- 更新日 : 2025年9月4日
IFRS S2号「気候関連開示」とは?S1号・TCFDとの違いや産業別ガイダンスも
IFRS2号は、気候変動に関わるリスクや機会を企業が財務情報と整合性を確保しながら開示するための国際会計基準です。投資家やステークホルダーが企業の将来価値やリスクを評価しやすくなるよう、気候関連開示の原則や指針が示されています。本記事では、S1号やTCFDとの違い、産業別ガイダンス、日本語訳の入手方法などをわかりやすく解説します。
目次
IFRS S2号「気候関連開示」とは
IFRS S2号は、企業が気候変動に関する情報を財務報告と一貫した形で開示するための国際会計基準です。投資家にとって重要な気候リスク・機会の情報を明確に示すことを目的としています。
IFRS S2号の目的
IFRS S2号が制定された主な目的は、企業が直面する気候関連のリスクや機会を財務情報と統合して開示し、投資家が適切な投資判断を行えるように支援することです。
気候変動による影響は、技術革新や新市場の誕生、あるいは原材料コストの変動や既存市場の縮小、消滅など、多岐にわたります。これらを財務諸表にも反映できるよう、S2号では開示内容や開示方法の指針を示し、業界や規模に関わらず、一貫性・比較可能性の高い情報提供を目指しています。
IFRS S2号の適用範囲
IFRS S2号の適用範囲は上場・非上場や企業規模問わず、投資家や金融機関からの情報公開を求められる頻度が高い企業が中心です。具体的には、気候変動による財務リスクが将来的な事業継続やキャッシュ・フローに重大な影響を与える可能性がある企業が対象となり得ます。
各国の法制度や規制当局の方針により、適用が強制される企業の範囲は異なる場合もありますが、特にグローバルに事業を展開する企業は早めに対応するのが望ましいです。
IFRS S2号の適用時期
IFRS S2号は、2023年6月に最終基準が公表され、2024年以降の会計期間からの適用が可能となりました。ただし、国や地域によって導入スケジュールは異なり、日本国内でも金融庁や企業会計基準委員会が義務化も含めて詳細を検討中です。
企業としては、早めにS2号の要件や内容を理解し、自社の開示体制を整備しておくことがリスク管理や投資家対応の面で有効といえるでしょう。
IFRS S1号とS2号の関係
IFRS S1号はサステナビリティ関連情報全般の開示に関する「全般的要求事項」を規定した基準です。一方、IFRS S2号は気候変動に特化した開示基準となっています。
つまり、S1号が大枠となる網羅的なフレームワークを提供するものであり、S2号は気候関連開示に焦点を当てて詳細を補完する位置づけです。企業はまずS1号の基本原則を踏まえつつ、気候変動リスクと機会の重要性が高い場合には、S2号でさらに詳細な開示要件を満たすことが望ましいです。
IFRS S2号とTCFDの違い
TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)は、金融安定理事会(FSB)が提言した気候関連リスクに関する開示のフレームワークであり、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」という4つの柱を提示しています。
一方、IFRS S2号はTCFDの考え方を取り込みつつも、国際会計基準としてより厳密な報告要件や比較可能性の高い会計処理を目指したものです。TCFDが自主的なガイドライン色を残すのに対し、IFRS S2号は会計基準として準拠表明が可能な枠組みを提供します。
IFRS S2号のコア・コンテンツ
IFRS S2号のコア・コンテンツは、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」の4つの要素から構成されています。それぞれの項目で何が求められるのか、以下で詳しく見ていきましょう。
ガバナンス
IFRS S2号では、気候関連リスクと機会に対するガバナンス体制の明確化が求められます。例えば、取締役会や経営陣がどの程度気候変動問題を監督しているか、議論の頻度や組織構造を含めた体制が整っているかといった事項が挙げられ、サステナビリティ委員会の設置や経営トップのコミットメントなどが重要視されます。
投資家やステークホルダーはこれらの情報を通じて、企業がどの程度積極的に気候変動リスクに対応しようとしているかを判断します。
