• 更新日 : 2025年9月9日

ファクタリングが違法とされるケースとは?合法な仕組みと違法業者の見分け方

ファクタリングは売掛債権の売買という合法的な資金調達の手段で、中小企業をはじめ多くの企業に利用されています。しかし手数料を不当に高く設定したり、分割払いを認めたりと、実質的には貸付のような契約をもちかける業者も存在するため注意が必要です。

本記事ではファクタリングが違法とされるケースや違法業者の特徴、安全なファクタリング業者の見分け方を紹介します。

ファクタリングは違法ではない!合法的に認められた仕組み

ファクタリングは、企業が保有する売掛債権をファクタリング会社に売却し、売掛金から手数料を差し引いた現金を早期に受け取れる仕組みです。民法466条で、売掛債権は譲渡可能と定められており、ファクタリング自体は違法ではありません。

中小企業庁では、資金調達の際に不動産担保に依存しすぎるのではなく、売掛債権の積極的な活用を推奨しています。また売掛先に対して、資金繰りが厳しいのではないかという憶測による風評被害を避けるように注意喚起しています。

参考:民法|e-Gov法令検索
参考:中小企業庁|売掛債権担保保証制度

ファクタリング契約の種類と違法リスク

ここではファクタリング契約の種類と違法性について、誤解されやすい点を紹介します。

2社間ファクタリング|売掛先を通さない

2社間ファクタリングは、利用者とファクタリング会社の2者のみで契約が完結します。売掛先の承諾が必要ないため、契約から資金調達まで最短で即日現金化が可能です。

ただし、ファクタリング契約に売掛先は通さないため、売掛金の存在を直接確認できません。架空請求や二重譲渡など売掛金を回収できないリスクが高くなるため、そのリスクに見合うように売買手数料も高めの設定です。

2社間ファクタリングが違法と誤解されやすい理由

2社間ファクタリングは売掛先の同意が不要なため、契約自体が透明性が低いイメージをもたれ、違法性を疑われやすい傾向があります。さらに、手数料も高めに設定されているため、高金利の貸金業と混同されがちです。

また、この特性を悪用し、一部の業者がファクタリングと称して、高い手数料や貸付の形態で契約を結ぶケースがあります。これは貸金業法違反となるため契約前の確認が不可欠です。

関連記事:2社間ファクタリングとは?資金調達に利用するメリット・デメリットや流れを解説

3社間ファクタリング|売掛先の承諾が必要

3社間ファクタリングは、利用者とファクタリング会社、売掛先の企業の3者が関与する取引形態です。売掛先に債権譲渡の通知を行ったうえで契約するため取引の透明性が高く、違法業者が入り込むリスクも低いでしょう。

売掛金は売掛先からファクタリング会社に直接支払われるため、未回収リスクは低く手数料は比較的安い傾向があります。ただし、売掛先への通知と承諾の必要性から、資金調達までに一定の時間がかかります。

3社間ファクタリングについて、詳しく知りたい方はこちらも参考にしてください。

関連記事:3社間ファクタリングとは?資金調達に利用するメリット・デメリットや流れを解説

違法とされるファクタリングとは

ファクタリングは合法的な資金調達の手段ですが、利用の仕方によって違法となるケースがあります。

給与ファクタリングはなぜ違法?

これから受け取る予定の給与を債権として売却し、前借りのような形で受け取る仕組みを「給与ファクタリング」と呼ぶことがあります。給与ファクタリングは利用者から賃金債権を買い取り、利用者に返済を求めるため貸金業にあたります。

ファクタリング業者は、債権の買取業者であるため貸金業の登録は必要ありませんが、貸金業を行う場合は登録が必要であり、未登録で営業を行うことは違法です。

給与ファクタリングの利用について金融庁からも注意喚起が出されています。悪徳業者による高い手数料の提示や過剰な取り立てなどのトラブルも報告されているため注意が必要です。

参考:金融庁|ファクタリングの利用に関する注意喚起

給与ファクタリングで違法とされた判例

給与ファクタリングが違法とされた代表的な判例として、令和5年2月20日の最高裁判所第三小法廷の判例があります。

給与ファクタリングと称して、利用者の賃金債権を手数料を差し引いた金額で買い取っていましたが、最高裁は実質的には返済義務のある貸付契約であると判断しました。

契約上は債権譲渡の形式を取っていても、利用者に返済義務の条件も付いている場合は貸金業に該当します。手数料が極めて高額に設定されていたことも加えて、貸金業法および出資法違反にあたるとされ違法性が明確に示されました。

参考:最高裁判所判例|令和4年(あ)第288号

偽装ファクタリングの違法性とは?

