- 更新日 : 2025年2月20日
証憑書類とは?経費精算時に証憑になる領収書とは?
証憑書類は、税法上でも請求書や領収書などをはじめとして保存義務が定められている書類です。取引の事実を示す書類であることから、経費精算時においても重要視されています。この記事では、証憑書類の種類、作成目的や保存目的、保存方法や保存期間について解説していきます。また、経費精算時に証憑となる領収書で確認しておきたい記載内容についても解説していきます。
目次
証憑書類とは
「証憑(しょうひょう)書類」とは、取引の事実があったことを確認する書類を指します。単に「証憑」と呼ぶことが一般的です。証憑を発行することで、自分と相手が同意をしたうえで取引を行なったことを示すことができます。
例えば、証憑のひとつである納品書について考えてみましょう。A社に商品を100個納品した場合、確かに商品を納品したとしても、A社が「受け取っていない」といえば、取引の事実を証明することが難しくなるかもしれません。しかし、納品書があれば、A社が確かに受け取り、取引に同意をしていたことを示すことができます。
納品書以外にも、領収書や契約書、給与支払明細書なども、相手との取引が成立したことを示す証憑です。
証憑書類の種類
証憑書類にはさまざまな種類があります。ここでは、証憑書類をその特徴ごとに区分して、区分ごとに代表的な証憑書類をご紹介していきます。
金銭のやり取りに関する書類
金銭のやり取りに関する代表的な書類には、次のようなものがあります。
- 請求書:商品やサービス提供の対価などとして金銭を請求するための書類
- 領収書:代金の受領を証明する書類
- (金銭)借用証書:借主が貸主に対して差し入れる金銭の借入や返済期日を証明する書類
契約に関する書類
契約に関する代表的な書類には、次のようなものがあります。
- 銀行取引約定書:金融機関が融資取引を新規で行うときに債務者と取り交わす契約書
- 賃貸借契約書:主に土地や建物などを貸し借りするときに取り交わす契約書
- 取引基本契約書:継続的な取引の基本となる契約条件などを定めた契約書
- 業務委託契約書:会社や個人の業務の一部を委託する際に、委託者が受託者と取り交わす契約書
- 秘密保持契約書:自社の秘密情報を目的外で第三者に開示または漏洩させないことを義務付ける契約書
物品やサービスなどに関する書類
物品やサービスなどに関する代表的な書類には、次のようなものがあります。
労働に関する書類
労働に関する代表的な書類には、次のようなものがあります。
- 雇用契約書:雇用主が従業員に対して雇用契約を明示するための書類
- 給与明細:給与総額や控除額などを従業員に通知するための書類
- 賃金台帳:労働者の給与支払い状況に関する書類
そのほかの書類
次のような書類も証憑書類に含まれます。
- 通帳:金融機関と預貯金者との間で発生した継続的な預貯金の受け払いを証明する書類
- 議事録:社内や取引先との会議の内容や決定事項を記載した書類
- 稟議書:社内において複数の関係者に合意を得るための書類 など
証憑書類の作成目的
証憑書類とは取引の事実があったことを確認する書類であることを先述しました。ある企業の内部に向けた証憑には、従業員への給与明細や商品等の在庫管理、社内向け記録などがあり、外部に向けた証憑には、請求書や領収書、決算申告書作成に必要な書類などがあります。
証憑を発行することで、取引が決定したことを証明することができます。特に金銭の動きがあるときは、口約束だけでは心許ないものです。相手を信頼している場合でも、約束を証憑という目に見える形で残すことで、安心して取引ができるようになるでしょう。
証憑書類の保存期間
証憑は保存期間が定められています。ただし、税法上と会社法上では保存期間が異なるので注意が必要です。法律によって保存期間が異なる場合は、より長い期間を基準にするようにしましょう。
税法上は7年~10年
仕訳帳や現金出納帳、固定資産台帳などの税務に関する証憑は、事業年度の確定申告期限の翌日から7年間保存する必要があります。しかし、欠損金が生じた場合に関しては、より長い保存期間が求められることがあります。
例えば、青色申告を行った年度で欠損金が生じた事業年度においては、証憑の保存義務は10年間です。ただし、2018年4月1日以前に開始した事業年度に関しては、証憑の保存期間は9年間となります。
また、青色申告を行わなかった事業年度に関しても、災害損失欠損金が生じた年度に関しては、証憑の保存期間は10年間(2018年4月1日以前に開始した事業年度は9年間)です。
保存期間を守らないときは行政罰の対象
証憑の保存期間を守らないときは、次のような行政上の罰や処分を課せられることがあります。
