• 作成日 : 2024年11月29日

ファクタリングに必要な契約書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説

ファクタリングを利用する際にはファクタリング会社、取引先と契約を締結しなければなりません。この記事ではファクタリングに必要な契約書の種類や書き方を、テンプレートを交えて解説。ファクタリング契約を締結するまでの流れや注意点についてもご紹介します。

そもそもファクタリングとは

ファクタリングは売掛債権を活用した資金調達方法です。売掛債権をファクタリング会社に売却譲渡することで現金が得られます。その後、ファクタリング会社は売掛先から売掛金を回収するという仕組みです。

例えば100万円分の売掛債権があり入金が3カ月後になっているとしましょう。これをファクタリング会社に譲渡することで、3カ月後に入金される予定の100万円がすぐに現金化できます。なお、実際には数%から十数%程度の手数料がかかるため、その分を差し引いた額がファクタリング会社から支払われますが、緊急で資金が必要になった時、キャッシュフローが悪化した時などでは有効な資金調達法といえます。売掛債権の入金日が来たら、ファクタリング会社は売掛金を回収するのです。

ファクタリングはあくまで売掛債権を売却して資金を得る手段であるため、融資ではありません。そのため、利用したとしても信用情報に傷が付かないというメリットがあります。

2社間ファクタリング

2社間ファクタリングとは利用者とファクタリング会社との間で行うファクタリングです。利用者は売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、その対価として現金を受け取ります。売掛債権の入金日が来て売掛金が利用者に入金されたら、それをファクタリング会社に支払います。

売掛先が関与しないため、ファクタリングを利用していることを外部に知られるリスクが低い、スピーディーに資金調達ができるなどのメリットがあります。

3社間ファクタリング

3社間ファクタリングは利用者とファクタリング会社、そして売掛先の3社で行うファクタリングです。利用者が売掛債権をファクタリング会社に譲渡するのは2社間ファクタリングと同様ですが、入金日が来たらファクタリング会社が直接売掛先から売掛金を回収するという点が大きな違いとなります。

2社間ファクタリングと比較して利用時の審査に通りやすい、手数料が安いというメリットがあります。

ファクタリングに必要な契約書

ファクタリングを利用する際に、利用者はファクタリング会社や売掛先と以下の2種類の契約を締結します。

売掛債権譲渡契約書

ファクタリングは売掛債権の譲渡にあたります。売掛債権譲渡契約書とは、売掛債権を保有する債権者と譲渡先が、売掛債権の譲渡に関して合意する契約です。これによって利用者はファクタリング会社に売掛債権を譲渡し、その対価を得ることができます。

2社間ファクタリングの場合は利用者とファクタリング会社が、3社間ファクタリングの場合は利用者、ファクタリング会社、売掛先が売掛債権譲渡契約を締結します。

業務委託契約書

3社間ファクタリングの場合は、ファクタリング会社が売掛先に対して売掛金の回収を行います。この場合、本来利用者が行わなければならない債権回収業務をファクタリング会社が代行するという建て付けになるため、売掛債権譲渡契約とともに業務委託契約書を締結しなければなりません。

ファクタリングに必要な契約書のひな形・テンプレート

以上のようにファクタリングを行う際には状況によっては2種類の契約書を作成する必要があります。当サイトではこれらのテンプレートを用意しました。すぐに使えるようになっているので、ぜひ活用ください。

売掛債権譲渡契約書のひな形・テンプレート

売掛債権譲渡契約書のテンプレートは以下のリンクよりダウンロードできます。2社間ファクタリング、3社間ファクタリングで必要となります。

業務委託契約書のひな形・テンプレート

業務委託契約書のテンプレートは以下のリンクよりダウンロードできます。

ファクタリングに必要な契約書の書き方・記入例

ここからは先ほどご紹介したテンプレートをもとに、ファクタリングに必要な契約書の書き方や記入例についてご紹介します。

売掛債権譲渡契約書の書き方・記入例

まずは売掛債権譲渡契約書の書き方、記入例について見ていきましょう。

売掛債権譲渡契約書

契約者と売掛債権の特定

まずは誰と誰が、どの売掛債権に関して売掛債権譲渡契約を締結するのかを明らかにします。債権者・債務者の氏名・会社名、取引があった日付、引き渡した商品・サービスの名称・数量、額面金額、弁済期限などの情報を記載しましょう。

