- 更新日 : 2024年8月8日
勘定科目 建物の仕訳と減価償却の解説
事務所や店舗など、事業の用に供するために所有する建物の取得費を経費計上する際は、勘定科目「建物」を使用しましょう。建物に関する会計処理で重要なのは、減価償却です。「建物」が指す範囲や減価償却について理解し、正しい会計処理を行いましょう。今回は、建物取得時や減価償却時の仕訳例、建物の減価償却のやり方について解説します。
勘定科目「建物」とは
勘定科目「建物」は、事業の用に供するために所有する建物のことを表します。事務所や店舗、工場、倉庫などが該当し、原則として屋根、床、壁を有する工作物です。
暖房や照明、電気設備・給排水設備などの附属設備は、厳密には「建物附属設備」といいます。しかし貸借対照表上では、基本的に「建物」として記入します。
「建物」は、建物を取得したときに計上し、貸借対照表では固定資産の場所に表示される勘定科目です。残存耐用年数が1年以下となった建物についても、流動資産とせず、固定資産で表示するのがポイントです。
建物の減価償却
建物は、その形状・材質などに応じた耐用年数の定額法(1998年3月31日以前取得分については定率法も選択可能)で減価償却を行います。
不動産を減価償却する際は、土地と建物を分けて考えることが大切です。建物は、時間の経過とともに価値を失うと考えられるため、減価償却の対象となります。一方、土地は価値を失わないため、減価償却の対象にはなりません。土地と建物を両方購入して所有する場合、建物の金額のみを算出して、減価償却を行う必要があります。
建物の減価償却を行うためには、建物の種類ごとに決められた法定耐用年数を用いる必要があります。法定耐用年数や、どのくらい価値が逓減していくかを示す償却率は、国税庁によって定められているため、会計処理の際は必ずチェックしてください。
業務用建物の法定耐用年数は、以下のとおりです。
用途 | 構造 | 耐用年数 |
---|---|---|
事務所用 | 木造・合成樹脂造のもの | 24年 |
木骨モルタル造のもの | 22年 | |
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの | 50年 | |
店舗用 | 木造・合成樹脂造のもの | 22年 |
木骨モルタル造のもの | 20年 | |
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの | 39年 | |
工場用・倉庫用 | 木造・合成樹脂造のもの | 15年 |
木骨モルタル造のもの | 14年 | |
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの | 38年 |
引用:国税庁 令和4年分 確定申告書等作成コーナーよくある質問
減価償却には定額法や定率法などさまざまな種類がありますが、建物や建物附属設備については定額法で処理しましょう。
定額法で建物を減価償却する際の計算式は、以下のとおりです。
定額法では毎年同じ金額を償却していきます。
減価償却については、以下の記事をご覧ください。
建物の仕訳例
ここでは、業務用の建物を取得して事業の用に供し、決算期に減価償却を行う際の仕訳例を紹介します。
(例)2022年4月1日に木造の倉庫を500万円で取得して事業の用に供し、口座引き落としで支払った。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
建物 | 5,000,000円 | 普通預金 | 5,000,000円 | 木造倉庫取得 |
取得して事業の用に供した際に、建物勘定を用いて仕訳します。なお、建設途中の建物について支払いを行う場合は、建設仮勘定で処理する点に注意してください。
決算期に、減価償却を行いましょう。木造倉庫の法定耐用年数は15年で、償却率は0.067です。
耐用年数ごとの償却率は、以下を参考にしてください。
減価償却費は以下のように計算されます。
5,000,000×0.067=335,000
減価償却の仕訳は以下のとおりです。なお、ここでは直接法を採用しています。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
減価償却費 | 335,000円 | 建物 | 335,000円 | 木造倉庫減価償却1年目/15年 |
勘定科目「建物」の会計処理は減価償却がポイント
今回は、建物という勘定科目と減価償却について解説しました。「建物」は、事業所や店舗、倉庫など、事業の用に供するために所有する建物や、建物附属設備の会計処理に使用する勘定科目です。建物に関する会計処理は、建物を取得して事業の用に供したときと、減価償却の際に行いましょう。減価償却では、建物の形状や材質などに応じた耐用年数と、耐用年数ごとの償却率を用いる必要があります。少々複雑ですが、重要な会計処理であるため、必ずやり方を押さえましょう。
よくある質問
勘定科目「建物」とは?
勘定科目「建物」は、事業の用に供するために所有する、事務所・店舗・工場・倉庫といった建物、および建物附属設備のことを指します。詳しくはこちらをご覧ください。
建物の減価償却はどうやる?
建物の減価償却は定額法で行い、「取得価額×法定耐用年数に応じた定額法償却率」で求められた減価償却費を、法定耐用年数の間償却していきます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
神社への支出は経費?祈祷や賽銭の仕訳と勘定科目を解説
商売繁盛を目的として法人が神社に祈祷を行ってもらった際にかかる初穂料や玉串料などは経費として計上できます。しかし、個人事業主では経費にするのは難しいとされています。 初穂料や玉串料、賽銭などを経費とする場合に、勘定科目や仕分けはどうすれば良…
詳しくみる納税証明書の勘定科目は?発行手数料の仕訳方法もわかりやすく解説!
金融機関で融資を受けるときなどに必要な「納税証明書」は、発行手数料を経費として算入できます。この場合の勘定科目は「租税公課」となり、借方科目に「租税公課」、貸方科目は「現金」として仕訳が可能です。本記事では納税証明書の取得場所や取得方法、勘…
詳しくみる段階取得に係る差益とは?わかりやすく解説
連結財務諸表を作成するための会計処理には、子会社への投資と、資本の相殺消去をする処理が必要になります。このとき、子会社株式を一括して取得(一括取得)する場合と、複数回にわたって段階的に取得(段階取得)する場合があり、それぞれ処理が異なります…
詳しくみる減損損失とは?計算方法や会計処理の方法、認識と測定や財務諸表への影響を解説
減損損失とは、企業が行った固定資産などの投資額と将来キャッシュフローを比べたとき、損が出ている場合の損失額のことです。投資の失敗は、投資家などの外部関係者に影響を与えるため、財務諸表などにその損失額を反映させる必要があります。ここでは減損損…
詳しくみる減価償却累計額はどんな勘定科目?考え方と仕訳のルールを解説
減価償却は建物や機械装置、ソフトウェアなどの有形・無形固定資産に特有の費用配分処理です。減価償却累計額とはこの減価償却をする際に使う勘定科目で、これを理解するためには減価償却の基本を理解しておく必要があります。 以下では減価償却の基本的な考…
詳しくみる当座借越とは?一勘定制と二勘定制の違いを解説
企業は銀行との間で契約を結ぶことで口座残高を超えた金額の小切手を振り出せるようになります。当座借越の仕訳方法は一勘定制と二勘定制に分かれることが特徴です。 一勘定制と二勘定制では使用する勘定の種類と数が異なります。今回は当座借越の概要と、一…
詳しくみる