- 青色申告事業者としての登録が取り消される
- 100万円以下の過料
また、保存期間を守らないことで、次のような不利益を被ることもあるでしょう。
- 欠損金の繰越ができない
- 仕入れ税額控除を適用できない
税法上の証憑保存期間でもっとも長いのは確定申告期限の翌日から10年間です。わかりにくいときはいずれの証憑も10年間は保存するようにしましょう。
会社法上は5年または10年
会社法上の証憑保存期間は5年か10年です。下記のような分類で分かれていますが、わかりにくいときは10年間保存することで、会社法と税法を遵守できます。
- 5年間の保存義務がある書類:事業報告書類、監査報告書類
- 10年間の保存義務がある書類:計算書類及び附属明細書
証憑書類の保存方法
証憑は紙の書類として保存する必要はありません。電子化し、データや画像として保管することも可能です。電子化した場合に知っておきたいことを紹介します。
e-文書法と電子帳簿保存法
証憑を電子化して保管する場合には、次の2つの法律の遵守が求められます。
e-文書法とは、紙の書類をデータとして保存する際に適用される法律です。データ保存する際には次の条件などを満たさなくてはいけません。
- データがパソコンなどのデバイスで読めること
- データの消去や変更を行ったときに履歴が残ること(改ざん回避のため)
- データを検索できること
- アクセス権限を設定すること
電子帳簿保存法は、電子計算機を用いて作成した書類の保存に関する法律です。領収書や請求書などの国税に関わる書類を電子化して保管する際には、以下の条件などを満たさなくてはいけません。
- 資金の流れなどに関わる重要書類はカラーでスキャンすること
- 200dpi以上の解像度で読み取ること
- 訂正や削除の事実を残すこと
- 検索機能があること
電子帳簿保存法の詳しい内容についてはこちらの記事で解説しています。
証憑書類を電子化するメリット
証憑書類を電子化すると、次のようなメリットがあります。
- 検索できるので必要な書類をすぐに取り出せる
- 紙資料が増えないのでコストや保管スペースを減らせる
- 書類紛失を防げる
- 社外から証憑を確認できる
電子管理すると検索できるので、必要な書類をすぐに取り出せます。紙を使用しないので、用紙代や保管スペースを節約できる点、紛失しにくくなる点もメリットです。また、オンラインで社外から確認できるようになるため、リモートワークに対応しやすくなります。
証憑書類電子化する場合の注意点
証憑書類を電子化するメリットが多い一方で、注意点もあります。主な注意点としては次の3つが挙げられるでしょう。
- 導入費用がかかる
- 入力作業に慣れるまで時間がかかる可能性がある
- 情報漏洩のリスクがある
スキャナーや電子計算機などの費用がかかること、操作に慣れるまで時間がかかる可能性があることは、導入前に検討しておきたいポイントです。また、オンラインでアクセスできることで、情報漏洩が生じる危険性もあるため、セキュリティ対策が必要です。
経費精算において証憑となる領収書とは
領収書は、経費精算において証憑となる書類の一つです。受領した領収書には、次のような内容が記載されている必要があります。
- 名称(領収書である旨の記載)
- 代金を支払った年月日
- 代金を支払った人や企業の名称
- 何についての領収か(但し書きに記載)
- 支払金額(発行者側からは売上代金)
- 領収書発行者の名称や住所、連絡先
領収書は、印紙税額一覧表の第17号文書に該当する書類で、印紙税の課税対象となります。売上代金(領収書の代金)5万円未満のものについては非課税になりますが、5万円以上のものについては、領収書作成時に印紙税の貼付が必要ですので、受領時に確かめましょう。
証憑書類は取引を証明する重要な書類
証憑書類は、さまざまな取引の証拠となる重要な書類です。書面だけでなく、電子データによる証憑もあることに留意しましょう。請求書や各種契約書のような会社間の取引に直接関係する書類だけでなく、経費精算のために社員が会社に提出する領収書も証憑書類に含まれます。証憑書類を紛失してしまうと、取引を行った証拠を示せなくなってしまいますので、法定の保存期間を守りつつ、適切に保存するようにしましょう。スキャナ保存などの利用により書面のままでの保存ではなく、電子帳簿保存法に適した電子保存をすることで、システム上に保存する方法もあります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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