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  3. 事業譲渡の売り手、買い手の仕訳方法とは?のれんが発生する場合も解説
  • 更新日 : 2026年2月5日

事業譲渡の売り手、買い手の仕訳方法とは?のれんが発生する場合も解説

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事業承継やM&Aの手法として注目される事業譲渡は、会社の事業の一部または全部を他の会社に譲渡するものです。この取引を適切に会計処理し、財務諸表に記録するためには、売り手企業と買い手企業それぞれが、事業譲渡における仕訳を正確に行う必要があります。

本記事では、事業譲渡の基本的な概念から、具体的な仕訳方法、そしてのれんが発生する場合の会計処理までを、わかりやすく解説します。

目次

  • 事業譲渡とは?
    • 事業譲渡と株式譲渡の主な違い
  • 事業譲渡の仕訳の考え方
    • 第三者間の事業譲渡における基本的な会計処理の流れ
    • 売り手企業の仕訳の考え方
    • 買い手企業の仕訳の考え方
  • 売り手(譲渡)企業におけるケース別仕訳例
    • 資産のみ譲渡
    • 負債も譲渡する場合
  • 買い手(譲受)企業におけるケース別仕訳例
    • 資産のみ取得
    • 負債も引き受ける場合
    • 取得価額の決定
  • のれんが発生した場合の会計処理と仕訳例
    • のれんとは?その評価について
    • 売り手企業の仕訳例
    • 買い手企業の仕訳例
  • 負ののれんが発生した場合の会計処理と仕訳例
    • 負ののれんとは?
    • 売り手企業の仕訳例
    • 買い手企業の仕訳例
  • 消費税が発生する場合の仕訳
    • 事業譲渡における消費税の課税対象となる資産・ならない資産
    • 売り手企業の仕訳例
    • 買い手企業の仕訳例
  • 事業譲渡の仕訳を理解してスムーズな事業承継を

事業譲渡とは?

事業譲渡とは、会社がある事業の全部または一部を別の会社に譲り渡す行為を指します。株式譲渡のように会社全体の経営権が移転するのではなく、譲渡の対象となる事業に関連する資産、負債、契約、従業員などを個別に移転できる点が大きな特徴です。

売り手企業は特定の事業に経営資源を集中させたり、不採算事業を切り離したりすることが可能になります。

一方、買い手企業は、既存事業の強化、新規事業への参入、技術やノウハウの獲得などを目的として事業譲渡を活用します。

事業譲渡は、事業承継の手段としても有効であり、後継者不足に悩む企業が事業を存続させるために選択するケースもあります。また、事業売却によって得た資金を、他の成長事業への投資や財務体質の改善に充てることも目的の一つです。

また、買い手企業は、譲り受けた事業と自社の既存事業との間で、技術、ノウハウ、顧客基盤などを共有し、相乗効果を高めることを期待します。

事業譲渡を実行する際には、譲渡する事業の範囲を明確にし、関連する資産(設備や知的財産など)、契約、従業員などを個別に移転する手続きが求められます。

取引先との契約関係を移転させるには、取引先の同意を得る必要がある場合もあります。このように、事業譲渡は個々の資産や負債を特定して移転するため、その会計処理は複雑になる場合もあります。

事業譲渡と株式譲渡の主な違い

事業譲渡と株式譲渡は、どちらもM&Aの手法として用いられますが、その内容は異なります。両者の主な違いを以下の表にまとめました。

項目事業譲渡株式譲渡
譲渡対象事業の一部または全部株式(経営権)
消費税原則として課税課税対象外
契約の引継ぎ個別同意が必要包括的に承継
対価の受領者会社株主
主な手続き売り手・買い手ともに株主総会特別決議が必要な場合がある原則として取締役会決議のみ(譲渡制限株式の場合は会社の承認が必要)
簿外債務原則として引き継がない引き継ぐリスクがある
税金(売り手が個人の場合)不動産以外は総合課税(最大45%)、不動産は分離課税分離課税(20.315%)

