- 作成日 : 2025年9月9日
ファクタリングが中小企業におすすめな4つの理由|利用の流れや注意点も紹介
ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング会社に売却することで支払い期日を待たずに資金を獲得できるサービスです。
ファクタリングを検討している中小企業の経営者や役員の中には「ファクタリングを中小企業が利用するメリットは?」「他の資金調達方法と何が違う?」と疑問に思っている人もいるでしょう。
そこで本記事では、ファクタリングが中小企業におすすめな4つの理由を詳しく解説します。ファクタリングの仕組みや他の資金調達方法との違いなど基本的な内容もまとめています。
目次
ファクタリングとは?
ファクタリングとは、会社が保有する売掛債権をファクタリング会社に買い取ってもらうことで早期に現金化できるサービスです。
基本的に、取引先へ商品やサービスを提供して代金を振り込んでもらうまでに、30日〜60日ほどかかってしまいます。入金までの期間が長引いた結果、手元の現金が不足して資金繰りが悪化することも考えられます。
ファクタリングを利用して売掛債権を売却すれば、取引先からの振り込みを待たずに資金を調達可能です。ファクタリングによって資金を確保することで資金繰りの悪化を防げます。
また、売掛金の入金前に資金化でき、回収リスクの軽減も可能です。なお、3社間ファクタリングであれば未回収リスクを回避できますが、2社間ファクタリングの場合には取引先の未払い時に利用者が負担しなければならない可能性があります。未回収リスクを完全に回避することはできない点には注意が必要です。
ファクタリングと他の資金調達方法の違い
ファクタリングと他の資金調達方法の違いについて以下の表にまとめました。
比較項目 | ファクタリング | 銀行融資 | 日本政策金融公庫からの融資 | ビジネスローン |
---|---|---|---|---|
資金調達までの日数 | 当日〜1週間ほど | 1ヶ月ほど | 数週間ほど | 当日〜1週間ほど |
主な審査対象 | 売掛先 | 申し込み者 | 申し込み者 | 申し込み者 |
信用情報への影響 | 影響なし | 影響あり | 影響あり | 影響あり |
担保・保証人の必要性 | 不要な場合が多い | 必要な場合もある | 必要となる場合がある | 不要な場合が多い |
銀行融資やビジネスローンといった他の資金調達方法だと、調達できるまでに時間がかかったり担保や保証人を用意しなければならなかったりします。
対して、ファクタリングなら最短即日で資金を獲得でき、担保や保証人を用意する必要もありません。また、主な審査対象は売掛先であるため、会社の財務状況が芳しくない場合でも利用できる可能性があります。
ファクタリングの種類と仕組み
ファクタリングの種類はいくつかありますが、大きく「買取型ファクタリング」と「保証型ファクタリング」の2種類に分けられます。
買取型ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング会社に買い取ってもらうことで、売掛金の支払い期日よりも前に現金を手に入れられるというファクタリング形式です。
保証型ファクタリングとは、ファクタリング会社に保証料を支払うことで、取引先が売掛金を振り込むのを保証してもらうというファクタリング形式です。万が一、売掛金を回収できない事態となってもファクタリング会社から保証金額を受け取れます。
日本では買取型ファクタリングが主流となっており、取引する会社数によって更に「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」に分類されます。
2社間ファクタリングの仕組み
2社間ファクタリングは、申し込み企業とファクタリング会社の2社で取引を行います。2社間ファクタリングの具体的な仕組みは以下の通りです。
- 申し込み企業が売掛債権をファクタリング会社に売却する
- 手数料を差し引いたお金がファクタリング会社から入金される
- 取引先が申し込み企業に売掛金を振り込む
- 申し込み企業がファクタリング会社に回収した売掛金を支払う
2社間ファクタリングのメリットは、売掛債権を最短即日で現金化できる可能性があることです。また、取引先にファクタリングを利用していることを知られずに済みます。
ただ、手数料は3社間ファクタリングよりも高めであることがほとんどです。回収した売掛金をファクタリング会社に支払うという手間がかかる点もデメリットと言えます。
