- 更新日 : 2024年8月8日
寄付金控除は法人も受けられるか?
個人が国や地方公共団体、特定公益増進法人などに寄附をした場合には、所得控除を受けることができます。これを、寄附金控除と呼びます。また、政治活動関連への寄附金や認定NPO(特定非営利活動法人)などなどへの寄附金のうち一定のものについては、所得控除と税額控除のどちらかを選択することができます。
法人においては、寄附金はその性質上反対給付がない等損金性に乏しく、原則として全額損金不算入の性格を有しますが、、法人の場合においても、事業上必要な寄附もあるため、一定の限度額まで損金算入が認められています。
ここでは、寄附金として分類される種類とその詳しい内容について解説します。また、法人が寄付をした場合、どれくらいの寄附金控除が受けられるのかについてもご説明します。
寄附金に分類される4つの種類とは?
法人税法における寄附金とは、寄附金や見舞金など、いかなる名目であった場合でも、会社が金銭はもちろんのこと、その他の資産や経済的な利益の贈与、無償の供与をすることとして定められています。
1.国や地方公共団体への寄附金
2.財務大臣が指定した寄附金
3.特定公益増進法人への寄附金
4.一般の寄附金
国や地方公共団体への寄附金とは、直接的に国や各都道府県、市区町村へと寄付を行うものになります。たとえば、災害が起こった際に、新聞社や放送局が被災者のために募集する義援金も、これに該当するケースもあります。
財務大臣指定の寄附金は、公益を目的として事業を行う法人や団体への寄附金の中でも、
・広く一般に募集されること
・教育や科学の振興・躍進、社会福祉への貢献、文化の向上など公益を増進させるための支出でかつ緊急を要するものに活用されることが確実であること
とした2つの要件を満たす場合に認定されるものとして、財務大臣が指定します。
一例として、赤い羽根の共同募金が、これに該当します。
特定公益増進法人への寄附金については、公共法人や公益法人などの中でも、教育や科学の振興をはじめ、文化向上、社会福祉への貢献など、公益を著しく増進させるものとして定められた法人への寄附金になります。
またその中でも、その法人の主な目的における業務に関する寄附金を指します。一例として、日本赤十字社の事業費・経常経費に充てられる寄附金が該当します。
一般の寄附金については、上記以外の寄附金となります。
神社で催されるお祭りの寄進費用、債権放棄や金銭の無利息による貸し付け、資産の時価よりも低い価額で譲渡する低額譲渡等が一般の寄附金に該当します。
法人の場合、寄附をするとどれぐらい損金に算入されるの?
地方公共団体や国への寄附金や、財務大臣による指定がされた寄附金などに関しては、寄附金の全額が損金として算入(寄附金控除)されます。
特定公益増進法人に対して寄附を行った場合は、下のどちらか少ない金額が損金に算入されます。
・特定公益増進法人への寄附金の合計金額
・特別損金算入限度額=[資本金等の額×当期の月数/12×3.75/1,000+当期の所得金額×6.25/100]×1/2
※特定公益増進法人に対する寄附金のうち、損金に算入されなかった金額は一般の寄附金の額に含めます。
上記以外の一般の寄附金については、上記に加えて下記の限度額までが損金に算入されます。
損金算入限度額=[資本金等の額×当期の月数/12×2.5/1,000+当期の所得金額×2.5/1,000]1/4
役員もしくは従業員が相手方になっている場合は、寄附金としてではなく、給与として取り扱われるケースもありますので、注意してください。
企業版ふるさと納税については、従来から国や地方公共団体に対する寄附金に該当し、全額損金に算入されていました。
平成28年税制改正では現行の全額損金算入による軽減効果に加え、地方税から寄附金の3割相当額の税額控除も受けることができるようになりました。
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・寄付をした場合には確定申告を
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国税庁|寄付金
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