戦略
戦略の開示では、気候変動が企業のビジネスモデルや経営戦略にどのような影響を与えるか、長期的視点を含めて説明することが求められます。例えば、温室効果ガスの排出削減目標や、再生可能エネルギーの導入計画など、具体的な戦略やロードマップを示すことで、投資家やステークホルダーに企業の将来像をイメージさせやすくします。
シナリオ分析や市場動向の調査結果などを用いて、リスク・機会を定量的に把握する取り組みも推奨されます。
リスク管理
リスク管理の開示では、企業が気候関連リスクをどのように識別・評価・優先順位づけし、実際にどのような施策を講じているかを明確にすることが重要です。物理的リスク(異常気象など)や移行リスク(低炭素経済へのシフトに伴う規制変更など)など、気候変動特有のリスクを具体的に開示し、その管理体制やモニタリング方法を示します。
こうした情報を比較することで、投資家やステークホルダーは企業のリスク管理の体制を客観的に評価できるようになるのです。
指標及び目標
指標及び目標の開示では、企業がどのようなKPIを設定し、どのように進捗状況を測定しているかを示します。温室効果ガス排出量、エネルギー使用量、あるいは製品やサービスのライフサイクルにおける環境負荷など、多角的に指標を設定することが望まれます。
また、具体的な削減目標や達成時期などを示すことで、投資家は企業のコミットメントや実行力を判断しやすくなります。報告期間ごとの数値比較も重要です。
IFRS S2号の適用による企業への影響
IFRS S2号が適用されると、企業は気候変動によるリスクと機会を、財務報告と同等の精度で開示する必要が生じます。これを実現するためには内部統制やデータ収集の仕組み強化、専門人材の確保などを実行する必要があり、短期的には導入コストが増加するかもしれません。
しかし、中長期的には、リスクの早期発見や投資家・ステークホルダーからの信頼向上、環境規制への迅速な対応などのメリットが得られる可能性があります。
IFRS S2号の原文・日本語訳の入手方法
IFRS S2号の原文及び日本語訳は、主にIFRS財団や公認会計士協会、公益財団法人財務会計基準機構の公式サイトで提供されています。
IFRS財団の公式Webサイトにて、「IFRS S2 Climate-related Disclosures」として英語版が公開されています。英語原文には、開示項目の詳細や適用上の留意点などが網羅的に記載されているため、企業がIFRS S2号導入プロセスを検討するうえでの参考資料となります。
最新のアップデートや解釈指針なども随時発表されるため、定期的に公式サイトを確認しましょう。
参考:IFRS S2 Climate-related Disclosures|IFRS
日本語訳「IFRS S2号 気候関連開示」
IFRS S2号の日本語訳については、IFRS財団の日本語サイトに掲載されています。早めに目を通し、対応準備を進めることがおすすめです。
参考:2023 – Issued Standards|IFRS
IFRS S2号の適用に関する産業別ガイダンスとは
IFRS S2号の要求事項をよりその企業に合わせた実務的に落とし込むために、「産業別ガイダンス」が提供されています。
例えば、エネルギー、製造業、金融など、業種ごとにリスク・機会や測定方法が異なるため、それぞれに合わせた具体的な開示事例やベストプラクティスが示されています。これによって、企業は自社に合った気候関連開示を効率的に行いやすくなります。
S2号を活用して気候変動リスクに取り組む企業体制の構築を
IFRS S2号の導入により、企業が気候変動リスクを財務的に捉え、具体的な施策や長期戦略の策定につなげる動きが加速することが予想されます。
特にグローバル展開を目指す企業や、投資家・ステークホルダーとのコミュニケーションを強化したい企業にとって、S2号は価値のある基準となるでしょう。
今後ますますS1号やTCFDと連携した情報開示、さらには産業別ガイダンスの活用を通じて、より信頼性と透明性の高い気候関連情報の提供が求められるようになるはずです。早めの理解と準備が、企業価値の向上につながる一歩となるかもしれません。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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