- 更新日 : 2025年2月20日
工業簿記と商業簿記の違いを解説!難易度やおすすめの勉強方法も
製造業などでは、製造原価計算のため工業簿記を使用します。生産現場を持つ製造業における収益最大化・コスト管理に工業簿記は欠かせません。工業簿記では商業簿記にはなかった考え方もあり、特に「原価」というものの考え方がよく理解できます。この記事では、商業簿記と比較しながら工業簿記の概要やその学び方を見ていきましょう。
目次
工業簿記とは
工業簿記とは、製造業等における企業の会計処理を行うための記帳技法を言います。工業簿記においては、製品の製造過程である「原価計算」が中心です。
計算の流れとしては、まず、材料費、労務費、経費の3つの要素から構成される製造費用を求めます。これらの原価要素を適切に集計し、製品原価を算定します。工業簿記では、原価の流れを追うために勘定科目として、「仕掛品」や「製品」などの勘定科目を使用し、製造工程における原価の流れをわかりやすく記録します。
経営者は、損益計算書や製造原価報告書から製品の収益性や生産効率を分析することが可能です。また、工業簿記における原価計算技法には、直接費と間接費の区分や、実際原価計算と標準原価計算の使い分けなど様々なものがあり、製造物に見合った原価管理や予算管理が可能となります。
商業簿記とは
商業簿記とは、主に商品の売買やサービス提供をする企業の会計処理を行うための記帳技法を言います。工業簿記が原価計算に重点を置くのに対し、商業簿記では日々の取引記録と決算に焦点が当てられています。
商業簿記では、商品の仕入れから売上までの流れを記録するのが基本です。仕入れ、売上、売上原価などの勘定科目を使用して、商品の流れや損益を把握するとともに現預金、売掛金、買掛金などの資産や負債の増減を記録し、財政状態を明らかにします。
商業簿記ではその過程で、複式簿記に基づき、仕訳帳、総勘定元帳などの会計帳簿を作成して、貸借対照表や損益計算書などに連携し、最終的に企業の財務状況を表示することが可能です。
なお、商業簿記と工業簿記の要素を組み合わせた会計技法として「商的工業簿記」があります。商的工業簿記は、製品について原価計算と売買取引の記録を統合したもので、原価計算後は、商業簿記の計算に流れます。製造業と商取引の両面を行う企業にとっては欠かせない会計技法です。
工業簿記と商業簿記の違い
工業簿記と商業簿記の違いを4つの観点から比較してみました。
対象業種の違い
| 工業簿記 | 商業簿記 |
|---|---|
| 主に製造業を中心とし、製品の製造・加工を行う企業を対象とします。 システム開発業などでも部分的に取り入れられています。 | 主に小売業や卸売業など、商品の売買を行う企業を対象とします。 サービスを提供する企業等でも利用します。 |
勘定科目の違い
| 工業簿記 | 商業簿記 |
|---|---|
「原材料」「仕掛品」「製品」などの製造関連の勘定科目が商業簿記に追加されます。製品に原価を結びつけるために「製造間接費」などの科目も認識されます。 | 「仕入高」「売上原価」「売上高」「商品」などの勘定科目が中心となります。 |
原価計算期間の違い
| 工業簿記 | 商業簿記 |
|---|---|
| 月次などの会計期間より短い期間で原価計算を行うことが一般的です。 | 特定の原価計算期間は設定しません。月次決算、中間決算などのほか、1会計期間(1年間)で計算します。 |
財務諸表・損益計算書の表記の違い
| 工業簿記 | 商業簿記 |
|---|---|
| 損益計算書とは別に「製造原価明細表」により詳細な原価情報が示されます。「売上原価」ではなく「製品売上原価」と表示することがあります。 | 損益計算書では「売上高」から「売上原価」を差し引いて「売上総利益」を算出します。 |
工業簿記における原価計算
工業簿記の原価計算についてさらに深堀りしてみましょう。
原価計算とは何か
小売業などの商品販売業においては、仕入先からの請求書などによって商品の原価は明らかになります。しかし、製造業などでは、販売した製品を製造するためにかかった原価は、自分で計算しなければなりません。
そのために工業簿記においては、製品の原価を計算する手続きである「原価計算」が必要です。工業簿記では、原価計算により製品の原価を計算し、原価計算の結果を受けて商業簿記に合流します。
