- 作成日 : 2025年6月13日
プラットフォーム課税とは?対象や適用時期、時期をまたぐ取引の扱いを解説
プラットフォーム課税とは、国外事業者に代わり、特定プラットフォーム事業者に消費税の申告・納付義務を課す制度です。適用開始により、これまで問題となってきた、国外事業者の消費税の徴収漏れが改善される効果が期待できます。プラットフォーム課税の適用時期や対象などの詳細を解説します。
目次
プラットフォーム課税とはどのような税?
プラットフォーム課税とは、国外事業者に代わり、特定のプラットフォーム事業者に消費税の申告や納付の義務を課す制度です。
原則として、国外から日本国内の消費者に提供されているサービスは、国外事業者に消費税の申告・納付義務があります。しかし、日本国内に一切の拠点を有さない国外事業者については、調査や消費税の徴収が難しい問題があります。
近年、グローバル化により、アプリ配信などのデジタルサービス市場の拡大が顕著です。国内に拠点のない事業者からのサービス提供が増加することで、課税の公平が保たれなくなる可能性があります。このようなデジタルサービス市場の変化や諸外国でもプラットフォーム事業者への課税が進んでいる背景から、プラットフォーム課税が導入されることになりました。
国外事業者に代わり、プラットフォーム事業者が消費税の申告・納税義務を負うことで、徴収の効率化や未納の防止などが期待できます。
プラットフォーム課税の対象と税率
プラットフォーム課税の対象になるのは、特定プラットフォーム事業者です。すべてのプラットフォーム事業者が対象になる制度ではありません。国税庁長官から通知を受けた指定要件を満たす事業者を対象としています。以下が、特定プラットフォーム事業者の指定要件です。
- 課税期間においてデジタルプラットフォームを提供していること
- プラットフォームを介して国内消費者向けに国外事業者から役務の提供(サービスの提供)が行われていること
- 国外事業者による役務の提供による対価のうち、プラットフォーム事業者が収受する合計額が50億円超であること
指定要件から、プラットフォーム課税は大規模なプラットフォーム事業者を対象としていることがわかります。令和6年12月6日時点で、国税庁の特定プラットフォーム事業者名簿に記載されているのは、以下の4つの事業者です。
- iTunes株式会社(App Store、Apple Books、Apple Podcasts)
- アマゾンウェブサービスジャパン合同会社(AWS Marketplace)
- グーグルアジアパシフィックプライベートリミテッド(Google Play)
- 任天堂株式会社(Nintendo eShop)
※()はデジタルプラットフォームのサービス名称
プラットフォーム課税は消費税に関する制度です。国外事業者からの役務の提供(サービスの提供)についての課税となるため、令和7年4月時点において、標準税率である10%が適用されることになります。
プラットフォーム課税の適用時期
プラットフォーム課税の適用時期は、令和7年4月1日です。適用開始以後に特定プラットフォーム事業者を介して行われる役務の提供(サービスの提供)が対象となります。
適用時期をまたぐ取引の扱い
適用時期をまたぐ取引例として、プラットフォーム事業者を介して提供されるゲームアプリ内でのコイン購入が考えられます。ゲーム内のアイテム購入などに利用できるコインのことです。
原則として、消費者がコインを購入した時点ではプラットフォーム課税の対象にはなりません。役務が提供された時点、このケースでは、コイン消費によりアイテムの提供があった時点が認識時期となるためです。プラットフォーム課税適用時期以前にコイン購入の事実があったとしても、購入時点では課税対象にはならず、アイテムなどへの交換をもって認識することになります。なお、継続適用を条件に、コイン購入の対価を受け取った時期に認識することも認められます。
プラットフォーム課税の税金を仕訳する場合
プラットフォーム課税に関する仕訳について、国内企業が特定プラットフォーム事業者を介してサービスを利用した場合を紹介します。以下は、プラットフォームを利用して有料アプリを取得した場合の仕訳例です。プラットフォーム課税で提供されるサービスには消費税が課税されることになるため、消費税を考慮した仕訳を行います。
(例)特定プラットフォーム事業者を介して、有料アプリ1,000円(税別)を会社のクレジットカードを利用して購入した。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
消耗品費 | 1,000円 | 未払金 | 1,100円 |
仮払消費税 | 100円 |
※上記は税抜方式を適用している場合の仕訳例です。
アプリ課金は、「消耗品費」のほか、「通信費」や「支払手数料」などの勘定科目をもって仕訳することもあります。各会社の勘定科目の適用基準に従います。
プラットフォーム課税は令和7年4月からの適用
令和7年4月1日より、プラットフォーム課税が適用されました。本来、消費税の申告・納税義務がある国外事業者に代わり、特定プラットフォーム事業者が申告・納付を行う制度です。一般企業に大きな影響は生じないものの、仕入税額控除の適用を受ける際は控除の適用漏れ(消費税の計上漏れ)に注意しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
水戸市で経理代行サービスを依頼するには?依頼先や対応範囲、費用などを解説
水戸市(茨城県)で事業を営む方々、日々の経理業務に追われ、本業に集中できないと感じることはないでしょうか。人材の確保や、インボイス制度・電子帳簿保存法といった度重なる法改正への対応は、特に中小企業や個人事業主にとって大きな負担となりがちです…
詳しくみる使用権資産とは?概要、会計処理、適用される取引を解説
昨今のビジネス環境において企業が持つ資産の種類は多岐にわたり、無形資産も重要な役割を果たしています。そしてその中でも、使用権資産は企業にとって重要な財産の一つです。使用権資産は特にリース契約に関する会計処理で用いられる勘定科目です。 本記事…
詳しくみる預り証とは?記載項目や書き方をテンプレート付きで解説
物品や金銭を預かった際、その証拠書類として預り証を発行します。預り証の書き方には明確なルールはないため、記載内容や書き方で迷う人も多いでしょう。本記事では、預り証に記載すべき項目や書き方を解説します。金銭を預かった場合に活用できる預り証のテ…
詳しくみるIFRSにおける財務諸表とは?日本基準との違いや作成方法を解説
IFRSの財務諸表は、日本基準の財務諸表とさまざまな点で違いがあります。IFRSによる財務諸表を作成する場合、開示チェックリストなどを利用して、IFRSの開示要件に沿った作成が必要です。この記事では、IFRSと日本基準の主な違いやIFRSに…
詳しくみる会計伝票・伝票式会計を解説!会計ソフトで経理を更に効率化しよう
「伝票」と聞くと、紙のイメージが強い方も多いでしょう。 伝票式会計の歴史は古く、紙と現金を前提としているといっても過言ではありません。 近年では、電子化・キャッシュレス化になっていますが、伝票会計の仕組み自体は存在しています。伝票会計を知る…
詳しくみる合併の基礎知識|負債がある会社と合併したら、どうなるの?
会社活動の選択肢のひとつに、合併や会社を分割することで組織を再編するというものがあります。この中の、合併という方法は会社法によって規定されています。では具体的に合併するとはどういうことなのでしょうか。 今回は、合併に関する法律的な側面や会計…
詳しくみる