- 更新日 : 2022年10月31日
個人事業主が法人化(法人成り)するメリット・デメリットまとめ

「個人事業主」とは、個人で独立し反復・継続して事業を行っている方を指します。これに対して「法人」は、法人格を取得して事業を行う形態を指します。今回は「個人事業主」と「法人」の違いや経費の捉え方、個人事業主のメリットやデメリット、法人設立に係る費用や設立資金、社会保険の加入手続きなどを解説します。
目次
個人事業主とは?
「個人事業主」とは、個人の人格のまま独立し事業を反復継続して営んでいる方を指します。専業で事業を営む方は勿論のこと、会社員として働きながらサイドワークで事業を行っている方も「個人事業主」に含まれます。
個人事業主の場合、設立などの登記手続きが必要な法人と違い、税務署に「開業届」を出すだけで済みます。個人で事業を始める際、特別な手続きは必要ありませんので、個人と個人事業主では明確な区別がつきにくいところがあります。
個人事業主について詳しく知りたい方は、以下を参照してください。
法人とは?
「法人」とは、法務局で法人設立登記をして法人格を取得し、法律上の人格に基づいて事業を営む組織形態を指します。個人事業主と同様に、経営者の方が事業の決定権を持つことには変わりありませんが、経営者はあくまで法人格の中にいる個人でしかありません。法律上は、法人格が対外的な窓口になるというイメージです。したがって、金融機関から融資を受ける場合や取引先と契約を結ぶ際の当事者は、「金融機関と法人」「取引先と法人」となります。
法人について詳しく知りたい方は、以下を参照してください。
個人事業主と法人の違いは?
では、「個人事業主」と「法人」の違いはどこにあるのでしょうか?それぞれの相違点を挙げてみましょう。
手続き・費用の違い
個人事業主として開業する場合は、特に申請費用はかかりません。開業届を税務署へ提出すれば開業手続きは完了します。
一方、会社を設立する場合、「商業登記」が必要になります。具体的には、定款作成にかかる費用や登録免許税などが必要になります。株式会社は約24万円、合同会社は約10万円です。また会社設立時には、定款認証のために公証人役場、登記をするためには法務局へ出向くなど、書類の準備から登記申請までおおよそ1週間はかかると考えておきましょう。
税金(所得税・法人税)の違い
個人事業主はその名の通り、個人で事業を行う人のことを指し、事業により稼いだもうけ、いわゆる「所得」に対して所得税が課せられます。所得税はその額に応じて税率が増える累進課税制度を採用しているため、当然所得が多くなればなるほど税率も高くなります。(5〜45%の間で所得に応じて変化します)
【所得税の税率表】
1,949,000円まで | ||
3,299,000円まで | ||
6,949,000円まで | ||
8,999,000円まで | ||
17,999,000円まで | ||
39,999,000円まで | ||
一方で法人の場合、事業で稼いだ所得に対して法人税が課せられます。所得税の税率が累進課税制度であるのに対し、法人税は所得に応じた税率がほぼ一律であるため、所得に対する税金の割合(実効税率)が所得税より低くなります。売上や従業員数、事業規模を拡大させていく計画がある場合には、法人化を検討するのも一つの方法です。
経費の違い
個人事業主が収入を得るために支出したものを「必要経費」あるいは「経費」と呼びます。個人事業主も法人も、基本的には「収入を得るために要した支出」だけを収益から控除できます。
個人事業主の場合、仕事とプライベートの区分が法人より曖昧になりがちです。個人と個人事業を明確に区分すること自体が難しいため、発生する経費もまた事業にかかるものかどうか判断しにくいことがその理由です。
例えば、自宅の一部を事業所として使用しているケースで、電気料金の検針メーターが一つしかないようなときはどうでしょう。この場合、電気料金は事業とプライベートをまとめて一括で請求されます。先にも述べた通り、必要経費にすることができるのは「収入を得るために要した部分」だけですから、当然プライベートの部分は除外しなければなりません。検針メーターは1つなので、使用した電力を明確に区分することは困難です。そこで、事業の供用割合に応じた按分計算を行う必要が出てきます。これを「自己否認」と呼びます。
法人でも「自己否認」するケースはありますが、按分計算は個人事業特有の計算方法であるといえます。
個人事業主が法人化するメリットは?
