• 作成日 : 2019年10月29日
  • 更新日 : 2020年7月10日

ステークホルダーにとっての決算書

決算書にはステークホルダー(利害関係者)と自社との関係がよく表れています。そのため、取引の状況と紐づけて考えることでステークホルダーとの関係強化を図ることが将来の利益につながるかもしれません。この記事では、決算書をステークホルダーへの働きかけの強力なツールとして見た場合、どこに着目すべきかを解説します。

ステークホルダーとは?

ステークホルダーとは、企業経営における利害関係者のことです。具体的には、経営者、株主、顧客、取引先、従業員、金融機関など企業が活動を続けることで何らかの影響を受ける人々のことです。地域社会や行政機関、ライバル会社を含める場合もあります。

それぞれの企業が考えるステークホルダーは、その企業独自の考え方により対象範囲が変わります。ステークホルダーの対象範囲は、最近では直接的、金銭的な狭義の利害関係者よりも、間接的、一時的な利害関係者も含んだ広義の利害関係者を指す傾向があるようです。

ただし、ステークホルダーと企業は必ず利害が一致するとは限りません。企業が営業を継続することで、「利」がある人々または「害」がある人々をまとめてステークホルダーと表現できます。

ステークホルダーと決算書のつながり

決算書とは、原則的には財務諸表のことであり、主に「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」の3つです。ステークホルダーのうち、顧客、取引先、従業員、株主、金融機関について決算書との関係を見ていきましょう。

顧客(得意先、お客様)

企業に直接的に利益を与えてくれる、最重要視されるべきステークホルダーです。顧客は損益計算書の売上高、貸借対照表の売掛金などに結びつきます。
サービスの不備や品質の低下、価格の高騰がある場合、顧客が最も影響を受けます。

取引先(仕入先、外部委託者、業者)

企業の売上の元を支えてくれます。また、取引開始時には取引先候補の過去数年の決算書を参考に信用取引に問題ないか等を検討します。いわゆる「与信管理」です。
取引先は、損益計算書の売上原価等の費用、貸借対照表の買掛金未払金に紐づきます。

従業員

顧客の獲得や優良取引先の開拓から、収益、費用の発生を直接担当しています。
業績低下のため短絡的に給与カットをすると、従業員自身の働く意欲の低下につながります。また、ほかのステークホルダーとの結びつきにも悪影響となります。

株主

ストックホルダーという呼称もあります。
株主は、自らが今後も継続して株主でいる価値があるかどうかという視点から決算書を見ています。株主は、貸借対照表の資本金に結びつきますが、自己資本比率や流動比率、固定比率など決算書から読み取れる情報から企業の安定性や将来性を分析します。

金融機関

企業の資金繰りを支えるほか、売掛金や買掛金の支払い窓口となる場合もあります。金融機関は貸借対照表やキャッシュフロー計算書の借入金や預金などに紐づきます。
金融機関で融資などを申し込んだ場合、損益計算書上の売上総利益営業利益等だけでなく、貸借対照表の在庫、売掛金残高、借入金残高の傾向を細かく分析して判断しています。

ステークホルダーが支える企業

企業が新たな取引を始めるにあたっては、まず顧客と取引先(仕入先)が決まるとおおよその取引の骨格ができます。顧客と取引先を具体的に結びつけるのは従業員で、ここでビジネスの基本が成立します。

しかし、取引先や従業員への支払いが先で、顧客からの入金は後になると企業では資金繰りに苦慮してしまいます。そのような場合に備えて金融機関があります。
また、そもそも最初にこの企業に出資したのは株主です。こうしてみると、企業が存続するためにはさまざまなステークホルダーの存在が欠かせないものだとわかります。

例えば税務署や市役所に税金を支払ったり、同業他社の動きをチェックしたりすることもステークホルダーとの関わりのひとつです。
顧客、取引先、従業員、株主、金融機関といった5種類のステークホルダーと良好な関係を保つための一手段として、決算書があるのです。

決算書の役割

決済書に書かれているもののうち、株主や投資家であれば自己資本比率や流動比率・固定比率など信用にかかわる情報を、新規の取引先であれば黒字経営が継続されているか、負債が多すぎないかなどの情報を知りたくなるでしょう。
このように立場の異なるステークホルダーが企業の決算書を見て得る情報は、質・量ともにそれぞれ異なります。

どの企業も同じ複式簿記で取引を移しとり、財務諸表を作成するわけですから、作成された決算書は各ステークホルダーの独自のフィルターを通った後でも矛盾のないものでなければなりません。業績は良いに越したことはありませんが、業績の良し悪しそのものではなく、取引や会計が透明性の高いものであることがステークホルダーにとって信頼できる決算書です。

ステークホルダーと適切な関係を維持できなければ、企業は長期的に成り立ちません。決算書は、ステークホルダーとの重要な交換を数字に翻訳して明快に語れる道具であるべきだといえるでしょう。

ステークホルダーとの関係維持には明快な決算書が必須

企業が継続するためには顧客、取引先、従業員、株主、金融機関など複数のステークホルダーが関連しています。決算書はそれらステークホルダーに向けて、企業の現状を知らせる書類です。

閲覧頻度や必要となる情報はさまざまですが、企業とステークホルダーの関係性を継続するにあたっては、個々の取引が明快かつ透明性のある決算書を作成する必要があります。決算書を作成する際は、単純な業績変動のほか、決算書がステークホルダーからどう見えているをシミュレーションし、取引の内容や今後のステークホルダーとの関係づくりに役立てましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:岡 和恵 (税理士 / フィナンシャルプランナー AFP)

大学卒業後、2年間の教職を経て専業主婦に。その後、システム会社に転職。
システム開発部門と経理部門を経験する中で税理士資格とフィナンシャルプランナー資格(AFP)を取得。
2019年より税理士事務所を開業し、税務や相続に関するライティング業務も開始。

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