- 更新日 : 2024年8月8日
勘定科目 通信費とは?仕訳から解説
取引先や顧客との通信手段にかかる費用は、通信費の勘定科目を用いて経費計上します。通信費は、携帯電話料金やインターネット利用料、切手代など、さまざまな項目を含むため、何を通信費として計上してよいか迷ってしまう方も多いでしょう。今回は、通信費とは何か、該当する主な費用や仕訳例、さらに個人事業主の経費計上について解説します。
目次
通信費とは
通信費とは、業務で使用する通信手段にかかる費用のことです。通信費といえば、電話代を思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、電話に関するものだけでなく、郵便代やインターネット関連費用なども通信費に含まれます。
業務をするうえで、電話や郵便物の取り扱い、インターネット利用は不可欠のものです。通信費は仕訳する機会がとても多い勘定科目であるため、通信費の内容や会計処理の方法について理解しておきましょう。
通信費に該当する主なもの
通信費に該当する代表的なものは、以下のとおりです。
- 電話関係の費用
- 郵便・宅配関係の費用
- インターネット関係の費用
- テレビ関係の費用
- 有線放送の費用
このように、ひと口に通信費といっても、さまざまな項目が該当します。通信費として経費計上できるものを理解し、適切な会計処理を行いましょう。
業務用とプライベート用が混ざってしまう場合は、必ず業務で使用するものだけを経費計上するようにしてください。
ここでは、通信費に該当する主なものについて解説します。
電話関係の費用
仕事で使用する固定電話や携帯電話の通話料は、通信費として計上できます。1台の携帯電話を仕事用とプライベート用の両方で使用している場合は、仕事に使用している割合に応じて通信費に計上する「按分」が必要です。プライベート用の分まで経費にすることはできない点に注意しましょう。
そのほか、FAX送信代や電報代、テレホンカード代などの電話関連費用は、通信費として計上できます。
郵便・宅配関係の費用
ビジネスに使用する切手やハガキの購入代金、取引先に書類や郵便小包などを郵送する際にかかった費用などは、通信費に計上できます。宅配便やメール便、バイク便、社内便など、郵便・宅配関係の費用は、基本的に通信費に該当すると考えて問題ないでしょう。
ただし宣伝用のダイレクトメールや印紙などの経費は、通信費として計上できない点に注意が必要です。
また切手を通信費として計上するのは、切手使用時です。購入時は貯蔵品とし、使用した分を通信費にする点を理解しておきましょう。
インターネット関係の費用
仕事で使用するインターネット回線に関する費用も、通信費に該当します。使用料だけでなく、契約時に支払った入会金、回線を通すための工事費なども通信費として計上できるのがポイントです。
さらに、電子メールや会計システム、顧客管理システムなどのクラウドサービスを利用する際のサービス料や、レンタルサーバー利用料も通信費に含まれます。
テレビ関係の費用
店舗やオフィスにテレビを設置している場合、受信料を通信費として計上できます。ケーブルテレビを契約している場合の使用料も、同様です。
有線放送の費用
店舗やオフィスで有線放送を流している場合、利用料を通信費として計上できます。初期費用や有線の開通にあたって必要な工事費についても、通信費として計上可能です。
通信費の仕訳例
ここでは、通信費に関する仕訳例を解説します。上でとりあげた項目それぞれについて紹介しているため、ぜひ参考にしてください。(費用は全て税込みで処理しています。)
<電話関係費用の仕訳例>
(例)3月分の携帯電話料金10,000円を口座引き落としで支払った。
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 通信費 | 10,000円 | 普通預金 | 10,000円 | 3月分携帯電話料金 |
<郵便・宅配関係費用の仕訳例>
郵便切手を購入時に経費として処理する場合の仕訳を紹介する。
(例)84円切手10枚を現金で購入した。
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 通信費 | 770円 | 現金 | 840円 | 切手代 |
| 仮払消費税 | 70円 | |||
期末時点で未使用の84円切手が2枚ある。
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 貯蔵品 | 168円 | 通信費 | 154円 | 切手代未使用分 |
| 仮払消費税 | 14円 | |||
<インターネット関係費用の仕訳例>
(例)4月のインターネット使用料10,000円を口座引き落としで支払った。このうち、事業割合は80%、プライベート割合は20%だった。
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 通信費 | 8,000円 | 普通預金 | 10,000円 | 4月分インターネット使用料 |
| 事業主貸 | 2,000円 | |||
<テレビ関係費用の仕訳例>
(例)オフィスにテレビを置いており、8月分のNHK受信料1,500円を口座引き落としで支払った。
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 通信費 | 1,500円 | 普通預金 | 1,500円 | 8月分NHK受信料 |
<有線放送費用の仕訳例>
(例)店内BGMを流すために有線放送を流している。3月分の利用料は5,000円で、口座引き落としで支払った。
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 通信費 | 5,000円 | 普通預金 | 5,000円 | 3月分有線放送費用 |
個人事業主は通信費を経費にできる?
ビジネスのために使用するものであり、客観的に見てビジネスに必要な費用と分かるものについて、個人事業主は経費として計上できます。たとえば、仕事用のインターネット回線使用量や電話料金、郵便料金などは、通信費として計上可能です。しかし、プライベートで使用する分については経費にできないため、正しく計算し、処理する必要があります。
個人事業主の場合は、特にビジネスとプライベートでの使用が一緒くたになりやすいため、家事按分の比率がポイントです。家事按分とは、ビジネスで使用した分とプライベートで使用した分を分けることです。たとえば、業務用のスマホとプライベート用のスマホを1台にしている場合は、スマホを使用している時間に対する仕事の割合を算出して計上する必要があります。
どの程度業務用に使用しているかによって家事按分の比率は異なります。プライベートの使用が多い場合は利用料のうち2割ほど、半々で使用している場合は使用料のうち5割ほど、業務用での使用が多い場合は使用料のうち8割ほどを経費として計上するのが目安です。なぜその比率になるかを客観的に説明できるよう、正当な根拠を用意しておきましょう。
会計処理で頻出の勘定科目「通信費」を理解しよう
今回は、会計処理で利用シーンの多い勘定科目である通信費について解説しました。通信費には、電話料金やインターネット利用料、郵便関係費用、切手代など、さまざまな費用が該当します。通信費として処理できる費用の種類を理解し、正しく会計処理を行ってください。
通信費の会計処理では、業務用とプライベート用を分けて計上することがポイントです。
特に個人事業主の場合は、プライベート用を取り除いて処理できるよう、必ず家事按分を行いましょう。
よくある質問
通信費とは?
通信費とは、業務で使用する通信手段にかかる費用のことで、電話関連費用やインターネット利用料、郵便・宅配関連費用なども含まれます。詳しくはこちらをご覧ください。
個人事業主は通信費を経費にできる?
業務に直接関わり、客観的に見て事業に必要な費用と分かるものについては、個人事業主も通信費を経費として計上できます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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