個人事業から法人に組織変更(法人成り)したり、新規に法人として事業を立ち上げたりするなどの方法で、事業を法人化することも可能です。法人化することのメリットについて解説します。
納税額を抑えられる
所得税は累進課税制度を採用していますので、所得が増加すればするほど高い税率で所得税を計算しなければなりません。これに対して法人税の税率は最大でも23.2%です。黒字が多くなればなるほど、法人化したことのメリットが活きてきます。
「欠損金」を10年間繰越できる
事業を営んだ結果、税法上の所得が赤字になることがあります。この赤字を法人税法では「欠損金」と呼びますが、法人の場合、この欠損金を最大で10年間繰り越せます。繰り越された欠損金は、その後10年間のうちに生じた黒字と相殺できます。黒字と赤字を相殺しますので、節税に繋がるわけです。
ただし、繰越欠損金制度の適用を受けるためには、税務署に対して事前に「青色申告の承認」を受けておく必要がありますので注意してください。
資金調達はしやすくなるか?
運転資金を調達する一つの方法に金融機関からの借入がありますが、法人化することで個人事業主と比べて資金調達がしやすくなるのか?という疑問があります。結論からいえば、資金調達面で法人化することのメリットは、以前に比べて低くなっているといえます。
以前は、法人を設立する時に株式会社で最低1,000万円、有限会社で最低300万円の資本金を積む必要がありました。資本金は「自己資本」とも呼ばれ、法人の信用を高める効果がありましたが、現在では1円からでも法人を設立できます。資本金に対する信用度が下がった結果、法人化することのメリットは少なくなっています。金融機関が融資を実行するにあたって審査するのは「事業計画」など、事業の収益性や先見性といった項目です。
個人事業主が法人化するデメリットは?
メリットが大きい個人事業主の法人化ですが、同時に、個人事業主特有のメリットを手放すことにもなります。法人化することのデメリットを挙げてみましょう。
登記費用がかかる
法人化するためにはまず、会社の法律である「定款」の認証を受け、その後、法務局で法人設立の「商業登記」をかけなければなりません。定款の認証費用、商業登記にかかる登録免許税等の費用が発生します。また、会社の住所や事業目的を変更するときや、役員の重任登記をするときなどにも費用がかかります。
社会保険の加入義務が生じやすい
個人事業主として従業員を雇用している場合、常時雇用する従業員が5名未満であれば社会保険の適用事業所にはなりません。しかし、法人化してしまうと従業員を雇用しているか否かを問わず、必ず社会保険に加入しなければなりません。社会保険の適用事業所になると、社会保険料の会社負担が生じたり、適用関係の届出管理などの事務負担も増加したりすることになります。
納税額が増加するケースも
毎期、経常的に黒字を計上する法人であれば法人化のメリットを享受できます。しかし、赤字が続く法人の場合には法人化が逆にデメリットとなることもあります。所得税は所得が赤字であれば納税額は発生しません。しかし、法人の場合、都道府県民税や市区町村民税に「均等割」があり、赤字であっても必ず一定金額を納税しなければならないとされています。法人化したことで本来発生しない税金が毎期発生するといったケースも想定されます。
個人事業主が法人化するおすすめのタイミングは?
個人事業主が事業を継続したまま、会社組織を法人に変更することを「法人化」あるいは「法人成り」と呼びます。事業が継続しているので、外観上は同一組織のように思えますが、個人と法人格は別物として捉えます。法人設立の時点で一旦個人事業を廃業し、新たに法人として事業を始めると考えるのです。
法人化するタイミングとして最も重要なのが「消費税の納税義務」です。消費税は、課税売上高が1,000万円を超えた年の「翌々年」から納税義務が生じます。したがって、課税売上高が1,000万円を超えた年の「翌年」までに法人化してしまえば、消費税の納税義務がなくなるということです。さらに、法人設立後は2年間、消費税の納税義務が発生しませんので、免税期間を延長することができます。
ただし、特定期間の売上高(または給与等の支払額)が1,000万円を超えた場合には、法人設立の翌年から納税義務が発生しますので注意してください。
法人化について詳しく知りたい方は、以下を参照してください。
法人化する前に個人事業主と法人の違いを比較しましょう
法人化にはメリットもデメリットも存在します。個人事業主の方が法人への組織変更を検討している場合には、法人のメリット・デメリットをしっかり理解したうえで、自分が営む事業にマッチした選択をする必要があるといえます。
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よくある質問
個人事業主と法人の違いは?
個人事業主は個人の人格で事業を行うのに対し、法人は「設立登記」により法人格を取得する必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。
個人事業主が法人化するメリットは?
所得に対する税率を抑えることができる、欠損金を10年間繰り越すことができる等があります。詳しくはこちらをご覧ください。
個人事業主が法人化するデメリットは?
登記費用がかかる、社会保険の加入義務や納税額が増加する可能性がある等が挙げられます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。