• 作成日 : 2025年11月6日

債権管理システムとは?機能や比較ポイント、サービス例15選など紹介

債権管理システムの導入は、適切な要件定義と運用のもとでキャッシュ・フローの可視化や回収の早期化を促し、バックオフィス業務の効率化に貢献します。

この記事では、債権管理システムの基本的な役割から、与信管理や入金消込といった主要機能、クラウド型とオンプレミス型の違い、そして自社に最適なシステムを選ぶための具体的なポイントまでを網羅的に解説します。債権管理システムサービスも15選ご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

目次

債権管理システムとは?

債権管理システムとは、請求から入金、督促に至るまでの一連の債権管理業務を効率化し、一元管理するためのITツールです。 これにより、手作業に起因するミスを減らし、回収までのリードタイム短縮を通じてキャッシュ・フローの安定化に資する可能性があります。

債権管理の重要性と課題

債権管理は、企業の売上を確実な現金として回収し、資金繰りを安定させるために不可欠な業務です。しかし、Excel(エクセル)やスプレッドシートでの手作業による管理には、以下のような多くの課題が潜んでいます。

  • ヒューマンエラーの発生:請求漏れ、金額の誤り、入金消込のミスなどが起こりやすい。
  • 業務の属人化:特定の担当者しか全体の状況を把握できず、業務がブラックボックス化する。
  • 非効率な督促業務:滞留債権の発見が遅れ、督促のタイミングを逃したり、担当者の負担が増大したりする。
  • リアルタイムな状況把握の困難:経営層が売掛金の回収状況を即座に把握できず、迅速な意思決定の妨げとなる。

これらの課題は、企業の収益性や信用力に直接的な影響を及ぼす可能性があります。

債権管理システムが解決できること

債権管理システムは、これらの手作業に起因する課題を解決します。具体的には、多くの製品が搭載する請求データの自動取り込みや入金データの自動突合(入金消込)、滞留債権の可視化、督促業務の支援(自動リマインダーなど)といった機能を通じて、手作業を大幅に削減します。

これにより売掛金管理や請求管理といった個別の業務だけでなく、債権回収プロセス全体を可視化・自動化し、業務の標準化と効率化を実現します。ただし、搭載されている機能の範囲や自動化のレベルは製品によって異なるため、導入前の確認が重要です。

債権管理システムの主な機能は?

債権管理システムには、与信管理から請求書発行、入金消込、滞留債権の管理・督促、そして会計ソフトへの連携まで、債権管理業務全体をカバーする機能が備わっています。 これにより、業務プロセス全体をシームレスに連携させ、効率を最大化します。

以下に、主要な機能を表でまとめました。

機能分類主な機能内容導入により期待できる効果
与信管理機能取引先の信用情報を管理し、与信限度額を設定・監視する。未回収リスクを事前に低減し、安全な取引を促進する。
請求データ連携・請求書発行機能販売管理システムなどから請求データを自動で取り込み、請求書を発行・送付する。請求漏れや二重請求を防ぎ、請求業務の工数を削減する。
入金消込機能銀行の入出金データと請求データを自動で照合し、入金済みか否かを判定する。これまで手作業で行っていた煩雑な照合プロセスを自動化し、担当者の作業負担を大幅に軽減させる。
滞留債権管理・督促機能支払期日を過ぎた債権(滞留債権)を自動で抽出し、リスト化する。督促状の作成や送付を支援する。早期に未回収債権を把握し、迅速な督促アクションを可能にすることで回収率を向上させる。
会計ソフト連携機能消込結果や売掛金の増減データを会計ソフトに自動で仕訳連携する。経理担当者の手入力作業をなくし、月次決算の早期化に貢献する。
レポート・分析機能年齢別債権残高一覧表(エイジングリスト)などを自動で作成し、回収状況を可視化する。経営層がキャッシュ・フローの状況をリアルタイムで把握し、的確な経営判断を下せるようになる。

債権管理システムにはどのような種類がある?

