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  3. 会社分割の仕訳とは?新設・吸収分割の例や税務処理をわかりやすく解説
  • 作成日 : 2025年4月30日

会社分割の仕訳とは?新設・吸収分割の例や税務処理をわかりやすく解説

監修:守山幸史朗(公認会計士・税理士)

会社分割は、事業を切り出して別の会社に引き継がせる組織再編の方法で、事業承継やグループ再編などで活用されています。

ただし、税務上、会社分割の内容は「適格」か「非適格」かの判定が必要になり、会計処理も大きく変わります。さらに、承継会社と分割会社では仕訳の内容もまったく異なります。この記事では、新設分割と吸収分割の違いから、会計・税務上の処理、仕訳の例までをわかりやすく解説します。

目次

  • 会社分割とは?
    • 新設分割
    • 吸収分割
  • 会社分割の会計処理・税務の考え方
    • 適格分割(簿価処理)
    • 非適格分割(時価処理)
    • 消費税の扱い
    • 法人税の扱い
    • 繰越欠損金
  • 吸収分割で会社分割した場合の仕訳
    • 承継会社(受け入れ側)の仕訳
    • 分割会社(引渡し側)の仕訳
  • 会社分割した際に必要となる会計処理とタイミング
    • ① 分割契約締結前:資産・負債の選定と仕訳準備
    • ② 効力発生日(分割日):資産・負債の移動と株式発行
    • ③ 分割直後:新会社(新設分割の場合)の帳簿開始
    • ④ 決算時:会計処理・税務申告の確認
  • 会社分割の会計処理や仕訳のポイント
    • 適格か非適格かで処理が大きく変わる
    • 勘定科目は会社間で揃えておくとスムーズ
    • 株式の対価は資本科目で分けて処理する
    • 決算時に再確認しておきたいこと
  • 仕訳ルールを押さえて会社分割を正確に進めよう

会社分割とは?

会社分割とは、会社の一事業を他の会社に引き継がせる会社法上の組織再編の方法です。分割の方法には「新設分割」と「吸収分割」の2つがあり、それぞれ事業の譲渡先の会社との関係性等により仕訳の方法が異なるため、最初にその違いを理解しておくことが大切です。

新設分割

新設分割とは、既存の会社が分割によって新たに子会社を設立する方法です。親会社は「分割会社」、新しくできた子会社は「新設会社(承継会社)」となります。

この場合、分割会社が資産・負債を移転し、新設会社が新たにそれを取得する形になります。
対価として新設会社の株式を取得する処理があるため、分割会社では株式の取得、承継会社では資本金や資本準備金の仕訳も発生します。

吸収分割

吸収分割とは、既存の会社が他の既存会社に事業の一部を譲渡する方法です。譲渡元が「分割会社」、譲渡先は「承継会社」となります。

吸収分割では、新しい会社は設立されず、既存の会社同士の間で資産や負債の移転が行われます。
基本的には会計処理は新設分割と同じです。

会社分割の会計処理・税務の考え方

会社分割は、法人税法上「適格」か「非適格」かによって、会計処理や税務処理が大きく変わります。適格であれば移転する資産・負債の簿価での引き継ぎが可能ですが、非適格であれば時価評価が必要となり、譲渡益が法人税の課税対象になる可能性があります。
この項では、分割時に意識したい処理の基本的な考え方を紹介します。

適格分割(簿価処理)

適格分割とは、一定の条件を満たす会社分割に対して、税務上の課税が猶予される制度です。この場合、資産・負債は「簿価」で承継されるため、税金が発生せず、帳簿上も比較的シンプルに処理できます。

要件の一例:

  • 対価が全て株式であること
  • 分割後も事業が継続されること(完全支配関係以外の場合)
  • 主要な資産・負債を移転すること(完全支配関係以外の場合)

上記の要件はあくまで一例です。実際にはグループ内の会社分割か否か、グループ内の場合の支配関係の割合などにより要件が異なるため、間違いがないよう確認しておきましょう。

