- 更新日 : 2024年8月8日
固定資産の取得価額と減価償却の基本を解説
固定資産は、取得価額をもとに減価償却(取得価額を耐用年数にわたって資産から費用に計上していくこと)を行います。固定資産の取得時には、本体価格だけでなくさまざまな費用がかかるのが一般的ですが、減価償却の対象にはどこまで含めることができるのでしょうか。この記事では、取得価額の定義と取得価額に含める費用、含めなくてもよい費用について解説していきます。
取得価額とは
固定資産の取得価額とは、対象の資産の取得に要した費用を指します。固定資産は購入して取得するだけでなく、自家建設や資産同士の交換などさまざまです。入手方法によって、以下のように取得価額の決め方が異なります。
- 購入の場合の取得価額
購入代金+付随費用(運送費や据付費、買入手数料など)-値引・割戻
- 購入の場合の取得価額
- 固定資産同士(土地と土地など)の交換の場合の取得価額
交換に出した自己所有の資産の適正な簿価
- 固定資産同士(土地と土地など)の交換の場合の取得価額
- 固定資産と株式(または社債等)の交換の場合の取得価額
株式または社債等の時価または適正な簿価
- 固定資産と株式(または社債等)の交換の場合の取得価額
- 現物出資(株式発行の対価に固定資産を取得した)の場合の取得価額
株式の発行価額
- 現物出資(株式発行の対価に固定資産を取得した)の場合の取得価額
- 贈与の場合の取得価額
贈与された固定資産の時価または公正な評価額
以上のように、固定資産の取得価額は取得の方法によって変わってきます。
取得価額に含める費用
固定資産を購入により取得した際の取得価額には、主に以下のような付随費用を含めることができます。
- 購入した資産の引取運賃や荷役費
- 購入した資産の買入手数料
- 購入した資産の据付費や試運転費
- 資産を輸入した場合の附帯税を除く関税
固定資産の購入時に発生した費用だけでなく、引き受けにかかる費用、資産の使用にともない必ず発生するような費用は、原則的に付随費用として取得価額に加算されます。
なお、取得した固定資産が土地である場合は、次のような費用も取得価額に算入します。
- 取得の際に支払った立退料
- 埋め立てや地ならしなど土地造成や改良のための費用
- 宅地開発費等の開発負担金 など
取得価額に含めなくてもよい費用
税法上、固定資産の取得価額に含めなくてもよい費用(損金)は明確に決められています。次に挙げる支出をその事業年度の費用に計上したときは、税務上も取得価額に含めず損金にできます(※法人税法上の取り扱いです)。
【税法上取得価額に含めなくてもよい付随費用の例】
- 不動産取得税
- 自動車取得税
- 新増設による事業所税
- 登録免許税やそのほかの登記や登録に要する費用
- 建設計画の変更で不要になった費用
- 違約金(取得に関する契約を解除してほかの資産を取得した場合)
- 減価償却資産の取得に要した借入金の利子のうち稼働開始までに発生したもの
- 割賦販売契約で取得した資産のうち購入代金と利息・代金回収費用が明らかに区分されている場合の利息・費用
税法上の扱いは損金経理が条件となっていますので、税務上の取得費用に含めない場合は、会計処理の際に費用に計上するよう注意しましょう。
なお、会計上は付随費用の取り扱いについて明確な定めはありません。ただし、「企業会計原則と関係諸法令との調整に関する連続意見書」において、正当な理由がある場合を除いて付随費用の一部または全部を取得価額に含めるように定められています。
そもそも減価償却とは
減価償却とは、時間の経過とともに価値が減少する固定資産の実態に合わせて、取得価額を費用に配分する会計処理を指します。固定資産の取得時に一時に費用とするのではなく、資産が活用される実態に合わせて会計上に反映させるのが目的です。
減価償却のやり方や仕訳、決算書との関係などについては以下の記事で詳しく解説していますのでこちらもご覧ください。
取得価額は固定資産の取得の仕方で変わってくる
固定資産の減価償却にも関わる取得価額の算定方法は、取得の仕方で変わってきます。取得形態に応じて取得価額を導き出せるようにしておきましょう。
なお、迷いやすいのが、固定資産を購入により取得した場合の付随費用の扱いです。原則的に、固定資産の購入に直接必要な費用は付随費用として取得価額に含めますが、一部の租税公課など取得価額に含めなくてもよい費用もあります。税務申告に関係してきますので、取得価額に含めなくてもよい費用の扱いについても確認しておきましょう。
よくある質問
取得価額とは?
固定資産を取得するために要した価額、例えば購入の場合は購入代金に付随費用を含めた額をいいます。詳しくはこちらをご覧ください。
減価償却とは?
時間の経過とともに価値が減少する固定資産の実態を会計上にも反映するため、耐用期間に応じて取得価額を費用に配分する会計処理です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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