- 作成日 : 2024年12月3日
貿易書類は電子データ等で保存できる? 関税法における電子帳簿等保存制度を解説
令和3年度税制改正によって関税定率法等の一部を改正する法律(以下、関税法)が改正されました。改正前の関税法では貿易書類、すなわち関税関係の帳簿書類を電子データ等で保存する場合は、電子帳簿保存法の規定が準用されていました。
しかし改正後は、関税法独自の電子帳簿等保存制度が設けられています。この記事では、関税法における電子帳簿等保存制度について解説していきます。
目次
保存が必要な関税帳簿書類の種類と期間
輸入者または輸出者には、以下のことが義務づけられています。
- 輸出入した貨物の品名や数量、価格などを記載した帳簿の備付け
- 当該帳簿や書類等の一定期間の保存
関税法において備付けおよび保存をしなければならない帳簿のことを、関税関係帳簿といいます。そして関税法において保存をしなければならない書類のことを、関税関係書類といいます。
この関税関係帳簿書類の保存期間は、輸入者と輸出者によって違う点に注意しましょう。
輸入者|保存が必要な帳簿書類と保存期間
広義の輸入者とは、輸入貨物の仕入書(ない場合は船荷証券など)に記載されている荷受人のことを指します。そのうち輸入を事業としている者には、関税法において、帳簿の備付けが義務づけられています。
輸入者にとって保存が必要な関税関係帳簿書類と、その保存期間については表のとおりです。
| 保存が必要な関税関係帳簿書類 | 保存期間 | |
|---|---|---|
| 帳簿 | ※以下の6項目が記載されている帳簿
| 輸入の許可を受けた翌日から数えて7年間 |
| 書類 | ※以下のような書類
| 輸入の許可を受けた翌日から数えて5年間 |
| 電子取引の取引情報 | 電子取引を行った場合の取引情報 | 輸入の許可を受けた翌日から数えて5年間 |
輸出者|保存が必要な帳簿書類と保存期間
広義の輸出者とは、貨物を輸出する者です。そのうち日本を出国する際に携行する貨物や輸出申告を行わない郵便物を除き、貨物を事業として輸出する者には、関税法において、帳簿の備付けが義務づけられています。
参考:関税法第94条第2項
輸出者にとって保存が必要な関税関係帳簿書類と、その保存期間については表のとおりです。
| 保存が必要な関税関係帳簿書類 | 保存期間 | |
|---|---|---|
| 帳簿 | ※以下の6項目が記載されている帳簿
| 輸出の許可を受けた翌日から数えて5年間 |
| 書類 | ※以下のような書類
| 輸出の許可を受けた翌日から数えて5年間 |
| 電子取引の取引情報 | 電子取引を行った場合の取引情報 | 輸出の許可を受けた翌日から数えて5年間 |
関税関係帳簿書類は電子データ等で保存できる
上記でご紹介した関税関係帳簿書類は、一定の要件のもと電子データ等で保存できます。
かつては電子帳簿保存法の規定が準用されていましたが、令和3年度税制改正によって関税法が改正されてからは、独自の保存制度にのっとって保存できるようになりました。
関税法における電子帳簿等保存制度には、3つの制度があります。
- 電磁的記録等による保存等
- スキャナ保存
- 電磁的記録の保存
それぞれについて、詳しくみていきましょう。
【関税関係帳簿書類】電磁的記録等による保存等(任意)
電磁的記録等による保存等は、はじめから一貫してコンピューターで作成した関税関係帳簿書類について、電磁的記録による保存を認める制度です。
はじめから一貫してコンピューターで作成した関税関係帳簿には、下記の2種類があります。
- 優良な電子帳簿
- 優良な電子帳簿以外の帳簿
優良な電子帳簿では、下記の条件を満たし、関税関係帳簿に記載されている事項を修正申告または更正があった場合に、過少申告加算税が5%軽減されます。
【優良な電子帳簿の条件】
|
参考:関税法第12の2第3項
優良な電子帳簿の要件には、たとえばシステム関係書類等の備付けや、電磁的記録の記録事項に訂正や削除が生じた場合、その履歴を確認できることなどがあげられます。
そのほかの要件については、税関の『帳簿書類の保存義務と電子データによる保存の概要』6ページに掲載されている【表1】で確認できるので、チェックしてみてください。
なお、優良な電子帳簿であるかどうかにかかわらず、関税関係帳簿書類を電磁的記録等により保存する際は、はじめから一貫してコンピューターで作成していることがポイントになります。
つまり関税関係帳簿書類をコンピューターで作成中に、手書きで修正を行った場合は、電磁的記録等による保存等は認められません。
