- 更新日 : 2025年6月11日
【2025年実施】新リース会計基準の影響と企業の対応は?調査結果から見る実態と対策について
2027年に施行される新リース会計基準は、企業の財務報告に大きな影響を与えることが予想されます。マネーフォワードでは、新リース会計基準に関わる部門で働く会社員の方を対象に「新リース会計基準に関する調査」を実施しました。
本記事では、調査結果をもとに、企業の対応状況と課題感について論点を詳しく解説します。また、新リース会計基準に関する理解を深め、実務に役立てるための情報を提供しますので、ぜひ最後までご覧ください。
- 調査テーマ :新リース会計基準に関する調査
- 調査実施 :株式会社マネーフォワード
- 調査対象 :現在の勤務先で「経理部門」「情報システム部門」「総務部門」「法務部門」「経営企画部門」のいずれか
- 所属する方(個人事業主を除く)660名
- 調査実施期間:2025年3月11日(火)~3月17日(月)
- 調査方法 :Fastaskを用いたインターネットリサーチ
アンケートの回答者の属性
はじめに、アンケートの回答者の属性を紹介します。
- 役職
- 役員・経営層:17.0%
- 部長クラス:11.2%
- 課長クラス:14.0%
- 主任・リーダー・係長クラス:14.4%
- 一般社員・スタッフ:40.9%
- その他:2.5%
- 勤め先の規模
- 上場企業:30.9%
- 非上場企業:66.2%
- わからない:2.8%
企業における新リース会計基準の対応状況
新リース会計基準に対する認知度
はじめに、新リース会計基準に対する理解度についてです。
「あなたは、新リース会計基準についてどの程度ご存じですか?」という問いに対しては下記グラフの通り、「詳しく理解している」が16.9%、「概要は知っているが、詳細は理解していない」が23.5%、「名前は聞いたことがあるが、内容は知らない」が21.3%と回答。約6割が、程度の差はあるものの、新リース会計基準について認識していることがわかりました。

新リース会計基準に向けた企業の対応状況
次に、新リース会計基準の対応状況についてです。「対応準備はおおむね完了した」、「現在対応を進めている」の回答が合わせて約半数を占めていました。強制適用は2027年4月1日以降に開始する事業年度からですが、半数近くの企業で既に対応が進んでいることがわかります。

新リース会計基準適用に向けて行った対応
「対応準備はおおむね完了した」「現在対応を進めている」と回答した人に対し、行った対応を質問したところ、もっとも多かった項目は「リース契約の洗い出し・分類・整理」、続いて「新リース会計基準の理解」、「会計方針の決定」でした。対応業務の中でも負荷の高いリース契約の洗い出しを優先して行っていることがわかります。

新リース会計基準への対応完了予定時期
「現在対応を進めている」「これから対応を検討する予定」と回答した人に、対応完了時期について質問したところ、「2025年中」が26.0%、「2026年上半期中」63.0%と、強制適用に向けて半数以上が早めの対応を進めていると回答しました。2026年度の決算から新リース会計基準への対応テストを行い、2027年度の強制適用に備えていることがわかります。

新リース会計基準への対応で負担に感じていること
新リース会計基準への対応について「大きな負担を感じている」「やや負担を感じている」が合わせて約8割と、多くの企業にとって負担になっていることがわかりました。

もっとも負担に感じているのは「リース契約の洗い出し・分類・整理」
「大きな負担を感じている」、「やや負担を感じている」と回答した人のうち、もっとも負担を感じる業務は、「リース契約の洗い出し・分類・整理」、続いて「新リース会計基準の理解」、「会計方針の決定」でした。多くの企業が対応初期段階の業務において、負担を感じていることがわかりました。

企業における新リース管理状況
約9割がリース契約の管理に何らかの「システムを利用している」と回答、一方でシステム利用における「紙と電子の混在」などの課題も
勤務先におけるリース契約の管理方法について質問したところ、「全社で統一の電子契約システムで管理している」、「電子契約システムで管理しているが部門ごとにバラバラのシステムを利用」、「電子契約システムで管理しているものと、紙で管理しているものがある」を合わせて約9割でした。一方、システム利用はかなり進んでいるものの、全社統一のシステムが使われていないことや、紙の残存という課題も見えました。