譲渡額

利用者が上記の売掛債権をいくらでファクタリング会社に譲渡するのかを記載します。一般的に額面金額から手数料(数%~数十%)を差し引いた額が譲渡額となります。

対価の支払い条件

ファクタリング会社が利用者に譲渡対価を支払う方法や期限について記載します。

契約解除

債権者が債権譲渡を拒否した場合に、ファクタリング会社が契約解除できる旨と、その際に利用者が譲渡対価を返却する旨と返却期限について定めます。

署名押印欄

契約日と利用者、ファクタリング会社それぞれの住所と署名を記載する欄、押印欄を設けます。ここに署名押印したら契約に同意したと見なされます。

業務委託契約書の書き方・記入例

次に債権回収の業務委託契約書の書き方や記載例を見ていきましょう。

業務委託契約書

契約者

まずは誰と誰が業務委託契約を締結するのかを明らかにします。利用者とファクタリング会社の会社名や氏名を記載し、「甲」「乙」と置き換えます。

業務の目的

利用者がファクタリング会社に対してどのような業務を委託するのかを記載します。この場合はファクタリング会社に売掛先に対する債権回収業務を依頼することになります。

本件業務の内容

ファクタリング会社がどのような債権を回収するのか、その詳細を明らかにします。債権者・債務者の氏名・会社名、取引があった日付、引き渡した商品・サービスの名称・数量、額面金額、弁済期限などの情報をできるだけ具体的に記載しましょう。

契約期間

契約期間

締結する業務委託契約がいつまで有効なのか、「本契約締結日から1年間有効とする」という期間あるいは具体的な日付を記載します。また、契約更新についても規定しましょう。

紛争処理

利用者とファクタリング会社との間で紛争が発生した際に訴えを起こす裁判所を記載します。「○○地方裁判所」というように指定することもできれば、片方の当事者の所在地を所管する地方裁判所を指定することも可能です。

署名押印欄

債権譲渡契約書と同様、契約日と利用者、ファクタリング会社それぞれの署名押印欄を設けます。

ファクタリング契約を締結するまでの流れ

ファクタリング契約を締結してサービスを利用できるまでには以下のような流れがあります。

事前相談

まずはファクタリング会社に申込みを検討している旨を連絡します。保有している債権に関する情報を伝えることで、手数料や譲渡対価の支払期日、詳細な流れなども教えてくれるはずです。

申し込み

利用条件に納得したらファクタリング会社に利用を申し込みます。担当者からファクタリングサービスの利用方法や注意点、必要書類について説明があります。

必要書類の提出

今回ご紹介した売掛債権譲渡契約書や業務委託契約書をはじめ、申込書や身分証明書などの必要書類をファクタリング会社に提出します。

審査

申込みが完了したらファクタリング会社が利用者や売掛先について審査を行います。融資の審査と比較すると時間も短く、基準も緩めの傾向があります。

契約締結

審査が完了したら売掛債権譲渡契約、場合によっては業務委託契約も締結し、売掛債権を譲渡した対価が入金されます。その後、2社間ファクタリングであれば売掛金が入金されたらそれをファクタリング会社に支払います。3社間であればファクタリング会社が売掛先から直接回収します。

ファクタリング契約を締結するときの注意点は?

以上でファクタリングに必要な契約や利用の流れについてご紹介しました。ファクタリングはうまく活用すれば有効な資金調達の手段となりえますが、以下のような点には注意しましょう。

取引金額が1万円以上の場合は契約書に収入印紙を貼付する

ファクタリングを利用する際に締結する売掛債権譲渡契約書は印紙税法上の課税文書に該当します。取引金額が1万円以上となる場合、200円分の収入印紙を貼付しなければなりません。なお、電子契約を用いて契約を締結する場合は収入印紙の貼付は不要です。

売掛先の同意を得る(3社間ファクタリングの場合)

3社間ファクタリングを行う場合、ファクタリング会社が直接売掛先から債権を回収することになります。そのため、申し込みを行う際に必ず事情を説明して同意を得ておきましょう。ファクタリングを利用することが売掛先にわかることで、会社の信用が低下する、経営不振を疑われるなどのリスクもあります。それが懸念される場合は2社間ファクタリングを利用した方が好ましいといえます。

ヤミ金融業者でないか確認する

近年ファクタリング会社を装った闇金業者も存在しており、法外な利息や手数料を請求された、厳しい取り立てに遭ったというケースも増えてきています。

通常ファクタリングを利用する際には担保や保証人は要りませんので、それらを求められたら闇金の可能性が高いです。また、締結する契約が売掛債権譲渡契約、業務委託契約ではなく消費金銭貸借契約である場合も要注意です。消費金銭貸借契約とは金銭の貸し借りに関する契約であり、そもそもファクタリングではこのような契約は締結しません。

また、ファクタリングの対象となるのは事業者が保有する売掛債権であり、給与債権(会社から受け取る給料の債権)を使ったファクタリングは認められていません。個人を対象として「給与ファクタリング」とうたわれている場合、極めて闇金業者の可能性が高いといえます。

ファクタリングを利用する際には契約や注意点についてしっかりと把握しておこう

ファクタリングは将来受け取れる売掛金をすぐに受け取れる資金調達法であり、うまく活用すれば資金繰りを改善できる可能性もあります。融資ではないので、信用情報に傷が付くこともありません。

しかし、闇金業者に騙されてしまう、取引先からの信用が低下してしまうなどのリスクがあります。また、ファクタリングを利用する際には売掛債権譲渡契約や業務委託契約という契約を締結しなければなりません。今回ご紹介したファクタリングの基礎知識や注意点、契約書の書き方を押さえたうえで、効果的に利用しましょう。


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