適格要件を満たしていれば、分割会社側でも承継会社側でも評価損益は発生せず、税務上の簿価で資産・負債の移転ができます。適格分割の仕訳は「吸収分割で会社分割した場合の仕訳」で説明します。

参考:組織再編税制とは?適格要件やグループ法人税制との違いを解説

非適格分割(時価処理)

非適格分割では、引き継がれる資産や負債を「時価」で評価します。そのため、分割会社には譲渡益や譲渡損が発生する可能性があり、課税対象になります。

時価評価により発生した損益は、損益計算書に反映されることになります。

分割対価は現金350万円、分割した事業の資産(有形固定資産)の帳簿価額は300万円、時価は350万円であった場合は以下のような仕訳となります。

借方(費用・資産)金額貸方(収益・負債)金額
現金及び預金3,500,000円有形固定資産3,000,000円
移転利益500,000円

非適格分割は、分割法人やその株主において、課税関係が発生することがあるため実務上はあまり多く使われません。

消費税の扱い

会社分割は組織再編行為のため、消費税の課税対象外とされています。したがって、会社分割という行為に対して消費税が課税されることはありません。

法人税の扱い

適格分割では、譲渡損益が発生しないため、法人税の申告上も課税対象外となります。一方、非適格分割では、時価との差額が法人税の課税対象になるため、申告時に注意が必要です。

つまり、分割する事業の資産に含み益がある場合には課税されることがあります。

繰越欠損金

適格分割であっても、非適格分割であっても、分割会社の繰越欠損金は承継されません。

吸収分割で会社分割した場合の仕訳

吸収分割とは、既存の会社が持つ事業の一部を、他の既存会社(承継会社)に移転する形の会社分割です。このとき、承継会社は資産・負債を受け入れ、分割会社はそれを帳簿から除却する仕訳を行います。
ここでは、適格分割(簿価で処理)を前提とした仕訳例を中心に紹介します。

承継会社(受け入れ側)の仕訳

例:分割会社から以下の資産・負債を引き継いだ

  • 売掛金 500,000円
  • 商品 700,000円
  • 備品 800,000円
  • 買掛金 400,000円
  • 借入金 600,000円

株式交付(合併対価):1,000,000円(全額資本金 )

資産・負債の受け入れ

借方(資産)金額貸方(負債)金額
売掛金500,000円買掛金400,000円
商品700,000円借入金600,000円
備品800,000円資本金1,000,000円

受け入れた資産・負債を簿価で計上します。また、その差額を資本金に計上します。

分割会社(引渡し側)の仕訳

例:承継会社に売掛金・商品・備品などを引き渡した

なお、承継会社は100%子会社に該当する。

※資産除却と負債の解除、交付株式の受入処理

資産・負債の除却

借方(負債)金額貸方(資産)金額
買掛金400,000円売掛金500,000円
借入金600,000円商品700,000円
関係会社株式1,000,000円備品800,000円

このように、吸収分割では「資産・負債の引渡しと受入」「株式の発行と取得」を両社で正確に記録することがポイントです。

会社分割した際に必要となる会計処理とタイミング

会社分割は、1日で完了する単純な取引ではなく、事前準備・実行日(効力発生日)・事後処理といった複数の段階を経て進みます。それぞれの段階で必要な会計処理が異なるため、処理漏れを防ぐには、いつ何をすべきかをあらかじめ把握しておくことが大切です。

以下、分割の流れに沿って、会計処理の必要なタイミングを説明します。

① 分割契約締結前:資産・負債の選定と仕訳準備

会社分割を行う前には、分割対象となる事業・資産・負債を選定する必要があります。この段階ではまだ仕訳は不要ですが、以下のような準備が必要です。

  • 承継対象となる資産・負債の明細を作成
  • 適格・非適格の判定(税務上の要件の確認)
  • 帳簿価格(簿価)と時価の確認
  • (グループ内組織再編の場合などは)承継会社・分割会社の科目の統一