事業譲渡では、売買の対象は「事業」そのものであり、それに関連する資産、権利義務、人材などが個別に譲渡されます。

一方、株式譲渡では「株式」が売買の対象となり、会社の経営権そのものが移転します。この違いから、消費税の取り扱いや契約の引継ぎ、対価の受領者などが異なってきます。

事業譲渡は、譲渡する事業を特定できるため、一部の事業のみを切り離して売却したい場合に適しています。

また、買い手側にとっては、必要な事業のみを取得できるというメリットがあります。ただし、契約や資産ごとに取引先からの同意を得る必要があるなど、手続きが煩雑になる側面もあります。

株式譲渡は、会社全体を包括的に譲渡するため、手続きが比較的簡便であり、法人格は変わらないため、許認可などもそのまま引き継がれます。しかし、簿外債務などのリスクも引き継ぐ可能性があるため、買い手側は事前の調査(デューデリジェンス)を慎重に行う必要があります。

税金面では、売り手が個人の場合、一般的に株式譲渡の方が税率が低くなる傾向があります。このように、事業譲渡と株式譲渡は、譲渡の目的や対象、手続き、税金などが大きく異なるため、M&Aの際にはこれらの違いを十分に理解し、自社の状況や目的に合った手法を選択することが重要です。

事業譲渡の仕訳の考え方

事業譲渡における仕訳は、売り手企業と買い手企業でその考え方が異なります。基本的な会計処理の流れと、それぞれの企業における仕訳の原則を理解することが、正確な会計処理の第一歩となります。

第三者間の事業譲渡における基本的な会計処理の流れ

事業譲渡の会計処理は、資産の売買に近い考え方で行われます。売り手企業は、譲渡した事業に関連する資産と負債を帳簿から取り除き、受け取った対価との差額を損益として認識します。

一方、買い手企業は、譲り受けた資産と引き受けた負債を、その時の公正な評価額(時価)で帳簿に計上します。この時、支払った対価と、譲り受けた資産・負債の時価純資産額との間に差額が生じた場合、それは一般的に「のれん」として認識されます。事業譲渡は、原則として法人同士の取引として行われます。連結会計においては、売り手と買い手の間に資本関係がない限り、特別な処理は必要ありません。

税務上の処理も、原則として個別財務諸表の処理をそのまま受け入れます。

売り手企業の仕訳の考え方

売り手企業は、事業譲渡によって譲渡する資産を、帳簿価額(簿価)で貸方に記載し、譲渡する負債を、簿価で借方に記載します。そして、譲渡の対価として受け取った現金などの資産を、借方に記載します。通常、この譲渡対価は時価で決定されるため、簿価で計上された譲渡資産・負債との間に差額が生じます。この差額は、「事業譲渡益」または「事業譲渡損」として認識され、損益計算書に計上されます。事業譲渡益は会計上の利益となり、法人税の課税対象となります。

買い手企業の仕訳の考え方

買い手企業は、事業譲渡によって譲り受けた資産・負債を、取得時の公正な評価額、つまり時価で受け入れます。この時、支払った現金等の対価の総額が、譲り受けた資産と引き受けた負債の時価純資産価額よりも大きい場合、その差額は「のれん」という無形固定資産として借方に計上されます。逆に、支払った対価が時価純額よりも小さい場合は、「負ののれん」が発生し、これは原則として発生した期の利益として認識されます。買い手企業にとって、取得する資産の時価を正確に把握することが、その後の会計処理において非常に重要となります。

売り手(譲渡)企業におけるケース別仕訳例

売り手企業における具体的な仕訳例を、いくつかのケースに分けて解説します。

資産のみ譲渡

例えば、A社がB社に、以下の資産を50,000,000円で譲渡したとします。

  • 棚卸資産:簿価 30,000,000円
  • 備品:簿価 15,000,000円

この場合のA社の仕訳は以下のようになります。

借方貸方
現金預金50,000,000円棚卸資産30,000,000円
備品15,000,000円
事業譲渡益5,000,000円

この仕訳では、資産の売却によって現金預金が増加し、棚卸資産と備品が帳簿から減少しています。その差額である5,000,000円は、事業譲渡益として認識されます。この事業譲渡益は、A社の利益として計上され、法人税の課税対象となります。

