- 更新日 : 2025年9月8日
月次決算とは?経理業務における目的や流れやり方まで解説
決算は年に1回行っているという会社も多いでしょう。税務申告を目的にするなら、決算作業は年に1回で十分といえます。
しかし、会社の経営状況を正確に把握するには、月ごとの月次決算を行わなければ見えてこないことが多くあるのです。月次決算は経営者にとって大きなメリットとなるでしょう。
一方、月次決算は毎月対応する必要があり、作業手順も複雑でスケジュールもタイトであることから、負荷の高い業務であることも事実です。そこで当記事では月次決算の概要やメリット、年次決算との違いやチェックリストの作り方などについて解説します。
目次
月次決算とは
月次決算は、月ごとの財政状態を明らかにし、経営管理に役立てるために毎月行う決算のことです。会計期間ごとに行なう決算とは異なり、法律により実施が義務付けられているわけではありません。
また、月次決算は、社内で経営管理に役立てることを目的としているため、決まった書式等も設けられていないのが特徴でもあります。では、月次決算を行う目的や年次決算との違いについても見ていきましょう。
月次決算を行う目的
月次決算を行う目的は、毎月の会社の損益や財産の状況を可視化することです。自社の正確な財務状況は決算を締めるまでわかりません。
年1回の決算では自社の経営判断を遅らせ、その精度を下げてしまう可能性があります。一方、月次決算であれば、単月や四半期、季節変動などを把握・理解できるようになるので、素早い経営判断につながるのです。
年次決算との違い
年次決算の実施は会社法や金商法、法人税法などによって義務付けられています。一方、月次決算は、毎月末に決算を行い、決算書を作成します。
ただし、法律によって定められているわけではなく、あくまで会社の任意です。そのため、月次決算は全ての会社が行う必要はありません。また、年次決算は年間の売上実績を損益計算書と貸借対照表にまとめて、株主などに情報提供するという目的もあります。
一方、月次決算は基本的には株主への報告目的ではなく、経営者のために今後の経営方針や戦略を再考するための材料として作成されるのです。
経営状況の把握のために、損益計算書の作成にウエイトを置く場合が多いといえます。
月次決算を行うメリットは
月次決算のメリットは「経営面」「業務面」どちらについても存在します。そこで代表的な4つのメリットについて見ていきましょう。
会計期間中の会社の状況を理解できる
毎月決算を行うことで、会社の経営状況をより精度高く把握することができます。年間売上や利益の着地が予想しやすくなるのです。
期の途中で、計画した予算と実績が乖離しているとなると、当初想定していなかった売上の減少や経費が負担となっているかもしれません。そこで月次決算の結果を利用することで、予算修正したり、業績見込みをより会社の実態に近付けることができます。
年間の業績予想の見込みをリアルタイムに把握できれば、経営戦略や営業方針の転換に早く判断し、実行することができるのです。
本決算を楽に行うことができるようになる
仮払金や仮受金といった仮勘定の内容把握は、過去のものになればなるほど時間がかかります。それを年次決算で行えば、かなりの時間と手間をかけることになるでしょう。
しかし、月次決算を行うことで、年次決算の負担を楽にすることができるのです。また会計処理の間違いがあれば早めに気づくことができ、高い精度を維持することができます。
「1年に1度の年次決算業務を毎月行うことで楽になる」と考えれば、経理担当者の業務効率化につながるのです。
経営判断に役立てることができる
月次決算は、リアルタイムで業績を管理し、年度計画を立てて利益を予測することができます。具体的な数字を毎月確認していれば、何らかの問題が起きた際も状況を素早く把握できるとともに原因究明ができ、適切な対策をとることも可能です。
生産状況や検収遅れ、債権の回収遅れなどの問題も経営者が早く知ることができます。問題解決には、早期発見が重要であり、健全な経営の基本です。
月次決算を行わず年次決算だけを行う場合はこれらの問題が過去のものとなり、原因や対策を立てにくい状況となるでしょう。月次決算の数字は経営者が経営判断を行う基本的な材料となるのです。
金融機関の融資の判断材料になる
金融機関が融資する際は、会社の状況を調査し、審査した上で融資可否を下します。実際には融資可能と判断されても、直近の業績が不明であれば、判断までに時間がかかるため長期化する可能性が高いです。
そこで効果的なのが「月次決算の報告書」の提出となります。金融機関の判断材料になり、融資も際に提出すれば調査期間を短くできるでしょう。
また、月次決算を行っている事自体が金融機関からの評価を高める可能性が高く「融資を受けやすくなる」効果もあるのです。
月次決算業務の流れ
月次決算業務が完了するまでの大まかな流れは次の通りです。
注意するポイントとしては、勘定整理の精度を上げることです。勘定科目の統一から経費計上の基準など細かく設定しなければなりません。
この際、未払金や仮払金の処理、売上げなどを正確に把握すると、年次決算の際業務軽減にもつながるでしょう。
また、月次決算は会社ごとに重視する情報が異なります。月次決算表や添付資料の作成時も、予めKPIなどを設定しておくとよいでしょう。
月次決算チェックリストとは
経理業務にはチェックリストの作成が効果的です。ここでは月次決算処理のチェックリストの作り方からサンプルなどを紹介します
月次決算チェックリストの作り方
経理の業務内容は日次、月次、決算と多岐に渡ります。さらには、どの内容についても正確な処理が求められ、経営に直接関わる非常に重要な業務ばかりです。
毎月ルーティンで行う業務であれば、ある程度は覚えておけるでしょう。しかし、半期や年に1度の業務を全て覚えておくことは難しいです。
過去の記憶から必要ファイルを探したり、マニュアルを一から読み直したりとなると時間のロスにもつながります。そこで効果的なのが「月次決算チェックリスト」です。
月次決算チェックリストを作成するうえで気を付けるべきポイントは次の通りです。
- 誰が見ても分かる項目をリスト化する
- チェックリストが陳腐化しないように更新する
- 過去に作成した資料などをリンクで貼り付けておく
気をつけるべきポイントを押さえて精度の高い月次決算チェックリストを独自に作成しましょう。
月次決算チェックリストのエクセルダウンロード
月次決算チェックリストは、以下のリンクからダウンロードできます。分類や項目などを実務と照らして修正すれば、オリジナルのチェックリストとしても利用可能です。
ポイントを押さえた上で、月次決算に臨もう
ここまで月次決算の概要やメリット、年次決算との違いや流れなどについて解説しました。
年次決算や月次決算には、それぞれに対して重要な役割があります。複雑なお金の流れを整理するのは簡単なことではありません。
しかし、手間を掛けてでもお金の流れを見える化するには、経営的観点からも大きな好影響を及ぼします。月次決算と年次決算を使い分けて確実に行っていくことが重要です。
当記事の内容を押さえた上で、効率的な月次決算を行うことをおすすめします。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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