ファクタリングは、売掛債権を売却して資金を調達する方法で、本来は貸付にはあたらないため貸金業の登録が不要です。この仕組みを悪用して、ファクタリングを装いながら実際には貸付を行う偽装ファクタリングと呼ばれる違法行為が存在します。

たとえば、売掛先の倒産や不払いなどで売掛金が回収不能になった際に、その返済を利用者が負担する買戻義務が契約に含まれている場合です。貸付の性質があるとみなされ、貸金業登録をしていない業者が行えば、違法である可能性が高くなります。

また、相場より極めて高い手数料の提示や分割払いの提案も偽装ファクタリングの典型です。

ファクタリング手数料が金利扱いされ違法となるケース

ファクタリングは売掛債権の売買であり貸付ではないため、金利という概念は存在しません。しかし実際は、分割払いでの返済や法外に高い手数料の設定など貸付と同様の形態で契約を結ぶ悪質な業者がみられます。

ファクタリング業者は貸金業者ではないため、高い手数料であったとしても出資法や利息制限法は直接適用されません。

ただし、利用者に売掛金の買戻義務が付いた契約において、実質的に年20%を超える負担となる場合は、状況が異なります。

たとえファクタリングと称していても、実質的には出資法違反として認定される場合があります。形式上はファクタリング契約でも、実態は違法な高金利による貸付業務として判断されるケースです。

違法なファクタリング会社の特徴と見分け方

安全なファクタリング契約をすすめるためには、違法性のある業者を避けることが重要です。ここでは、違法なファクタリング会社の特徴と見分け方を紹介します。

高いファクタリング手数料を提示する

契約時に提示されたファクタリング手数料が、一般的な相場より明らかに高い場合は注意が必要です。手数料の相場は、2社間ファクタリングは10〜20%、3社間ファクタリングは2〜9%程度とされています。

ファクタリングは貸金業ではないため、利息制限法や出資法に縛られないことを悪用するケースがあります。手数料が30%であっても違法ではないものの、違法な業者の可能性が高いでしょう。

利息制限法では貸付額に応じて15〜20%、出資法では20%が上限となっており、違反すると契約自体が無効になったり、刑事罰を科されたりすることがあります。

分割払いをすすめてくる

ファクタリングは売掛債権の売買のため、本来支払いは1回切りで完結し分割払いはあり得ません。

そのため、契約の際に分割払いをすすめられるケースは、返済を前提とした貸付とみなされる可能性があります。

通常ファクタリング業者は、貸金業登録を必要としません。しかし貸付に該当する行為をする場合は、貸金業登録が必要です。このケースのように、貸金業の登録がないのに分割払いの契約を結ぶのは、貸金業法違反となり違法です。

担保や保証人を要求してくる

担保は、利用者が借入金の返済ができなくなった場合に換金して弁済する資産のことをいいます。保証人は、債務者に代わって返済を行う人物です。本来は融資や貸付契約の際に設定されます。

ファクタリングは売掛債権を売却する債権譲渡契約であり、貸付ではないため担保や保証人は必要ありません。そもそもファクタリング会社にとって重要な審査基準は売掛先の実績です。

にもかかわらず、利用者に担保や保証人を求めてくる業者は、実態は貸金業者である可能性が高く、貸金業未登録の場合は、貸金業法違反となります。

契約に償還請求権がある

償還請求権とは、売掛金の回収ができなかった場合に、利用者に返済義務を負わせる権利です。通常のファクタリング契約は、利用者に売掛金の返済を求める権利はなく、ファクタリング業者がその責を負う「償還請求権なし」である場合が多いです。

償還請求権がある場合は、貸付契約であるとみなされ貸金業登録業者しか扱えません。違法な業者である可能性もあるため、契約時には「償還請求権なし」の契約かどうか確認することが大切です。

所在地や電話番号に実態がなく、連絡が取りにくい

ファクタリング会社が実在のものかどうか、公式サイトで確認しましょう。住所や電話番号、代表者名などが記載されていない場合はバーチャルオフィスの可能性もあります。

実際に電話をかけてみる、所在地をGoogleストリートビューなどで見てみるなど、信頼のおける会社かどうか確認しておくと安心です。

契約書に債権譲渡の文言がない、または曖昧

正当なファクタリング契約であれば、通常は契約書に「債権譲渡契約」の文言が明記されています。ファクタリングは売掛債権の売買契約であるにもかかわらず、記載されていなかったり曖昧に表現されている場合は偽装契約の可能性が高く注意が必要です。

