- 更新日 : 2025年2月3日
売掛金とはどんな勘定科目?仕訳例や回収の流れ、ポイントなどを解説
売掛金とは、企業が商品やサービスを販売した後、まだ顧客から受け取っていない未収の代金を指す会計用語です。これは貸借対照表上で流動資産として計上され、将来の現金収入を示します。売掛金は企業の信用取引の結果生じるもので、通常は一定の支払期限内に回収されます。
目次
売掛金の定義とは?意味を簡単に説明
売掛金(読み:うりかけきん)とは、売上の対価として将来的に金銭を受け取る権利、売掛債権のことです。売上にかかる債権という意味で、受取手形と同じく売上債権に分類されます。経理上、販売時に手形や現金での受け入れがない、掛け取引で使われる勘定科目です。ツケや仮取引をイメージすると分かりやすいかもしれません。
売掛金は、手形のように証書が発行されるわけではないため、信用がないと成り立たず、信用取引にも区分されます。簿記の実務では、取引が発生した時点で仕訳をする発生主義ではなく、取引により相手方に商品などが引き渡された時点で売掛金の仕訳を行うのが原則です。これは実現主義と呼ばれます。
売掛金が多い業界は、卸売業、サービス業、製造業などで、幅広い業種において経理上の勘定科目として使われています。
ちなみに英文会計では、Accounts receivable(読み方:アカウンツ・レシーバブル)、またはAccounts receivable-trade(読み方:アカウンツ・レシーバブル・トレイド)と表します。
買掛金との違い
買掛金は、商品などを仕入れたときの未払金のことです。売掛金と同じように掛け取引によって生じたもので、信用取引に区分される点は同じです。しかし、売掛金は売上債権であるのに対して、買掛金は仕入債務であり、支払いの義務があることが異なります。
未収入金との違い
未収入金は、営業活動以外の取引に関して、金銭の回収ができていない金銭債権のことです。すでに取引が生じたもので、代金の回収ができていないという意味では売掛金と同じです。
しかし、売掛金が営業活動における売上によって発生するものであるのに対して、未収入金は営業活動以外で発生したものであることが異なります。未収入金の例は、本業以外で発生した土地や建物の売却代金、有価証券の売却代金のうち、回収できていないもの、などです。
前受金との違い
前受金は、商品の受け渡しなどを行う前(売上として上がる前)などに、手付金として受け取った金銭です。計上時は貸方になりますが、引き渡しが完了していない点が売掛金と異なります。
前受金と似た性質の勘定科目に「預り金」があります。前受金との違いは、預り金は一時的な金銭の預かり、または、社会保険料など第三者に支払うための金銭の預かりであることです。
立替金との違い
立替金は、他者が負担すべき費用を一時的に支払うなど、代金を立て替えたときに使用する勘定科目です。受け取る権利がある金銭債権という意味では売掛金と同じですが、売掛金は売上債権に絞られ、代金の立て替えではないため意味が異なります。立替金は、取引先との間でも発生することがあり、本来は取引先が負担すべき発送費を一時的に立て替えた場合などで使われます。
仮払金との違い
仮払金は、従業員の出張にかかる費用のために仮に従業員に支払った費用など、支払いは済んでいるものの、支出の用途が確定していない勘定科目です。似た科目として「仮受金」があり、こちらは、金銭は受け取ったものの、用途が分からず一時的に処理するためのものになります。売掛金は売上債権であり、内容が明確ですので、取引に内容が分からない状態である仮払金、仮受金とは性質が異なります。
売掛金と売上の関係
収益の認識は、原則として、履行義務の充足に該当する、商品やサービスの引き渡しを基準に行います。引き渡しと同時に現金が払い込まれることもありますが、商取引では後日支払いが行われることも一般的です。
収益認識時点では売上を計上するものの、まだ代金を受け取っていない場合は、掛取引として売掛金で処理します。(代金の支払いのために手形を発行している場合は受取手形)売掛金も受取手形も売上に対する債権であることから、売上債権ともいわれます。
売掛金を計上するタイミング
売掛金の計上タイミングは、売上を計上するタイミングであり、商品などの引き渡しが実現した時点で認識することとされています。このような実現主義的な収益認識では、出荷基準、引渡基準、検収基準が認められており、割賦販売に関しても入金に合わせた計上が認められていました。
