- 更新日 : 2024年8月8日
法人税申告書の別表15とは?見方や書き方、注意点まで解説
法人税申告書の別表15は、法人の交際費等に関する明細を示した書類です。この記事では、別表15の種類、別表15の各項目と書き方、別表15作成時の注意点まで解説していきます。
目次
法人税申告書の別表15とは
別表15は、法人の交際費等の損金算入に関わる明細書です。交際費等の損金不算入の規定を受ける法人は作成が必要です。
別表15は、別表15と別表15付表の2種類があります。別表15は、交際費等の損金不算入の規定を受けるすべての法人が作成する明細書です。明細書を使って、交際費等の損金算入限度額などを計算します。
別表15付表は、交際費等の損金不算入の規定を受ける法人が通算法人である場合に作成する書類です。通算法人は、中小法人に認められる定額控除限度額の計算が異なることから、別紙で明細書が設けられています。
別表15は「国税庁のサイト」から入手できるほか、e-Taxソフトなどからも入手できます。
法人税申告書全体の作成方法は、以下の記事をご確認ください。
法人税申告書の別表15に記載する主な項目と書き方
法人税申告書の別表15はどのように作成するのか、別表15と別表15付表の各項目と書き方について説明します。
別表15「交際費等の損金算入に関する明細書」

別表15は、交際費等の損金不算入額を計算する部分と、支出した交際費等の金額を記載する部分に分けられます。先に作成するのは、明細書下部の交際費等の金額の明細を記載する部分です。
支出交際費等の額の明細

「支出交際費等の額の明細」部分では、法人が支出した交際費等について、科目ごとに金額を記載します。なお、法人税における交際費等は、得意先などの関係のある者等に対して、接待や贈答などのために法人が支出する費用をいいます。交際費等の額は会計上の勘定科目では判断しません。会計上は接待交際費でなくても税務上は該当する場合、あるいは接待交際費に計上していても税務上は該当しない場合があります。
6.支出額
対応する科目の支出額を記載します。
7.交際費等の額から控除される費用の額
対応する科目の金額のうち、寄附金・福利厚生費・広告宣伝費など、交際費等に含まれない金額を記載します。
8.差引交際費等の額
「6」-「7」の金額を記載します。
9.(8)のうち接待飲食費の額
「8」に記載した金額のうち、接待飲食費(交際費等で社内飲食費を除く飲食等に要する費用で帳簿書類の保存があるもの)の金額を記載します。
交際費等の損金算入の計算(上部)

下部に記載した支出交際費の額をもとに作成していきます。
1.支出交際費等の額
「8」の合計額を記載します。
2.支出接待飲食費損金算入基準額
「9」の合計×50/1000の金額を記載します。
3.中小法人等の定額控除限度額
以下の金額のうち、いずれか少ない金額を記載します。
a) 「1」の支出交際費等の額
b) 800万円×●/12(●はその事業年度の月数)
c) 別表15付表「5」の金額
4.損金算入限度額
中小法人等に該当する場合は、「2」か「3」のいずれか多い額を記載できます。中小法人等以外の法人は「2」の金額を記載します。ただし、中小法人等以外の法人で、期末資本金(または出資金)の額が100億円を超える法人については、交際費等について損金算入できる金額はありません。全額が損金不算入です。
5.損金不算入額
交際費等の金額で損金に算入できない金額です。「1」-「4」の金額を記載します。
別表15 付表「通算定額控除限度分配額の計算に関する明細書」

別表15の付表は、通算法人に関わる明細書です。作成するにあたり、別表15(1)、別表18(3)を用意します。
1.支出交際費等の額
別表15の「1」の金額を転記します。
2.他の通算法人の支出交際費等の額の合計額
別表18(3)の「24」の合計の金額から「1」の金額を差し引いた額を記載します。
3.計
「1」と「2」の合計金額を記載します。
4.通算定額控除限度額
800万円×●/12の金額を記載します。●に入る値は、通算親法人のその事業年度の月数です。
5.通算定額控除限度分配額
「4」×「1」/「3」の金額を記載します。
通算法人は、通算法人以外の法人とは異なり、交際費等の損金不算入について別段の定めがあります。中小法人に適用される定額控除限度額については、800万円を限度にグループ内の通算法人と按分した額を適用します。
法人税申告書の別表15を書く際の注意点
交際費の損金算入について、中小法人などには定額控除限度額の特例が設けられています。ただし、資本金や出資金の額1億円以下の中小法人であっても大法人と完全支配関係のある法人は対象になりません。
大法人とは、資本金または出資金の額が5億円以上の法人のことです。特例を適用できない場合、別表15「3」の中小法人等の定額控除限度額は計算しないことに注意しましょう。
また、中小法人等の定額控除限度額は、800万円×●/12(●はその事業年度の月数)が基本であるものの、資本や出資を有しない法人などは扱いが異なります。法人の区分に応じた記載が必要です。
別表15は交際費等の損金不算入に関わる明細書
別表15は、交際費等の損金不算入額を計算するための書類です。交際費等の支出は法人では広く行われているため、作成の必要がある法人も多いものと推測されます。社内で作成する場合は、今回紹介した書き方を参考にされてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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