- 更新日 : 2024年8月8日
贈答品を経費にする場合の仕訳と勘定科目まとめ
取引先などに感謝の意を表するため、好印象を持ってもらうためなど、事業の中で贈答品やプレゼントを送ることは良くあります。基本的に、得意先などに渡した贈答品は経費になりますが、どの勘定科目で会計処理すれば良いのでしょうか。
ここでは、贈答品の勘定科目や具体的な仕訳について解説します。
目次
そもそも贈答品とは
まず、そもそも贈答品とはどのようなものを指すのでしょうか。大きい意味でいうと、相手に贈答するものであるため、お中元やお歳暮、プレゼントなども含まれます。ただ、一般的に贈答品とは、謝礼品や手土産などのことを指します。
例えば、得意先を訪問する場合に、お菓子などの手土産を持って行った場合は、贈答品になります。また、店などのお得意様の顧客に、感謝の意を表して渡す謝礼の品なども、贈答品になります。得意先などに贈答品を送ることは、慣習としてよくあることなので、通常、経費にすることが可能です。
贈答品と似ている考え方をするものに、お中元・お歳暮があります。お中元・お歳暮の処理方法や勘定科目については、次のページで詳しく解説しています。こちらをご参照ください。
贈答品の勘定科目は接待交際費が基本
贈答品を贈る相手として最も多いのが、得意先や贔屓にしてくれているお客様などです。
得意先などの第三者に贈答品を贈った場合の勘定科目は、原則「接待交際費」で処理します。
接待交際費とは、「法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答などの行為のために支出する費用」を指します。
贈答品は、得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する贈答に該当するため、接待交際で処理することになります。
出典:No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算|国税庁
接待交際費の仕訳例
贈答品が接待交際費になる場合の仕訳例を見ていきましょう。
例)贈答品2万円を現金で購入し、得意先にプレゼントした。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
接待交際費 | 20,000円 | 現金 | 20,000円 |
贈答品の勘定科目が広告宣伝費となるケース
第三者に対する贈答品は、基本、接待交際費になります。では、例えばお店に来てくれたお客の多くに、店名入りの贈答品を送った場合はどうなるのでしょうか。この場合は、顧客への接待というよりも、お店の名前を覚えてもらうことに重点をおいているため、接待交際費ではなく「広告宣伝費」になります。
つまり、「小売業者が商品を購入した一般消費者に対し景品を交付するための費用」のような「不特定多数の者に対する宣伝的効果を意図した費用」は、接待交際費ではなく広告宣伝費となります。
広告宣伝費の仕訳例
贈答品が広告宣伝費になる場合の仕訳例を見ていきましょう。
例)キャンペーンとして、期間中に来店したお客様全員に、店名入りの品物を贈答した。
贈答品の代金合計15万円は普通預金から支払った。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
広告宣伝費 | 150,000円 | 普通預金 | 150,000円 |
贈答品の勘定科目が福利厚生費となるケース
贈答品を贈る相手は、得意先やお客様などの第三者だけとは限りません。従業員に贈答品を贈ることもあるでしょう。従業員への贈答品は、接待交際費にはならず「福利厚生費」になります。
また、従業員等(従業員等であった者を含む)あるいはその親族等のお祝いや不幸(結婚祝・出産祝・香典・お見舞いなど)に際して支給される金品にかかる費用は福利厚生費になります。
ただし、従業員への贈答品は、全従業員を対象とした一定の基準によるものでなければなりません。例えば、従業員の子供が進学したお祝いとしてプレゼントを送る場合などです。特定の人に対するプレゼントは、給与扱いとなる可能性が高いので注意が必要です。
福利厚生費の仕訳例
贈答品が福利厚生費になる場合の仕訳例を見ていきましょう。
例)弊社では、従業員の子供が進学した場合に、お祝いとして贈答品を送っている。このたび、従業員の子供が進学したので、3万円の贈答品を現金で購入した。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
福利厚生費 | 30,000円 | 現金 | 30,000円 |
贈答品を経費にする際の注意点
贈答品は、送った相手などの状況に応じて、接待交際費や広告宣伝費、福利厚生費などの科目として経費になります。
しかし、贈答品が経費になるのは事業をする上で必要な場合のみです。経営者の友人への贈答品は、事業をする上で必要とは言えないので、経費にはなりません。また、特別に大きな金額の商品を贈答した場合も、必要性の観点などから経費として認められない可能性があるので、注意が必要です。
さらに、図書カードや商品券などを贈答した場合も、仕訳時に注意が必要です。商品券などに類するものを購入した場合、消費税は非課税になります。仕訳をする際、消費税区分を間違えないように注意しましょう。
贈答品はいくらまで経費と認められる?
贈答品の勘定科目は、誰に何を贈るかによって接待交際費、広告宣伝費、福利厚生費に分かれます。注意したいのは、贈答品が税務上の交際費等に該当する場合に、個人と法人とで経費にできるかどうかが変わることです。
法人の場合
法人税法上の交際費等とは、得意先や仕入先などに対して行う接待などのために支出する費用のことです。
福利厚生費、広告宣伝費、会議費、1万円以下の接待飲食費以外、接待交際費などとして会計処理を行っていない場合や事業に関係ある者などに対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のための支出は、税務上の交際費等に該当します。そのため、取引先などへの贈答品は交際費等になるでしょう。
交際費等に該当する費用には、法人税法上の損金算入に制限が設けられています。例えば、資本金の額が100億円を超える法人は、交際費等の一切の損金算入が認められていません。資本金1億円以下の中小法人については、年800万円、飲食費の50%のいずれか多い金額まで損金算入が認められます。
個人(個人事業主)の場合
個人の所得税の計算においては、法人のように交際費等の経費算入の限度は設けられていません。その事業を行うにあたって必要と認められる範囲であれば、贈答品の支出額は経費として認められます。
事業に関わる贈答品は経費として正しく仕訳しましょう
贈答品は、送った相手などの状況に応じて、接待交際費や広告宣伝費、福利厚生費などの科目として経費になります。法人の場合、接待交際費で処理した場合とそれ以外の科目で処理した場合では、納める税金に違いが出る場合もあります。
事業に関わるプレゼントは経費として扱い、正しい勘定科目で仕訳するようにしましょう。
よくある質問
贈答品を会計処理するための勘定科目は何ですか?
得意先などの第三者に贈答品を渡した場合の勘定科目は、原則「接待交際費」で処理します。 詳しくはこちらをご覧ください。
贈答品は必ず「接待交際費」で処理しないといけませんか?
いいえ。相手や状況によって贈答品の勘定科目は異なります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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