工業簿記の原価計算の流れ
原価計算では最終的に製造原価を求めます。工業簿記の技法はさまざまありますが、ここではよく見られる「個別原価計算」について概要を解説します。
製造原価は、その発生により材料費、労務費、経費に分類されます。
【製造原価の分類:原価要素1】
| 材料費 | 製造のために要する原材料 |
| 労務費 | 製造のために要する労働力 |
| 経費 | 製造のために要する上記以外の消費高 |
製造原価の要素として、製品に対して直接投入される「直接費」と直接投入されない「間接費」があります。例えば、工場の清掃スタッフの給料などは、作業環境を整えるという意味で間接的な労務費と言えます。
【製造原価の分類:原価要素2】
| 製造直接費 | 特定の製品に対して直接投入し、消費した金額がそのまま原価として計算される製造原価 | 直接材料費、直接労務費、 直接経費 |
| 製造間接費 | 上記以外の製造原価 | 間接材料費、間接労務費、 間接経費 |
原価計算は、計算段階があり、次のようなステップを経て実施されます。
【原価計算の計算段階】
| ステップ1 | 費目別計算 | 一定期間における上記直接材料費から間接経費までのうち、製造に投入したものを集計します。 |
| ステップ2 | 部門別計算 | ステップ1において把握されたものを部門別に分類して、集計します。 |
| ステップ3 | 製品別計算 | さらに製品単位に集計し、製品の単位当たりの原価を求めます。 |
工業簿記と商業簿記はどちらの難易度が高い?
製造業による製品は製造・加工するだけではなく、それを販売する過程もあります。したがって、工業簿記で行った原価計算のさらに先では商業簿記が待っています。その意味では、「商業簿記」だけを理解するのと、「工業簿記を経て商業簿記」を理解するのではボリュームが全く異なります。
初学者が工業簿記から習得しようとするのは難易度が高いと言えるため、ある程度商業簿記を理解できた段階で工業簿記を開始するのがよいでしょう。日商簿記でも、3級は商業簿記の範囲だけで、2級になると商業簿記と工業簿記の両方を学ぶようになっています。この順序を踏まえて学習を進めることをおすすめします。
工業簿記と商業簿記のおすすめの勉強方法
工業簿記や商業簿記を習得するにあたっておすすめの勉強方法を紹介します。
【工業簿記】
原価計算の仕組みを理解しましょう。原価計算の流れを自分で図に描いて、製造プロセスを理解してから、それぞれの数量や金額をあてはめて考えるようにしましょう。
簿記検定などでは、設問のパターンがある程度決まっているものもあるため、パターンに慣れ、それを反復するのもおすすめです。
【商業簿記】
商業簿記の基本となるのは、仕訳です。複雑な取引も結局は仕訳で表現されます。各取引においては、仕訳パターンがあるため「慣れる」ようにしましょう。
この仕訳を起点とした、取引→記帳→決算→財務諸表作成の流れ(「簿記一巡の手続き」と呼びます)に慣れるためには、総合問題を繰り返し解くのがおすすめです。
【工業簿記・商業簿記に共通すること】
簿記の学習は、「反復」と「実践問題」に取り組むことが重要です。自分のペースに合わせて、それぞれの基本をしっかりとおさえた上で、過去問に進むこと、そしてそれを繰り返すことが大切です。
一度覚えたことを忘れたとしても、それを何度も思い出す過程で、簿記的な思考回路ができてきます。
工業簿記は図を描いて、原価の構造を頭に入れよう!
工業簿記を効果的に習得するためには、与えられた問題を自らの手で図に起こし、原価の構造や要素を視覚的に明らかにすることが非常に重要です。図を描くことで、製造過程における材料費、労務費、製造間接費など、原価がどのように形成されているかを具体的に理解できるようになります。
さらに、図を用いることで、原価の流れや関連性を明確に理解しやすくなり、複雑なケースにおいてもミスや見落としを防ぐことができます。工業簿記の問題を解く際には、常に図を活用し、その図の中に数値をあてはめる「理論と実務を結びつける」姿勢が欠かせないでしょう。
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