- 更新日 : 2025年4月23日
神社への支出は経費?祈祷や賽銭の仕訳と勘定科目を解説
商売繁盛を目的として法人が神社に祈祷を行ってもらった際にかかる初穂料や玉串料などは経費として計上できます。しかし、個人事業主では経費にするのは難しいとされています。
初穂料や玉串料、賽銭などを経費とする場合に、勘定科目や仕分けはどうすれば良いのでしょうか。本記事では神社への支出は経費なのか、勘定科目や仕分けについて詳しく解説します。
目次
神社への支払いは経費として扱える?
神社への初穂料や玉串料などの支払いを経費として扱えるのかは、次の2つの事業形態によって変わってきます。
- 法人の場合
- 個人事業主の場合
法人の場合、上限はありますが、寄付金として経費として認められると国税庁のサイトにも記載があります。しかし、個人事業主の場合は、経費として認められるのは難しいのが実情です。ここでは、それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
法人の場合
「商売繁盛」や「安全祈願」など、仕事や事業に関することで神社やお寺に支払ったお金は「寄付金」という勘定科目で経費として扱えます。
ただし、法人が経費にできる寄付金には、上限額がある点には注意が必要です。寄付金の経費上限額の計算式は、次のとおりです。
上記の上限内であれば、神社や寺に支払ったお金は「寄付金」として経費にできます。
個人事業主の場合
個人事業者が「神社やお寺に支払った祈祷料など」は経費にできません。個人事業主の場合、神社やお寺に支払ったお金の勘定科目は「事業主貸」です。
かつて、ある個人事業主が裁判を起こしましたが「裁判所は宗教的色彩を強く持つ行為であって、原告の業務との関連性、必要性を欠く」という理由で経費性を否定しました。裁判でも経費性を否定されたとなれば、個人事業主で神社やお寺に支払った祈祷料などは、経費にするのは困難といわざるえません。
神社に対する支出の勘定科目は?
神社に対する支出の勘定科目は、大きく分けて「寄付金」「雑費」「消耗品」の3つに分けられます。
法人であれば、これら以外にも福利厚生として扱える場合もあります。また、神社に対する支払いの種類として次が挙げられます。
- 初穂料
- 祈祷
- お札
- 奉納金
- お守り
- 絵馬
- 賽銭
- 御神酒
- 熊手
- 玉串
- 車のお祓い
- 破魔矢 など
ただし、上記に対してお金を支払ったとして、どの勘定科目にすれば良いかわかりにくいかもしれません。間違った勘定科目を記載すると税務署より指摘される場合があるため、ここでは勘定科目について詳しくみていきましょう。
寄付金
原則として、神社に対する支払いの種類も法人の場合は「寄付金」、個人事業主の場合は「事業主貸」として計上します。そのため、法人では経費として扱われますが、個人事業主では経費として扱えません。
しかし、法人が経費にできる寄付金には上限額が決まっています。上限額の計算式は以下のとおりです。
上限を超えた場合は、経費として扱えないので注意しましょう。
【例】会社で初詣に訪れた際、初穂料として5,000円を現金で支払った。
A事業所 |
また、寄付金の詳しい内容については、次の記事を参考にしてくみてください。
雑費
「寄付金」や「事業主貸」ではなく例外として、年に数回くらいしか出てこない支払いについてはオールマイティーな勘定科目の「雑費」を使う場合があります。
ただし「雑費」は、見た目からして何に支出されているのかが不明瞭であるため、多用するのはおすすめできません。さまざまな支出を「雑費」として計上していると、税務署より仕事の関係性が指摘される可能性があります。
そのため、雑費として計上するのではなく、他の具体的な勘定科目への振り分けをしておくのがおすすめです。
【例】会社で初詣に訪れた際、5,000円の熊手を購入し、その場で現金で支払った。
B営業所 |
消耗品費
お札や熊手、破魔矢などであれば、物品を購入したということで「消耗品費」として計上が可能です。
消耗品費とは消耗性の費用の総称であり、その厳密な定義は税法において定められていません。一部例外もありますが、原則として、消耗性の資産で使用可能期間が1年未満または10万円未満という条件を満たしていた場合、「消耗品費」として経費計上することが可能です。
お札や熊手、破魔矢などは1年に1回買い換えるのが普通であるため、雑費よりも消耗品として扱うのが適切です。
【例】新たな営業所の開設にともない、5,000円のお札を神社で購入し、現金で支払った。
C営業所 |
神社までの交通費の扱いは?
お賽銭や祈祷料などに付随する交通費や拝観料も経費として扱えます。交通費や拝観料を経費として扱う場合の勘定科目には「旅費交通費」あるいは、お賽銭・祈祷料その他と同じく「福利厚生費」や「雑費」などで処理が可能です。
しかし、神社が遠すぎる場合などは、会社に関係しているかの判断が難しいため、経費として扱えない可能性があります。そのため、諸事情で会社から遠い神社やお寺へ行く場合は、事前に税理士に確認するのがおすすめです。
経費として扱えないものは?
経費として扱えないものとして、次の2つが挙げられます。
- 金額が大きすぎるもの
- 支払い頻度が高すぎるもの
経費として扱える基本的な考えは「常識の範囲内」であるかどうかです。神社やお寺以外への支出でも同じことがいえますが、誰がみても「これは常識的だ」と判断されなければいけません。また、仕事に関係がある支出であることが前提としてあります。
しかし、神社やお寺への支出は、本当に仕事のためかを判断するのは困難であるため「常識の範囲内」であることが重要です。ここでは、それぞれに分けて解説します。
金額が大きすぎるもの
金額があまりにも大きすぎるものは、経費として扱うのは困難です。お賽銭を奉納するといっても、それが「仕事に対するものであるのか」や「プライベートに関するものであるのか」の証明は難しいでしょう。
そのため、重要なポイントになるのは「常識の範囲内」の行動であるかどうかです。たとえば、商売繁盛のためのお賽銭が1万円であれば、常識の範囲内であるといえます。
しかしお賽銭の金額が100万円だと、常識の範囲内とはいえません。支払われたお金が仕事に関係するのかが判断しづらいからこそ、常識の範囲内であることが重要視されます。
支払い頻度が高すぎるもの
支払いの頻度が高すぎるものは経費として扱えず、「個人の趣味嗜好=経費ではない」と判断されます。
たとえば、毎日違う神社やお寺へ参拝に行ってお賽銭を払うとすると、常識の範囲を超えているといえます。
しかし、お正月や会社の創立日など大切な日だけに支払いされている場合は、経費として扱うことが可能です。支払いの頻度が高すぎるものは、経費として扱えなくなるため注意しておく必要があります。
「常識的な範囲内」という視点が重要!
神社やお寺への支出は、原則「寄付」であることを押さえておきましょう。
しかし、「仕事や事業に関係している」ことが大前提です。寄付以外にも例外で雑費や福利厚生として経費にできる場合があります。「場所が遠すぎる」や「金額が高すぎる」といった場合には、経費でないと判断されても仕方がありません。
経費として扱うには「常識的な範囲内」であることが重要であるため、特に注意しておきましょう。
よくある質問
神社に対する支払いは経費になりますか?
「商売繁盛」や「安全祈願」など、事業に関することで神社やお寺に支払ったお金は経費として認められます。詳しくはこちらをご覧ください。
神社に対する支出の勘定科目は?
神社に対する支出の勘定科目として「寄付金」「事業主貸」「雑費」「消耗品費」などが挙げられます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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