3社間ファクタリングの仕組み
3社間ファクタリングは、申し込み企業・ファクタリング会社・取引先の3社で取引を行います。3社間ファクタリングの具体的な仕組みは以下の通りです。
- 申し込み企業が取引先に承諾をもらう
- 売掛債権をファクタリング会社に売却する
- 手数料を除いた額をファクタリング会社に入金してもらう
- 取引先が直接ファクタリング会社に売掛金を支払う
3社間ファクタリングのメリットは、2社間ファクタリングよりも手数料が安めであることです。また、ファクタリング会社に入金してもらった時点で申し込み企業は取引が終了するため、売掛金を回収する手間が発生しません。
ただし、取引先にファクタリングの承諾を得る必要があり、ファクタリングの利用を知られてしまいます。取引先からの返事が遅いと、売掛債権を現金化するのに時間がかかる場合もあるでしょう。
ファクタリングが中小企業におすすめな4つの理由
ファクタリングが中小企業におすすめな理由を4つ紹介します。
1. すぐに資金が手に入る
ファクタリングは資金を調達できるまでの日数が短めであり、早ければ最短即日で現金が手に入る場合もあります。
銀行や日本政策金融公庫から融資してもらうとなると、実際にお金を借りられるまでに1ヶ月ほどかかってしまうことも珍しくありません。
対して、ファクタリングは手続きや審査がスピーディーで、契約を締結すればすぐに口座に入金してもらえます。申し込みから現金の入手までが速いのが特徴です。
大口受注で仕入れ資金が必要になったときや、想定外の設備トラブルでかなりの修理費がかかるときなど、急にお金を用意しなければならなくなったときにも便利です。
2. 売掛金の未回収を防げる
取引先の倒産によって売掛金の回収ができなくなった場合、資金繰りが悪化するといった会社の経営に重大な影響を及ぼす可能性があります。
ファクタリングを利用すれば、未回収のリスクを回避できます。売掛債権をファクタリング会社に売却した時点で、売掛金に相当する資金を確保できるためです。
また、基本的に企業はファクタリング会社から売掛金の支払いを求められることもありません。
ただし、売掛金を回収する責任が発生しないのは、償還請求権なしのノンリコース契約を締結したときです。償還請求権ありのウィズリコース契約を結ぶと、取引先が支払えなくなった売掛金を負担する必要があります。
ファクタリングの契約はノンリコース契約が原則ですが、心配な場合は契約を締結する前に契約形態を確認しておきましょう。
3. 負債が増えない
ファクタリングは融資ではないため、負債として計上されません。
融資は金融機関からお金を借りるサービスであるのに対して、ファクタリングは売掛債権をファクタリング会社に譲渡して現金を得るサービスです。つまり、ファクタリングは資産の形が変わっただけです。
ファクタリングを利用しても負債として扱われないため、現在の自己資本比率を維持できます。負債を増やさずに高い自己資本比率を維持すれば、将来的に金融機関から融資を受ける場合に審査で有利に働く可能性もあります。
融資の申し込みを考えている中小企業や、すでに多額の負債を抱えており今以上に負債を増やしたくない中小企業などにファクタリングがおすすめです。
4. 赤字でも利用できる場合がある
ファクタリングの審査で見られるのは、主に売掛金を支払う会社の信用力です。
そのため、赤字決算が続いているときや財務状況が良くないときでも、ファクタリングを利用できる可能性があります。
財務状況の不調が原因で融資の審査に落ちてしまった中小企業でも、ファクタリングなら資金を調達できる可能性があります。
ただし、申し込み者の情報や信用力も少なからず審査で確認される場合があることも理解しておきましょう。
ファクタリングを利用するまでの流れ
ファクタリングを利用するまでの流れを簡単に紹介します。
種類 | 2社間ファクタリング | 3社間ファクタリング |
---|---|---|
流れ |
|
|
まずは、ファクタリング会社の公式サイトから申し込み手続きを行いましょう。必要事項を入力して申し込みが完了したら指定された書類を提出してください。
一般的には以下の書類の提出を求められます。
売掛金に関する書類 | |
---|---|
口座の入出金明細 (2ヶ月分〜6ヶ月分) |
|
決算書一式 | |
代表者の本人確認書類 |
|
必要書類を提出したら審査に移ります。審査に通過できたら買取額や手数料などが記載された見積もりが提示されるため、見積もりに納得できれば契約を締結してください。