しかし、2021年4月から適用の「収益認識に関する会計基準等」では、工事契約や受注制作のソフトウェアを除き、履行義務が充足した時点、すなわち相手の検収が完了した時点での認識が原則となります(国内の出荷に関しては出荷基準も認められます)。これにより、割賦販売は入金に合わせた収益認識ができなくなりました。
売掛金の会計処理の流れ
売掛金が発生した際にどのように処理や管理をすべきか、会計処理の流れを説明します。
計上
収益認識に関する会計基準によると、履行義務を充足したときに収益を認識しなければなりません。つまり、収益認識の会計基準に従うと、契約を締結した時点、あるいは契約と同時に引き渡しを行った時点で収益を認識することになります。
収益を認識するということは、売上を計上するということです。売上計上の時点で、現金やクレジットカードなどによる払込、手形の受け取りなどがない場合は、掛取引として売掛金を認識します。
例)取引先A社に商品30万円を販売した。商品の引き渡し時に代金の支払いは受けておらず、後日入金される予定である。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
売掛金 | 300,000円 | 売上 | 300,000円 |
消込
売掛金が取引先から入金されることで、入金された金額相当の債権は消滅します。そのため、入金時には消込処理といって、売掛金を消滅させる会計処理を行わなくてはなりません。
売掛金の入金があった際には、実際の請求額と相違がないか確認しましょう。請求額よりも入金額が少ない場合は、取引先に入金額の不足を連絡して催促を行うか、継続取引であれば次回の入金時にまとめて入金してもらうなど、調整を行います。入金額が多い場合は、一時的に過剰分を仮受金として処理し、取引先と調整します。
例)A社に対する売掛金30万円が当座預金に振り込まれた。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
当座預金 | 300,000円 | 売掛金 | 300,000円 |
残高確認
売掛金を適切に管理するには、定期的な残高確認の実施が望ましいです。取引先が法人の場合は、当社で売掛金として処理している金額は、相手先では買掛金として処理されているはずです。
自社で把握している売掛金と、取引先で認識している買掛金の残高に不一致が生じていないか確認するために、取引先に残高確認書を送付して確認を依頼します。
自社の残高と取引先の残高にズレがある場合は、相違している原因を把握し、必要に応じて修正を行います。
売掛金の仕訳処理の例
売掛金の仕訳はどのようなケースで必要になるのか、売上計上があったとき、消込処理があったとき、入金にともない振込手数料が発生したとき、値引きが発生したとき、などいくつかのケースに分けて代表的な仕訳の例を紹介します。
売掛金が発生したときの仕訳
売掛金の仕訳は、売上(商品などを引き渡したとき)の時点で、現金や預金での受け入れがなかった場合に発生します。
収益である「売上」が貸方にくるので、借方に「売掛金」をもってきます。
売掛金を回収したときの仕訳
売掛金が回収できたときに、消込処理を行います。
売掛金の額がそのまま振り込まれることもありますが、振込手数料が差し引かれた状態で振り込まれることもあります。振込手数料が差し引かれて入金された場合は、下記のような仕訳を行います。
他社振り出しの小切手は「現金」で処理します。自社が過去に振り出した小切手を回収代金として受け取る場合は、「現金」ではなく借方は「当座預金」です。
クレジットカード売上の処理(クレジットカード会社への手数料5,000円は販売時に計上することとする)
クレジットカードの売上50万円分の入金が普通預金にあった。
※クレジットカード取引による売掛金は、信販会社との取引で、顧客との取引ではないため「クレジットカード売掛金」で処理し、通常の売掛金と区別します。
未回収(回収不可能)の場合の仕訳
売掛金は信用取引ですので、滞納により期日までに支払われないリスク、回収不能になるリスクがあります。回収不可能になった場合、貸倒の仕訳を行います。
回収不能により貸倒となった場合、決算時の貸借対照表上から、貸倒になった売掛金の額は上記の仕訳によって消去されることになります。貸倒が発生した場合は、損益計算書にも影響があり、損失が計上されることもあります。また、引当金がある場合は、過去に損失を計上しているため、今回の貸倒の分がそのままが損失になるわけではありません。
