消費税の納税はどっちがオトク?!簡易課税と原則課税の違い

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原則、基準期間の課税売上が1,000万円を超える事業者は消費税の納税義務者になり、課税売上の消費税額から仕入控除税額を引いた額を消費税として納めなければなりません。このとき、基準期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者であれば、原則課税(一般課税)だけでなく、簡易課税の選択が可能です。それぞれどういった課税方式なのか解説していきます。

預かった消費税から支払った消費税を差し引く「原則課税」

原則課税は、課税売上の消費税額(預かった消費税額)から、課税仕入等の消費税額(支払った消費税額)を差し引いて納付消費税額を求める原則的な方法で、一般課税ともいわれます。

課税売上、課税仕入等ともに正確な額が必要になるため、帳簿と請求書のいずれも保存が必要です。保存を怠ると、課税仕入等の消費税額が控除できず、課税売上に係る消費税すべてを納めなければなりません。

なお、基準期間における課税売上高が5,000万円を超える事業者は原則課税によって消費税を納めることになっています。

支払った消費税額を計算する必要のない「簡易課税」

原則課税では課税売上や課税仕入などに係る消費税額の正確な値が必要です。取引によっては非課税や不課税などで税が課せられないものを区分しなければなりません。また、2019年10月からは消費税10%増税にともなう軽減税率の導入によって複数税率になったことから、計算の複雑化は避けられなくなりました。

そこで、税計算の負担を軽減しようと、中小企業向けに設けられているのが「簡易課税」です。簡易課税は課税仕入等の消費税額の計算を簡素化したもので、事業種別に設けられた「みなし仕入率」を使って消費税納付額を確定します。

基準期間における課税売上高が5,000万円以下で、かつ、適用を受けようとする課税期間開始の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出している事業者であれば簡易課税制度が利用可能です。「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出しない限り、簡易課税が適用され続けます。

届出書によって、原則課税に戻すことは可能ですが、一度選択すると2年は簡易課税を続けなければならないため注意しましょう。1年ごとに課税方式を変えることはできません。

課税方式の比較

(原則課税)

消費税納付額 = {(課税売上高 × 10%) + (課税売上高 × 8%)} – (課税仕入高 × 10% ) + (課税仕入高 × 8%)}

2019年10月からの消費税改正以降、原則課税では、課税売上、課税仕入の両方において、消費税率を分けて(10%と軽減税率の8%%)計算することになりました。なお、原則課税でも課税売上高が5億円以下で課税売上割合が95%(総売上高における課税売上の割合)以上の事業者は課税仕入に係る消費税額を全額控除できますが、該当しない場合、課税売上に対応する部分のみに限られます。

(簡易課税)

消費税納付額 = {(課税売上高 × 10%) + (課税売上高 × 8%)} – (課税売上高の消費税額×みなし仕入率)

課税売上に対する消費税額の計算は、原則課税と同じです。異なるのは、原則課税の課税仕入等に該当する部分。簡易課税では、課税仕入等の実額は使わず、課税売上の消費税額を使って計算していきます。

課税売上の消費税額にみなし仕入率(40~90%)をかけて仕入控除額を求めますので、消費税納付額がマイナスになることはありません。そのため、課税仕入に係る消費税額が課税売上の消費税額を上回ったとしても、簡易課税を選択していると消費税の還付を受けられないことになります。

※消費税の計算はわかりやすくするため、適宜計算式を簡略化しております。

事業によって異なる「みなし仕入率」

簡易課税の計算で用いられる「みなし仕入率」は、事業の種類によって割合が決まっています。事業によって売上に対する仕入率に大きく変動があるためです。
2019年10月以降適用されることになった消費税率(一般税率10%、軽減税率8%)は、みなし仕入率に大きく影響しませんでしたが、飲食料品を生産する農業、林業、漁業のみ変更がありました。
これは、飲食料品を生産する農林水産業では、仕入のほとんどを占める種子の購入、器具の購入などに軽減税率が適用されないためです。売上税額が軽減税率の適用で消費税8%になると、仕入税額も軽減税率ベースになり、過小に算出されてしまいます。みなし仕入率を適正にするため、軽減税率に係わる飲食料品の譲渡が発生する農業・林業・漁業については1段階引き上げられました。
(※非食品を生産する農業・林業・漁業の事業者は第3種事業に分類されます。)

