- 更新日 : 2024年8月8日
自賠責保険の勘定科目は?自動車保険の仕訳方法を解説
自動車を所有する場合、自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)に加入しなければなりません。また、もしもの事故に備えて多くの方は任意保険にも加入しています。事業に車を使用している場合、これらの保険料は経費として計上することが可能です。
今回は自動車保険の勘定科目や仕訳の仕方について解説します。また、自家用車を事業で使用している場合の経費計上の考え方についてもご説明します。
目次
自動車保険の勘定科目
冒頭でも述べたとおり、自動車保険には自賠責保険と任意保険という2種類が存在し、自動車を事業で使っている場合は、これらの保険料を経費として計上することができます。まずはそれぞれの保険料がどの勘定科目になるのかを見ていきましょう。
自賠責保険の勘定科目
自賠責保険は自動車の所有者に対して加入を義務付けている強制保険です。未加入の状態で車を運転すると懲役刑や罰金刑が課せられます。仮に自動車の運転中に相手を死亡させてしまったり怪我をさせてしまったりした人身事故を起こした場合に、加害者が負うべき経済的負担を補填することで被害者を最低限救済する目的で、このような保険制度が設けられました。保険料は自動車の購入時もしくは車検時に支払います。
自賠責保険の保険料は「損害保険料」か「車両費」という勘定科目で計上します。ただし、前年は損害保険料で計上して、今年は車両費で計上するというように、勘定科目を変更するようなことはしないようにしましょう。今年損害保険料として計上するのであれば、来年も損害保険料として計上します。
その他、車検費用の勘定科目については、こちらの記事で詳しく説明しています。
任意保険の勘定科目
任意保険とはドライバーが自分の意志で加入する保険のことを指します。人身事故を起こした場合、自賠責保険で賠償が行われますが、補償額の上限は被害者が死亡したときは3,000万円、後遺障害を負ったときには4,000万円、怪我をしたときは120万円という上限額が決められています。治療費や慰謝料などの請求額がこれを超えてしまうケースも少なくありません。任意保険に加入していれば、被害者側から自賠責保険で賄われる額以上の請求があったとしても保険で対応することが可能です。
また、自賠責保険は対人賠償のみとなっていますが、任意保険に加入していれば、物損事故を起こして相手の車や物を破損させてしまった場合の損害補償や加害者自身の治療費や休業補償も賄うことができます。さらには、自損事故を起こしてしまった場合に自分の車の修理費などが賄える「車両保険」も任意で加入することができます。
任意保険の場合も保険料は「損害保険料」か「車両費」で計上します。
自動車保険の仕訳例
それでは自動車保険料を経費に計上する場合、どのように処理すればいいのでしょうか。ここからは自賠責保険と任意保険の保険料の仕訳の仕方について、例を交えてご説明します。
自賠責保険を損害保険料費で仕訳する
前述のとおり、自賠責保険は損害保険料もしくは車両費で計上します、たとえば車検時に2万円を支払って損害保険料で計上する場合は以下のようになります。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
損害保険料 | 20,000円 | 現金 | 20,000円 | 車検で自賠責保険を支払い |
自賠責保険を車両費で仕訳する
自賠責保険料を車両費で計上する場合は以下のようになります。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
車両費 | 20,000円 | 現金 | 20,000円 | 車検で自賠責保険を支払い |
任意保険を損害保険料費で仕訳する
任意保険も同様に損害保険料か車両費で計上します。ただし、保険期間が1年を超える場合、当年度分しか計上できないことには注意が必要です。仮に保険期間が3年で1月に支払った任意保険料36,000円を損害保険料として計上する場合は以下のようになります。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
損害保険料 | 12,000円 | 現金 | 36,000円 | 損害保険料を前払費用から振替 |
前払費用 | 24,000円 |
当年度分の損害保険料として12,000円を計上し、24,000円は「前払費用」とします。そして、翌年度以降は、その年分の任意保険料の金額を、前払費用から損害保険料に振り替えます。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
損害保険料 | 12,000円 | 前払費用 | 12,000円 | 保険料を前払費用から振替 |
任意保険を車両費で仕訳する
車両費で計上する場合は以下のようになります。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
車両費 | 12,000円 | 現金 | 36,000円 | 任意保険料3年分を支払い |
前払費用 | 24,000円 |
翌年度以降の処理はこのようにします。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
車両費 | 12,000円 | 前払費用 | 12,000円 | 保険料を前払費用から振替 |
事業で利用している自家用車の保険料は経費にできる?
自動車を事業のみの用途に使っているのであれば、自賠責保険料や任意保険料、あるいは車の購入費用や車検費用、修理費用、ガソリン代やタイヤ、エンジンオイルなどの消耗品代も、すべて経費として計上することができます。
一方で、特に個人事業主の場合は自家用車を事業にも使っている方も少なくありません。その場合は事業で使っている分のみを経費として計上することができます。事業用とプライベート用の双方が混在した支出があり、それを事業で使用する分のみを分けることを「家事按分」と言います。車両費や自動車保険料のほか、自宅を作業所として使っている場合は家賃や水道光熱費も家事按分します。
保険料も含めた自動車関連費用の場合は、走行距離や走行時間などを基準に家事按分を行います。たとえば月間の走行距離が1,000kmとして、そのうち出張や外回りなどで700km移動した場合、かかった車両関連費用や保険料の7割を経費として計上することができます。
ただし、当然のことながら自動車をプライベートのみで使用している場合は、経費に計上することができません。たとえば買い物や子どもの送り迎え、ドライブや旅行で使っている自家用車の保険料や維持費を経費として計上することはできないのでご注意ください。また、事業で使っている頻度が低いにもかかわらず、事業割合を高く按分するような行為も問題となります。
個人事業主が自動車保険料を経費に計上する際のポイントについては、こちらの記事でも詳しくご説明しています。
自動車保険は損害保険料か車両費で計上!
自賠責保険であれ、任意保険であれ、自動車保険は損害保険料か車両費で計上すれば問題ありません。事業用の車両であれば、全額経費に計上することができます。一方で、個人事業主が自家用車を事業に使っている場合は、家事按分して事業で使った分のみが経費として認められます。
自賠責保険や任意保険の保険料は定期的に支払わなければならず、自動車の所有者にとっては決して負担も小さいものではありません。正しく処理し、正しく経費として計上しましょう。
よくある質問
自賠責保険の勘定科目は?
「損害保険料」か「車両費」のいずれかで計上します。ただし、一度計上した場合は勘定科目を変更しないようにしましょう。詳しくはこちらをご覧ください。
事業で利用している自家用車の保険料は経費にできる?
事業に使った分のみ按分して計上します。たとえば、車を7割事業に使っているのであれば保険料も7割を経費として計上可能です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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