• 作成日 : 2025年9月9日

BPSPとは?仕組みやメリット・デメリット、導入方法まで徹底解説

「BPSPってなに?」「どんな会社が導入すべき?」と疑問を感じていませんか。決済サービスの選定において、BPSPの仕組みやニーズを正しく理解するのはとても大切です。

この記事では、BPSPの基本概要からメリット・デメリット、導入方法までをわかりやすく解説します。自社への導入を選択する判断材料として、ぜひご活用ください。

BPSPとは

BPSP(Business Payment Solution Provider)とは、企業間の請求書支払いをクレジットカードで代行するサービスです。支払いを先延ばしにすることで、資金繰りが改善し業務効率も高まります。

マネーフォワードの『請求書カード払い』は、カード決済に切り替えると支払いを最大60日先まで延長でき、2.7%と業界最安水準の手数料が特徴です。

関連:マネーフォワード|請求書カード払い

BPSP決済の仕組みと流れ

BPSPはVisaが主導して整備したスキームです。買い手がクレジットカードを使って請求書を支払うと、BPSP事業者がその代金を一時立替えます。その後、売り手企業へ銀行振込で入金する仕組みです。

売り手はカード決済を受け付ける必要がなく、従来通りの振込で代金を受け取れるため、新たな対応や負担はありません。買い手はカード支払いによって支払い期日の延長やポイント付与などのメリットを得られ、売り手と買い手、双方にとって効率的な決済手段です。

なぜBPSPのニーズは高まっているの?

経済産業省は、2024年のキャッシュレス決済比率が42.8%に達したと発表し、支払いの利便性向上とデータ連携によるキャッシュレス社会を推進しています。

買い手企業のうち27.7%がBPSPを認知しており、その中で実際に利用しているのは全体の7.8%です。この結果から、4社に1社以上がサービスを把握していることが明らかになりました。BtoB分野での認知はさらに拡大しており、未利用の回答者の16.7%は今後の導入に前向きです。

現時点での導入率こそ低いものの、今後広がる可能性は大きいといえます。資金繰り改善や業務効率化といったニーズを背景に、BPSPの普及は着実に進んでいます。

参考:経済産業省|2024年のキャッシュレス決済比率を算出しました
参考:経済産業省|B2Bキャッシュレス(事業者間決済のキャッシュレス)
参考:経済産業省|令和4年度商取引・サービス環境の適正化等に係る事業(民間主導による企業の会計業務におけるクレジットカード決済データ流通の促進に係る調査事業)

BPSPで請求処理を実施する4つのメリット

請求書支払いにBPSPを導入すると、業務効率や資金繰りの面で多くのメリットが得られます。導入前にその利点を正しく理解しておけば、より効果的にサービスを活用でき、自社の経理体制の最適化にもつながるでしょう。

以下では、BPSP導入によって得られる主なメリットをご紹介します。

①支払い猶予でキャッシュフローを最適化できる

BPSPを活用すれば、クレジットカードを使った請求書支払いにより、銀行振込よりも最大40~60日程度の支払い猶予ができます。月末の資金不足や突発的な支出があっても、手元資金を確保したまま対応できるため、キャッシュフローの最適化が可能です。

月末に仕入れが集中する小売業では、BPSPを使えば在庫確保のタイミングを逃さず、販売機会を最大化できます。支払いは後回しでも、取引先には通常通り入金されるので信頼も損ないません。さらに、カード利用によりポイントやマイルも貯まるという副次的な効果もあります。

手元資金に余裕が生まれると、広告費や採用費など攻めの投資にも柔軟に対応できます。単なる支払い猶予にとどまらず、経営判断の幅を広げられる点も大きな魅力です。

②経理業務が効率化できる

BPSPを導入すると、支払い先をBPSP事業者に集約できます。取引先ごとに異なる振込先・締め日の管理から解放され、経理業務が大幅に効率化されるためです。カード支払いに集約した場合、請求書処理や支払い管理が煩雑にならないため、ペーパーレス化も期待できます。