なお、税法上の損金では、貸倒損失と認められる範囲に条件があり、貸倒が起きたからといって、すべてが損金にできるわけではないため注意が必要です。
税法上で、貸倒損失として損金にできる具体的な条件は、国税庁の「No.5320 貸倒損失として処理できる場合」よりご確認ください。
一部入金時の仕訳
一部入金時の仕訳は、売掛金回収時の仕訳と同じです。注意したいのは、一部入金であるため、後で金額だけ確認すると、いつの売掛金に対するものなのか、わからなくなってしまう点です。会計ソフトに仕訳を入力する際の適用欄に、一部入金であること、いつの売掛金に対するものか記載しておくと、わかりやすいです。会計ソフトで消込処理をする場合は、全額を消し込みしないようにします。
返品処理の仕訳
品質に問題があり返品されたときは、返金処理をするのではなく、売掛金から差し引く処理をすることが多いです。
(売上返品・売上戻り高) |
返品により発生する「売上戻り」は財務諸表には表示しないため、決算整理時に結局は売上高から差し引くことになります。会社の会計処理の方法によりますが、返品処理では売上から直接差し引く、上記の仕訳方法を採ることも多いです。
値引きした場合の仕訳
入金不足の場合の仕訳
売掛金の入金不足は、回収時の仕訳でも説明した振込手数料が差し引かれているケース、値引きや返品で入金が減額されているケースなどが考えられます。このようなケースで解決する場合は、上に示したような仕訳で対応しますが、このほかのケースでは一部入金と同じ処理を行います。
取引先が金額を誤って入金している可能性もありますので、入金不足があった場合で振込手数料や返品などのケースに該当しない場合は、相手先に確認するのが確実でしょう。
消費税の仕訳
売掛金勘定を使う仕訳において、消費税の税抜き処理をした場合の例を見てみましょう。
なお、会社によって使用する勘定科目が異なる場合がありますが、ここでは国税庁のHPに準じ、売上の場合には「仮受消費税」、仕入、費用の場合には「仮払消費税」を使用します。
特に複数税率になっている場合の仕訳に注意しましょう。
標準税率(10%)のものしか販売していない場合は、いちいち区分する必要はないと言えます。
取り扱う商品に10%と8%がある場合には、税率ごとに区分します。(これを「区分経理」といいます。)
軽減税率制度においては、売上と仕入も軽減税率(8%)と標準税率(10%)とに区分して税額計算を行うため、個々の仕訳も分けておきます。
うち、クレジットカード会社への手数料5,000円があり、これを販売時に計上している。
気を付けるのは、カード加盟店がクレジットカード会社に支払う手数料は、消費税では非課税仕入になります。したがって、仮払消費税は計上しません。
参考:クレジット手数料|国税庁
また、返品、売上値引きなどは上記の逆仕訳となります。
別勘定(売上戻り、売上返品など)を使用する際も、軽減税率と標準税率の場合があれば区分して仕訳をします。
買掛金と相殺する場合の仕訳
顧客が仕入先でもあり、買掛金が発生している場合、該当する取引先に承諾を得ることによって、買掛金と売掛金を相殺できます。
売掛金がマイナスになった場合の仕訳
売掛金は、売上に対する対価ですから、本来はマイナスになることはありません。マイナスになる場合は、過去の仕訳で金額のミスがなかったか、本来売掛金で処理しない取引で売掛金を使用していないかをまずは疑い、仕訳帳や総勘定元帳などで確認していきます。
いずれの処理も適正な場合は、売掛金に対して過剰に入金されている可能性もあります。取引先に確認し、過剰に入金されているのであれば、全額を売掛金とするのではなく、過剰に入金された分を仮受金に振り替えるなどして仕訳を修正しましょう。
摘要には何を書くか
振替伝票や仕訳帳など、帳簿には摘要欄が設けられています。摘要は、取引の詳細について記載する部分です。売掛金の仕訳が生じる取引の場合は、別に請求書などの書類があると思いますので、詳細を記入する必要はありません。必要な書類をすぐに参照できるよう、相手先の名称、回収や返品ならいつの売上の分かなどを記載しておきます。
売掛金を回収できない場合
商売をしていて一番気を付けなければならないのが、売掛金の回収です。
掛売が行われると売掛金と売上が計上されます。売上が計上されるということは、収益が発生するため、会社の利益が増えることになります。会社の利益が増えると、税金の支払額が増加することとなります。さらに、消費税の支払いも増加します。
