• 更新日 : 2026年1月15日

税理士資格を取るには?社会人・経営者の独学や難易度、年収を解説

税理士資格は、一度にすべての試験に合格する必要がなく、1科目ずつ積み上げていける「科目合格制」を採用しているため、社会人が働きながら取得を目指せる国家資格です。令和5年度(2023年)以降、受験資格が緩和され、特定の科目については誰でも受験が可能となりました。

しかし、合格には一般的に4,000時間以上の学習が必要とされ、その道のりは決して平坦ではありません。

本記事では、税理士試験の仕組みや受験資格、高卒や独学での攻略法に加え、就職先や年収の目安、中小企業の経営者や個人事業主が自ら資格を取得するメリットについて解説します。

税理士資格とは?経営者や個人事業主が目指す価値とは

税理士資格とは、税務に関する専門家であることを国が認める国家資格であり、取得することで独立開業や企業内でのキャリアアップ、さらには経営のパートナーとしての地位を確立することが可能になります。

税理士だけができる3つの独占業務

税理士には法律(税理士法)で守られた3つの独占業務があります。たとえ無償であっても資格を持たない人が行うことはできません。

  1. 税務代理:納税者の代わりに申告や申請を行うこと、税務調査の立ち会いなど。
  2. 税務書類の作成確定申告書や相続税申告書などの書類を代行して作成すること。
  3. 税務相談:税金の計算や手続きに関する、税務上の相談に応じること。

これらの業務に加え、会計のパートナーとして企業の決算書作成に関与したり、経営コンサルタントとして財務アドバイスを行ったりと、活躍の場は広がっています。

経営者や個人事業主が自分で取得するメリット・デメリット

経営者が自分で取得する最大のメリットは、自社の財務状況や税務リスクを完全に把握でき、高度かつ迅速な経営判断が可能になることです。

また、年間数十万円から数百万円かかる税理士報酬を削減できる点も魅力でしょう。万が一現在の事業が立ち行かなくなった際に、税理士として独立するというキャリアの保険を持つこともできます。

一方で、デメリットは時間の投資というコストが大きいことです。

税理士合格までに最低でも3,000時間以上の勉強が必要と言われます(1日3時間を3年間)。本業の収益化に使うべき時間を圧迫する恐れがあります。

また、税法は毎年改正されるため、合格後も知識のアップデートが必要になります。

もし「自社の経理処理を自分で完結させたい」という点だけが主な目的であれば、難関である税理士資格への挑戦は、時間対効果の面で少しハードルが高すぎるかもしれません。日商簿記2級程度の知識を身につけ、優秀な会計ソフトを活用することで十分に対応できるケースも多いからです。

税理士として独立するという強い動機がない限り、税務はプロに外注し、ご自身は本業の売上アップに集中するという選択肢もあります。

税理士の資格を取るには?

税理士になるには、年1回実施される試験で合計5科目に合格し、それとは別に2年間の実務経験を経て登録する必要があります。近年の法改正により会計科目の受験資格が撤廃されたことで、高卒の方や他業種の社会人でも、すぐに試験勉強をスタートできるようになりました。

「会計科目」は誰でも受験可能に

令和5年4月1日以降、税理士試験の必須科目である「簿記論」と「財務諸表論」の2科目(会計科目)については、受験資格が撤廃されました。

学歴や年齢、国籍を問わず、誰でも税理士試験への挑戦をスタートできます。

税法科目の受験資格と最短ルート

所得税法法人税法などの「税法科目」を受けるためには、依然として以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

区分主な要件の内容
学識(学歴)・大学、短大、高専卒で「社会科学」に属する科目を1科目以上履修した者

・大学3年次以上で62単位以上を取得(うち社会科学1科目以上)

資格・日商簿記検定1級 合格者

・全経簿記検定上級 合格者

職歴・会計事務や税理士補助などの実務経験が2年以上ある者

最終学歴が高卒の方や、大学で理系学部出身など指定科目を履修していない方が税理士を目指す場合、以下のステップでの攻略が効率的です。

  1. 会計科目から受ける:受験資格不要の「簿記論」「財務諸表論」に合格します。
  2. 日商簿記1級を取得する:並行して日商簿記1級を取得し、「資格要件」で税法科目の受験資格を得ます。
  3. 会計事務所で働く:2年間の実務経験を積めば「職歴要件」も満たせます。

参照:税理士試験受験資格の概要|国税庁

試験科目の選び方と合格戦略

税理士試験は「科目合格制」であり、どの科目を選ぶかが早期合格できるかどうかのポイントになります。試験科目は大きく「会計学(2科目)」と「税法(3科目)」に分かれます。

  • 会計学(2科目・必須):簿記論、財務諸表論
  • 税法(3科目選択)
    • 選択必須:法人税法 または 所得税法(どちらか1つは合格が必要)
    • 選択相続税法消費税法、国税徴収法、酒税法、住民税、事業税、固定資産税など

就職や実務での活用を重視するならば、「法人税法、消費税法、相続税法」の組み合わせが王道です。これらは多くの会計事務所で日常的に扱う税目であり、即戦力として高く評価されます。

大学院で「科目免除」を受けるという選択肢もある

働きながら税理士を目指す社会人にとって、大学院免除制度を検討してもよいでしょう。 これは、大学院で税法や会計に関する修士論文を執筆し、国税審議会の認定を受けることで、税理士試験の一部科目を免除される制度です。

  • 通常のルート:難関の税法科目に3つ合格が必要。
  • 大学院ルート:税法科目は1つ合格すればOK(残り2科目は論文で免除)。

学費はかかりますが、確実に資格取得へ近づけるため、社会人受験生にとって、有力なルートになります。

税理士試験の難易度と合格率は?