債権管理システムは、提供形態によって主に「クラウド型」と「オンプレミス型」の2種類に大別されます。 現在の主流は、導入が手軽でコストを抑えやすいクラウド型ですが、自社の要件によってはオンプレミス型やデスクトップ型も適している場合もあります。

それぞれの特徴を理解し、自社の規模やセキュリティポリシーに合った形態を選ぶことが重要です。

項目クラウド型オンプレミス型
導入形態インターネット経由でサービスを利用自社のサーバーにソフトウェアをインストール
初期費用低い、または無料高い(サーバー、ソフトウェア購入費)
月額費用発生する(利用料)ライセンス買取型が主だが、年間の保守・サポート費用が別途発生するのが一般的。近年はサブスクリプション型のオンプレミス製品も存在。
導入期間短い(数日〜)長い(数ヶ月〜)
カスタマイズ性ソースコードの改変といった自由度は低いものの、API連携やアプリマーケットを通じた機能拡張が広く提供されており、高度なカスタマイズも可能。高い(自社仕様に開発可能)
保守・運用ベンダー側で実施自社で実施
アクセス場所を問わず可能(要ネット環境)VPNやVDIといった技術を用いることで、セキュリティを確保しながら社外からアクセス可能(接続方針は各組織のセキュリティ設計に依存)。
おすすめの企業中小企業、スタートアップ、スピーディに導入したい企業大企業、独自のセキュリティ要件や業務フローを持つ企業

クラウド型の特徴

クラウド型は、サーバーの構築や管理が不要で、インターネット環境さえあればすぐに利用を開始できる手軽さが最大のメリットです。月額費用で利用できるため初期投資を抑えられます。加えて、法改正への対応や機能アップデートといった保守・運用が基本的にベンダー主導で行われるため、自社の負担を大幅に軽減できる点も大きな魅力です。

オンプレミス型の特徴

オンプレミス型は、自社内にサーバーを設置してシステムを構築します。初期費用や保守管理コストは高額になりますが、自社の複雑な業務フローに合わせて自由にカスタマイズできる点や、閉域網での運用も可能ですが、それだけで高い安全性が保証されるわけではありません。セキュリティレベルは、ID管理や暗号化、ログ監視といった適切な統制・運用によって決まります。これはクラウド環境でも同様に高水準なセキュリティを実現可能です。

債権管理システムを導入するメリット・デメリットは?

債権管理システム導入の最大のメリットは業務効率化とキャッシュ・フロー改善ですが、一方でコストや業務フローの変更といったデメリットも存在します。これらを総合的に判断することが導入成功の鍵です。

債権管理システム導入のメリット

  1. 圧倒的な業務効率化と属人化の解消:入金消込や督促リストの作成といった定型業務を自動化することで、担当者の作業時間を大幅に削減します。また、業務プロセスが標準化されるため、特定の担当者に依存する「属人化」が解消され、誰でも一定の品質で業務を遂行できるようになります。
  2. 請求・入金管理の精度向上によるヒューマンエラー削減:システムによる自動処理は、手作業で起こりがちな請求漏れや二重請求、消込ミスといったヒューマンエラーの発生確率を大幅に低減し、ミスを検知・修正しやすい仕組みを構築できます。これにより、取引先からの信頼性も向上します。
  3. キャッシュ・フローの可視化と改善:滞留債権をリアルタイムで正確に把握できるため、迅速な督促アクションが可能となり、債権の回収サイクルが早まります。これにより、企業の資金繰りの安定化につながり、キャッシュ・フローの改善が期待できます。
  4. 迅速な経営判断の支援:売掛金の残高や回収状況がデータとして可視化されるため、経営層は常に最新の財務状況を把握できます。このデータに基づき、与信判断の見直しや事業戦略の策定など、迅速かつ的確な意思決定が可能になります。

債権管理システム導入のデメリット(注意点)

  1. 導入・運用コストの発生:システムの導入には初期費用が、月額利用料などのランニングコストがかかります。費用対効果を事前にしっかりとシミュレーションすることが重要です。
  2. 業務フローの変更と定着:新しいシステムの導入に伴い、既存の業務フローを見直す必要があります。現場の担当者が新しいプロセスに慣れるまでには、丁寧な研修やマニュアル整備、十分な移行期間が必要です。
  3. システム選定の難しさ:多種多様なシステムの中から、自社の事業規模や業種、既存システムとの連携性などを考慮して最適なものを選ぶのは簡単ではありません。選定を誤ると、導入しても期待した効果が得られない可能性があります。

債権管理システムのサービス比較ポイントは?

自社に最適な債権管理システムを選ぶには「事業規模との適合性」「既存システムとの連携性」「セキュリティ」「サポート体制」の4つのポイントを確認することが不可欠です。 これらのポイントを基準に、複数のシステムを比較検討しましょう。

ポイント1. 事業規模や業種との適合性

企業の規模によって、管理すべき債権の数や業務の複雑さは大きく異なります。中小企業であればシンプルで使いやすいシステム、大企業であれば内部統制にも対応できる高機能なシステムが求められます。また、特定の業種(例:サブスクリプション、不動産賃貸など)に特化した機能を持つシステムもあるため、自社のビジネスモデルに合っているかを確認しましょう。