毎月の締め日前後に発生する振込漏れの確認や台帳への転記といった煩雑な作業を大幅に削減でき、人的ミスのリスクも抑えられます。経理だけでなく営業・総務など全社で処理が簡略化され、確認の手間が減れば意思決定や購買がスムーズになるでしょう。

会計ソフトとの連携後は、カード利用明細からの仕訳自動化も可能になり、月次の締め作業が一気に効率化します。紙の請求書やExcel管理から脱却し、業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)も推進できます。

③導入が簡単にできる

BPSPは原則審査不要で、複雑な書類の提出も不要なため、クレジットカードさえあればすぐに使える手軽さが魅力です。法人・個人事業主を問わず導入しやすく、中小企業やフリーランスにも最適です。

申請から即日で利用開始できるサービスもあり、「急ぎで支払いたい」「資金が不足する時期を無事に切り抜けたい」といった緊急時にも柔軟に対応できます。システム改修や新たなソフト導入が不要なため、今の業務フローを変えずにすぐ取り入れられます。社内稟議や複雑な調整も最小限に抑えられるため、導入ハードルが非常に低いことが特長です。

スポットで試したい企業や個人事業主との相性も良いため、業務インパクトを確認しながら、リスクを抑えて導入できる点も安心材料です。

④取引先に資金繰り状況を知らせずに活用できる

BPSPサービスは、振込名義を自社名義で行える設計のため、取引先にBPSPを通した支払いであると知られずに利用できます。資金繰りの状況を察知されることなく、通常の請求書支払いと同様に対応できるため、「資金繰りが厳しいのでは?」といった余計な憶測を避け、取引先との信頼関係を損なう心配もありません。

一時的に支払いを後ろ倒しにしたい場合でも、相手に事情を説明せずに対応できるため、急なトラブルや出費が重なった場合にも柔軟に対処できます。ビジネスの継続性を守るための見えない資金繰り手段としても有効です。

外部から見える資金の流れを変えずに済むため、銀行や仕入先からの信用不安を招くリスクも回避できます。健全な企業運営を維持している印象を保ちながら、裏側では柔軟に資金調整ができる点も大きなメリットです。

BPSPを活用する上での3つのデメリット

BPSPは、企業の資金繰り改善や業務効率化に貢献する一方で、注意すべきデメリットもあります。メリットとデメリットの両面を理解し、自社の状況に合わせて正しく活用しましょう。

①手数料がかかる

BPSPや振込代行サービスは便利な反面、手数料がかかる点に注意が必要です。サービスによっては月額基本料や振込手数料が発生し、取引額や頻度によってはポイント還元以上にコストが増える場合もあります。

とくに高額取引を繰り返す企業では手数料の積み重ねが大きな負担になりかねません。各サービスの手数料率や固定費を比較検討し、必要なときだけスポット利用して、無駄なコストを抑えましょう。

②カード会社や取引先に制限がある

対応カードブランドはサービスによって異なるため、自社のカードと合うサービスかどうかを必ず確認しましょう。デビットカードやプリペイドカードを活用したい場合でも、事前に対応状況を確認しておくことが大切です。

2025年8月時点では、請求書の発行元が法人に限定しているサービスが多く見られます。取引先が個人事業主の場合は、利用できない可能性があるため留意しましょう。

③サービス内容に差がある

手数料率や導入費用、対応しているカードブランド、会計ソフトとの連携可否などは事業者によって異なります。想定以上のコストがかかったり、自社の会計・経理フローに合わず事務負担が増える可能性もあります。

導入前には複数サービスを比較し、自社の業務環境や会計処理との整合性を必ず確認しましょう。

BPSP導入を検討すべき企業とは?