各科目の合格率は10%から20%程度で推移していますが、受験者のレベルが高いため、実質的な難易度はさらに高いでしょう。制度上、独学での合格も可能ですが、頻繁な法改正への対応や特有の解答技術の習得が困難であるため、予備校を活用するのが一般的です。

科目ごとの合格率と勉強時間の目安

税理士試験の合格率は、科目ごとに概ね 10%〜20% で推移しています。

  • 簿記論・財務諸表論:15%〜20%前後
  • 税法科目(法人税・所得税など):12%〜15%前後

受験者の大半が日商簿記1級レベルや会計事務所に勤務する方々です。また、合格までに必要な勉強時間は合計で3,000時間〜5,000時間程度とされています。

独学での合格は可能か

制度上は、独学での合格は可能ですが、非常に効率が悪く、完全独学はおすすめしません。

  • 法改正の頻度:税法は毎年改正されるため、市販テキストでは対応が遅れるリスクがあります。
  • 独特の解法テクニック:試験には特有の「集計テクニック」や「時間配分」が必要であり、これらは予備校のノウハウに頼るのが近道です。

多くの合格者は、専門学校や通信講座などの専門機関を利用しています。費用はかかりますが、数年単位の時間を短縮するための投資と捉えましょう。

税理士の主な就職先とキャリアパス

税理士試験に合格した後の進路は、会計事務所だけではありません。近年では一般企業の管理部門やコンサルティングファームなど、活躍の場は多様化しています。

税理士法人・個人会計事務所

実務経験を積みながら資格取得を目指す人も多く在籍しています。

大手税理士法人では、上場企業やグローバル企業の税務に関わることができます。中小規模の税理士法人や個人事務所では、中小企業の記帳代行や決算、社長への経営アドバイスなど、地域密着型の業務が中心となります。独立に向けた汎用的なスキルが身につきます。

一般企業のインハウス税理士やコンサル

一般企業の経理部や財務部に所属するインハウス税理士(企業内税理士)です。ワークライフバランスが整いやすく、企業の福利厚生を受けられる点が大きなメリットです。 また、コンサルティングファームも有力な就職先です。税務知識をベースに、事業承継やM&A仲介など、経営課題の解決に直接関わります。

税理士の年収・給料は?

勤務税理士の平均年収は約856万円と日本の平均を大きく上回り、有効求人倍率も2倍を超える「売り手市場」です。経験を積むほど年収が上がる安定性と、独立によって1,000万円以上を目指せる将来性もあります。

ただし、雇用形態や経験年数によってその金額には大きな開きがあります。

勤務税理士の平均年収

厚生労働省の求人サイト「jpb tag」によると、勤務税理士の平均年収は 約856万円です。日本の平均年収(約460万円)と比較すると高水準で、時間当たりの賃金も4,101円と非常に高いのが特徴です。

また、有効求人倍率は2.31倍(令和6年度)と高く、求職者1人に対して2件以上の求人がある「売り手市場」の状態が続いています。

また、税理士の年収は、経験を積み、担当できる業務の幅が広がるにつれて確実に上昇する傾向にあります。

参照:税理士 職業情報提供サイト(job tag)|厚生労働省

独立開業後の年収

独立した場合の年収は、自身の営業やスキル次第になりますので、どこまでも増える可能性もありますが、同時にリスクも伴います。

顧客ゼロからスタートした場合、初年度は会社員時代の年収を下回ることも珍しくありません。しかし、顧問契約を順調に増やし、年間顧問料50万円の顧客を20件獲得すれば、それだけで売上は1,000万円になります。

軌道に乗った開業税理士の中には、年収2,000万円〜3,000万円以上稼ぐプレイヤーも多く存在しており、実力次第で大きなリターンが望めます。

税理士の資格取得から登録までの流れ

税理士として活動するためには、試験合格後に「登録」が必要です。

  1. 受験計画と学習開始
    受験資格不要の「簿記論」「財務諸表論」の学習から始めます。働きながらの場合は1年で1科目ずつの合格を目指すのが現実的です。
  2. 試験合格(5科目)
    一度合格した科目は生涯有効です(科目合格制)。数年〜10年かけて5科目を揃える人も珍しくありません。
  3. 2年間の実務経験
    試験に合格しても、2年以上の実務経験がなければ税理士登録はできません(試験合格前の経験もカウント可)。
  4. 税理士登録
    日本税理士会連合会に備える税理士名簿への登録を受けます。

税理士はAI時代も生き残る専門職

税理士資格は、AI時代においても「コンサルティング能力」を持つ専門家として高い需要があります。単純な計算業務はAIに代替されても、経営者の悩みに寄り添い、複雑な税法を解釈して提案する業務はなくなりません。

令和5年の改正により、会計科目の受験資格がなくなったことで、高卒の方や他業種の方でも挑戦のハードルは下がりました。

「一生モノ」の資格である税理士。数年の努力が必要ですが、それに見合うリターンは必ずあります。

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