- 作成日 : 2025年3月3日
ソフトウェア資産管理(SAM)とは?ガイドラインやツールの活用方法も解説
ソフトウェア資産管理(SAM)とは、ITにおける資産管理の1つです。社内のソフトウェアを適切に管理することは、セキュリティ対策やコストの削減などに役立ちます。
本記事では、ソフトウェア資産管理(SAM)の基礎知識やメリット、導入する方法、管理する際のポイントを解説します。ビジネスシーンで活用できるように確認していきましょう。
目次
ソフトウェア資産管理(SAM)とは
ソフトウェア資産管理(SAM)とは、主に組織内にあるソフトウェア資産を有効かつ適切に管理・制御・保護することです。ITにおける資産管理のひとつで、「Software Asset Management」とも呼ばれます。
近年、違法なソフトウェア利用が問題となっています。その影響もあって、ソフトウェア資産管理が注目を集めているのです。
ソフトウェア資産管理で対象となるのは、主に組織内のパソコンにインストールされているソフトウェアです。購入したソフトウェアのライセンス情報も、あわせて管理します。
ソフトウェア資産の管理の方法は、ISOによって細かな規定があります。ソフトウェア資産管理を実施する際に重要なのは、以下のようなポイントを管理することです。
- ソフトウェアがどのハードウェアにインストールされているか
- ソフトウェアの保有ライセンスや利用期限、利用状況
- バージョンやエディションの管理
使用しているソフトウェアがどのバージョンか、それはサポートの対象内なのかまでしっかりと管理していないと、セキュリティホールとなりかねません。このように、ソフトウェア資産管理は企業にとって重要な取り組みであるといえるでしょう。
ソフトウェア資産管理のメリット
ソフトウェア資産管理の実施による大きなメリットは、以下のとおりです。
- ソフトウェア資産を可視化できること
- コストの削減や予算管理ができること
- セキュリティを強化して監査に対応できること
また、ライセンスコンプライアンスの向上や、ソフトウェアの変更が業務におよぼす影響の把握なども図れます。それでは、ソフトウェア資産管理を実施するメリットをさらに詳しく確認していきましょう。
ソフトウェア資産を可視化できる
ソフトウェア資産管理を行うと、「社内で使用されているソフトウェアがどのようなものか」「どの部門で使用されているのか」などが明確になるというメリットがあります。
可視化できる情報の例は、以下のとおりです。
- ソフトウェアの使用状況
- ソフトウェアにかかる費用
- ライセンス数
- 有効期限
- バージョンなど
これらのソフトウェア資産の全体像が可視化されると、適切に資産を管理しやすくなります。
たとえば、使用しているソフトウェアなどの全体像が把握できていることで、組織内のパソコンにインストールされているソフトウェアを一斉に配布・更新可能です。これによって、OSやアプリケーションなどを計画的にアップデートしたり、セキュリティパッチを適用させたりできます。
そのため、ソフトウェア資産の適切な管理がしやすくなります。従業員一人ひとりがパソコンにインストールさせるなどの作業を減らせるため、業務効率化にも役立てられるでしょう。
コストの削減や予算管理ができる
ソフトウェア資産管理によって全体像が可視化されることで、コストの削減や予算管理が効率的にできるようになることもメリットです。
たとえば、社員が異動・退職していても、管理されていなければソフトウェアは使用できる状態のままになっているかもしれません。その場合、実際には使っていないにもかかわらず、有償ライセンスが契約状態になっている可能性があるでしょう。
また、社員が使っているパソコンにインストールされたソフトウェアでも、実際の使用頻度には差があるものです。ほとんど使用されていないソフトウェアであるのに、契約がずっと自動更新されているケースがありえるでしょう。