ファクタリング契約を交わしたはずなのに、実際は貸付契約を結ばされているケースもあります。貸付の場合は「金銭消費貸借契約」と明記されているため、契約内容を必ず確認しましょう。

契約書を交わさない

口頭やLINEのやり取りだけで、契約書を準備しないファクタリング業者は信頼性が低いです。正規の契約であれば「売掛債権契約書」や「業務委託契約書」に契約者や債権譲渡の有無、譲渡額、解約方法など必要事項が記載された契約書が交付されます。

交付されない場合、後々トラブルが発生した際に対処できません。違法な業者の可能性が高いため、注意してください。

担当者の対応が不自然で信頼できない

ファクタリング契約時には、売掛金が確実に回収できるかどうか確認するために、担当者から書類の提出や面談を求められる場合があります。ファクタリング業者も回収できないリスクは避けたいため通常の流れです。

ところが、違法性のある業者の場合、担当者の説明が不明瞭で質問に対してもはぐらかすような態度を取ったり、契約を急がせたりするケースがあります。

少しでも不安を感じた場合は、別の業者を検討しましょう。

口コミで極端に評価が低い

ファクタリング利用者の声を集めた口コミ情報サイトやSNSも参考になります。極端に評価が低い業者は注意が必要で、頻繁な取り立て行為がある、深夜に電話がかかってくるなどの口コミが報告されている場合は、警戒した方がよいでしょう。

ただし、口コミは主観的な要素が多少加わるため、複数の情報から総合的に判断することが大切です。

ファクタリング違法業者の相談窓口は?

違法なファクタリング業者と契約してしまった場合は、まずは公的な相談窓口や弁護士に相談しましょう。公的機関では、他の専門機関へ紹介したり、アドバイスを行ったりしています。1人で悩まず、早めに相談しましょう。

以下、ファクタリング相談窓口を3つ紹介します。

違法性のないファクタリング会社を選ぶポイント

ここからは合法で安全なファクタリング会社を選ぶポイントを5つ紹介します。

実績が豊富で利用者が多い

ファクタリング会社の公式ホームページで、取引件数・累計取引額などの実績を確認しましょう。利用者が多い会社は知識が豊富なため、安心して利用できる可能性が高いです。

複数の業者を比較するとより分かりやすいでしょう。また、他の利用者の声や同業者の事例が掲載されている場合は、自社に合っているかどうかの判断材料にもなります。

契約書に不審な点がなく文書で準備されている

契約書を文書やPDFなどで交付しない業者は、違法性が高い可能性があります。契約書は、2社間ファクタリングでは「売掛債権譲渡契約書」が必須です。3社間ファクタリングでは「売掛債権譲渡契約書」に加えて、実務上多くの場合「業務委託契約書」も必要です。

契約書には、契約者や売掛債権の特定、譲渡額、契約解除の条件などが明記されています。

また、契約が「償還請求権なし」であることや、「金銭消費貸借契約」でないことは必ず確認しておきましょう。

ファクタリングの契約書について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

関連記事:ファクタリングに必要な契約書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説 

手数料の上限が適切に設定されている

2社間ファクタリングの手数料相場は10〜20%程度、3社間ファクタリングは2〜9%程度です。

なお、ファクタリング業者は貸金業でないため利息制限法や出資法が適用されず、手数料の上限も定められていません。とはいえ、30%を超える手数料を設定している場合は、違法な業者である可能性が高いため注意が必要です。

運営元の情報が明らかである

正規のファクタリング業者は運営元の情報が公式ホームページで公開されていることが多いです。

住所や代表者の名前、電話番号、設立年月日、支店の情報など、不審な点はないか確認します。実際に電話をかけたり、Googleマップで所在を調べるのも有効です。

また、ファクタリングの健全な取引の普及を目的とした「一般社団法人オンライン型ファクタリング協会」に加盟している業者であれば、より安全に利用できるでしょう。

金融庁や都道府県の行政処分歴がない

過去に、金融庁や都道府県の行政処分を受けた経歴がないか必ず確認しましょう。金融庁は公式サイトで「行政処分事例集」を公開しており、都道府県は各自治体のホームページで調べられます。

行政処分を受けた会社は、不適切な運営や違法な法令違反の可能性が高いため避ける方がよいでしょう。


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