したがって、売掛金の回収が通常通り入金されれば問題ありませんが、万が一、先方からの入金が滞った場合、その売掛金の入金がない状態で、先に税金等の支払いをしなければなりません。
そうなると、会社の資金繰りが悪化するため、金融機関などから借入しなければならない場合もあります。もちろん、金融機関から借入をすれば利息の支払いが生じます。
また、売上があって利益が生じているにもかかわらず、売掛金などの回収が滞り、資金繰りが悪化すると、いわゆる黒字倒産が起こります。
売掛金の回収が滞った場合の対応としては、相手先に請求をし続けることが重要です。それでも売掛金の回収ができない場合は、法的手段により代金の回収をするために、弁護士へ依頼することも一つの方法です。
また、貸倒処理をすることで、利益の額を減らし、税金の支払いを圧縮する方法もあります。ただし、税法上の貸倒処理については、一定の要件に該当しないと認められないので注意しましょう。売掛金の貸倒は、次の場合ごとの各金額を貸倒処理することができます。
売掛金が切り捨てられた場合
次に掲げるような事実に基づいて切り捨てられた金額は、その事業年度の損金として処理できます。
- 会社更生法、会社法、民事再生法の規定により切り捨てられた金額
- 債権者集会の協議決定で、合理的な基準によって切り捨てられた金額
- 債務者の債務超過の状態が相当期間継続して、売掛金の弁済を受けることができない場合に、その債務者に対して、書面(実務上は内容証明郵便)で明らかにした債務免除額
売掛金の全額が回収不能となった場合
債務者の資産状況、支払能力等からその全額が回収できないことが明らかになった場合は、その明らかになった事業年度において貸倒として損金処理することができます。
一定期間取引停止後弁済がない場合
次に掲げる事実が発生した場合には、その債務者に対する売掛金について、その売掛金の額から備忘価額(例えば1円)を控除した残額を貸倒とすることができます。
- 債務者の資産状況等が悪化したため、その債務者との取引を停止した場合において、その取引停止の時と最後の弁済の時のうち最も遅いときから1年以上経過したとき
- 同一地域の債務者に対する売掛金の総額が取立費用より少なく、支払いを督促しても弁済がない場合
以上のように、売掛金が回収できなかったらといって、すぐに貸倒処理とすると税務上否認されてしまいます。
したがって、最も重要なことは、当たり前ですが、きちんと支払いをしてくれる会社と取引することです。特に、新規の取引先には十分注意してください。
新規の取引先は、取引当初は現金取引をし、問題がなければ掛取引を始めたり、また、掛取引をする条件として、保証金などの名目でお金を先に預かったりすることなども一つの方法です。
せっかく売り上げたのに、お金がもらえない事態に陥らないためにも、取引先と売掛金の管理は徹底して行いましょう。
売掛金に関して注意すべきこと
ここでは、売掛金に関して注意すべきことを解説します。
売掛金の時効期間は5年
売掛金は信用取引ですので、支払期限になっても払わない顧客、資金繰りの悪化により実質的に支払いができなくなってしまった顧客が出てくることがあります。注意したいのは、滞納を放置することです。一定期間が過ぎると、売掛金を放棄したことになり、相手方への請求権を失ってしまいます。
売掛金における時効は5年です。以前は業種ごとに1年、2年など時効が定められていましたが、法改正により2020年4月より時効はいずれも5年となりました。売掛金の時効については、相手に支払いの督促を行ったり、相手方を提訴して民事裁判を起こしたり、差し押さえを実行したりすることによって、更新できます。
「締め後売上」に気を付ける
締め後分とは、売上を例にとると、前月16日~当月15日までの売上に対して毎月請求書を発行している場合(15日締め)の16日~月末までの分の売上を指します。
決算の前に売上が発生した場合に、この締め後売上の計上が必要です。利益が増えるので所得税や法人税の金額は上がりますが、適切な税務申告を行うことを優先しましょう。
会計年度をまたぐ場合の処理には注意しなければいけません。締め日以降に生じた売上や売掛金は通常、翌月分として処理しますが、決算期にまたがる場合、今年度の利益として扱います。
会計ソフトや帳簿への入力で毎月請求書の金額を売上や経費に転記している場合、年度をまたぐ処理の過程で二重計上の恐れがあります。この事態を防ぐためには、年度当初に振替処理が必要です。
売掛金は決算書のどこに入る?
