。
ここでは、初穂料の仕訳例を紹介しましょう。
法人の場合の仕訳
法人は「神社の祭礼などの寄贈金」を寄附金として経費に計上できます。
A社が神社に初穂料として5万円を支払った場合、仕訳例は以下の通りです。
個人の場合の仕訳
先述したように、個人事業主は初穂料を経費計上できない法律上の根拠はありません。しかし、判例上は否定されています。仮に経費に計上して確定申告の際に税務署から指摘された場合、経費として認められない可能性があるでしょう。
基本的には経費に計上せず、事業主貸として処理します。
個人事業主のBが神社に初穂料として3万円を支払った場合、仕訳例は以下の通りです。
初穂料の消費税の取り扱い
初穂料は「神社の祭礼などの寄贈金」として寄附金となりますが、寄附金は資産譲渡の対価や役務提供の対価でないため、消費税の課税対象になりません。
ここでは、初穂料の消費税の取り扱いについて説明します。
神社の祭礼などの寄贈金は課税対象外
初穂料は「神社の祭礼などの寄贈金」として寄附金となりますが、寄附金は資産譲渡の対価や役務提供の対価でないため、消費税の課税対象になりません。
一般的に寄附金や拠出金、見舞金と呼ばれるものは寄附金に該当しますが、このような名義の支出でも交際費等、広告宣伝費、福利厚生費にあたる場合は寄附金から除外します。どちらにあたるかの判断は、それぞれの実態を検討して判断しなければなりません。
ただし、「神社の祭礼などの寄贈金」は事業に直接関係がないため、原則として寄附金になります。
したがって、初穂料をはじめ玉串料やお祓い料、地鎮祭、車のお祓いなどは寄附金として消費税の対象外です。
初穂料の勘定科目は法人と個人事業主で異なる
初穂料は神社仏閣等に、神様への謝礼として支払うお金のことです。法人では寄附金の勘定科目で経費に計上できますが、個人事業主は基本的に経費計上できず、事業主貸で処理します。寄附金は消費税の課税対象にならず、初穂料にも消費税はかかりません。
初穂料の勘定科目を理解し、正しく仕訳しましょう。
よくある質問
初穂料の勘定科目は何ですか?
法人の場合は寄付金もしくは雑費として経費計上し、個人事業主の場合は事業主貸として処理するのが一般的です。詳しくはこちらをご覧ください。
玉串料と初穂料の違いは何ですか?
玉串料は神様への捧げ物として支払うお金のことで、慶事・弔事どちらでも使えます。これに対し、初穂料は慶事のみに使うものです。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
出納簿ってどんなもの?帳簿の役割と書き方まとめ
出納簿とは事業活動で発生した取引について、勘定科目ごとに記録した帳簿のことです。科目ごとに帳簿が異なり、「現金出納帳」「預金出納帳」「売掛帳」「買掛帳」などがあります。 それぞれの帳簿の役割と書き方をご説明しましょう。 帳簿の重要性 たくさ…
詳しくみるオンラインサロンにかかる費用の勘定科目は?仕訳例を解説
オンラインサロンは、インターネット上で会員のみが参加できるコミュニティです。事業のためにオンラインサロンに参加する場合などは、一部費用について経費に計上できます。たとえば、会費やセミナー費用、テキスト代やインターネット接続費などは、適切な方…
詳しくみる当座資産の解説と当座比率の求め方や流動資産との違い
当座資産とは、会社の貸借対照表から「当座比率」を算出する際に必要です。当座比率を求めることで、企業の短期債務の支払能力を示す指標にすることができます。つまり、企業の安全性分析のために利用できる指標となりえるのです。 そんな重要度の高い当座資…
詳しくみる建設業会計の特徴とは?仕訳や勘定科目の具体例を簡単に解説!
建設業は、商品やサービスを提供する一般的な業種と異なり、特殊な受注形態を持っています。そのため、会計処理にも特殊な処理や判断が求められ、複数の工事を請け負っているとさらに処理が煩雑になってしまいます。 複雑な処理に時間がかかりやすいからこそ…
詳しくみる繰延税金負債とは?税効果会計での仕訳例とともに解説
繰延税金負債は、税効果会計を適用している場合に使用する勘定科目で、会計上の損益と税務上の所得の差を調整するためのものです。財務諸表では、貸借対照表の負債の部に表示されます。 繰延税金負債は税効果会計で使用 会計上の利益と税金計算上の所得の差…
詳しくみる生命保険料の勘定科目は?個人事業主と法人で異なる?保険金や解約返戻金についても解説!
生命保険とは、人の生死や病気のリスクに関わる保険を指します。生命保険は個人で契約できるほか、法人も契約することができます。では、個人事業主や法人が生命保険料を支払った場合や保険金を受け取った場合は、どのように処理するべきなのでしょうか。この…
詳しくみる