リース契約を保持していると回答した会社数がもっとも多いのは「車両(営業車・トラックなど)」
勤務先が保持するリース契約について、もっとも多いのは「車両(営業車・トラックなど)」が54.3%、続いて「IT機器(サーバー・PC・ネットワーク機器)」が48.8%、「機械設備・生産設備」45.3%でした。

リース契約情報の管理における最大の課題は「紙の管理」、続いて「手作業のミスや属人化」
リース契約情報の管理における課題について、もっとも多かった回答が「契約書が電子化できておらず、紙で管理している」、続いて「契約情報は表計算ソフトなどの手作業で管理しており、ミスや属人化が発生している」「契約条件の変更や更新情報の把握が困難」と、いずれもアナログな契約管理が原因の課題でした。

約4割がリース負債の計算・残高管理に向けてシステムの入れ替えを行うと回答
今後のリース負債の計算・残高管理の対応について、約4割が「新たにシステムを入れ替えする」と回答しました。
また「既存システムで対応する」と回答した企業を合わせると、約8割がシステムを利用して対応すると回答しました。

まとめ
新リース会計基準への対応は企業にとって大きな課題であり、約8割が負担を感じています。
特に「リース契約の洗い出し」が負担となり、隠れリースの発見が難しいため初期段階での大きな関門です。これには経理部門だけでなく、法務や総務部門との連携が不可欠なため、コミュニケーションコストも考慮が必要です。
また、紙の契約書や表計算ソフトでの対応は人的ミスや情報共有の遅延を招く可能性があるため早期のシステム導入が鍵となっています。
システムを活用し、クラウド上で情報を共有する体制を構築することによりDXと一体で進めることが効果的です。これにより、生成AIなど新技術の活用も期待できます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
機械設備や装置の減価償却を解説!器具や備品とは何が異なる?
機械設備や装置を減価償却するにあたって、器具や備品との違いがよく分からないという人もいるかもしれません。この記事では、機械装置と器具備品の違い、法定耐用年数の調べ方、総合償却の考え方など、機械装置の減価償却で必要な基礎知識をまとめました。機…
詳しくみる償却資産申告書を提出しないとどうなる?時効や提出不要となるケースも解説
償却資産申告書は、提出しないと罰金をはじめ、さまざまな罰則を受けなければなりません。本記事では、償却資産申告書の概要をはじめ、提出が遅れてしまったときの対処法や提出を免除してもらえる条件などについて解説します。 書類の記入例も一緒に取り上げ…
詳しくみる減価償却不足とは?発生する理由や確認方法・解消方法、損金算入などを解説
減価償却不足とは、会計によって算出された償却費の数字が、税務上の償却費の限度額を下回ることを指します。本記事では、減価償却不足がどのようなときに発生するのか、その原因や具体的な対策について解説します。 また、減価償却不足の有無を確認するため…
詳しくみる特別償却とは?一括償却との違いや対象設備などの要件をわかりやすく解説
特別償却は、租税特別措置法に基づき一定の要件を満たす設備投資に対して、通常の減価償却とは別枠で費用計上できる優遇制度です。中小企業投資促進税制や中小企業経営強化税制など、多くの中小企業が活用できる制度が複数存在します。 本記事では特別償却と…
詳しくみる【定率法の償却率】旧定率法と250%と200%の違いを徹底解説
平成19年度税制改正によって定率法の償却率が250%に引き上げられ、平成23年度税制改正によって200%に引き下げられました。 税制改正の影響を受けて、定率法による減価償却率がどのように変化していったのかを解説します。 旧定率法による減価償…
詳しくみる一括償却資産を除却した場合の仕訳は?償却期間中・償却後の具体例を解説
一括償却資産の除却とは、取得価額20万円未満の減価償却資産を帳簿上から除く処理です。ただし、償却期間中・償却後では仕訳方法が変わるため、事前の確認が必須です。 今回は、一括償却資産を除却した場合の仕訳方法や具体例について詳しく解説します。 …
詳しくみる