- 更新日 : 2025年2月20日
個人事業主が会計ソフトでクレジットカード決済する際の仕訳と注意点まとめ
今や個人事業主でも給与所得者でもクレジットカードの利用は日常となっています。
会計ソフトを利用した場合には、銀行口座と連携して会計仕訳を自動起票してくれる機能がありますが、クレジットカードではどうでしょうか?
この記事では会計ソフトでクレジットカード決済する際の仕訳について考えてみました。
目次
会計ソフトはクレジットカードと連携できる?
会計ソフトと言ってもさまざまですが、最近はクラウドで運用する会計ソフトの利用が多くなってきました。一般的なクラウド会計ソフトでは、金融機関の口座だけではなく各種クレジットカードとの連携が可能であり、昨今では多くの金融機関やカード会社との連携ができるようになっています。
会計ソフトでクレジットカード決済するメリット
個人事業主がクラウド会計ソフトでクレジットカード決済する場合、上記の自動連携の機能を上手く利用することにより、いくつかのメリットを享受できます。
いちいち自分からカード会社のサイトにアクセスしてで支払予定等を確認せずとも、会計ソフトを見るだけで、未払金(次回のクレジットカード引落額)と預金残高の関係がわかります。頻度の高いパターン化された仕訳処理などは、連携によって作業時間が大幅に削減され、人為ミスも減ります。
一方、事業専用のクレジットカードでない場合は、会計ソフト側ではどれが事業での支払かを判断できません。その場合、自動作成された仕訳を修正するか、連携を止めて手動入力に切り替える必要があります。
また、事業専用のクレジットカード利用でもイレギュラーな仕訳は、自動仕訳では対応が難しいと言えます。
会計ソフトでクレジットカード決済する場合の仕訳
クレジットカード決済で口座連携する場合、「複式簿記」のほうが、より連携の効果がでるといえるでしょう。
それは、クレジットカードを利用する取引が「費用の発生」と「未払金の発生」の両方を意味する取引であることを「複式簿記」によって的確に表現できるからです。
そして、単式簿記の場合と複式簿記の場合とでは、連携内容も異なります。
白色申告と青色申告10万円控除の場合
白色申告や青色申告の簡易帳簿(10万円控除)の場合には、決算書において貸借対照表が求められないため、単式簿記での記帳になります。クラウド会計ソフトではカードの利用のタイミングにおいて、経費の認識のみがなされます。
青色申告65万円控除の場合
令和2年分の申告から55万円の青色申告特別控除に加え、電子申告で10万円控除が追加となり、最高で65万円の所得控除が可能となります。
青色申告で65万円控除となる場合には複式簿記となり、クラウド会計ソフトの連携機能が大いに使えます。クレジットカード、銀行口座ともに登録しておけば次のように借方には登録した費用科目が、貸方にも登録した未払金などの負債科目が計上される仕訳が作成されます。ただし、勘定科目や摘要については取引の事実にあっているかを確認し、適宜修正します。AIなどが勘定科目を判断する機能のものもありますが、自動生成された勘定科目や摘要についてはチェックする習慣を付けましょう。
クレジットカードの利用時
日付 | 摘要 | ||||
---|---|---|---|---|---|
11/12 | 図書館 | 3,300円 | 未払金 | 3,300円 | ××カード |
クレジットカード決済時(銀行引落し時)
日付 | 摘要 | ||||
---|---|---|---|---|---|
12/20 | 未払金 | 3,300円 | 普通預金 | 3,300円 | ××カード 11月利用分引落 |
個人口座から引き落とされる場合
個人口座から引き落とされる場合には2つのパターンが考えられます。
クレジットカードの引落先が完全なプライベートの銀行口座である場合
この場合には、クレジットカードを利用していますが、引落先は事業主借勘定を使います。
事業以外の口座からの引落しは、会計ソフトには入力不要です。
摘要 | ||||
---|---|---|---|---|
費用 | 5,000円 | 事業主借 | 5,000円 | ××カード利用 |
クレジットカードの引落先が会計ソフトに登録している銀行口座である場合
この場合はさらに次のパターンに分けられます。
クレジットカード | 銀行口座 | 備考 | |
---|---|---|---|
1 | 事業用のみに使用 | 事業用にも個人用にも使用 | 避けたいパターン |
2 | 事業用にも個人用にも使用 | 事業用にも個人用にも使用 | 複雑なパターン |
1の場合には、クレジットカード利用時の費用発生仕訳は自動連携で問題ありませんが、銀行口座から引き落とされるものに事業以外のものが混じっていますので、クレジットカード決済時の仕訳を次の2種類に分ける必要があります。なお、事業以外の引落は事業主貸勘定を使います。
