- 更新日 : 2025年4月23日
外注費とは?仕訳例や給与との違い等を解説
事業を進めるうえで、会社内の人間ではなく、外部の法人や個人に仕事を依頼することがあります。その際の仕訳で使う勘定科目が「外注費」です。外注費は給与など他の勘定科目と混同しやすいですが、正確に処理しないと源泉徴収や消費税の取り扱いを間違ってしまう可能性があります。そこで、ここでは外注費について詳しく解説します。
目次
外注費とは
外注費とは、外部の法人や個人と契約を結び、業務の一部を委託する際に使用する勘定科目のことです。
例えば、製品のパッケージデザインやネットサイトの構築などを外部のデザイナーに依頼した際に発生する費用などが、外注費に該当します。
外注費の仕訳例
ここでは外注費の仕訳例について、法人と個人に依頼したケースでそれぞれ見ていきましょう。
取引先が法人の場合
(例)外部の法人に製品のパッケージデザインを依頼し、普通預金から100,000円を支払った。
借方 | 貸方 |
---|---|
外注費 100,000円 | 普通預金 100,000円 |
取引先が個人の場合
(例)個人のプログラマーにウェブサイトのプログラミングを10万円で依頼した。代金は、源泉徴収税1万円を差し引いた9万円を普通預金から支払った。
借方 | 貸方 |
---|---|
外注費 100,000円 | 普通預金 90,000円 |
預り金 10,000円 |
著述業やプログラマーなど、一定の職業の個人に外注費を支払う場合には、仕事の種類に応じて計算した所得税を源泉徴収する必要があります。一般的に源泉徴収した所得税は「預り金」などの勘定科目で処理します。
外注費と支払手数料の違い
外注費と似ている勘定科目に支払手数料があります。どちらも、外部に仕事を依頼する際に使う勘定科目ですが、支払手数料はより高い専門性を有する人に依頼する場合に使用します。
例えば、公認会計士や税理士、弁護士や司法書士などに支払う報酬については、外注費ではなく支払手数料を用いて帳簿付けを行います。
外注費と給与の違い
外注費を使う際の注意点として、給与と混同しないことが挙げられます。外注費と給与では、消費税や源泉徴収などの取り扱いに大きな違いがあります。外注費と給与を混同していないかどうかは税務調査でもよく調べられる事項であるため、注意が必要です。そこで、ここでは外注費と給与の違いについて詳しく見ていきます。
給与より外注費のほうが良い?
外注費は原則、給与に比べて源泉徴収義務がないうえに、本則課税での消費税計算を採用していれば、消費税の納付額も抑えることができます。また、社会保険料についても、外注費であれば加入義務はないので保険料の負担もありません。
こうした利点を見ると外注費を選びたくなりますが、決して自由に決められるものではありません。契約内容はもちろんですが、その業務が実際にどういう状況で遂行されているのかといった事実関係なども客観的に見て科目を判断する必要があります。
外注費が給与であると指摘された場合
会社が外注費として処理していたものが税務調査によって給与だと指摘され、それを承認する場合、以下のような影響があります。
源泉所得税の支払い
給与となった分の源泉所得税が徴収もれという扱いになり、追徴課税されます。例えば、420万円の外注費が給与となった場合は、源泉所得税の徴収もれ額、約80万円を支払うことになります。
※給与が月額35万円として、令和2年度源泉徴収税額表の乙欄の源泉所得税×12ヶ月という計算です。
仕入消費税控除の否認
外注費にかかっていた仕入消費税が、給与になることで不課税となります。控除されていた仕入消費税分はそのまま追徴課税額となります。上記の例だと、420万円×10/110=約42万円を支払うことになります。
延滞税・加算税の支払い
上記2点の追徴税額に加えて、過少申告加算税、不納付加算税、延滞税も課税されます。これらの追徴課税は、会社にとってはかなり大きな負担となるはずです。
もし1年だけでなく、過去をさかのぼって指摘されたら膨大な額になります。もちろん、はっきりと外注費と給与が区別できる経費は心配ありませんが、会社が外注費だと判断している経費でも、給与の要素を含んでいる可能性があります。
外注費と給与を判断するには
この外注費と給与の処理について、どうして税務調査で争点となることが多いのでしょうか。それは、完全な区分がはっきりと存在していないからです。
つまり、契約書ではなく、実際の業務が外注費に該当する内容であるかを、総合的に見て判断するときに誤りが生じやすいのです。その総合的判断については、以下の通り国税庁より公表されている一定の判断基準が参考となります。
- 他人が代替して業務を遂行すること、又は役務を提供することが認められるかどうか。
→当人にしかできない業務であり、当人が拘束されているのであれば、実質従業員であり、給与となります。
