- 作成日 : 2024年9月18日
仮受金に消費税はかかる?課税時期や仕訳例、前受金・預り金の場合を解説
仮受金の仕訳をする際に、消費税を計上するべきか悩むこともあるかもしれません。仮受金の中には、消費税の課税対象である取引であることが後に判明する可能性もあるためです。この記事では、仮受金と消費税の関係や仕訳例を紹介します。
目次
仮受金は消費税がかからない
仮受金(かりうけきん)とは、取引の内容がわからない入金について、一時的に会計処理をするための勘定科目です。取引先から過大な入金があって対応が決まっていない場合など、仕訳に適切な勘定科目が確定していないときに使われます。
不明な入金があって、仮受金に計上した時点では、消費税は認識しません。仮受金は適切な勘定科目への振替を前提とした勘定科目であって、入金時点では取引の内容が確定していないためです。
資産の引き渡しやサービス提供があった時点で課税される
消費税は、国内において事業者が事業として対価を得る商品の販売やサービスの提供などに対して課される税金です。そのため、仮受金のうち、消費税の対象になるのは、商品の販売に関わる入金など一部の取引に限られます。
また、消費税は資産などの引き渡しのタイミングで課税される税金です。例えば、取引先に商品を引き渡したときに、仮受金がその取引の内金であることが判明し、取引時点で仮受金と残りの代金を売上に計上したとき消費税が認識されることになります。
消費税を計上する場合に使用する勘定科目
消費税を計上する場合に使われる勘定科目は、「仮受消費税」と「仮払消費税」です。仮受消費税は売上に関わる消費税額で、売上高や雑収入が生じたとき(非課税や不課税を除く)に計上します。仮払消費税は、仕入れに関わる消費税額です。課税対象である商品の仕入高や販売費などが発生したときに計上します。
なお、「仮受消費税」や「仮払消費税」の計上を行うのは、本体価格と消費税を分けて仕訳する税抜経理方式を採用している場合です。本体価格に消費税を含めて会計処理をする税込経理方式を採用している場合は、仮受消費税などの特別な勘定科目は使用しません。売上高など本来の勘定科目に消費税額を含めて会計処理を行います。税抜経理方式と税込経理方式は、会社が任意で選択できます。
仮受金の消費税の仕訳例
仮受金に関する消費税はどのようにして発生し、どのように処理されるのでしょうか。税抜経理方式で、仮受金の消費税の仕訳について解説します。
仮受金発生時
(仕訳例)普通預金に内容のわからない入金が10万円あった場合。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 100,000円 | 仮受金 | 100,000円 |
内容のわからない入金があった場合は、一時的な処理として仮受金で仕訳をします。基本的に、この時点では消費税は課税されません。
仮受金振替時
(仕訳例)内容が不明で仮受金として計上していた10万円が内金であることが判明した場合。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 仮受金 | 100,000円 | 前受金 | 100,000円 |
仮受金として処理していた入金について、内容が判明した時点で、適切な勘定科目に振り替えます。
仮受消費税計上
(仕訳例)内金として受領していた10万円について、55万円分(内消費税5万円)の商品の引き渡しを行い、残額は現金で受け取った場合。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 550,000円 | 売上高 | 500,000円 |
| 仮受消費税 | 50,000円 | ||
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 前受金 | 100,000円 | 売掛金 | 550,000円 |
| 現金 | 450,000円 | ||
仮受消費税は、金銭の受領などにより消費税を預かったタイミングで計上します。
前受金・預り金の消費税の仕訳例
仮受金と混同されることもある、前受金や預り金の処理はどのようになるのでしょうか。消費税の課税関係も含めて、前受金や預り金の仕訳について解説します。
前受金発生時
(仕訳例)サービスの提供前に手付金として5万円を現金で受け取った場合。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 現金 | 50,000円 | 前受金 | 50,000円 |
前受金は、商品やサービスの販売に対する対価であることが確定しているときに使われる勘定科目です。仮受金と同じように、前受金発生時には商品などの引き渡しが行われていないため、消費税は発生しません。
前受金振替時
(仕訳例)取引先にサービスを提供すると同時に、5万円の手付金を差し引いた残りの金額28万円を現金で受け取った場合。うち、消費税額は3万円とする。なお、手付金を受領した時点で、サービスの提供は行われていないものとする。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 330,000円 | 売上高 | 300,000円 |
| 仮受消費税 | 30,000円 | ||
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 前受金 | 50,000円 | 売掛金 | 330,000円 |
| 現金 | 280,000円 | ||
消費税課税の考え方は仮受金と同じです。商品やサービスなどの引き渡しのときに消費税を計上します。仕訳例では引き渡しにより取引が確定したため、入金と同時に前受金を相殺する仕訳をします。
預り金発生時
(仕訳例)取引先から担保として預り保証金10万円の差し入れが現金であった場合。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 現金 | 100,000円 | 預り金 | 100,000円 |
何らかの入金があった場合、預り金の勘定科目が用いられることもあります。預り金は、従業員や取引先などから一時的に預かった金額を処理する勘定科目です。仕訳例のように、預り保証金の差し入れがあった場合などで使われます。
預り金振替時
(仕訳例)取引が問題なく行われ、預り保証金として受け入れていた10万円を取引先に返還した場合。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 預り金 | 100,000円 | 現金 | 100,000円 |
預り金は一時的に預かっている金額にすぎないため、基本的に返還や本人に代わって支払いが必要です。消費税の課税対象である資産の譲渡などに該当しないため、基本的に預り金の仕訳で消費税の課税関係が生じることはありません。
消費税の課税は仮受金の計上に連動しない
消費税は、課税対象の取引について、商品やサービスの引き渡しがあった時点で認識されます。そのため、仮受金の計上に消費税の課税は連動しません。仮受金を計上した段階では、課税対象の取引に該当するかなどが不明であるためです。消費税は、仮受金の計上とは独立して、商品などの引き渡しがあったタイミングで認識することに注意しましょう。
税理士コメント
仮受金や前受金が発生した場合には、どちらも「負債の部」に表示されます。
仮受金は、受け取った金額について、その詳細が判明するまでの一時的な処理に使用されます。
しかし、前受金は商品やサービスの代金を事前に受け取った場合に使用される勘定科目であり、詳細もわかっています。顧客に対して商品やサービスを提供する「義務」がある状態を示しています。
似たような用語ではありますが、その意味するところには大きな違いがあります。
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