契約完了後に手数料を差し引かれた金額が口座に入金されます。2社間ファクタリングを選んだ場合は、取引先から回収した売掛金をファクタリング会社に支払って取引完了です。
ファクタリングを利用するときの注意点
ファクタリングを利用するときの注意点をいくつか紹介します。
手数料が発生する
ファクタリングを利用すると手数料が発生します。売掛金を満額受け取れるわけではなく、手数料を差し引いた額が入金される点に注意してください。
手数料はファクタリングの種類によって異なります。手数料の相場や実際に振り込まれる金額などを表にまとめました。
ファクタリングの種類 | 手数料の相場 | 売掛金が1,000万円の場合に 実際に振り込まれる金額 |
---|---|---|
2社間ファクタリング | 8〜18% | 870万円(手数料が13%の場合) |
3社間ファクタリング | 2〜9% | 950万円(手数料が5%の場合) |
上記の表からも分かるように、ファクタリングを利用したことによって本来受け取れるはずだった金額よりも少額になってしまいます。
加えて、事務手数料や債権譲渡登記費用などが発生する場合もあるため、買取金額や手数料なども含めて見積もりは契約締結の前にしっかり確認しましょう。
売掛先の承諾が必要な場合がある
ファクタリングのうち3社間ファクタリングを選んだ場合、売掛先の承諾を得る必要があります。
具体的には、売掛債権を売却することや売掛金をファクタリング会社に直接振り込んでもらうことについて、契約締結の前に売掛先に承諾をもらわなければなりません。
よって、3社間ファクタリングを選択すると、承諾を得るタイミングでファクタリングを利用していることが知られてしまいます。
売掛先に秘密にしておきたいのであれば、2社間ファクタリングを利用した方が良いでしょう。
悪質な業者かどうか見極める必要がある
ファクタリング会社に申し込む前に、その会社が悪質な業者ではないか見極める必要があります。
異様に高い手数料を設定したり売掛債権の譲渡額をかなり少額にしたりしている悪質なファクタリング会社が増えているためです。また、貸金業者でないにもかかわらず、ウィズリコース契約を締結している悪質な業者も存在します。
不利な契約をして損をするのを防ぐためにも、申し込み予定のファクタリング会社が悪徳業者でないかしっかり見極めましょう。
悪質な業者かどうかを判断するには、以下の情報を確認してみてください。
- 手数料の割合や内訳(手数料が相場の範囲であるか、聞き馴染みのない手数料があるか)
- 契約形態の種類(ノンリコース契約かウィズリコース契約か)
- 貸金業登録の有無(ウィズリコースである場合)
また、金融庁が公開しているファクタリングの利用についての注意喚起にも目を通しておくと良いでしょう。
ファクタリングに関するよくある質問
最後に、ファクタリングに関するよくある質問をいくつか紹介します。
ファクタリングの対象となる債権は?
ファクタリングの対象となるのは、基本的に確定債権のみです。確定債権とは、すでに入金額や入金日が確定している債権を指します。
商品をまだ提供できていない仕掛債権や継続的な取引によって今後も定期的に発生する将来債権などは、ファクタリングの対象とはならないことがほとんどです。
また、入金額や入金日は確定したが売掛先が倒産してしまった不良債権も、ファクタリング会社に譲渡できないため注意してください。
審査では主に何を確認される?
ファクタリングの審査で主に確認されるのは、売掛先や売掛金に関する情報です。具体的には、売掛先の信用力や支払い期日までの長さなどが審査で見られます。
ただ、申し込み企業の情報や売掛先との取引実績なども少なからず確認されるため、売掛先の信用力が高いからといって必ず審査に通るわけではありません。
売掛先にファクタリングの利用を知られたくない場合はどうすべき?
売掛先にファクタリングの利用を知られたくない場合は、企業とファクタリング会社のみで取引を行う2社間ファクタリングを選択するのがおすすめです。
売掛債権をファクタリング会社に譲渡して現金を受け取り、売掛先からお金を回収できたらファクタリング会社に支払うという流れとなっています。全ての手続きが企業とファクタリング会社間で完結するため、売掛先にファクタリングの利用を知られる心配はありません。
ただ、3社間ファクタリングよりも手数料がやや高めである点には注意してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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