- 更新日 : 2025年2月20日
スーツ代は経費にできる?できない?仕訳まで解説
経費に含めてよいものかどうか迷う費用のひとつが、スーツ代です。スーツ購入費用を経費に入れられるかの基準は、一言でいうと事業に必要かどうかです。業務用に購入したスーツの費用は経費に入れられますが、仕事用だと明確に説明できない場合、経費外と判断されます。今回は、スーツ購入費用を経費にできるケース・できないケース、経費算入時の注意点を解説します。
スーツ代が経費にできるケース
スーツ代を経費にできるのは仕事用に購入したスーツに限られます。経費に含めるかどうかの基準は業務の遂行に必要な支出かという点です。たとえば、職場で使用する文房具やオフィスチェアの購入費用は、経費として計上できます。
スーツの場合、ややこしいのはプライベートで着る衣服でもあることです。いくら仕事で着用していても、結婚式のようなプライベートな場面でも用いる場合、スーツ代を経費に含めるのは難しくなります。
私服のパーカーやジーンズの購入費用は、経費に入れられないことと同様の理屈です。衣服住の一種であり、業務とは異なる生活上必要な支出だと捉えられます。作業着や制服の場合は文句なしに経費になりますが、スーツは少し特殊です。
スーツ代を経費としてカウントするには、仕事以外には使用していないと自信を持って証明できる必要があります。
弁護士や営業マンなど、スーツを常態的に着用する職種の方のスーツ購入費用は、経費として認められます。また、講演会やセミナーに登壇するためにスーツを新調した場合も同じです。
普段は在宅で仕事をしている方が、取引先に常駐する必要性が出たためスーツを購入した場合も、経費算入が認められやすいでしょう。
スーツ代が経費にできないケース
業務上必要だと明確な説明ができないスーツ代は経費に含めることが不可です。フリーランスで普段カジュアルジャケットやチノパンで仕事をしている場合、業務上必ずしも必要とはいえないので経費に入れるのは難しくなります。
業務上必要だと「明確な」説明ができるかどうかがポイントです。税務署に疑われたときに、事実に基づく論理的な説明で否定できるのであれば、基本的に問題はありません。
一方、スーツを着た方が仕事に臨むモチベーションが出るという理由の場合は、個人の感覚に近いため認められない可能性が高いです。
事例として、スーツ代の経費算入が争われた昭和49年京都地裁判決を紹介します。結論からいうと、本判決ではスーツ代が必要経費として認められませんでした。理由は業務でのみ必要な衣服ではないこと、個人の趣味嗜好が入ること、耐用年数に個人差が生じることなどです。
以上の点から、説明に自信を持てず税務署からの指摘が怖いのであれば、経費に含めないほうが無難だといえます。税金を抑えるにこしたことはないと考える方は多いですが、脱税を疑われるリスクのほうが高いでしょう。
スーツ代で必要経費を計上する場合の仕訳
仕訳例)弁護士として開業することになり、100,000円のスーツを購入した場合
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 消耗品費 | 100,000円 | 現金 | 100,000円 | スーツ購入費用 |
個人事業主の方の場合、スーツを業務とプライベートとの併用で使っている方も多いでしょう。このケースでは業務で必要な部分に限定すれば、経費算入が認められるかもしれません。個人事業主で事業用スーツを用意するのは大変だと税務調査官の理解を得やすいためです。
ただし、業務で必要な部分を明らかにするために家事按分の処理が必要です。家事按分では按分割合を決めるための基準を設ける必要があります。スーツの場合、使用頻度を基準にするのがわかりやすいでしょう。5回に1回プライベートで使用するなら経費に算入できるのは80%です。仕訳のやり方は以下をご確認ください。
仕訳例)事業用に10万円のスーツを購入した場合(按分割合80%)
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 消耗品費 事業主貸 | 80,000円 20,000円 | 現金 | 100,000円 | スーツ購入費用 |
経費に含められない残りの20%は、事業主貸で処理します。事業主貸勘定は事業用口座から事業とは関係ない支出を支払う際に使用する項目です。
業務に関係があるスーツ購入費用は経費算入が可能
基本的には業務に必要だと明確な説明ができる場合に限り、スーツ購入費用を経費に含めることが可能です。たとえば、営業マンは仕事でスーツが必要になるため、全額経費として認められるでしょう。
ただし、プライベートと併用している場合は、衣服住の範疇とみなされ、経費外と判断される場合もあります。あいまいな説明をすると、税務署に疑われる恐れもあるため、仕事でしか使っていないという事実に基づく主張が必要です。
個人事業主の場合、経済的に業務用スーツを用意するのが難しいケースもあります。家事按分によって事業用の部分を算出すれば、経費にカウントできる可能性はゼロではありません。
よくある質問
スーツが経費にできるのはどんなとき?
営業マンや弁護士のようにスーツが必須の職業に就いているときをはじめ、業務上必要な費用だと認められるケースです。詳しくはこちらをご覧ください。
スーツが経費にできないのはどんなとき?
スーツがなくても仕事ができる職種や環境で働いている場合、基本的には購入費用を経費に入れることはできません。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
小口現金の立替精算で領収書がない場合はどうする?小口精算の流れや確認のポイントを解説
小口精算とは、従業員が経費を立て替えた場合に、会社が小口現金から精算する手続きのことです。小口精算手続きについては、領収書がない場合などのイレギュラー対応も多いことから、社内環境の整備が求められます。この記事では、小口精算のメリット・デメリ…
詳しくみる不動産投資で経費にできるもの・できないものまとめ
不動産投資でかかった費用には、経費にできるものとできないものがあります。実際に経費として計上が可能な費用について具体的に例を挙げて紹介するので、ぜひ参考にしてください。経費計上する際の勘定科目や注意点についても解説します。 不動産投資で経費…
詳しくみる経費精算で発生する不正とは?不正事例や防止策も解説
経費精算の不正には、経費の水増し請求や架空請求などがあります。不正が行われると、取引先や顧客からの信用低下や経営への影響などが懸念されるため、体制強化やシステムの導入など、不正防止への工夫が必要です。 本記事では、経費精算で発生する不正の概…
詳しくみる経費精算はアウトソーシングできる?委託できる業務や費用を解説
近年、テレワークの普及や働き方の多様化などビジネス環境の変化により、経理業務のアウトソースが増えてきています。経費精算をアウトソーシングすると、経理業務の削減や経理業務のミス防止、不正防止などが可能です。 本記事では、経費精算業務をアウトソ…
詳しくみる経費立替は違法?いくらまでならOK?立替目安や精算書のテンプレートを紹介
経費立替とは、会社が払うべき経費を従業員に一時的に立て替えてもらうことです。そして、経費立替を従業員に指示することは違法ではありません。 本記事では、経費立替を従業員に命じた場合の違法性や経費立替の期間・金額の目安、経費立替による従業員への…
詳しくみる小口現金管理とは?仕訳や管理のコツ、効率化の方法を解説
小口現金とは、企業における少額な経費を迅速に処理するために社内に用意された現金です。小口現金によってスムーズな経費精算を追求できる一方で、仕訳の計上や補充の手間、紛失・盗難のリスクも高まります。この記事では、小口現金の特徴や管理方法、導入の…
詳しくみる