ポイント2. 既存システム(会計ソフト・販売管理システム)との連携

現在使用している会計ソフトや販売管理システムとスムーズに連携できるかは、非常に重要なポイントです。API連携やCSVファイル連携によって、請求データや入金データを二重入力する手間なく取り込めれば、業務効率は飛躍的に向上します。連携実績のあるシステムを確認しましょう。

ポイント3. セキュリティ対策

債権管理システムは、取引先の重要な情報や金銭に関わるデータを扱います。そのため、堅牢なセキュリティ対策が講じられているかは必ず確認すべきです。データの暗号化、IPアドレス制限、操作ログの管理機能、そして「ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)」認証の取得状況などをチェックしましょう。

ポイント4. サポート体制の充実度

システムの導入初期は、設定や操作方法で不明点が出やすいものです。導入時の設定支援や、導入後の電話・メールでの問い合わせ対応など、ベンダーのサポート体制が手厚いかを確認しましょう。無料トライアル期間などを活用して、実際のサポート品質を確かめるのも有効です。

債権管理システムのサービス例15選

ここでは例として、機能や特徴が異なる15の債権管理システムサービスを紹介します。それぞれのツールの強みを比較し、自社の課題解決に最も貢献してくれるシステムを見つけてください。

なお、料金体系は各社のプランや企業の利用規模によって大きく異なります。最新の情報や詳細な料金については、必ず各サービスの公式サイトをご確認いただくか、直接お問い合わせの上、見積もりを取得してください。

1. マネーフォワード クラウド債権管理(株式会社マネーフォワード)

マネーフォワード クラウド会計」や「マネーフォワード クラウド請求書」といった基幹サービスとシームレスに連携し、債権管理業務を自動化・効率化する専用サービスです。「クラウド請求書」で発行した請求データは自動で債権情報として登録され、銀行口座から取得した入金データとAIが照合。条件が一致した明細は一括で消込を確定できます。

これにより、担当者は名義不一致や過入金といった例外的な取引の確認に集中できるため、月次決算の早期化や業務の精度向上に寄与します。

特長や料金などは、下記ページに詳しく記載していますので、ぜひ参考にしてください。

>>マネーフォワード クラウド債権管理

2. V-ONEクラウド(株式会社アール・アンド・エー・シー)

入金消込や債権管理に特化したクラウドサービスで、AIによる機械学習機能を搭載しています。銀行の入金データと請求データを照合し、名義不一致や過不足入金といった複雑なパターンでも高精度な自動消込を実現します。

また、滞留債権を可視化する年齢別残高一覧表(エイジングリスト)を自動で作成し、督促業務の効率化や回収サイクルの短縮化を支援します。

3. invox 入金消込(株式会社invox)

AI OCRとオペレーターを組み合わせた独自の仕組みで「99.9%以上のデータ化精度」を謳う入金消込自動化サービスです。入金消込機能においては、銀行の入出金データなどを取り込み、設定した照合ロジックに基づいて自動または手動で消込を行います。振込名義が異なる入金や一括入金などもAIと人の手で確認・特定するため、手作業での確認業務を削減します。

4. 請求QUICK(SBIビジネス・ソリューションズ株式会社)

請求書の発行から入金消込までをワンストップで完結できる債権管理サービスです。ユーザー専用の振込専用口座に入金された明細を自動で取得し、請求情報とAIが照合することで入金消込を自動化します。振込人名義と請求先名が完全一致しない場合でも、AIが過去の消込パターンを学習して照合精度を向上。合算入金の特定にも対応し、手作業での確認工数を削減します。

5. Bill One債権管理(Sansan株式会社)

法人向けクラウド請求書受領サービス「Bill One」が提供する債権管理機能です。請求データをアップロードするだけで債権管理台帳を自動で生成し、複数の銀行口座から入金情報を取得して照合。請求先ごとに発行されるバーチャル口座を活用することで、入金消込の高い自動化を実現します。滞留債権の可視化や督促の自動化機能も備え、月次決算の早期化に貢献します。

6. freee会計(フリー株式会社)

会計ソフトを基盤とし、見積書作成から債権管理、会計処理までを統合したサービスです。発行した請求書は、レポート機能で入金ステータスを一覧管理できます。また、銀行口座から自動取得した入金明細は「自動で経理」機能が請求情報と照合。システムが提案する候補を選ぶだけで消込と仕訳が完了するため、担当者は例外確認といった重要な業務に注力できます。

7. Oracle NetSuite(日本オラクル株式会社)

会計、販売、CRM、Eコマースなど、企業の基幹業務を統合管理するクラウドERPです。販売管理プロセスと連携し、受注から請求書発行、入金管理までを一元化。リアルタイムに更新される売掛金残高や滞留債権の状況をダッシュボードで可視化し、多言語・多通貨に対応しているため、国内外の複数拠点にまたがる債権情報も一元的に把握・管理できます。

