• 更新日 : 2025年11月6日

経営管理システムとは?機能から選び方、サービス例15選まで解説

企業の成長を加速させるには、正確なデータに基づいた迅速な意思決定が不可欠です。それを実現する鍵となるのが「経営管理システム」です。

本記事では、経営管理システムの基本から具体的な機能、種類、そして自社に最適なシステムの選び方までを分かりやすく解説します。経営管理システムのサービス例をカテゴリ別にご紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

目次

経営管理システムとは?

経営管理システムとは、企業の経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を一元的に管理し、経営の意思決定を支援するためのITソリューションです。これにより、組織全体の状況を迅速かつ正確に把握し、データに基づいた戦略立案を可能にします。

経営管理の目的

経営管理の主な目的は、企業が設定した目標を達成するために、経営資源を最適に配分し、事業活動を統制することです。

具体的には、売上や利益といった目標数値を設定し、その達成に向けた計画(Plan)を立て、実行(Do)し、結果を評価(Check)して、改善(Action)するというPDCAサイクルを回す活動全般を指します。

これにより、企業の持続的な成長を促進します。ExcelやGoogleスプレッドシートでの個別管理は、運用ルールや統制が不十分な場合、情報の散逸や更新の遅れが生じやすい側面があります。経営管理はこれを組織的に解決する取り組みです。

経営管理の基本的な意味については、下記の記事でも詳しく紹介しています。

経営管理システムが果たす役割

経営管理システムは、部門ごとに分散しがちなデータを統合し、経営判断に必要な情報をタイムリーに提供する役割を担います。

多くの企業では会計、販売、人事などの各部門が個別のシステムやスプレッドシートでデータを管理しており、全社的な状況を把握するには多くの手間と時間がかかります。経営管理システムはこれらのデータを一元化することで、以下のような価値を提供します。

  • 経営の可視化:経営指標(KPI)をタイムリーに把握できる(更新頻度はデータ連携方式や元システムの状況に依存する)。
  • 意思決定の迅速化:データに基づいた客観的な判断をスピーディに行える。
  • 業務効率の向上:データ入力や集計作業の重複をなくし、自動化を進める。
  • 内部統制の強化:データの一元管理により、統制上重要な情報へのアクセス性や整合性を高めるサポートをする。

経営管理システムにはどのような機能がある?

経営管理システムが持つ機能は、企業のPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルをデータ面から支える役割を担います。

企業の目標達成に向けた計画の策定から、実行された実績の把握、そして評価・改善につながる分析まで、各プロセスを円滑にするための機能群で構成されています。これらの機能が連携することで、迅速で正確な経営判断が可能になります。

予算管理機能

予算管理機能は、将来の事業計画に基づいて各部門の予算を策定し、その執行状況を管理するための機能です。過去の実績データを基にした予算案の作成支援や、複数の予算シナリオをシミュレーションする機能があります。

予実管理・業績管理機能

予実管理・業績管理機能は、策定した予算と実際の業績(実績)を比較し、その差異を分析する機能です。売上や利益、コストなどの項目で乖離が発生した場合、その原因を迅速に特定し、次のアクションにつなげることができます。多くのシステムでは、ダッシュボードで視覚的に分かりやすく表示されます。

会計・財務管理機能

会計・財務管理機能は、日々の取引記録から決算書の作成、資金繰りの管理まで、企業の財務活動全般をサポートする機能です。仕訳入力、債権・債務管理、固定資産管理、キャッシュ・フロー計算書の作成などが含まれますが、製品や契約プランによって対応範囲は異なります。

人事・労務管理機能

人事・労務管理機能は、従業員の採用から育成、評価、給与計算、勤怠管理まで、人材に関する情報を一元管理する機能です。人員配置の最適化や人件費の分析を通じて、人的資本の最大化に貢献します。

販売・在庫管理機能

販売・在庫管理機能は、受注から納品、請求、入金までの一連の販売プロセスと、商品の仕入れから在庫状況までを管理する機能です。需要予測に基づいた適切な在庫レベルの維持や、販売機会の損失防止に役立ちます。

【目的別】経営管理システムの種類

経営管理システムは、そのカバーする業務範囲や目的によっていくつかの種類に分類できます。自社の課題に合った種類を選ぶことが重要です。

ERP(統合基幹業務システム)

ERP(Enterprise Resource Planning)とは、会計・人事・生産・販売など、企業の主要な業務を一元的に管理・連携させるための統合システムです。最大の特長は、社内のデータを一元的に管理する「一元管理」にあります。