このように、関税関係帳簿書類を電磁的記録等により保存する場合は、いくつかの要件が定められているので注意しましょう。
これも税関の『帳簿書類の保存義務と電子データによる保存の概要』6〜7ページに掲載されている【表1】【表2】【表3】で確認できます。あわせてチェックしてみてください。
【関税関係書類】スキャナ保存(任意)
スキャナ保存は、関税関係書類について一定の要件を満たしたうえで、書面でなくスキャナで読み取った電磁的記録によって、保存することを認める制度です。
関税関係書類のうち下記の2種類については、事務の手続きを明らかにした書類を備付けることによって、入力期間の制限がなくなります。
- 財務大臣が定める書類(一般書類)
- スキャナ保存を開始する日より前に作成もしくは受領した一般書類以外の書類(過去分重要書類)
一般書類とは、資金や物の流れに直結したり、連動したりしない書類のことで、見積書や注文書などが該当します。
過去分重要書類とは、スキャナ保存を開始する日より前に作成もしくは受領した一般書類以外の書類のことです。資金や物の流れに直結したり、連動したりする書類のことを指し、契約書や領収書、請求書などが該当します。
過去分重要書類については、税関長に所定の届出書を提出し、事務の手続きを明らかにした書類の備付けを行うなど、一定の要件を満たしたうえでスキャナ保存が認められます。
なお、一つひとつの要件については、税関の『帳簿書類の保存義務と電子データによる保存の概要』8〜9ページにある【表4】で確認できるので、ご一読ください。
【電子取引の取引情報】電磁的記録の保存(義務)
電磁的記録の保存は、関税法において義務化されている制度です。
具体的には、関税関係帳簿書類の保存義務がある輸出入者が電子取引を行った場合は、当該取引情報を電磁的記録により保存しなければなりません。
電子取引とは、電子メールやインターネットなどを介して行う取引のことです。電子メールの添付ファイルや、インターネット上に設けたサイトを通じて授受した取引情報などが該当します。
取引情報とは、貨物の取引に関して受領したり、交付したりする契約書や仕入書、包装明細書などのことです。
つまり関税関係帳簿書類の保存義務がある輸出入者が、貨物の取引に関する契約書を電子メールの添付ファイルで授受した場合は、それを電磁的に保存する必要があるのです。
なお、保存の際はいくつかの要件を満たす必要があります。そのひとつが検索機能の確保であり、下記の3つの要件を満たさなければなりません。
- 検索条件として、取引年月日その他の日付、取引金額、取引先などを設定すること
- 1のうち日付や取引金額について、範囲を指定して検索できること
- 1のうち、2つ以上の任意の記録項目を組み合わせて検索できること
ただし、税関職員から電磁的記録の提示や提出を求められ、これに応じられる場合は、上記2および3の要件は不要になります。
なお、取引情報をシステム等を利用せずに保存する場合は、ファイル名に下記の項目を統一した順序で入力し、それを任意のフォルダに格納することで要件を満たせます。
- 取引年月日その他の日付
- 取引金額
- 取引先
さらに詳しい内容については、税関の『帳簿書類の保存義務と電子データによる保存の概要』10ページにある【表5】でご確認ください。
電子帳簿保存法と違う点は?
関税法の電子帳簿等保存制度が、電子帳簿保存法と大きく違う点は、電子取引の取引情報の扱い方です。
電子帳簿保存法では、電子取引の取引情報は電磁的記録でのみ保存することとされており、原則として書面で保存することはできません。
参考:電子帳簿保存法第7条
しかし、関税法の電子帳簿等保存制度では、当該電磁的記録を書面やCOMに出力し、保存してもよいことになっています。
参考:関税法第94条の5
関税法の電子帳簿等保存制度にのっとり、貿易書類を適切に電子データ等で保存しよう
令和3年度税制改正によって関税法が改正される前は、貿易書類を電子データ等で保存する際は、電子帳簿保存法の規定が準用されていました。しかし改正後は、関税法独自の電子帳簿等保存制度が設けられています。
関税法の電子帳簿等保存制度にのっとって、貿易書類を電子データ等で保存する際の要件は、電子帳簿保存法とかけ離れているわけではありません。ですが、電子取引の取引情報の扱い方が違う点には注意が必要です。
関税法の電子帳簿等保存制度について理解し、貿易書類を適切に電子データ等で保存しましょう。
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