売掛金は、金銭を受け取る権利であるため、貸借対照表(バランスシート)の資産の部に含まれます。
また、売掛金が計上されてから入金までの期間は数カ月が一般的です。売掛金は、おおむね1年以内に現金化が見込まれる債権であることから、資産の部の中でも流動資産に該当します。
売掛金の管理におけるポイント
売掛金は適切に管理し、未回収を未然に防ぐ運用体制の構築が求められます。貸し倒れを起こさないためには、指標(売上債権回転率・回転期間など)の設定や与信管理、定期的な取引先との残高確認などが必要です。売掛保証サービスを活用して、売掛金の管理を外部に委託する方法も考えられます。ここでは、売掛金の管理に役立つポイントを解説します。
売上債権回転率・回転期間の確認
キャッシュフローの悪化によって黒字倒産に陥ることを避けるために、売上債権回転率や売上債権回転期間を確認します。
売上債権回転率は、売上債権の回収までの速さを表す指標です。この数字が高いと債権の効率的な回収ができていますが、低い場合はキャッシュの不足につながる危険があります。
売上債権回転率は業界ごとに平均が異なるため、数値の比較では競合他社に目を向けるのが適しています。
売掛金や受取手形を回収するまでの期間を表す、売上債権回転期間も要確認の指標です。回転期間の数値が低いと、短期間で売上債権が回収できていることを示します。
売上債権回転率と売上債権回転期間は、以下の通り求めます。
与信管理
取引先の資金繰り悪化で売掛債権が回収できない事態を防ぐためには、与信管理が必要です。
相手方に関する幅広い情報を取得し、取引を行っても問題ないか、売掛金を確実に回収できるか吟味します。
与信調査は契約前に実施します。HPや財務諸表、口コミ、営業担当が訪問で得た情報などを総動員して、調査を行います。企業を取り巻く環境や経営状態は日々変化するので、定期的に取引先の与信を見直す必要があることにも注意が必要です。
取引先との残高確認
売掛金の確実な回収のため、期限を定めて、定期的な残高確認が求められます。まれに従業員による不正が行われる可能性もあるため、売掛金の残高が正しいかどうかを取引先に確認しましょう。
売掛金の仕訳を手動で行う企業の場合、売掛金発生時や回収時に各帳簿に転記する作業が発生します。手作業だとミスが起こる可能性もあるので、複数人による監視体制の導入が必要です。
確認の方法は取引先に現状の残高を記載した残高確認状を送付します。取引先が認識している金額との間にずれがあれば、その旨や考えられる原因の指摘を受けます。
売掛金年齢表の作成
売掛金残高の内訳を確認するために、売掛金年齢表を作成することがあります。売掛金年齢表とは、取引先ごとの売掛金を、発生した月、あるいは未入金の経過月数などに分けて作成する表のことです。売掛金年齢表などを作成して回収状況を確認することをエイジングといい、長期滞留売掛金の洗い出しや支払いの督促などに役立ちます。上場企業においては、会計監査で求められることもある資料です。
領収書の作成
売掛金を直接現金で受け取るなど、金銭の引き渡しに客観的な証拠が得られないときは、領収書の作成が必要です。
領収書には、日付や宛名、金額、発行元の名称や住所、連絡先を記載して作成します。取引の金額によって収入印紙の貼り付けと割印も必要です。
【売上代金に関わる収入印紙の税額】
受取金額 | 収入印紙税額 |
---|---|
5万円未満 | 非課税 |
5万円以上 100万円以下 | 200円 |
100万円超 200万円以下 | 400円 |
200万円超 300万円以下 | 600円 |
300万円超 500万円以下 | 1,000円 |
500万円超 1,000万円以下 | 2,000円 |
1,000万円超 2,000万円以下 | 4,000円 |
2,000万円超 3,000万円以下 | 6,000円 |
3,000万円超 5,000万円以下 | 10,000円 |
5,000万円超 1億円以下 | 20,000円 |
1億円超 2億円以下 | 40,000円 |
2億円超 3億円以下 | 60,000円 |
3億円超 5億円以下 | 100,000円 |
5億円超 10億円以下 | 150,000円 |
10億円超 | 200,000円 |
金額の記載がないもの | 200円 |
参考:No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで|国税庁
売掛保証サービスの活用
「売掛金が貸し倒れにならないか不安」「定期的な与信調査が面倒」などと感じる場合は、保証会社や金融機関の売掛保証サービスの活用を検討してはいかがでしょうか。