これは物理的に単一のデータベースを指す場合に加え、API連携などを通じて論理的にデータが統合されている状態も含みます。これにより、部門間の情報連携がスムーズになり、経営状況をリアルタイムで俯瞰できるのです。

  • 向いている企業:複数の部門や拠点を持つ中堅〜大企業、業務プロセス全体の最適化を目指す企業。

EPM(経営パフォーマンス管理)

EPM(Enterprise Performance Management)は、予算管理、予実管理、業績予測、連結会計といった経営管理領域に特化したシステムです。ERPが基幹業務の効率化を主目的とするのに対し、EPMは経営層や管理職の意思決定支援、つまり「経営パフォーマンスの最大化」に焦点を当てています。

  • 向いている企業:より高度な経営分析やシミュレーションを行いたい企業、グループ経営管理を強化したい企業。

BIツール(ビジネスインテリジェンス)

BI(Business Intelligence)ツールは、ERPなどのシステムに蓄積された膨大なデータを収集・分析・可視化し、経営判断の材料となるインサイト(洞察)を得るためのツールです。ドラッグ&ドロップなどの直感的な操作で、定型レポートの閲覧やダッシュボードの基本的な活用が可能です。

さらに、専門的なスキルを持つユーザーは、データモデリングや高度な分析機能を用いて、より深い洞察を得ることもできます。

  • 向いている企業:データに基づいた意思決定文化を醸成したい企業、既存システムに蓄積されたデータを有効活用したい企業。

特定業務特化型システム

会計ソフト、SFA(営業支援システム)、CRM(顧客関係管理システム)、勤怠管理システムなど、特定の業務領域に特化したシステムも広義の経営管理システムに含まれます。まずは特定の部門の課題解決からスモールスタートしたい場合に適しています。

  • 向いている企業:特定の業務に大きな課題を抱えている企業、まずはコストを抑えて導入したいスタートアップや中小企業。

経営管理システムを導入するメリット・デメリットは?

経営管理システム導入の最大のメリットは「経営の高度化と業務効率化」が実現できる点にあり、デメリットは「導入・定着に相応の投資が必要」な点に集約されます。

導入効果を最大化するためには、これらの利点と注意点の両方を事前に理解し、自社の目的と照らし合わせて慎重に検討することが重要です。

経営管理システムの主なメリット

  • 【メリット1】経営状況のリアルタイムな可視化:社内に散在していたデータを一元化することで、売上や利益、資金繰りといった経営数値をリアルタイムで正確に把握できます。これにより、問題の早期発見と迅速な対応が可能になります。
  • 【メリット2】データに基づいた迅速な意思決定:勘や経験だけに頼るのではなく、客観的なデータに基づいた戦略的な意思決定を行えるようになります。データに基づいたシミュレーションや将来予測も可能になり、経営判断の精度が向上します。
  • 【メリット3】全社的な業務効率の向上:データの二重入力や集計作業といった手作業が大幅に削減され、業務プロセスが自動化・標準化されます。これにより、バックオフィス部門はより付加価値の高い分析業務などに集中できます。
  • 【メリット4】内部統制とガバナンスの強化:データへのアクセス権限設定や操作ログの記録が徹底されるため、不正防止や情報漏洩リスクの低減につながります。統一された業務プロセスは、内部統制の強化にも貢献します。ただし、効果的な統制には、システムだけでなく適切な業務設計や権限設定なども不可欠です。

経営管理システムの主なデメリット

  • 【デメリット1】導入・運用コストの発生:システムのライセンス費用や導入支援のコンサルティング費用、そして月々の利用料や保守費用など、一定のコストが発生します。投資対効果を事前にしっかり試算することが不可欠です。
  • 【デメリット2】導入・定着に時間と労力がかかる:システムの選定から要件定義、データ移行、そして全従業員へのトレーニングまで、導入には多くの時間と労力を要します。導入後の定着化には、経営層の強力なリーダーシップと、丁寧な社内への働きかけが求められます。
  • 【デメリット3】業務プロセスの見直しが必要になる場合がある:既存の業務プロセスをそのままシステムに移行できない場合があります。システムの標準機能に合わせて、非効率な業務フローを抜本的に見直す(BPR)必要が出てくることも少なくありません。