負債も譲渡する場合

上記の例で、A社がB社に資産とともに、買掛金2,000,000円も譲渡したとします。譲渡対価は変わらず50,000,000円とします。

借方貸方
現金預金50,000,000円棚卸資産30,000,000円
買掛金2,000,000円備品15,000,000円
事業譲渡益7,000,000円

このケースでは、買掛金という負債もB社に引き継がれるため、A社の負債が減少します。その結果、事業譲渡益は7,000,000円となります。負債の譲渡は、売り手企業にとって債務の解消を意味するため、事業譲渡益に影響を与えることになります。

買い手(譲受)企業におけるケース別仕訳例

買い手企業における具体的な仕訳例を、売り手企業の例に対応させながら解説します。

資産のみ取得

B社がA社から棚卸資産(時価30,000,000円)と備品(時価20,000,000円)を現金預金50,000,000円で取得した場合のB社の仕訳は以下のようになります。

借方貸方
棚卸資産30,000,000円現金預金50,000,000円
備品20,000,000円

買い手企業B社は、取得した棚卸資産と備品を、それぞれの時価で借方に計上します。そして、支払った代金50,000,000円を現金預金の減少として貸方に計上します。買い手側は、取得した資産を簿価ではなく時価で計上する点が、売り手側との大きな違いです。

負債も引き受ける場合

B社がA社から棚卸資産(時価30,000,000円)、備品(時価20,000,000円)、そして買掛金2,000,000円を48,000,000円で取得した場合のB社の仕訳は以下のようになります。

借方貸方
棚卸資産30,000,000円現金預金48,000,000円
備品20,000,000円買掛金2,000,000円

この場合、B社は棚卸資産と備品を時価で借方に計上し、支払った現金預金を貸方に計上するとともに、引き受けた買掛金を負債として貸方に計上します。

取得価額の決定

買い手企業が支払う事業の取得価額は、譲り受ける資産の時価や、市場の状況、交渉などによって決定されます。取得価額は、買い手企業の会計処理において、非常に重要な要素となります。

のれんが発生した場合の会計処理と仕訳例

事業譲渡において、買い手企業が支払う対価が、譲り受けた資産と負債の時価純資産価額を上回る場合があります。この差額は「のれん」として会計処理されます。

のれんとは?その評価について

のれんとは、企業のブランド力、顧客との良好な関係、高い技術力、優れた経営ノウハウなど、目に見えない超過収益力のことです。事業譲渡においては、買い手企業がこれらの将来的な収益力を期待して、譲り受ける資産・負債の時価純額よりも高い金額を支払う場合に、その差額がのれんとして認識されます。事業価値の評価方法には、DCF法や時価純資産法などがありますが、中小企業の場合には、簡便的に時価純資産額に営業権(営業利益の3〜5年分)を加算して事業価値を算出する方法も用いられます。

売り手企業の仕訳例

売り手企業にとって、のれんは事業譲渡の対価に含まれるため、会計処理上は事業譲渡益の一部として認識されます。例えば、譲渡する事業の帳簿価額(時価純資産額も同額とする)が45,000,000円であるにもかかわらず、買い手企業がのれん代として5,000,000円を上乗せし、50,000,000円で事業を譲り受けた場合、売り手企業の仕訳は、50,000,000円の譲渡対価に基づいて事業譲渡益を計算することになります。

買い手企業の仕訳例

上記の例において、買い手企業B社は、譲り受けた資産・負債を時価評価した純資産の評価額45,000,000円と、支払った対価50,000,000円の差額5,000,000円を「のれん」として借方に計上します。

借方貸方
資産45,000,000円現金預金50,000,000円
のれん5,000,000円

買い手企業にとって、のれんは将来の収益に貢献する資産とみなされ、一定期間にわたって償却されます。日本の会計基準では、のれんの償却期間は20年以内とされています。税務上は、「資産調整勘定」として5年間で償却されるなど、会計と税務で取り扱いが異なる点に注意が必要です。

負ののれんが発生した場合の会計処理と仕訳例

まれに、買い手企業が支払う対価が、譲り受けた資産と負債の時価純額を下回る場合があります。この差額は「負ののれん」と呼ばれます。

負ののれんとは?