摘要 | ||||
---|---|---|---|---|
未払金 | 5,000円 | 普通預金 | 5,000円 | ××カード引落 |
事業主借 | 7,000円 | 普通預金 | 7,000円 | ××カード引落 |
2の場合には、クレジット利用時にも決済時にも事業用の利用と個人用の利用を分けなければなりません。クラウド会計ソフトに連携したがためにより複雑になってしまうことが予想されます。
事業用の口座から引き落とされる場合
この場合は個人事業主としてクレジットカードを利用する時の理想パターンです。
クレジットカード利用時
摘要 | ||||
---|---|---|---|---|
費用 | 5,000円 | 未払金 | 5,000円 | ××カード利用 |
クレジットカード決済時(銀行引落し時)
摘要 | ||||
---|---|---|---|---|
未払金 | 5,000円 | 普通預金 | 5,000円 | ××カード引落 |
会計ソフトでクレジットカード決済する場合の注意点
個人事業主が事業でクレジットカードを使った場合の諸注意をまとめておきます。
領収書や明細の保管
クレジットカード領収書や引落明細は郵送される場合とそうでない場合があります。
電子帳簿保存の届を提出する以外は紙の保管が必要となりますので、カード会社から明細が送られてこない場合はデータを自分でも保存しておいて、いつでもプリントアウトできる状態にしておきましょう。
年またぎ
年またぎとは、12月に利用したクレジットの未払金の引落が翌年となる場合などを言います。複式簿記の場合には、提出する貸借対照表の未払金残高が12月に利用したクレジットカードの金額と一致しているかどうか確かめましょう。
分割払い
クレジットカードで分割払いにした時は、クレジット利用時の金額は総額で起票します。
そして決済された金額についてのみクレジットカードの未払金を減額します。
引落日
クレジットカードの引落日に残高不足であった場合は、まずはカード会社から通知が来て、後日自動的に引き落とされます。それでも不足であった場合には、再度通知がきて別の口座への支払いが必要となります。その際、遅延損害金が付くこともあります。仕訳は連携されず、延滞損害金は必要経費にはなりません。引落日には注意しましょう。
ポイントやマイル
クレジットカードの決済時に、ポイント値引きがあった時の仕訳は次のようになります。
クレジットカード決済時(10,000円の未払金決済時に100円分のポイント値引きがあった場合)
摘要 | ||||
---|---|---|---|---|
未払金 | 10,000円 | 普通預金 | 9,900円 | ××カード引落 |
雑収入 | 100円 | ××カード ポイント分 |
溜まったマイルを「事業での」旅費交通費として利用し、決済したときも同様です。
マネーフォワード クラウド会計ソフトはクレジットカード連携可
マネーフォワードクラウド会計もここであげたクラウド会計ソフトの一つです。
銀行口座やクレジットカードを連携すると、取引明細を自動取得してくれます。
登録するメールアドレスやカード、口座へのアクセス情報は暗号化して厳重に管理しているので安心して使え、業務効率を大幅に改善できます。
利用目的を決めて、会計ソフトでクレジットカードを便利に使おう
クラウド会計ソフトを利用することで、事業で発生する取引のうちパターン化されたものは自動化され、作業効率は上がります。
効率化のポイントは、クレジットカードや銀行口座を事業用のみにすることと、自動仕訳のパターンを根気よく登録することです。
クラウド会計ソフトの利用により、煩わしい単純作業から解放されるだけではなく、リアルタイムで「事業」が見えるのですから使わない手はありません。
よくある質問
会計ソフトでクレジットカード決済をするメリットは?
カード会社のサイトにアクセスして支払予定等を確認せずとも、会計ソフトを見るだけで未払金と預金残高の関係がわかることです。詳しくはこちらをご覧ください。
会計ソフトでクレジットカード決済する場合の仕訳は?
クレジットカード決済で口座連携する場合、複式簿記のほうがより連携の効果がでるといえるでしょう。詳しくはこちらをご覧ください。
会計ソフトでクレジットカード決済する際の注意点は?
領収書や明細を保管しておくこと、年またぎや分割払いの場合は金額や引落日に注意することなどが挙げられます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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