自社に最適な経営管理システムの選び方のポイント

最適な経営管理システムを選ぶための最も重要なポイントは「システムありき」ではなく「自社の課題解決ありき」で考えることです。

市場には数多くの製品が存在するため、単に機能の多さや知名度だけで選んでしまうと、導入後に「自社の業務に合わず使えない」といった失敗に繋がりかねません。

ここでは、そうした失敗を避け、課題解決に繋がるシステム選定のための具体的なステップを紹介します。

1. 導入目的と課題を明確にする

最初に「なぜシステムを導入するのか」「どの業務課題を解決したいのか」を明確にすることが最も重要です。 例えば「月次決算を5営業日短縮したい」「リアルタイムで部門別の損益を把握したい」「データの二重入力をなくしたい」など、具体的な目的をリストアップしましょう。目的が明確であれば、必要な機能やシステムの選定基準がおのずと定まります。

2. 企業の規模や業種に合っているか確認する

システムの機能や価格帯は、想定される企業規模(従業員数や売上高)によって大きく異なります。 中小企業向けの比較的安価で導入しやすいシステムから、大企業向けのカスタマイズ性の高い高機能なシステムまで様々です。また、製造業や小売業、IT業など、特定の業種に特化した機能を持つ製品もあるため、自社の事業内容との適合性も確認しましょう。

3. 既存システムとの連携性は十分か確認する

すでに社内で利用している他のシステム(例:勤怠管理システム、販売管理システムなど)とスムーズに連携できるかを確認します。 API連携などが充実しているシステムであれば、手作業でのデータ移行や再入力の手間を省き、より効率的なデータ一元化が実現できます。連携実績の有無や、連携開発の容易さもチェックポイントです。

4. 操作性とサポート体制を確認する

システムは毎日使うものだからこそ、現場の従業員が直感的に操作できる分かりやすいインターフェースかどうかが重要です。無料トライアルやデモを活用して、実際の使用感を確かめましょう。また、導入時の設定支援や、導入後の問い合わせ対応といったサポート体制が充実しているかどうかも、スムーズな定着には欠かせない要素です。

5. セキュリティ対策は万全か確認する

経営に関する機密情報を扱うため、セキュリティ対策は最重要項目の一つです。 データの暗号化、アクセス権限の詳細な設定、不正アクセス防止策、国際的なセキュリティ認証(ISO27001など)の取得状況などを必ず確認しましょう。

経営管理システムのサービス例15選

ここでは、例として経営管理システムを15製品ご紹介します。ひとくちに経営管理システムといっても、製品によって得意とする領域(予実管理、BI、連結会計など)や対象となる企業規模、料金体系は大きく異なります。

実際に導入する場合は、自社の課題を解決できるのはどのタイプかを見極め、必ず複数の製品を比較検討することがおすすめです。

1. マネーフォワード クラウド連結会計

グループ経営を行う企業の連結決算・管理連結業務を効率化するクラウドシステムです。

  • 子会社から収集したデータを自動で連結処理し、連結精算表を作成
  • 管理会計や予実管理など、経営判断のためのデータ活用にも対応
  • API連携またはExcelファイルのインポートによるデータ収集が可能

下記ページでは、システムの特長や料金などを詳しく紹介しています。

>>マネーフォワード クラウド連結会計

2. Manageboard

中小企業・中堅企業の経営企画部門や、会計事務所向けのクラウド経営管理システムです。

  • API連携により会計ソフトのデータを取得し、試算表などを自動作成
  • 予算と実績を比較分析できる多彩なレポートやダッシュボード機能
  • 脱Excelを実現する予算策定や、精度の高いキャッシュフロー予測

特長や料金などは、下記ページで詳しく紹介しています。

>>Manageboard

3. Sactona

中堅・大企業向けに、Excelライクな操作性で本格的な経営管理を実現するシステムです。

  • 使い慣れたExcelをそのまま入力・レポーティング画面として利用でき、学習コストを抑制
  • 多段階・多基準の配賦計算など、複雑な管理会計要件に対応
  • クラウド・オンプレミス双方の導入形態を選択可能

特長や料金などは、下記ページを参考にしてください。

>>Sactona

4. Loglass(株式会社ログラス)

予算策定から予実管理、見込管理まで、経営管理のフローを効率化するクラウドサービスです。

  • 複数部署の予算データを一元化し、バージョン管理の煩雑さを解消
  • 各種会計システムと連携し、実績データを自動で取り込み
  • 経営指標をリアルタイムに可視化するカスタマイズ可能なダッシュボード