ソフトウェア資産の全体像が可視化されれば、現在使用されていない部分でかかっている余計な契約が把握しやすくなります。その結果、適切な契約のみを選べるようになり、無駄なライセンス代やサポート代などのコストの削減につなげられるでしょう。
ソフトウェア資産の全体像の可視化は、予算の振り分けをしなおす際の検討材料としても有効なのです。
セキュリティを強化して監査に対応できる
ソフトウェア資産管理の導入によって、セキュリティを強化できることもメリットです。
誰がどのようなソフトウェアを使用しているかわからない状態では、セキュリティに不安があります。情報の漏洩やコンプライアンス違反などの問題が発生するかもしれません。ソフトウェア資産が管理されていなければ、違法コピーや無許可のソフトウェアの使用などをしてしまっている可能性もあるでしょう。
一方、もしもIT資産管理ツールを用いて管理した場合には、以下のようなセキュリティ対策が可能です。
- 許可されていないソフトウェアの利用防止
- 社外のパソコンからのアクセスを拒否
- 悪意あるソフトウェアのインストール防止・アンインストール
- ソフトウェアの紛失・盗難の防止
また、ソフトウェアの一斉配布・更新などにより、更新忘れによるセキュリティホールの発生を防げます。
ソフトウェアを使用していると、ベンダーが顧客に対して行うライセンス監査の対象となる場合があります。ライセンス監査でもしも違反が発覚すると、高額なライセンス料の請求や損害賠償の支払い、社外関係者からの風評被害による信用の失墜などが起こりえるでしょう。また、社内調査による業務が発生することも負担となります。
ソフトウェア資産管理を行い、ライセンスを社内で適切に管理していれば、そもそも監査対象に選ばれにくくなるでしょう。
ソフトウェア資産管理を導入する方法
ソフトウェア資産管理を導入する流れは、以下のとおりです。
- 現状のソフトウェア資産を棚卸しする
- ソフトウェア管理の方針を策定する
- 運用および定期的な監視を実施する
それぞれどのように対応するといいのか、導入する際のポイントなどを確認していきましょう。
現状のソフトウェア資産を棚卸しする
情報収集・調査によって現状の組織に存在するソフトウェア資産を明確にします。まずは「IT資産管理台帳(基本台帳)」を準備し、ソフトウェア資産管理のために棚卸しをした内容を記載して、資産を適切に管理します。
IT資産管理台帳とは、IT資産の情報をまとめたものです。「ハードウェア台帳」「導入ソフトウェア台帳」「ライセンス台帳」「ライセンス関連部材台帳」の4つがあります。
これら4つの台帳の特徴は、それぞれ以下のとおりです。
- ハードウェア台帳
ソフトウェアが実行できるパソコン・サーバ・PDAなどのハードウェアや、ライセンスが付属するパソコン・HDD・DVDなどのドライブに関する台帳 - 導入ソフトウェア台帳
ハードウェアに導入されたソフトウェアに関する台帳 - ライセンス台帳
外部のソフトウェアのライセンス情報に関する台帳 - ライセンス関連部材台帳
ライセンスの許諾証明となる部材に関する台帳。導入向けDVD、データが入ったDVD、パッケージなど
ソフトウェア管理の方針を策定する
次に、以下のようにソフトウェア資産管理の運用に関する方針や体制を策定・構築します。
運用に関する管理規定・ガイドラインを策定する
策定するのは、以下のような内容です。
- 組織のソフトウェアのライフサイクルに沿った管理手順
- 購入したソフトウェア、ライセンス証書などの保管方法
策定時のポイントは、ライセンスの有効期限など、ソフトウェアのライフサイクルも加味することです。あわせて、目的にあった管理水準を維持できるような制度設計を実施します。
管理対象とするソフトウェアの範囲を特定する
どのソフトウェアを管理対象とするのか、範囲を特定します。有償のソフトウェアだけでなく、フリーソフトウェアやオープンソースなどの無償ソフトウェアも管理しましょう。これは、無償ソフトウェアであっても著作権により保護される著作物のためです。
フリーソフトウェアやオープンソフトウェアを利用する際は、内容によって対応に違いがあります。たとえば、使用許諾条件に沿ったものであれば、保有ライセンス数と使用数を比較しなくてもいいです。