負ののれんは、買い手企業が、売り手企業の純資産よりも低い価格で事業を買収した場合に発生する差額です。これは、売り手企業に簿外債務や訴訟リスクなどのマイナス要因がある場合や、早期に事業を売却したいといった特別な事情がある場合に起こり得ます。会計上、負ののれんは、発生した事業年度の利益として一括で計上されます。

売り手企業の仕訳例

売り手企業にとって、買い手企業に負ののれんが発生するような取引であっても、会計処理は通常の事業譲渡と同様です。譲渡対価が時価総額を下回るため、事業譲渡益は減少、事業譲渡損は拡大します。例えば、帳簿価額が40,000,000円、時価純資産額が50,000,000円の事業を45,000,000円で譲渡した場合、売り手企業の事業譲渡益は5,000,000円となります。

買い手企業の仕訳例

上記の例において、買い手企業B社は、譲り受けた資産・負債を時価評価した純資産額50,000,000円よりも低い45,000,000円で事業を取得したため、その差額5,000,000円を負ののれんとして貸方に計上し、特別利益として認識します。

借方貸方
資産50,000,000円現金預金45,000,000円
負ののれん発生益5,000,000円

税務上、負ののれんは「差額負債調整勘定」として処理され、5年間で取り崩されるなど、会計上の取り扱いとは異なる点に留意が必要です。

消費税が発生する場合の仕訳

事業譲渡は、株式譲渡とは異なり、資産の譲渡取引として扱われるため、原則として消費税が課税されます。ただし、すべての資産の譲渡に消費税がかかるわけではありません。

事業譲渡における消費税の課税対象となる資産・ならない資産

事業譲渡において消費税の課税対象となるのは、建物、機械装置、棚卸資産、特許権や商標権などの無形固定資産、そしてのれん部分も課税対象となります。一方、土地、有価証券、債権などは消費税の課税対象とはなりません。事業譲渡を行う際には、どの資産が課税対象となるのかを正確に把握し、消費税額を適切に計算する必要があります。

売り手企業の仕訳例

売り手企業は、課税対象となる資産の譲渡対価に消費税額を上乗せして買い手企業から受け取ります。受け取った消費税額は、「仮受消費税」として負債勘定で処理します。例えば、課税対象となる資産の譲渡価額が10,000,000円で、消費税率が10%の場合、売り手企業は11,000,000円を買い手企業から受け取り、そのうち1,000,000円を仮受消費税として処理します。

借方貸方
現金預金11,000,000円資産8,000,000円
事業譲渡益2,000,000円
仮受消費税1,000,000円

後日、売り手企業はこの仮受消費税を税務署に納付する義務が生じます。

買い手企業の仕訳例

買い手企業は、課税対象となる資産の譲渡対価に消費税額を含めて売り手企業に支払います。支払った消費税額は、「仮払消費税」として資産勘定で処理します。上記の例に対応して、買い手企業の仕訳は以下のようになります。

借方貸方
課税対象資産10,000,000円現金預金11,000,000円
仮払消費税1,000,000円

買い手企業は、この仮払消費税を、消費税の納税額から控除(仕入税額控除)できる場合があります。

事業譲渡の仕訳を理解してスムーズな事業承継を

事業譲渡における仕訳は、売り手企業と買い手企業双方にとって、その後の財務報告や税務処理に大きく影響する重要なプロセスです。本稿では、事業譲渡の基本的な概念から、具体的な仕訳方法、そしてのれんや消費税が発生する場合の会計処理までを解説しました。正確な仕訳を行うためには、事業譲渡の特性を理解し、個々の取引内容に応じて適切な勘定科目を選択することが求められます。事業譲渡は複雑な取引となる場合も多いため、会計処理に不安がある場合は、税理士や公認会計士などの専門家に相談することを推奨します。

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