8. バクラク債権管理(株式会社LayerX)

請求書発行システムや販売管理システムなど、社内の様々なシステムから出力される請求データを自動で集約し、一元管理するクラウドサービスです。AI-OCRと独自のAI技術により、銀行の入金明細と請求データを高い精度で自動照合。合算入金や振込名義が異なる場合でも、効率的な消込作業を実現します。滞留債権のリストアップや督促管理機能も搭載しています。

9. 楽楽債権管理(株式会社ラクス)

2025年7月に提供を開始した、債権管理・入金消込業務に特化したクラウドサービスです。複数の銀行口座から入金データを自動で取得し、請求情報と照合することで、これまでExcelや目視で行っていた煩雑な消込作業を自動化します。複数請求の一括入金や振込手数料が差し引かれた差額入金など、複雑なパターンにも柔軟に対応。同社の「楽楽明細」との連携で請求書発行から一元管理でき、完了した消込データは仕訳データとしてCSV出力も可能です。

10. 請求管理ロボ(株式会社ROBOT PAYMENT)

請求・集金・消込・督促の一連の業務を自動化することに特化したクラウドサービスです。毎月の請求書発行や送付を自動化し、クレジットカード決済や口座振替、銀行振込など多様な決済手段に対応。入金データは自動で取得され、請求情報と照合して消込作業を完了させます。未入金者への督促も自動で行い、請求業務全体の工数を削減します。

11. 債権奉行クラウド(株式会社オービックビジネスコンサルタント)

会計ソフトで高いシェアを持つ「奉行クラウド」シリーズの、債権管理に特化したサービスです。「勘定奉行クラウド」や「商奉行クラウド」と完全連携し、販売データから入金予定を自動で作成。金融機関から取得した入金データと照合し、消込処理を行います。消込結果は仕訳として会計システムに自動連携されるため、二重入力の手間なく、正確な債権残高の管理を実現します。

12. MakeLeaps(メイクリープス株式会社)

見積書から請求書まで、企業間取引で必要な書類をクラウド上で簡単に作成・管理・送付できるサービスです。作成した請求書はワンクリックでメール送付や郵送代行が可能。請求書ごとの入金状況をステータス管理し、未入金の請求に対して支払催促のメールを送る機能も備えています。シンプルな操作性と、営業から経理まで幅広い部署で利用できる点が特徴です。

13. Salesforce Sales Cloud(株式会社セールスフォース・ジャパン)

顧客管理(CRM)・営業支援(SFA)を主軸とするプラットフォームです。その強みを活かし、同社の「Salesforce Revenue Cloud」や、AppExchangeで提供される豊富な連携アプリと組み合わせることで、営業から経理まで一貫した情報管理を実現します。商談成立後、Salesforce上の顧客・取引情報をもとに請求書を自動作成し、入金状況も紐づけて管理することで、部署間のスムーズな情報共有と迅速な督促対応を可能にします。

14. SAP S/4HANA Cloud(SAPジャパン株式会社)

企業の基幹業務を統合する次世代ERPです。販売管理、在庫管理、財務会計などのモジュールがリアルタイムに連携し、受注から請求、債権管理、入金処理までの一連のプロセスを管理します。与信管理、滞留債権の分析、督促管理といった高度な機能を備え、企業のキャッシュ・フローと信用リスクを統合的にコントロールします。

15. クラウドERP ZAC(株式会社オロ)

IT業や広告業、コンサルティング業といったプロジェクト型ビジネスに特化したクラウドERPです。案件・プロジェクト管理を起点とし、販売管理、購買管理、勤怠管理、経理管理までを一元化。プロジェクトの売上実績に基づいて請求データが自動作成され、入金管理までをシームレスに連携します。プロジェクト単位での債権残高や収支状況をリアルタイムに可視化できるのが強みです。

債権管理システムで実現する、効率的なバックオフィス

本記事では、債権管理システムの基本から機能、選び方、そして具体的なサービス例までを解説しました。債権管理システムは、単なる業務効率化ツールではありません。未回収リスクを低減し、キャッシュ・フローを最大化することで、企業の経営基盤を強化し、持続的な成長を支える重要な経営インフラです。

導入にあたっては、自社の事業規模や課題を明確にし、既存の会計システムや販売管理システムとの連携性を十分に考慮することが成功の鍵となります。まずは無料トライアルなどを活用して実際の操作性を試し、自社に最適なパートナーとなる債権管理システムを見つけ、売掛金管理の効率化と経営の安定化を実現してください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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