5. DIGGLE(DIGGLE株式会社)

予実管理・見込管理業務のDXを推進し、データに基づいた経営を支援するクラウドシステムです。

  • 予実突合やレポート作成を自動化し、工数を大幅に削減
  • 複数パターンの着地見込みシミュレーションに対応
  • 申請・承認のワークフロー機能があり、コメント機能で関係者とのやり取りも可能

6. BizForecast FC(プライマル株式会社)

使い慣れたExcelをインターフェースとして活用できる、グループ経営管理システムです。

  • Excelのフォーマットや関数を活かしたデータ収集・レポーティング
  • 予算管理、管理会計、制度連結まで幅広い業務領域をカバー
  • ワークフロー機能により、データ収集から承認までのプロセスを電子化

7. Workday Adaptive Planning(Workday, Inc.)

財務データと業務データを統合し、精度の高い計画立案を支援するクラウドプラットフォームです。

  • 財務、ワークフォース、売上など全社的なプランニングに対応
  • What-ifシナリオ分析により、様々な状況を想定した計画策定が可能
  • 世界中の多くの企業で導入されているグローバル標準のシステム

8. kpiee(株式会社データX)

Excelやスプレッドシートで行うKPI管理業務を自動化・効率化するクラウドツールです。

  • 各システムに散在するデータを自動で収集・集計
  • 予実の乖離や異常値をAIが検知し、アラートで通知
  • レポート上のグラフや数値に直接コメントやメンションができ、関係者との議論を促進

9. CCH Tagetik(Wolters Kluwer)

予算管理、連結会計、レポーティング、開示までを単一のプラットフォームで提供します。

  • グループ全体の財務状況を可視化し、経営パフォーマンス管理を高度化
  • IFRSなど複数の会計基準に対応可能(※特定基準には追加モジュールが必要な場合あり)
  • グローバルに展開する大企業グループでの導入実績が豊富

10. Domo(Domo, Inc.)

データ接続から分析、可視化、共有までを一つで行えるクラウド型BIプラットフォームです。

  • 社内外の様々なデータソースに接続できる豊富なコネクタ
  • 直感的な操作でインタラクティブなダッシュボードを作成
  • 組織全体でのデータ活用とコラボレーションを促進

11. Board(Board International)

BI(ビジネスインテリジェンス)とEPM(経営パフォーマンス管理)を統合したプラットフォームです。

  • データ分析から計画策定、シミュレーションまでをシームレスに実行
  • プログラミング不要でアプリケーションの構築・修正が可能
  • サプライチェーン、人事、マーケティングなど各業務領域に対応

12. SAP S/4HANA Cloud, Public Edition(SAP SE)

グローバルなベストプラクティスを標準機能として組み込んだ、SaaS型のクラウドERPです。

  • 「Fit-to-Standard」アプローチによる迅速な導入
  • AIや機械学習などのインテリジェント技術を搭載
  • 年2回のメジャーアップグレードにより、常に最新の機能を利用可能

13. クラウドERP ZAC(株式会社オロ)

IT業、広告業、コンサルティング業などのプロジェクト型ビジネスに特化したクラウドERPです。

  • 案件・プロジェクト単位での詳細な損益管理・予実管理
  • 販売管理、購買管理、勤怠管理、経費精算までを一元管理
  • 内部統制に対応したワークフローやログ管理機能を標準搭載

14. ヨジツティクス(株式会社カオナビ)

経営データを一元管理することで、予実管理の効率化を支援するシステムです。

  • 予算・実績・見込データをダッシュボードで瞬時に可視化
  • 財務データと非財務データを統合管理し、より深い経営分析を支援
  • 経営データの一元化により、データ収集・加工の業務を効率化

15. OBIC7(株式会社オービック)

会計を核として、人事・給与・販売・生産などの基幹業務を統合するERPパッケージです。

  • 様々な業種・業務に対応する豊富なラインナップ
  • 自社開発、直接販売、ワンストップサポート体制
  • 長年にわたる豊富な導入実績とノウハウ

自社に合った経営管理システムでさらなる成長を

本記事では、経営管理システムの基本的な役割から機能、種類、そして自社に合ったシステムの選び方までを解説しました。

社内に散在するデータを一元管理し、経営状況をリアルタイムに可視化する経営管理システムは、迅速で的確な意思決定の基盤となります。ぜひご紹介した経営管理システムのサービス例も参考に、自社の課題解決と持続的な成長を実現する経営管理システムの導入をご検討ください。


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