- 更新日 : 2025年2月20日
固定資産除却損とは?
固定資産除却損とは、会社の事業において、不要となり廃棄処分した有形固定資産を、除却することによって発生した損失のことである。
固定資産除却損は、バランスシートに計上されている、使用を中止してスクラップ化した固定資産の帳簿価額を損失として、特別損失に分類して管理することを指す。
通常、会社が営業で使用してきた建物などの有形固定資産を取り壊した場合に、その時点での資産時価を固定資産除却損として計上処理する。この固定資産除却損は、固定資産の取得原価から減価償却累計額を引くことで、計算することができる。
固定資産除却損の除却とは、会社の業務に不要となった固定資産を取り壊し、廃棄処分することを表しているため、独立した勘定項目で管理する必要はない。
固定資産除却損の対象となる固定資産には、無形固定資産や投資目的有価証券などは含まれていない。ちなみに固定資産除却損が計上されていても、現金の流出は生じない。
固定資産除却損は節税になるのか
固定資産除却損を計上することで、当該資産の残存簿価分だけ当期の課税所得を減らし、節税効果が期待できます。期末に固定資産台帳を確認し、除却の見逃しがあれば、これを除却することで節税に役立つ場合があります。特に新しい資産を取得した際に、使われなくなった古い資産がないか優先的に確認するとよいでしょう。耐用年数が10年以上の長期資産で残存簿価が残っているものを中心にチェックするのも効果的です。
ただし、固定資産除却損を損金として計上するには、実際に廃棄していることが原則です。廃棄が行われていない場合、除却損を計上するには、固定資産が「有姿除却」の要件を満たしているかを確認する必要があります。
固定資産除却損の仕訳について、以下のようにまとめます。状況別に「一般的な除却の場合」「除却に費用がかかる場合」「廃材価値が発生する場合」の3パターンに分け、減価償却の直接法と間接法で処理方法が異なる点に注意しましょう。
固定資産除却損の仕訳について
固定資産除却損の仕訳について、以下のようにまとめます。
状況別に「一般的な除却の場合」「除却に費用がかかる場合」「廃材価値が発生する場合」の3パターンに分け、減価償却の直接法と間接法で処理方法が異なる点に注意しましょう。
- 直接法:減価償却費の相手科目に減価償却資産を用いて直接簿価を減額する方法。
- 間接法:減価償却累計額を使い、簿価を間接的に減額する方法。
一般的な除却の仕訳
固定資産の除却時に、期首から除却までの減価償却費も合わせて計上します。
例: 固定資産(取得価額80万円、償却済30万円)を除却、減価償却費は15万円
- 直接法
- 借方:減価償却費 15万円 / 貸方:固定資産 50万円
- 借方:固定資産除却損 35万円
- 間接法
- 借方:減価償却累計額 30万円 / 貸方:固定資産 80万円
- 借方:減価償却費 15万円
- 借方:固定資産除却損 35万円
除却費用がかかる場合の仕訳
除却の際に廃棄費用が発生した場合、その費用も除却損として処理します。
例: 固定資産(取得価額80万円、償却済30万円)を除却、減価償却費15万円、除却費用8万円(現金で支払い)
- 直接法
- 借方:減価償却費 15万円 / 貸方:固定資産 50万円
- 借方:固定資産除却損 43万円 / 貸方:現金 8万円
- 間接法
- 借方:減価償却累計額 30万円 / 貸方:固定資産 80万円
- 借方:減価償却費 15万円
- 借方:固定資産除却損 43万円 / 貸方:現金 8万円
廃材価値が生じる場合の仕訳
除却資産にスクラップとしての価値がある場合、その価値分を貯蔵品として計上します。
例: 固定資産(取得価額80万円、償却済30万円)を除却、減価償却費15万円、廃材価値12万円
- 直接法
- 借方:貯蔵品 12万円 / 貸方:固定資産 50万円
- 借方:減価償却費 15万円
- 借方:固定資産除却損 23万円
- 間接法
- 借方:貯蔵品 12万円 / 貸方:固定資産 80万円
- 借方:減価償却累計額 30万円
- 借方:減価償却費 15万円
- 借方:固定資産除却損 23万円
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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