- 報酬の支払者から作業時間を指定される、報酬が時間を単位として計算されるなど時間的な拘束を受けるかどうか。
→外注であれば、成果物に対して報酬は支払われますが、労働時間に対しての報酬ということになれば給与となります。
- 作業の具体的な内容や方法について報酬の支払者から指揮監督を受けるかどうか。
→自己の責任において裁量をもって仕事をしているなら外注費で、指示された作業をしているなら給与となります。
- まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失するなどした場合において、既に遂行した業務又は提供した役務に係る報酬の支払いを請求できるかどうか。
→成果物を渡さなければ報酬を請求できないという条件なら外注費で、労働時間を基準として支払うのであれば給与となります。
- 材料又は用具等を報酬の支払者から供与されているかどうか。
→費用負担という観点から、経費を自己負担していれば外注費、材料や用具の用意を会社負担でしていれば給与となります。
外注費を使うメリットとデメリット
業務上、発生する作業の対価を支払ったときは、外注費として仕訳をすることがあります。勘定科目として外注費を使うメリットとデメリットについて説明します。
外注費を使うメリット
給与ではなく外注費を使うことには、次のメリットがあります。
- 社会保険料の負担は不要
- 源泉徴収税額を一律で計算できる
- 年末調整は不要
それぞれのメリットについて見ていきましょう。
社会保険料の負担は不要
給与として報酬を支払うときは、社会保険料の半額を会社側で負担しなくてはいけません。しかし、外注費として報酬を支払うときは、社会保険料の負担は不要です。会社の負担が軽減する点は、外注費のメリットです。
源泉徴収税額を一律で計算できる
外注費を支払うときは、源泉徴収税額を差し引く必要があります。源泉徴収税の税率は100万円以下なら10.21%、100万円超なら20.42%と2つしかパターンがないため、計算が簡単です。
一方、給与として支払うときは、源泉徴収税額表に沿って源泉徴収税額が規定されます。外注費のように2つだけのパターンではないため、計算が複雑です。
年末調整は不要
給与であれば年末調整をする必要があります。年末調整によって課税所得金額が変わると、再度、所得税の税額も計算し直さなくてはいけません。
一方、外注費なら、受け取った業者・個人が各自で確定申告をするため、年末調整する必要はありません。源泉徴収税額も再計算する必要がなく、年末の業務も簡単になります。
外注費を使うデメリット
給与ではなく外注費を使うことには、次のデメリットもあります。
- 消費税が発生する
- 発注時の指示内容によっては外注費とならないことがある
それぞれのデメリットを説明します。
消費税が発生する
外注費は原則として消費税の課税対象です。消費税を上乗せして支払うことになり、10%会社側の負担が増えます。
発注時の指示内容によっては外注費とならないことがある
外注作業に対して指示が細かいときや、勤務時間が決まっているときなどには、外部の個人・法人に支払うときも、外注費ではなく給与とみなされることがあります。
税理士などから指摘を受けたときには、給与として計算し、仕訳をし直すだけでなく、仕事を依頼している個人・法人にも、差額の返還・支払いや明細書の再作成などの対応が必要です。
外注費と他の勘定科目をきちんと区別して正しい処理をしよう
外注費とは、外部の法人や個人と契約を結び、業務の一部を委託する際に使用する勘定科目です。外部への支出のため、支払手数料など別の科目と混同しがちなので注意しましょう。特に外注費と給与を混同して処理してしまうと、消費税や源泉所得税の納付漏れにつながります。判断基準などにそって、きちんと区別することが重要です。
【参考】国税庁|大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いに関する留意点について(情報)
よくある質問
外注費とは?
外注費とは、外部の法人や個人と契約を結び、業務の一部を委託する際に使用する勘定科目のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
外注費と給与の違いは?
外注費と給与では、消費税や源泉徴収などの取り扱いに大きな違いがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
外注費が給与であると指摘されるとどうなる?
追徴税額や過少申告加算税、不納付加算税、延滞税が課税されます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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