この準備をもとに、分割日(効力発生日)に備えた仕訳の設計を行います。

② 効力発生日(分割日):資産・負債の移動と株式発行

分割効力日(通常は分割契約書に記載)には、実際に資産や負債の除却・受入れが発生します。この日に、承継会社と分割会社でそれぞれ仕訳が必要となります。

  • 分割会社:資産・負債の帳簿除却、株式の取得
  • 承継会社:資産・負債の受入、資本金・準備金の増加

③ 分割直後:新会社(新設分割の場合)の帳簿開始

新設分割の場合、新会社はこの日から帳簿を開始します。初期仕訳としては以下のような処理が発生します。

  • 資産・負債の受入(設立登記と同時に処理)
  • 資本金の計上
  • 開業費や創立費の処理(発生していれば)

④ 決算時:会計処理・税務申告の確認

会社分割を行った年度の決算では、以下の点をとくに確認しましょう。

  • 分割によって除却された資産・負債の処理が完了しているか
  • 適格分割であれば、評価損益が出ていないか
  • 取得した株式の勘定科目や取得価額は正しいか
  • 税効果会計が関わる場合(特に非適格でのれんが発生した場合など)、処理は正しいか

また、法人税申告にあたっては、新たな税務調整項目が発生する可能性があり、また、会社分割に関する明細書や添付書類などを準備する必要があるため、顧問税理士と連携して処理を進めます。

会社分割では、分割契約の締結から分割後の決算まで、一連の会計処理が発生します。
実務では、「分割日当日の仕訳」だけでなく、その前後の準備と整理が非常に大切です。

会社分割の会計処理や仕訳のポイント

会社分割では、資産や負債の移動が伴うため、会計処理が複雑になりがちです。しかも、承継会社と分割会社で仕訳内容が異なり、適格・非適格の税務判断も影響します。
ここでは、実務で気をつけておきたい6つのポイントを整理して紹介します。

適格か非適格かで処理が大きく変わる

仕訳を考える前に、分割が適格か非適格かを必ず確認することが大切です。適格分割であれば簿価で処理され、評価損益は発生しませんが、非適格分割の場合は時価で評価し、譲渡益や譲渡損が出る可能性があります。

会計上も税務上も、仕訳の出発点がこの判定になります。

勘定科目は会社間で揃えておくとスムーズ

グループ内組織再編の場合は、承継会社と分割会社で、資産や負債に使っている勘定科目が異なる場合、連結処理などで混乱が起こります。

たとえば、「機械及び装置」と「機械装置」など科目が異なると、連結決算で混乱が起こる可能性があります。

会社分割前に、勘定科目をあらかじめ統一しておくことをおすすめします。

株式の対価は資本科目で分けて処理する

会社分割で対価として株式が交付される場合は、承継会社では「資本金」または「資本金」と「資本準備金」が計上されます。会社法では、「払い込み額の2分の1を超えない額は資本準備金として処理できる」とされているため、計画や契約書に従って処理します。

決算時に再確認しておきたいこと

会社分割が行われた年度の決算では、次の点をチェックしておきましょう。

  • 分割資産・負債の仕訳が完了しているか
  • 新会社(新設分割)の期首資産計上が漏れていないか
  • 承継会社で資本金・資本準備金が正しく処理されているか
  • 確定申告書に分割内容が反映されているか

このような確認を怠ると、申告漏れや帳簿の不一致につながる可能性があります。

仕訳ルールを押さえて会社分割を正確に進めよう

会社分割では、資産や負債の移動、株式の発行、評価額の検討など、通常の仕訳とは異なる論点が多く出てきます。適格・非適格の区分によって処理内容が変わるため、事前に適格要件の確認と仕訳ルールを整理しておくことが欠かせません。分割会社と承継会社の仕訳を正確に組み立て、分割後の帳簿や税務申告にも対応できるよう、ひとつずつ丁寧に仕訳していきましょう。

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※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
  • 監修:守山幸史朗(公認会計士・税理士)

    2013年に公認会計士試験合格後、事業会社及び監査法人勤務を経て、2022年にもりやま会計事務所を開業。事業会社では経理・税務を、監査法人では上場会社・大会社・医療法人などの会計監査やリクルート委員を経験。独立後は主に関西の中小企業を中心に税務顧問のサービスを提供。趣味は魚釣り。

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