BPSPは、資金繰りの柔軟性や経理業務の効率化を求める企業にとって、有力な手段となり得ます。とくに以下のような特徴を持つ企業では、導入を検討する価値が高いでしょう。

  • 支払いと入金のタイミングが合わずに悩む企業
  • 急な出費が頻発する中小企業
  • 仕入先や外注先への支払いが多い業種(例:EC・小売・建設・制作など)
  • スタートアップ企業や個人事業主
  • 経理DXや法人カード管理が進んでいる企業

BPSPの導入手順と事前準備

BPSPを導入するにあたって、事前に確認しておくべき要素や社内での準備が、大きく分けて3つあります。導入をスムーズに進めるためにも、以下のステップを順に確認しておきましょう。

①BPSP利用に必要なカード条件やサービス仕様を確認・登録する

BPSPの利用開始には、会員登録・アカウント作成・支払いに使うクレジットカードの登録が必要です。既存のカードをそのまま利用できるケースが多く、新規カード発行は不要です。ただし、対応ブランドはサービスによって異なるため確認しましょう。

利用条件として、登録カードの利用限度額を超えない範囲での支払いとなり、サービス手数料が別途加算される点も押さえておきましょう。常時、Webから手続きが完結でき、書類提出不要な場合もあります。サービスによっては審査や請求書などの提出が求められる場合もあるため、事前確認が重要です。

②BPSPと既存システムの連携方法を把握する

BPSPを利用する場合、従来の銀行振込とは異なる支払プロセスが加わります。まず取引先から請求書を受け取り、その支払いをBPSPに依頼します。するとBPSPが買い手に代わって取引先へ立替払いを行い、買い手は後日クレジットカード会社から利用明細として請求を受け、カード決済で支払う仕組みです。

この流れを正しく管理するには、現在利用している会計システムとBPSPとの連携を確認することが重要です。システム連携が不十分だと、手作業での入力や消し込みが発生し、二重計上や漏れのリスクが高まります。効率と正確性を確保するため、導入前に会計システムとの適合性を必ず確認しておくことが欠かせません。

関連:マネーフォワード|クラウド請求書APIについて

③経理業務フローの見直しと社内ルールを整備する

支払い日や支払い方法、会計処理の内容が従来と変わるため、経理フローの再設計が必要です。また、カードの決済先がBPSPサービス事業者になったあとも、元々の請求書は引き続き保存が必要になります。

法人カードを活用できる場合、経費精算の手間が省け、明細や領収書の自動取得によって業務効率が大幅に向上します。カード利用の記録が自動で残るため不正防止にも有効で、ガバナンス強化にもつながるでしょう。会計システムや顧問税理士との調整、社内承認ルールの明確化も不可欠です。

関連:クレジットカードを経費精算に利用するには?仕訳や法人カードのメリットも解説

BPSPに関するよくある3つの質問

BPSPは、クレジットカードさえあればすぐに使い始められる手軽な仕組みとして注目されています。導入ハードルの低さから「とりあえず試してみよう」と考える企業も増えていますが、実際に運用していく中ではいくつか気になる点も出てくるでしょう。

今回は、こうしたよくある質問に対して、実務面からわかりやすく解説していきます。

導入にどれくらい時間がかかる?

BPSP自体の導入には、原則として複雑な書類提出や審査は不要です。

必要なのは主に対応クレジットカードの保有と、サービスへのオンライン登録のみで、最短即日〜数日で利用可能なケースが一般的です。

経理処理や税務上はどうなるの?

BPSPを利用すると、請求書の支払いがクレジットカード決済扱いとなり、会計処理上は通常のカード払いと同様に「買掛金支払い」+「手数料」の仕訳が発生します。

会計ソフトと直接連携する機能はBPSP自体にはありませんが、クレジットカード明細を会計ソフトに取り込む機能を使えば、経理処理を効率化しやすくなります。

取引先に知られたり、嫌がられたりしない?

BPSPを使っても、取引先には通常通り自社名義での銀行振込が行われるため、カード決済を利用しているとは相手に通知されません。取引先から見ると、これまで通りの入金と変わらないため、関係性に影響を与えにくい設計になっています。

ただし、サービスによっては名義の表示仕様が異なる場合があるため、導入前に念のため確認しておくのをおすすめします。


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