管理体制を構築する
管理責任者や部門責任者、要員などの役割と責任を規定します。
運用および定期的な監視を実施する
管理体制を規定・構築したら、段階的な運用を開始しましょう。
ソフトウェアの導入を検討する際は、策定した管理規定にもとづいて、購入するリスクやコストなどから購入の可否を判断します。
購入したら、必要なパソコンにソフトウェアを配布、インストールしましょう。ソフトウェア資産を管理する基本台帳に、ソフトウェアとライセンスの情報を登録し、ライセンス証書やインストールメディアの保存場所を記録します。
導入する際だけではなく、定期的に基本台帳と実際のソフトウェア資産とを照合して、棚卸を行いましょう。その際、パソコンやソフトウェアライセンスの余剰があれば再割り振りなどを実施します。
不要と判断したソフトウェア資産があれば、返却・破棄を行います。返却・破棄の際は、個人情報や機密情報が漏洩しないようなデータ消去や確実なアンインストールが必要です。基本台帳からも資産情報を忘れずに削除します。
ソフトウェア資産管理のポイント
ソフトウェア資産管理のポイントは、以下のとおりです。
- ソフトウェア資産管理ガイドラインを活用する
- ソフトウェア資産管理ツールを活用する
ここからは、ソフトウェア資産管理におけるこれらのポイントを解説します。
ソフトウェア資産管理ガイドラインを活用する
管理を適切に行うためには、経済産業省が取りまとめたソフトウェア管理ガイドラインなどを参考にするといいでしょう。
また先述のとおり、ソフトウェア資産管理の導入時に、運用に関する管理規定やガイドラインを策定します。これらも参考に、適切なソフトウェア資産管理を進めていきましょう。
ソフトウェア資産管理ツールを活用する
ソフトウェア資産管理を行う際は、管理ツールの活用がおすすめです。
Excelで管理台帳を作成する方法も選択できるものの、管理対象となる資産が多くなればなるほどバージョン管理や更新作業が煩雑になってしまいます。管理が行き届かなくなってしまわないように、ある程度の規模の会社であればソフトウェア資産管理ツールを活用するといいでしょう。
ソフトウェア資産管理ツールを利用するメリットは、以下のとおりです。
- 必要な情報を自動で収集・更新し、一元管理できる
- ヒューマンエラーの削減
- 業務効率化につながる
- 内部統制やセキュリティの強化
ツールを活用すれば、一台のパソコンで多くの端末を監視・管理できるようになります。不正を検知した端末があればネットワークから遮断してアクセス不可にできるなど、緊急時にも素早い対応が可能です。
利用するソフトウェア資産管理ツールを選ぶ際に確認しておくべきポイントは、以下のとおりです。
- 導入の目的の明確化
- 収集できる情報の種類
- 複数のデバイス・OSの一元管理の可否
- 他ツールとの連携
- 運用サポートの有無
たとえば、自社が抱えている課題や導入の目的がはっきりとすることで、ツールに必要な機能が理解できるようになります。ウイルス対策ソフトなどの他ツールとの連携ができれば、よりよい運用ができる可能性があるでしょう。
これらのポイントを理解して、自社にあったソフトウェア資産管理ツールを選びましょう。
ソフトウェア資産管理を適切に行いましょう
ソフトウェア資産管理は、企業にとって重要な取り組みです。適切に行うことで「ソフトウェア資産を可視化できる」「コストの削減や予算管理ができる」などのメリットがあります。また、もしも適切にソフトウェア資産を管理できなければセキュリティホールとなるなど、大きなトラブルにつながりかねません。
今回ご紹介したソフトウェア資産管理のメリットや導入の流れ、管理のポイントなどを参考にして、ぜひ企業活動に役立ててください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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