- 更新日 : 2025年4月23日
年次決算とは?月次決算との違いや業務内容、効率化のポイントについて解説
年次決算とは、決算書(決算報告書)を作成する業務のことです。会社法により、すべての会社に義務付けられています。どのような業務をするのか、また、流れや月次決算との違いについてまとめました。手間がかかる作業を効率良く、なおかつ正確に実施するためのポイントも解説します。
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年次決算とは?
年次決算とは、決算書を作成する業務のことです。決算書とは正式には「決算報告書」のことで、貸借対照表や損益計算書、キャッシュ・フロー計算書などの複数の書類を指す総称です。
年次決算は、すべての会社に義務付けられている業務のため、年次決算のための時間を確保しておくことが求められます。
年次決算を行う時期
法人は、事業年度終了後の翌日から2ヶ月以内に税金を申告することが義務付けられています。税金を計算するためには、年次決算が必要です。そのため、年次決算は事業年度終了後2ヶ月以内に作成し終えなくてはいけません。
たとえば4月に事業年度が始まる法人なら、3月末日の翌日から2ヶ月以内、つまり5月31日までには税金を納める必要があり、税金を正確に計算するための年次決算もそれ以前に終えることが求められます。
また、年次決算で作成する決算書は、定時株主総会で提出することが必要です。税金の納付期限までに定時株主総会が開催される法人なら、定時株主総会に照準を合わせて、決算書の作成スケジュールを組みましょう。
月次決算との違い
月次決算とは、1ヶ月単位の決算業務のことです。毎月、月次決算をすれば、1年間の業務を合わせることで年次決算が仕上がります。
なお、月次決算には実施義務はありません。毎月決算業務をするよりも1年間分をまとめてするほうがよいと判断する場合なら、月次決算なしに年次決算のみを実施することも可能です。
しかし、1年間の取引や資産の移動をすべてまとめるのは簡単なことではありません。また、間違いがあるかどうか確認するだけでも、多大な労力を使います。正確に決算業務を進めるためにも、できれば月次決算を実施し、間違いはその月のうちに修正しておきましょう。
年次決算業務の流れ
年次決算業務は、次の流れで進めていきます。
- 未処理の仕訳がないか確認
- 決算書の作成
- 各種税金の計算
- 確定申告
- 税金の納付
順を追って、解説します。
未処理の仕訳がないか確認
未処理の仕訳(未確定勘定)がないかチェックしてみてください。見つかったときは修正し、正しい残高に直します。
決算書の作成
1年間の取引や資産の移動に関わるデータをまとめ、決算書を作成します。決算書の中でも、財務三表と呼ばれる貸借対照表と損益計算書、キャッシュ・フロー計算書はとくに重要な書類です。共通するデータを多数含むため、転記ミスをしないように確認しながら作成してください。
作成後、取締役会や監査役、会計監査などの確認を得て完成です。定時株主総会が開催される場合には、財務三表をまとめて提出します。
各種税金の計算
決算書から、決算残高を算出します。次は税金の計算です。以下の税金を計算してください。
確定申告
各種税金の計算を終えたら、法人は事業年度終了の翌日から原則として2ヶ月以内に確定申告を行います。また、個人事業主の場合は、所得税を計算し、確定申告の時期に申告します。
確定申告の期間は通常、翌年2月16日~3月15日です。土日祝日と重なる場合は翌平日が申告期限となるため、申告する前に国税庁の案内を確認しておきましょう。
税金の納付
確定申告と同時に税金の納付も行います。ただし、特定の理由があり、要件を満たしているときは延長してもらえることがあります。
納付が遅れたときや過少申告したときなどは、延滞税や過少申告加算税などが課せられることもあるため注意が必要です。
年次決算業務を行う際の注意点
スムーズに年次決算業務を進めるためにも、次のポイントに注意が必要です。
- 年次決算のスケジュールを確保しておく
- 月次決算を丁寧かつ正確に行う
それぞれのポイントを解説します。
年次決算のスケジュールを確保しておく
法人は、事業年度の終了から納税までを原則として2ヶ月以内に完了しなくてはいけません。決算書を作成するだけでなく、税額の計算などにも時間がかかります。納税期限から逆算して、スケジュールを確保しておくことが必要です。
また、納税期限よりも先に定時株主総会が開催される場合には、さらにスケジュールは過密になります。無理なく年次決算を完了させるためにも、人員・時間を確保しておきましょう。
月次決算を丁寧かつ正確に行う
義務ではありませんが、月次決算を毎月実施することも大切なポイントです。月次決算を正確に実施していれば、チェックする内容が減り、比較的簡単に年次決算が完了します。
年次決算業務を効率化するポイント
年次決算業務は手間がかかるだけでなく、細かな確認作業もあり、正確を期すためには相応の時間も必要です。しかし、ゆっくりと時間をかけて作業していては、定時株主総会や納税期限に遅れるかもしれません。次のポイントに注意して、効率化を進めていきましょう。
- 月次決算を実施する
- 会計ソフトを導入する
- 税理士に相談する
月次決算を実施することで、月単位での確認が可能になり、年次決算の手間を軽減できます。また、会計ソフトを導入することもおすすめです。決算書の書類には重複するデータが多数含まれるため、転記ミスが起こりがちです。会計ソフトを導入し、自動的に転記できるようにしておけば、ミスがなくなり、確認作業も大幅に短縮できるでしょう。
税理士に相談することも検討してみてください。専門家に任せることで、本業に専念しやすくなるのもメリットです。
計画的に決算業務を進めていこう
決算業務は正確性が求められるだけでなく、取り扱う資料が膨大なため、作業に時間がかかります。提出期限から逆算し、計画的に進めていくようにしてください。
作業の効率化を図るためにも、会計ソフトの導入を検討してみましょう。同時に複数の決算書を作成でき、ミスの軽減にもつながります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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