経営悪化や倒産を理由に取引先の債権を回収できないときは、サービスの運営元による保証を受けることも検討できます。
売掛保証サービスには与信調査や請求書の発行も担うものもあり、請求書業務の効率化に役立つ便利な存在です。
売掛金担保ローンの活用
売掛金は、増えすぎると資金の流動化が妨げられ、キャッシュフローが悪くなります。そこで活用できるのが、売掛金担保ローンです。売掛金を担保に金融機関などから融資を受ける方法で、実質的には売掛金の早期回収にあたります。基本的に、売掛金担保ローンは債務者(取引先)の承諾が必要ありません。
売掛金担保ローンに似た資金化にファクタリングもありますが、ファクタリングは売掛金自体を売り渡すことなので売掛金担保ローンとは異なります。ファクタリングは主にオフバランス(資産から売掛金を削除する)を目的としたもので、信用度や債権の規模などから、基本的に個人事業主は利用できない資金化の方法です。
保障制度の活用
「売掛債権担保融資保証制度」や「取引信用保険制度」などの保証制度の活用も一つの手段です。売掛債権担保融資保証制度とは、中小企業が取引先に対して保有する売掛金を担保に融資を受ける場合に、その債務を信用保証協会が担う制度です。
一方で取引信用保険制度は、取引先が商品やサービスの代金支払い債務を負担しない場合に、損害の一定割合を保証するものです。
売掛金の回収に不安があるなら、このような制度を積極的に活用しても良いでしょう。
売掛金元帳のテンプレート-無料ダウンロード
売掛金の管理には、売掛金元帳を利用して、売掛金の残高、支払い状況、未収金額などを記録しましょう。
以下より、今すぐ実務で使用できる、テンプレートを無料でダウンロードいただけます。ぜひご活用ください。
売掛金をきちんと管理しよう
掛け取引はさまざまな業界で行われており、売掛金を使う仕訳は一般的なものです。しかし、回収不能になる可能性、長期滞留になる可能性もあり、一般的な取引ながら、管理には注意が必要です。売掛金の回収が滞るとキャッシュフローも悪くなりますので、会計ソフトなどを活用して適切に管理できるようにしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
売掛金の関連記事
新着記事
小切手の銀行渡りとは?メリットや手続き、必要書類、廃止の方針などをわかりやすく解説
「銀行渡り」という言葉を聞いたことはあっても、その仕組みや使い方について詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。銀行渡りとは、小切手をより安全に利用するための仕組みで、企業間の取引や高額な決済などで広く使われています。本記事では、銀行渡…
詳しくみる小切手は2026年度末までに廃止予定!理由や電子記録債権(でんさい)などの代替手段を解説
2026年度末(2027年3月末)に、紙の小切手が完全に廃止されます。小切手は日本企業の取引で長年使われてきましたが、効率性の問題や不渡り・紛失などのリスクから電子決済への移行が求められています。この変化は、企業だけでなく、小切手を使ってい…
詳しくみる小切手とは?仕組みや種類、メリット、換金方法、廃止の方針などをわかりやすく解説
小切手は、主に企業間取引で利用される、現金に代わる便利な決済手段です。しかし、普段の生活では使う機会が少ないため、詳しい仕組みや使い方がよくわからないという人も多いかもしれません。本記事では、小切手の基本的な仕組みや手形との違いをはじめ、小…
詳しくみる約束手形の支払期日は60日に短縮!当日持ち込みの方法や3営業日を過ぎた場合の対応も解説
約束手形は日本の企業間取引で広く使われていますが、その取り扱いを誤ると資金繰りや信用に大きな問題が生じます。特に、支払期日のルールや銀行への持ち込み手続きを正確に理解しておかないと、思わぬトラブルに発展することがあります。この記事では、約束…
詳しくみる約束手形の銀行持ち込みはいつまで?期限を過ぎた場合の対応や廃止に向けた方針も解説
約束手形は、企業間取引における信用決済の手段として長年利用されてきた有価証券です。買掛金の支払いを一定期間先に延ばすことができるため、資金繰りの調整や信用取引の証として機能してきました。一方で、手形の管理や取り扱いには専門的な知識が必要であ…
詳しくみる約束手形の裏書とは?書き方や譲渡するメリット・デメリット、仕訳などをわかりやすく解説
約束手形は商取引で多く利用される信用取引の代表的な手段です。その中でも「裏書」は、手形を他者に譲渡するための重要な手続きであり、資金流動性や企業間信用の強化に大きく関わります。 この記事では、約束手形の裏書の基本的な内容から、メリット・デメ…
詳しくみる