                  事業みなし仕入れ率
第1種事業卸売業90%

第2種事業小売業+飲食料品の譲渡に係る農業・林業・漁業80%
第3種事業農業、林業、漁業、製造業、建設業、電気・ガス業、熱供給・水道業、鉱業70%
第4種事業飲食店業など1~3以外の事業60%
第5種事業1~3以外のサービス業、金融・保険業、運輸・通信業50%
第6種事業不動産業40%

簡易課税の計算では、1事業種のみを営む場合、課税標準額に対する消費税額に該当事業のみなし仕入率をかけて消費税納付額を計算します。

事業区分ありで複数の事業を営む場合は、対応する売上ごとにみなし仕入率をかけ、合計したものが消費税納付額です。事業区分がない場合は、営んでいる事業のなかで一番低いみなし仕入率の業種に合わせて計算します。

簡易課税と原則課税ではどちらがお得?

課税方式の比較でも触れましたが、簡易課税と原則課税では、仕入控除税額(原則課税の課税仕入等部分)の計算方法が異なるため、納付する消費税額が変わってきます。簡易課税は計算が複雑でないメリットがありますが、消費税額の差にも注目してどちらを選択するか決めると良いでしょう。

実際の消費税の計算は、仕入割合など会社の特色も反映されるため、どちらが良いかは断言できませんが、いくつかパターンを紹介しますので参考にしてみてください。

パターン(1)

(例)事業:第1種事業~第3種事業に該当しないサービス業
  標準課税売上 300万円、軽減税率対象の課税売上 200万円
  標準課税仕入 150万円、軽減税率対象の課税仕入 50万円

(原則課税)
(300万円 × 10%) + (200万円 × 8%) = 46万円 …売上に係る消費税額
(150万円 × 10%) + (50万円 × 8%) = 19万円 …課税仕入に係る消費税額
46万円 – 19万円 = 27万円 …納付する消費税額

(簡易課税)
(300万円 × 10%) + (200万円 × 8%) = 46万円 …売上に係る消費税額
46万円 × 50%(第5種事業のみなし仕入率) = 23万円
46万円 – 23万円 = 23万円 …納付する消費税額

※消費税の計算はわかりやすくするため、適宜計算式を簡略化しております。

【注意】
税制改正により、2023年10月以降、適格請求書等保存方式に完全移行される関係で、免税事業者からの仕入税額控除は原則不可になります(特例により一部控除可能になりますが、免税事業者からの仕入税額控除割合は段階的に引き下げられる予定です)。これにより、2023年10月以降、免税事業者と取引のある原則課税事業者には影響がありますが、みなし仕入率を使って消費税額が確定する簡易課税事業者には影響はありません。

パターン(2)

(例)事業:第1種事業~第3種事業に該当しないサービス業
  標準課税売上 300万円、軽減税率対象の課税売上 200万円
  標準課税仕入 1,150万円(店舗建て替え費用1,000万円含む)、
  軽減税率対象の課税仕入等 50万円

(原則課税)
(300万円 × 10%) + (200万円 × 8%) = 46万円 …売上に係る消費税額
(1,150万円 × 10%) + (50万円 × 8%) = 119万円 …課税仕入に係る消費税額
46万円 – 119万円 = -73万円 …納付する消費税額
73万円消費税が還付される。

(簡易課税)
(300万円 × 10%) + (200万円 × 8%) = 46万円 …売上に係る消費税額
46万円 × 50%(第5種事業のみなし仕入率) = 23万円
46万円 – 23万円 = 23万円 …納付する消費税額

※消費税の計算はわかりやすくするため、適宜計算式を簡略化しております。

このように、設備投資などで課税売上に対し課税仕入が過大になる場合、本来なら還付を受けられるはずですが、実際の課税仕入を考慮せずに計算する簡易課税では損をしてしまうことがあります。

まとめ

原則課税と簡易課税、どちらが節税になるかはケース・バイ・ケースです。ただし、消費税還付の発生が見込まれるケースでは、簡易課税だと損をしてしまいますので、設備投資を見越していずれの方式を採用するか検討されることをおすすめします。

【参考】
国税庁 消費税のあらまし
国税庁 パンフレット「暮らしの税情報(令和元年度版)」
国税庁 よくある税の質問
東京税理士会 ホームページ
税理士法人山田&パートナーズ ホームページ

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

Bizpedia編集部

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