• 作成日 : 2025年6月13日

オペレーティングリースとは?新リース会計基準も解説

オペレーティングリースは、会計処理上、資産の賃貸借として認識される取引です。現行のリース取引会計基準では、リース取引をオペレーティングリースとファイナンスリースに区分して処理することが必要です。今回は、オペレーティングリースの意味と新リース会計基準の適用による影響について解説します。

オペレーティングリースとは

オペレーティングリースとは、会計上のリース取引の一種です。現行の会計基準において、リース取引は、下記のようにオペレーティングリースとファイナンスリースの2種類に大きく区分できます。

オペレーティングリースファイナンスリース
取引の性質賃貸借取引売買取引
特徴
  • 中古価格相当の残価設定がある
  • 契約途中の解約が可能
  • 契約によってはメンテナンスを引き受けてもらえる
  • 原則として解約期間途中の解約ができない
  • 資産を保有するのと同等の効果が認められる(リース中のメンテナンスは利用者が行うなど)
会計上の処理リース料の費用処理資産と負債の両建て処理

オペレーティングリースは、ファイナンスリース以外のリース取引のことです。賃貸借取引としてリース料を費用処理するため、オフバランス化されます。ファイナンスリース取引のように、貸借対照表にリース資産として資産計上されません。

新リース会計基準によるオペレーティングリースへの影響

企業会計基準委員会より、2024年9月に企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」(いわゆる新リース会計基準)が公表されました。新基準は、2027年の4月からの適用予定です。新基準の主な変更ポイントとして、オペレーティングリースとファイナンスリースの区分の廃止があります。旧基準から新基準に変わることでの会計処理や財務諸表への影響を解説します。

新リース会計基準の詳しい内容は、こちらの記事をご覧ください。

会計処理への影響

旧リース会計基準では、負債の認識が国際会計基準であるIFRSと相違する点について課題がありました。そのため、新リース会計基準では、IFRSと同じように、リース取引の区分をなくす方法が採用されました。これにより、オペレーティングリースとファイナンスリースの区分がなくなり、会計処理が一本化されることになります。

リース取引の会計基準が統一されたことにより、原則として、会計処理上、オンバランス化する処理がすべてのリース取引で求められるようになります。オンバランスとは、貸借対照表に資産や負債として計上する処理のことです。旧会計基準では、ファイナンスリースの取引でオンバランスが適用されていました。

新リース会計基準では、原則として、オペレーティングリースで処理してきた取引も、オンバランス処理することになります。リース契約時には、資産(使用権資産)と負債(リース負債)の両建てが必要です。また、リース料支払いの際には、利息分とリース負債相殺分に分けて処理する必要があります。事業年度末には、使用権資産の減価償却の処理も求められます。

なお、少額の資産(リース料総額300万円以下で契約したもの)や購入オプションのない短期リース(リース期間が1年未満)は適用除外が可能です。実務負担の軽減を理由に、少額や短期のリース取引については、費用処理が認められます。

財務諸表への影響

新リース会計基準の適用によって、貸借対照表や損益計算書への影響も考えられます。

これまで賃貸借取引としていたオペレーティングリースを売買取引とするため、資産と負債が増加し、企業の経営指標に影響する可能性があります。短期や少額に該当しないオペレーティングリース取引が多い場合は要注意です。特に、負債が計上されることで結果的に他人資本が増加し、自己資本比率総資本における自己資本の割合)が低く評価される可能性があります。

新リース会計基準は、損益計算書にも影響します。オペレーティングリースではすべて費用として計上されていたリース料金を、負債との相殺と利息相当額に分けなければならないためです。利息相当額と使用権資産の減価償却費が費用計上されることになるため、オペレーティングリース取引が多いと、前期以前の損益計算書との比較可能性が低下する可能性があります。

新リース会計基準に向けて対応すべきこと

新リース会計基準の適用に向けて対応すべきポイントを3つ取り上げます。

既存のリース取引の整理

新リース会計基準を適用した会計処理について、大きな変化があるのはオペレーティングリース取引です。リース取引の契約がある会社では、既存の契約について整理しておきましょう。新リース会計基準適用後も滞りなく会計処理ができるよう、特にオペレーティングリース取引に該当する契約について管理しておくことが重要です。

会計ソフトやフローの見直し

新会計基準でリース取引のオンバランス処理が増えると、現在のフローでは円滑に対応できなくなる可能性があります。会計処理の変更が必要な取引量次第では、フローの見直しが必要です。会計ソフトは、リース負債や減価償却費の自動計算や自動仕訳ができるものだと経理業務の負担軽減に役立ちます。

関係者への開示や説明

オペレーティングリース取引の多い会社では、会計処理の変更により、貸借対照表や損益計算書の指標に重大な影響が生じる可能性があります。影響がある場合は、投資家や債権者などに対して丁寧に説明していくことが大切です。

オペレーティングリース取引は会計処理が変わる

2027年4月に適用予定の新リース会計基準により、オペレーティングリース取引の会計処理は変更されます。従来のリース取引の区分がなくなり、原則として売買取引に処理が統一されるため、新基準に適った対応が求められます。適用前に対象の取引や対応について確認しておきましょう。


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